2種 法令

電気事業法をわかりやすく解説|電気の安全を守る基本法|第二種電気工事士 法令

この記事でわかること

  • 電気事業法の目的と「電気の世界の憲法」としての位置づけ
  • 一般用電気工作物と自家用電気工作物の分類基準
  • 事業用電気工作物に必要な主任技術者の選任義務
  • 電気事業法と電気工事士法・電気用品安全法の関係

結論から言います|電気事業法は「電気の憲法」

電気事業法(でんきじぎょうほう)は、電気の安全と安定供給を守るための最も基本的な法律です。

ひとことで言えば「電気の世界の憲法」。電気をつくる・送る・届ける・使う――このすべてのルールの土台になっている法律です。

第二種電気工事士の試験では、電気事業法そのものの条文が直接出るというよりも、「電気工作物(でんきこうさくぶつ)の分類」と「電圧の区分」が繰り返し出題されます。ここを押さえれば法令分野の得点源になりますよ。

この記事では、条文の引用→現代語訳→具体例→なぜ必要かの順で、電気事業法のポイントをまるごと解説します。

関連記事:「電気工事士法をわかりやすく解説|第二種電気工事士 法令」もあわせて読むと、法令分野の全体像がつかめます。

電気事業法の目的(第1条)

条文を読んでみよう

電気事業法 第1条(目的)
この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによつて、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによつて、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。

現代語訳

ちょっと堅いので、かみ砕いてみましょう。

「電気をつくったり届けたりする事業がちゃんと運営されるようにして、電気を使う人を守ること。そして、電気設備(電気工作物)の工事・メンテナンス・運転にルールを設けて、人の安全と環境を守ること。これが電気事業法の目的だよ」ということです。

ポイントは2つ

キーワード 意味
電気の使用者の利益を保護 電力会社が勝手に値上げしたり、供給を止めたりしないようにする
電気工作物の工事・維持・運用を規制 電気設備が危険な状態にならないよう、工事や管理の基準を定める

この法律がなかったら?

想像してみてください。もし電気事業法がなかったら――

  • 電力会社が好きなだけ電気料金を値上げしても止められない
  • 素人が適当に電気設備を工事しても誰も規制できない
  • 危険な設備が放置されて、漏電→火災や感電事故が頻発する

こうした事態を防ぐために、電気に関するルールの「大元」として電気事業法が存在しているわけです。

電気工作物とは?

電気事業法を理解するうえで、まず知っておきたいのが「電気工作物(でんきこうさくぶつ)」という言葉です。

電気事業法 第2条第1項第18号
「電気工作物」とは、発電、変電、送電、配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物をいう。

つまり、電気をつくる・届ける・使うための設備すべてが電気工作物です。発電所のタービンも、あなたの家のコンセントやブレーカーも、すべて電気工作物に含まれます。

電気工作物の分類(超重要!)

電気事業法では、電気工作物を大きく2つ→さらに3つに分類しています。試験でもよく出る最重要ポイントです!

電気工作物の分類
一般用電気工作物
一般家庭・小規模店舗
600V以下で受電
小出力発電設備を含む
→ 第二種電気工事士が工事できる
自家用電気工作物
工場・ビル・大型商業施設
600V超(高圧)で受電
電気主任技術者が必要
→ 第一種電気工事士が工事
電気事業用電気工作物
電力会社の発電所
送電線・変電所
配電線路
→ 電力会社が管理

ここで覚えておくべき最大のポイントは次の1点です。

第二種電気工事士が工事できるのは「一般用電気工作物」のみ!

自家用電気工作物は第一種電気工事士の範囲です。電気事業用電気工作物は電力会社の専門技術者が管理します。第二種の資格だけでは、ビルや工場の高圧受電設備は触れません。

詳しくは「電気工事士法をわかりやすく解説|第二種電気工事士 法令」で解説しています。

事業用電気工作物とは?

ちょっとややこしいのですが、「自家用電気工作物」と「電気事業用電気工作物」を合わせたものを「事業用電気工作物(じぎょうようでんきこうさくぶつ)」と呼びます。

電気工作物の全体像
一般用電気工作物
家庭・小規模店舗の設備
事業用電気工作物
自家用電気工作物
工場・ビル等
電気事業用電気工作物
発電所・送電線等

つまり、電気工作物は「一般用」と「事業用」に大きく分かれ、事業用の中がさらに「自家用」と「電気事業用」に分かれる、という構造です。試験問題ではこの分類を正確に覚えているかが問われます。

一般用電気工作物の範囲(もっと詳しく)

第二種電気工事士が工事できる「一般用電気工作物」の条件を、もう少し細かく見ていきましょう。

一般用電気工作物の4つの条件

No. 条件
1 600V以下で受電する設備であること
2 受電場所と同一の構内(同じ敷地内)に設置されていること
3 発電設備がある場合は小出力発電設備であること
4 爆発性・引火性のあるガスが存在する場所に設置されていないこと

具体的にどんな場所?

  • 一般家庭:戸建て住宅、マンションの各住戸(電力会社から100Vまたは200Vで受電)
  • 小規模な店舗・事務所:コンビニ、美容室、個人事務所など
  • 小さな工場:600V以下で受電している小規模な作業場

逆に、スーパーや大きな工場で高圧(6,600Vなど)で受電しているところは「自家用電気工作物」になるので、第二種電気工事士だけでは工事できません(自家用電気工作物と電気主任技術者で詳しく解説)。

小出力発電設備とは?

一般家庭の屋根に載っている太陽光パネルなど、小規模な発電設備は「一般用電気工作物」に含まれます。具体的には次のとおりです。

発電方式 出力の上限
太陽光発電 50kW未満
風力発電 20kW未満
水力発電 20kW未満
内燃力発電(ガス・ディーゼルなど) 10kW未満
燃料電池発電 10kW未満

例えば、住宅の屋根に載せた太陽光パネルが30kW(50kW未満)であれば、小出力発電設備として一般用電気工作物に含まれます。しかし、メガソーラー(1,000kW超)は当然ながら事業用です。

爆発性ガスがある場所はなぜ除外?

ガソリンスタンドや化学工場など、爆発性・引火性のガスが発生する場所の電気設備は、たとえ600V以下であっても一般用電気工作物から除外されます。

理由はシンプルで、ちょっとした火花が大爆発につながる危険があるから。防爆構造の特殊な機器や、専門的な施工技術が必要になるため、より厳しい管理が求められる「自家用電気工作物」として扱われるのです。

電圧の区分(低圧・高圧・特別高圧)

電気事業法では、電圧を3つの区分に分けています。この区分は試験にとてもよく出ますので、しっかり覚えましょう。

電圧の区分
低圧
直流:750V以下
交流:600V以下
(例)家庭の100V・200V
高圧
直流:750V超〜7,000V以下
交流:600V超〜7,000V以下
(例)ビル・工場の6,600V
特別高圧
7,000V超
(例)送電線 66,000V〜
大規模工場 22,000V〜

覚え方のコツ

直流と交流で境界の数字が違う(直流750V / 交流600V)のがちょっとややこしいですね。覚え方として、「交流は600、直流は750」とセットで暗記してしまいましょう。高圧と特別高圧の境界は、どちらも7,000Vで同じです。

試験のひっかけポイント:「交流600V」と「直流750V」を入れ替えた選択肢がよく出ます。直流のほうが数字が大きい(750V)と覚えておけば間違えません。電圧区分の詳しい解説は 電気設備技術基準 の記事もあわせて確認してください。

なぜ直流と交流で基準が違うの?

交流は電圧が常にプラスとマイナスの間で変動しています。交流600Vのピーク値は約850V(600V × √2 ≒ 849V)にもなります。一方、直流750Vはずっと750V一定。つまり、人体に対する危険度がおおむね同じになるよう、交流のほうが低い数値で区切られているのです。

技術基準適合義務(第56条関連)

電気事業法では、一般用電気工作物にも技術基準に適合させる義務が課されています。

電気事業法 第56条第1項
一般用電気工作物は、経済産業省令で定める技術基準に適合するように、これを維持しなければならない。

現代語訳

「家庭や小規模店舗の電気設備も、国が定めた技術基準(安全のルール)をちゃんと守った状態に保っておかなければなりませんよ」ということです。

技術基準って何?

ここでいう「技術基準」とは、「電気設備に関する技術基準を定める省令」(通称:電気設備技術基準=電技)のことです。絶縁抵抗の最低値、接地工事の基準、電線の施設方法など、電気設備の安全に関する具体的なルールが定められています。

詳しくは「電気設備技術基準をわかりやすく解説|絶縁抵抗・接地・電圧区分|第二種電気工事士」で解説しています。

つまり、こういう関係

法令の階層構造
電気事業法(法律)
電気事業法施行令(政令)
電気設備技術基準(省令)
電技解釈(具体的な数値・方法)

電気事業法が「安全を守りなさい」と大きく命じて、その下の技術基準で「具体的にこうしなさい」と細かいルールを決めている、というイメージです。

調査義務(第57条関連)

一般家庭の電気設備について、電力会社(一般送配電事業者)には定期的に調査する義務があります。

電気事業法 第57条第1項
一般送配電事業者は、(中略)一般用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合しているかどうかを調査しなければならない。

現代語訳

「電力会社は、家庭や店舗などの電気設備が安全基準を満たしているかどうか、定期的にチェックしなければならない」ということです。

調査の頻度は?

一般用電気工作物の定期調査は「4年に1回以上」!

実際には、電力会社から委託を受けた調査機関(例:関東電気保安協会など)のスタッフが各家庭を訪問して調査を行います。「○○電気保安協会です、4年に1回の定期調査に来ました」というチラシが郵便受けに入っていたり、実際に訪問されたことがある方もいるかもしれませんね。

何を調査するの?

  • 絶縁抵抗の測定 — 電線やコンセントから電気が漏れていないかチェック
  • 接地抵抗の測定 — アースがちゃんと機能しているか確認
  • 目視点検 — 電線の損傷、ブレーカーの状態、配線の異常がないか

測定方法について詳しく知りたい方は「絶縁抵抗測定・接地抵抗測定をわかりやすく解説」をご覧ください。

この制度がなかったら?

古い家の配線が劣化して絶縁不良を起こしていても、誰も気づかない。そのうち漏電して、壁の中から火が出る――なんてことが起こりかねません。だからこそ、電力会社に定期調査の義務を課して、設備の劣化や危険を早期に発見する仕組みになっているのです。

確認クイズ

Q1. 電気事業法における低圧の定義で、直流と交流それぞれ何V以下ですか?

A. 直流は750V以下、交流は600V以下です。試験では「交流600V」と「直流750V」を入れ替えたひっかけ選択肢がよく出ます。直流のほうが数字が大きい(750V)と覚えましょう。

Q2. 一般用電気工作物に分類されるための受電電圧の条件は何ですか?

A. 600V以下で受電することが条件です。600V超(高圧)で受電している工場やビルは自家用電気工作物に分類され、第二種電気工事士だけでは工事できません。

Q3. 一般用電気工作物の定期調査は、誰が何年に1回以上行う義務がありますか?

A. 電力会社(一般送配電事業者)が4年に1回以上行う義務があります。実際には電力会社から委託された調査機関(例:関東電気保安協会など)のスタッフが各家庭を訪問して調査を行います。

電気事業法のまとめ

ここまでの内容を整理しましょう。

項目 ポイント
目的(第1条) 電気使用者の保護+公共の安全確保+環境保全
電気工作物の分類 一般用・自家用・電気事業用の3種類
一般用の条件 600V以下・同一構内・小出力発電・爆発性ガスなし
電圧の区分 低圧(交流600V以下)・高圧(〜7,000V)・特別高圧(7,000V超)
技術基準適合(第56条) 一般用でも技術基準を守る義務あり
定期調査(第57条) 電力会社が4年に1回以上の調査義務

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まとめ問題

記事の内容が頭に入っているか、チェックしてみましょう!

【問題1】

ある住宅で、屋根に太陽光パネル(出力45kW)を設置し、電力会社から単相3線式100V/200Vで受電している。この住宅の電気設備は、電気事業法上どのように分類されるか。

ア.電気事業用電気工作物
イ.自家用電気工作物
ウ.一般用電気工作物
エ.小規模事業用電気工作物

解答を見る

正解:ウ(一般用電気工作物)
600V以下で受電しており、太陽光パネルの出力が45kWで50kW未満(小出力発電設備に該当)なので、一般用電気工作物に分類されます。もしこの太陽光パネルが50kW以上であれば、自家用電気工作物になるので注意しましょう。

【問題2】

電圧の区分について、正しいものはどれか。

ア.低圧とは、直流にあっては600V以下、交流にあっては750V以下のものをいう
イ.低圧とは、直流にあっては750V以下、交流にあっては600V以下のものをいう
ウ.高圧と特別高圧の境界は、直流・交流ともに6,600Vである
エ.特別高圧とは、10,000Vを超えるものをいう

解答を見る

正解:イ(直流750V以下、交流600V以下)
アは直流と交流の数値が逆になっています。これは試験で非常によく出るひっかけパターンです。ウは誤りで、高圧と特別高圧の境界は7,000V(6,600Vではありません)。エも誤りで、特別高圧は7,000V超です。「直流750、交流600」をセットで覚えましょう。

【問題3】

電力会社から高圧(6,600V)で受電している工場がある。この工場の電気設備の維持管理について、正しいものはどれか。

ア.一般用電気工作物なので、電力会社が4年に1回調査してくれる
イ.自家用電気工作物なので、電気主任技術者を選任する必要がある
ウ.電気事業用電気工作物なので、経済産業大臣の許可が必要である
エ.自家用電気工作物なので、第二種電気工事士が自由に工事できる

解答を見る

正解:イ(自家用電気工作物なので、電気主任技術者を選任する必要がある)
高圧(6,600V)で受電しているため、この工場は自家用電気工作物です。アは誤りで、4年に1回の定期調査は一般用電気工作物に対するもの。ウは誤りで、工場は電気事業用ではなく自家用です。エも誤りで、自家用電気工作物の工事には第一種電気工事士(または認定電気工事従事者)が必要であり、第二種だけでは工事できません。

理解度をチェック!

この記事の内容をどれくらい覚えているか、ミニテストで確認しましょう。

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よくある質問

Q. 一般用電気工作物とは?

A. 600V以下で受電する電気工作物で、小出力発電設備以外の発電設備を持たないものです。一般住宅や小規模な店舗の電気設備が該当します。

Q. 電気主任技術者の選任が必要な場合は?

A. 自家用電気工作物(事業用電気工作物のうち電気事業用を除く)の設置者は、電気主任技術者を選任する必要があります。

Q. 電気事業法と電気工事士法の違いは?

A. 電気事業法は電気工作物の保安・安全に関する法律、電気工事士法は電気工事に従事する者の資格に関する法律です。目的と対象が異なります。

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