この記事でわかること
- 第一種電気工事士試験の合格者に必要な実務経験3年以上の考え方
- 実務経験に数えられる工事と、原則として数えられない業務
- 試験合格前の経験、複数勤務先、退職・廃業時の確認方法
- 証明書を勤務先へ依頼する前に整理する項目と申請手順
結論:試験合格者の実務経験は全員3年以上
第一種電気工事士試験に合格しても、合格通知だけでは第一種電気工事士として作業できません。原則として、対象となる電気工事の実務経験を3年以上積み、住所地を管轄する都道府県知事へ免状交付を申請します。
2021年4月1日から、試験合格者の必要年数は学歴にかかわらず3年以上へ統一されました。古い記事や社内資料にある「大学・高専の指定課程卒は3年、それ以外は5年」という説明は、現在の試験合格者ルートには使いません。経済産業省の改正案内では、改正前に試験へ合格した人にも新しい年数を適用すると案内されています。
先に押さえる3点:試験合格前の経験も対象になり得ます。複数の勤務先の期間は通算できます。ただし、働いていた期間すべてが自動で実務経験になるわけではなく、当時の資格と実際に行った工事を証明できることが前提です。
3年要件の法令上の位置づけ
| 根拠 | 定めていること | 申請での意味 |
|---|---|---|
| 電気工事士法第4条 | 都道府県知事が免状を交付。試験合格と所定の実務経験が第一種の交付要件 | 試験合格と免状交付は別の段階 |
| 電気工事士法施行規則第2条の4 | 対象工事、除外工事、実務経験3年以上を規定 | 在職年数ではなく対象工事の従事期間を確認 |
| 同規則第6条 | 住所地を管轄する知事への申請と、資格を証明する書類・写真を規定 | 受験地や勤務先所在地ではなく住所地から窓口を探す |
| 電気工事士法第4条の3 | 第一種電気工事士の定期講習を規定 | 免状交付後の義務まで予定に入れる |
法令の条文だけでは自分の作業が該当するか判断しにくいため、電気技術者試験センターの免状交付申請案内と、住所地の都道府県が公開する記載例を一緒に確認します。
実務経験に数えられる工事
基本になるのは、電気工作物を設置または変更する工事です。自分がその工事を施工し、それに伴って行った設計や検査は含まれ得ます。一方、設計・積算・検査だけを担当した期間は同じ扱いではありません。
| 経験の例 | 必要な前提 | 証明前の確認 |
|---|---|---|
| 一般用電気工作物等の電気工事 | 第二種電気工事士免状など、作業時に必要な資格を持って施工 | 第二種免状の交付日以後か |
| 自家用電気工作物の簡易電気工事 | 認定電気工事従事者認定証など、作業範囲に合う資格を持って施工 | 認定証の交付日と工事の電圧・範囲 |
| 法令上の資格制限が異なる事業用設備の工事 | 主任技術者の保安監督など、その設備で求められる体制の下で施工 | 設備区分、受電規模、担当した作業 |
| 指定養成施設の実習指導 | 第二種電気工事士養成施設で、実習を直接担当 | 施設の指定と担当期間・内容 |
2026年度第一種電気工事士試験の受験案内にも、実務経験の範囲と例が掲載されています。ここでいう「経験」は、無資格作業を後から追認する制度ではありません。作業した時点で必要だった免状・認定証・保安体制を確認してください。
試験合格前の経験も数えられる
第一種試験に合格した後の3年に限定されません。経済産業省の実務経験FAQは、試験合格の前後を問わず対象実務を通算できると説明しています。
たとえば、第二種免状の交付後に一般用電気工事へ2年従事し、第一種試験の合格後に対象工事へ1年従事した場合は、合計3年として証明を準備できます。反対に、第二種試験へ合格していても免状交付前に行った資格作業は、適法な経験として扱えません。
原則として数えられない業務
- 保守・点検・維持・運用だけ:試験合格者ルートの「電気工事」には入りません
- 設計・積算・監督・検査だけ:自分で施工した工事に伴うものと区別します
- 電気機器の製造:盤や機器を製造しただけの期間は、現場の設置・変更工事とは別です
- 土木工事だけ:キュービクルや変圧器を置く基礎工事だけでは電気工事の経験になりません
- 軽微な工事・特殊電気工事:施行規則が実務経験の対象から除外しています
- 50kV以上の架空電線路、保安通信設備の工事:施行規則上の除外対象です
混同注意:電気主任技術者免状の取得者には、免状取得後5年以上の工事・維持・運用経験で認定を受ける別ルートがあります。試験合格者の3年ルートとは要件が違います。「保守経験も数えられる」という説明を、自分がどの申請区分か確認せず流用しないでください。
証明書を依頼する前の6ステップ
- 住所地の窓口を特定する:都道府県別の免状申請窓口から、現在の住所地を選びます
- 最新様式と記載例を入手する:古い保存ファイルや他県の様式を使わず、申請先のページから取得します
- 経歴を月単位で分ける:勤務先、期間、現場、設備区分、工事内容、当時の保有資格を一覧にします
- 対象外期間を除く:保守だけ、設計だけ、休職、資格交付前などを自己判断で混ぜません
- 証明者を確認する:原則として勤務先の代表者へ依頼し、支店長等が証明する場合は委任状の要否を申請先へ確認します
- 下書きを窓口へ相談する:会社印を受ける前に、工事内容の書き方と期間の数え方を確認できる自治体では事前確認を利用します
茨城県の実務経験証明書記載案内は、複数事業所の期間を通算する例や、証明者、工事内容の書き分けを具体的に示しています。様式は申請先の都道府県のものを使い、他県の記載例は考え方の参考に留めます。
証明内容は「電気工事一式」で終わらせない
証明書では、工事件名を大量に並べることより、対象設備と担当作業が審査側に伝わることが大切です。勤務先の様式・申請先の記載例に従い、「どの種類の電気工作物に対し、何を設置・変更し、どの立場で施工したか」を整理します。
期間、勤務先、現場の設備区分、受電規模や電圧、配線・機器の設置変更、保有免状・認定証
「電気関係業務」「設備管理」「電気工事一式」だけで、施工した内容や資格関係が読み取れない
顧客名、個人宅の住所、契約情報などを必要以上に本文へ書いたり、完成した証明書をSNSへ掲載したりしないでください。申請先や勤務先へ送るときも、指定された安全な方法を使います。
複数勤務先・退職・会社廃業時の扱い
複数の勤務先は期間を通算できる
同じ会社で連続3年である必要はありません。たとえばA社2年とB社1年の対象実務は通算できます。ただし、原則として勤務先ごとに証明が必要です。期間の重複、資格交付前、対象外業務を除いて合計します。
退職済みでも、まず元勤務先へ依頼する
経済産業省の実務経験証明書発行に関する要請では、現在または過去に雇用していた人から依頼があった場合、企業に事実確認の上で証明書を発行するよう求めています。元同僚の個人署名を代用にするのではなく、会社の現行窓口や代表者へ相談します。
会社が廃業した・個人事業主だった
通常の代表者証明が難しいときの代替資料・証明方法は、申請先によって確認が必要です。工事記録や資格関係書類が残っていても、自己判断で本人証明を作成せず、書類をそろえる前に住所地の免状窓口へ相談してください。事情に応じて必要な裏付けが指定されます。
免状申請で準備する書類
全国共通の固定セットとして、写真サイズ、手数料、納付方法、郵送可否を断定することはできません。次は確認項目の一覧です。最終的には住所地の最新案内を優先します。
| 確認するもの | 確認ポイント | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| 免状交付申請書・写真 | 現行様式、写真の寸法・撮影時期・提出方法 | 他県や旧様式を流用しない |
| 第一種試験の合格を示す書類 | 結果通知書等の原本・写しの別 | 紛失時は先に窓口へ確認 |
| 実務経験証明書 | 期間、工事内容、証明者、押印・委任状 | 在職証明書だけでは内容が不足 |
| 関係資格の写し | 第二種免状、認定電気工事従事者認定証等 | 経験開始日と交付日の前後 |
| 本人・住所確認、手数料 | 指定書類、金額、納付・受取方法 | 収入印紙や金額を自己判断しない |
受付方法にも地域差があります。たとえば東京都の電気工事士免状案内では、第一種の新規申請について受付窓口と方法を個別に案内しています。以前申請した人の記憶ではなく、申請時点の公式ページを確認してください。
申請期限:経済産業省FAQでは、試験合格者の免状交付申請に期限はないと説明されています。ただし、免状が交付されるまでは第一種電気工事士として対象作業に従事できません。様式や窓口も変わるため、3年を満たしたら最新案内で早めに進めます。
免状交付後は5年以内の定期講習
第一種電気工事士は、免状の交付を受けた日から5年以内に自家用電気工作物の保安に関する講習を受け、その後も前回の受講日から5年以内ごとに受講する義務があります。やむを得ない事由がある場合の扱いも法令に定められています。
起算点は試験合格日ではなく、第一種免状の交付日です。免状が届いたら交付日を記録し、講習案内を待つだけでなく自分でも期限を管理します。資格範囲と定期講習は経済産業省「電気工事の安全」で確認できます。
まとめ
- 第一種試験合格者の必要実務経験は、学歴にかかわらず3年以上
- 試験合格前の適法な対象実務も数えられ、複数勤務先の期間も通算できる
- 保守・維持・運用だけの期間は、試験合格者の3年ルートでは数えない
- 勤務先へ証明を頼む前に、住所地の都道府県様式と記載例を確認する
- 退職・廃業等で通常の証明が難しいときは、代替方法を自己判断せず申請先へ相談する
- 免状交付後は、交付日から5年以内、その後も5年以内ごとの定期講習を管理する
3問で理解度チェック
問題1:現在も、指定課程の卒業者は3年、それ以外は5年の実務経験が必要である。○か×か?
正解:×
2021年4月1日から、第一種試験合格者は学歴にかかわらず3年以上へ統一されています。
問題2:第一種試験に合格する前の電気工事経験は、すべて対象外である。○か×か?
正解:×
合格前でも、必要な資格・体制の下で行った対象電気工事は数えられます。資格交付日と工事内容を確認します。
問題3:A社2年、B社1年の対象実務は、各社の証明をそろえて通算できる。○か×か?
正解:○
同一勤務先で連続3年である必要はありません。重複や対象外期間を除き、原則として勤務先ごとに証明を用意します。
よくある質問
Q. 第一種の実務経験は5年ではないのですか?
A. 第一種試験合格者は、2021年4月1日から学歴を問わず3年以上です。電気主任技術者免状を基礎にした認定申請など、別ルートの5年要件と混同しないでください。
Q. ビル設備管理の保守経験は数えられますか?
A. 試験合格者の3年ルートでは、保守・点検・維持・運用だけの業務は対象電気工事に含まれません。設置・変更工事を担当した期間がある場合は、内容を分けて申請先へ確認します。
Q. 退職した会社が証明してくれない場合は?
A. まず元勤務先の代表者・担当窓口へ事実確認と発行を依頼します。難しい場合は、元同僚の個人証明で済ませず、住所地の免状窓口へ事情と手元の記録を伝えて相談してください。
Q. 第一種試験の合格後、免状申請に期限はありますか?
A. 経済産業省FAQでは申請期限はないとされています。ただし免状交付前は第一種電気工事士として作業できず、制度や様式も変わるため、要件を満たしたら最新案内で申請します。
情報・広告方針:2026年7月28日に、現行法令、経済産業省、電気技術者試験センター、自治体公式案内を照合しました。個別の実務経験の認定は申請先の審査によります。この記事内に通信講座、教材、工具、申請代行のアフィリエイトリンクは掲載していません。
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