法令

電気設備技術基準をわかりやすく解説|絶縁抵抗・接地・電圧区分|第二種電気工事士

結論から言います

電気設備技術基準(通称「電技(でんぎ)」)は、電気設備の安全ルールブックです。

電気工事士法が「誰が工事できるか」を決めるルールなら、電技は「どう工事するか」を決めるルールです。感電防止・火災防止・電気供給の安定――この3つを実現するための最低限の技術基準が、ここに定められています。

第二種電気工事士の学科試験では、電圧の区分・絶縁抵抗値・接地工事・漏電遮断器など、電技に関する問題が毎回2~3問出題されます。数値を暗記するだけではなく、「なぜその基準があるのか」を理解すれば、ひっかけ問題にも対応できるようになります。

この記事では、電技の中でも試験に出やすい条文を取り上げて、条文の中身を現代語訳しながら、現場や実生活との繋がりもセットで解説していきます。

電気設備技術基準とは何か

正式名称と位置づけ

正式名称は「電気設備に関する技術基準を定める省令」(平成9年通商産業省令第52号)です。電気事業法第39条に基づいて制定された省令で、発電所・変電所から一般家庭の屋内配線まで、すべての電気設備が守るべき技術的な基準を定めています。

イメージとしては、こんな関係です。

電気関連法令の関係
電気工事士法
「誰が」工事できるか
→ 資格・免状のルール
電気設備技術基準
「どう」工事するか
→ 技術的な安全基準

電技と電技解釈の違い

電技の条文は「感電のおそれがないようにしなければならない」のように、抽象的な表現で書かれています。「じゃあ具体的にどうすればいいの?」という答えが書いてあるのが、電気設備の技術基準の解釈(通称「電技解釈」)です。

たとえば、電技では「電路は大地から絶縁しなければならない」(第5条)とだけ書いてありますが、具体的な絶縁抵抗値(0.1MΩ、0.2MΩ、0.4MΩ)は電技解釈の第14条に書いてあります。

試験では電技と電技解釈の両方から出題されますが、「電技に基づく基準」としてまとめて出題されることが多いので、この記事でもセットで解説します。

電圧の区分(第2条)

電気設備技術基準の第2条では、電圧を3つの区分に分類しています。これは電気の世界の「危険度レベル」と考えるとわかりやすいです。

区分 直流 交流
低圧 750V以下 600V以下
高圧 750V超~7,000V以下 600V超~7,000V以下
特別高圧 7,000Vを超えるもの

試験で注意すべきポイントは、「交流600Vは低圧」「交流601Vから高圧」という境界線です。「以下」と「超」の違いをしっかり押さえましょう。

現場・実生活での具体例

  • 家庭のコンセント(100V/200V)→ 低圧。第二種電気工事士が工事できる範囲です
  • 電柱の上の電線(6,600V)→ 高圧。触れたら命に関わるレベルで、専門の作業者しか扱えません
  • 大規模工場・鉄道の架線(数万V)→ 特別高圧。近づくだけでも危険です

なぜ直流と交流で境界値が違うのかというと、交流のほうが人体への影響が大きいからです。交流は周期的に電流の向きが変わるため、筋肉の収縮が持続して手が離せなくなる「不随意筋収縮」が起きやすいのです。そのため、交流のほうが低い電圧で「高圧」に区分されています。

絶縁抵抗(第58条・電技解釈 第14条)

絶縁抵抗は、試験で最も出題頻度が高いテーマの一つです。ほぼ毎回出ると思って対策してください。

そもそも絶縁抵抗とは?

「絶縁(ぜつえん)」とは、電気が流れるべきでないところに電気を通さないこと。電線は銅やアルミの導体を「絶縁体(ビニルなど)」で覆うことで、電気が漏れないようにしています。

しかし、絶縁体は経年劣化したり、傷がついたり、水分を吸ったりすると、少しずつ電気を通してしまうようになります。この「どれくらい電気を通しにくいか」を数値で表したのが絶縁抵抗値です。

絶縁抵抗が低い = 電気が漏れている = 感電・火災のリスクがあるということ。だからこそ、最低限クリアすべき数値基準が法令で決められているのです。

絶縁抵抗の基準値

電技 第58条では「電路の絶縁抵抗は、省令で定める技術基準に適合するものでなければならない」と定めており、具体的な数値は電技解釈 第14条で以下のように規定されています。

電路の使用電圧区分 絶縁抵抗値
300V以下(対地電圧150V以下) 0.1MΩ以上
300V以下(その他) 0.2MΩ以上
300Vを超えるもの 0.4MΩ以上

※ MΩ(メガオーム)= 1,000,000Ω。絶縁抵抗は非常に大きな値なので、MΩ単位で表します。

数値の覚え方

0.1 → 0.2 → 0.4」と倍々で増えると覚えましょう。電圧が高くなるほど電気の「押す力」が強くなるので、より高い絶縁性能が必要になるのは感覚的にも納得できますよね。

「対地電圧150V以下」って何?

対地電圧とは、電線と大地(アース)との間の電圧です。一般家庭の単相100V回路は対地電圧が100Vなので「150V以下」に該当します。つまり、家庭の100Vコンセント回路の絶縁抵抗は0.1MΩ以上あればOKということです。

一方、同じ300V以下でも単相200V回路(エアコン・IHクッキングヒーター用)は対地電圧が200Vになる場合があり、その場合は「その他」に該当して0.2MΩ以上が必要になります。

現場ではどう使われる?

電気工事が終わったら、電気を通す前に絶縁抵抗計(メガー)を使って必ず測定します。これは竣工検査の必須項目で、基準を満たさない回路は引き渡せません

もし絶縁抵抗が基準値を下回っていたら、どこかで電線の被覆が傷ついている、接続部分に不具合がある、水が浸入しているなどの問題が考えられます。このまま電気を流せば、漏電による感電や、最悪の場合は火災に繋がります。

身近な例でいうと、家のブレーカーが理由なく頻繁に落ちる場合、壁の中の配線の絶縁抵抗が低下している可能性があります。この基準がなかったら、壁の中の配線が劣化して漏電していても誰にもわからない――そう考えると、この数値基準の重要性が実感できるのではないでしょうか。

接地工事(第10条~第11条)

電技 第10条では「電気設備の必要な箇所には、異常時の電位上昇、高電圧の侵入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件への損傷を与えるおそれがないよう、接地その他の適切な措置を講じなければならない」と定めています。

簡単に言えば、「万が一の漏電に備えて、電気の逃げ道(アース)を用意しておきなさい」ということです。

洗濯機やエアコンのプラグに緑色のアース線がついているのを見たことがありますよね。あれは、機器の金属部分が漏電した場合に、電気を大地に逃がして人体に流れるのを防ぐためのものです。

接地工事にはA種・B種・C種・D種の4種類があり、電圧や設備の種類によって使い分けます。第二種電気工事士の範囲では主にC種接地工事(300Vを超える低圧機器)D種接地工事(300V以下の低圧機器)が重要です。

接地工事の詳細(接地抵抗値・施工方法など)は別記事で詳しく解説しますので、ここでは「電技が接地を義務付けている」ということを押さえておいてください。

漏電遮断器の設置(電技解釈 第36条)

電技解釈 第36条では、水気のある場所に施設する低圧の電気機械器具には、漏電遮断器を設置しなければならないと定めています。

なぜ水気のある場所に必要なのか?

水は電気を通しやすい性質があります。濡れた手で漏電している機器に触れると、乾いた状態よりもはるかに大きな電流が体を流れます。つまり、水気のある場所は感電のリスクが高いのです。

具体的に漏電遮断器の設置が必要な場所は次のとおりです。

  • キッチン(食洗機・冷蔵庫の周辺)
  • 浴室洗面所
  • 屋外コンセント(雨がかかる可能性)
  • 水を使う作業場(工場の洗浄エリアなど)

漏電遮断器は「最後の砦」

接地工事が「電気の逃げ道を作る」のに対し、漏電遮断器は「漏電を検知したら瞬時に電気を止める」装置です。この2つを組み合わせることで、二重の安全策になっています。

たとえば、洗濯機が漏電した場合を考えてみましょう。

  1. 接地工事(アース線)→ 漏れた電気を大地に逃がす → 人体に流れる電流を減らす
  2. 漏電遮断器 → 漏れ電流を検知して0.1秒以内に回路を遮断 → 電気を止める

どちらか一方だけでも効果はありますが、両方あることで安全性が格段に高まります。これが「二重の安全策」と言われる理由です。

電線の許容電流

電線には「流してよい電流の上限」が決まっています。この上限を許容電流と呼びます。

なぜ上限があるのか?

電線に電流を流すと、電線自体の抵抗によって熱が発生します(ジュール熱)。電流が大きくなるほど発熱も大きくなり、許容電流を超えて電流を流し続けると、電線の絶縁被覆が溶けたり、最悪の場合火災を引き起こします。

身近な例でいうと、タコ足配線で延長コードが熱くなるのがまさにこれ。電線の許容電流を超えて電流が流れている危険な状態です。

代表的な許容電流の値

第二種電気工事士の試験で頻出する600Vビニル絶縁電線(IV線)の許容電流は以下のとおりです。

導体の太さ 許容電流
1.6mm(単線) 27A
2.0mm(単線) 35A
2.6mm(単線) 48A

電線が太くなるほど許容電流が大きくなります。水道管と同じイメージです。太い管ならたくさんの水を流しても問題ないですが、細い管に大量の水を流すと圧力が上がって壊れてしまいますよね。電線も同じ原理です。

なお、電線を管に入れたり、複数本束ねたりすると熱が逃げにくくなるため、許容電流は低減されます。この低減率の計算も試験で問われることがあるので、注意しておきましょう。

施設場所の区分

電気工事を行う場所は、電技に基づいて以下の3つに分類されます。この区分によって、使用できる工事の種類が変わるため、試験でも出題されます。

施設場所の3つの区分
展開した場所
電線が露出している場所
例:天井裏がなく配線が見える工場、倉庫の壁面
→ 点検・修理がしやすい
点検できる隠ぺい場所
配線は隠れているが点検口がある場所
例:天井裏(点検口あり)、床下(人が入れる)
→ 何かあれば確認できる
点検できない隠ぺい場所
配線が壁や天井の中にあり簡単にはアクセスできない場所
例:壁の中、コンクリート内
→ 問題があっても発見しにくい

点検できない隠ぺい場所は、一度施工したら簡単にやり直せません。そのため、使える工事の種類が最も限定されます。たとえば、がいし引き工事は展開した場所や点検できる隠ぺい場所では施工できますが、点検できない隠ぺい場所では原則として施工できません。

逆に、ケーブル工事はすべての場所で施工可能なので、現場で最も多く使われる工事方法です。

試験で狙われるポイントまとめ

テーマ よく出る内容
電圧の区分 低圧・高圧・特別高圧の境界値。交流と直流の違い
絶縁抵抗値 3つの区分と数値(0.1/0.2/0.4MΩ)。対地電圧150Vの意味
接地工事 C種・D種の区分、接地抵抗値
漏電遮断器 水気のある場所への設置義務。動作時間
許容電流 電線の太さと許容電流の関係。低減率
施設場所 3つの区分と各場所で使える工事方法

特に絶縁抵抗値と電圧の区分は、ほぼ毎回出題されます。数値をそのまま覚えるだけでなく、「なぜその数値なのか」を理解しておくと、ひっかけ問題にも強くなります。

理解度チェック!確認クイズ

この記事で学んだ内容を、クイズで確認しましょう。

問題1

対地電圧が100Vの住宅用コンセント回路において、電技解釈で定められている絶縁抵抗の最小値として、正しいものはどれか。

イ.0.05MΩ
ロ.0.1MΩ
ハ.0.2MΩ
ニ.0.4MΩ

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正解:ロ(0.1MΩ)
住宅用コンセントの対地電圧は100Vで、「300V以下で対地電圧150V以下」の区分に該当します。この区分の絶縁抵抗値は0.1MΩ以上です。3つの区分の中で最も低い値ですが、これは電圧が低いぶん漏電のリスクも比較的小さいためです。竣工検査では絶縁抵抗計(メガー)を使ってこの値をクリアしているか確認します。

問題2

電気設備技術基準に定める電圧の区分において、交流600Vの電圧は次のうちどれに該当するか。

イ.低圧
ロ.高圧
ハ.特別高圧
ニ.超高圧

解答を見る

正解:イ(低圧)
交流の場合、低圧は「600V以下」と定められています。「以下」は「その値を含む」ので、600Vちょうどは低圧に含まれます。601Vから高圧になります。試験では「以下」と「超(その値を含まない)」の違いを問うひっかけ問題がよく出るので、注意しましょう。ちなみに「超高圧」という区分は電技には存在しません。

問題3

住宅の台所に設置するコンセントに、食器洗い乾燥機を接続して使用する。このコンセントの回路に施すべき保護措置として、電技解釈で定められているものはどれか。

イ.過電流遮断器の設置
ロ.漏電遮断器の設置
ハ.避雷器の設置
ニ.特に定めはない

解答を見る

正解:ロ(漏電遮断器の設置)
食器洗い乾燥機は水を使う機器であり、台所は水気のある場所です。電技解釈 第36条では、水気のある場所に施設する低圧の電気機械器具には漏電遮断器を設置することが定められています。水がかかる可能性がある場所では、濡れた手で触れた場合の感電リスクが高いため、漏電を検知して瞬時に回路を遮断する漏電遮断器が必要です。

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