結論:数字を丸暗記する前に「どこへ、どう布設するか」を決める
高圧ケーブル工事は、屋内・架空・地中のどこに施設するかで、使える工事、機械的保護、接地の扱いが変わります。危険場所では、さらにガス・蒸気・粉じんの種類と危険場所区分に合う配線方法・防爆機器を選びます。接地種別や曲げ半径を一つの数字で覚えるだけでは、条件が変わる問題を解けません。
この記事では、第一種電気工事士の学科試験で混同しやすい高圧屋内配線・高圧架空ケーブル・地中電線路・危険場所を、判断する順番で整理します。まず経路、次にケーブルと保護方法、最後に接地・端末・環境条件を見るのが基本です。
最初に訂正しておきたいこと
接地種別は「高圧だから一律A種」ではない、という点が重要です。たとえば試験センターの公式例題では、高圧架空ケーブルのちょう架用線とケーブル被覆の金属体はD種接地工事です。一方、高圧屋内配線のケーブル工事では、金属製防護装置・金属製接続箱・ケーブル被覆の金属体は原則A種接地工事となり、接触防護措置を施す場合の例外があります。設備条件を読んで条文を選びます。
高圧ケーブルは何を守る構造か
6,600V用でよく見るCVは、架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルです。CVTは、単心の線心3本をより合わせたトリプレックス形です。メーカーの6,600V CV・CVT資料ではJIS C 3606との関連、導体最高許容温度90℃、導体・内部半導電層・絶縁体・外部半導電層・遮へい層・シースという構成を確認できます。
| 層 | 主な役割 | 施工で見る点 |
|---|---|---|
| 導体・内部半導電層 | 電流を流し、導体表面の電界を整える | 端子に合う導体サイズと圧縮接続を確認 |
| 架橋ポリエチレン絶縁体 | 使用電圧に耐える主絶縁 | 傷、汚れ、削り過ぎを残さない |
| 外部半導電層・遮へい層 | 絶縁体外側の電界を整え、遮へい電流の経路をつくる | 端末の指定寸法、遮へい処理、接地設計を確認 |
| シース | 内部を水分・薬品・外傷から保護 | 延線後の傷と端末部の防水・防食を確認 |
半導電層は「絶縁しない不要な層」ではありません。導体や絶縁体の表面に局部的な電界集中が生じにくい状態をつくる層です。端末ではこの連続した構造を終わらせるため、端末処理材で電界を制御し、導体を機器へ接続し、遮へい・接地・防水を処理します。
布設場所ごとの判断を分ける
| 布設場所 | 先に覚える基準 | 誤りやすい点 |
|---|---|---|
| 高圧屋内配線 | がいし引き工事、またはケーブル工事 | 高圧絶縁電線を金属管へ入れてもケーブル工事にはならない |
| 高圧架空ケーブル | ちょう架方法、機械的強度、D種接地工事 | 高圧という語だけでA種を選ばない |
| 地中電線路 | 管路式・暗きょ式・直接埋設式 | 埋設深さの数値を、方式や例外を無視して全工事へ広げない |
| 危険場所 | 物質・危険場所区分・配線・機器の順 | ガス危険場所と粉じん危険場所を同じ区分で扱わない |
高圧屋内配線
現行の電気設備の技術基準の解釈第168条では、高圧屋内配線は、がいし引き工事またはケーブル工事で施設します。がいし引き工事を使えるのは、乾燥した場所で、かつ展開した場所です。
試験で特に大切なのは、高圧絶縁電線と高圧ケーブルを区別することです。試験センターの例題では、「高圧絶縁電線を金属管に収める」が不適切とされています。電線を管へ入れれば自動的に正しい工事になるわけではありません。
ケーブルが機械的衝撃を受けるおそれのある場所では、適切な防護装置を施します。金属製の防護装置、金属製電線接続箱、ケーブル被覆に使用する金属体の接地は、屋内ケーブル工事の条文と例外条件をセットで確認します。
高圧架空ケーブル
高圧架空ケーブルでは、ちょう架用線にハンガーで支持する方法や、ケーブルをちょう架用線へ接触させて金属テープなどをらせん状に巻く方法があります。試験センターの公式例題は、ちょう架用線および高圧ケーブル被覆の金属体にD種接地工事を施すと説明しています。
つまり「金属遮へいがあるから常にA種」という覚え方は使えません。屋内ケーブル工事なのか、架空ケーブルなのかを問題文から先に特定します。
地中電線路
地中電線路の代表的な施設方法は、管路式、暗きょ式、直接埋設式です。直接埋設式では、現行解釈第120条により、埋設深さは車両その他の重量物の圧力を受けるおそれがある場所で1.2m以上、その他の場所で0.6m以上が基本です。ただし、条文には低圧地中線の砂巻き工法などのただし書きもあるため、数字だけをすべての地中配線へ一律適用しません。
なぜ深さを変えるのでしょうか。車道では上からの荷重、掘削、舗装工事などによる損傷リスクが大きいためです。深さに加え、ケーブルの種類、堅ろうな板・トラフによる保護、埋設表示、他の埋設物との関係を設計条件として確認します。
端末処理は「寸法・清浄・電界・接地」で見る
高圧ケーブルの端末処理は、単に被覆をむいて端子を圧着する作業ではありません。端末処理材ごとに指定された寸法でシース・遮へい層・半導電層・絶縁体を処理し、電界制御部を正しい位置へ作る必要があります。
1. 寸法
端末処理材の施工要領書どおりに段むきし、導体露出長と電界制御部の位置を合わせる。
2. 清浄
絶縁体へ傷・導電性の削りかす・油分・水分を残さない。
3. 接続
端子と導体サイズ、圧縮工具・ダイス、締付条件、遮へいと接地の連続性を確認する。
曲げ半径も「単心8倍、多心6倍」と一律には決められません。メーカー資料では、許容曲げ半径・設計曲げ半径・延線時曲げ半径を分け、ケーブル種別や電圧階級でも倍率を変えています。実施工では採用ケーブルと端末処理材の仕様書・施工要領書を優先します。
危険場所は物質と区分を先に確認する
電気設備の技術基準の解釈は、特殊場所を一括りにしていません。第175条は粉じんの多い場所、第176条は可燃性ガス等が漏れまたは滞留し、電気設備が点火源となるおそれがある場所、第177条は危険物を製造・貯蔵する場所などを扱います。危険物がある場所と、爆発性雰囲気が形成される危険場所は同義ではありません。
| 区分 | 何の危険を見るか | 設備選定の要点 |
|---|---|---|
| ガス:ゾーン0・1・2 | 爆発性ガス雰囲気が存在する頻度・時間 | ゾーン、ガスグループ、温度等級、EPL、合格証・使用条件を照合 |
| 粉じん:ゾーン20・21・22 | 爆発性粉じん雰囲気と堆積層 | 粉じんの導電性、侵入保護、最高表面温度、清掃条件も確認 |
| 危険物等の場所 | 製造・貯蔵する燃えやすい物質への着火 | 第175・176条に該当する場所を除外したうえで第177条を確認 |
ガス危険場所の「ゾーン0・1・2」と、粉じん危険場所の「ゾーン20・21・22」は別体系です。また、労働安全衛生総合研究所の指針は、従来の特別危険箇所・第1類危険箇所・第2類危険箇所と国際整合用語の対応を示しています。名称を置き換えるだけでなく、設備ごとのリスク評価と区画図を基に選定します。
防爆構造は記号だけで選ばない
代表的な防爆構造には、耐圧防爆構造d、内圧防爆構造の記号はp、油入防爆構造o、安全増防爆構造e、本質安全防爆構造iなどがあります。現行の国際整合防爆指針には、樹脂充塡m、非点火n、粉じん用の容器tなども示されているため、「防爆は5種類だけ」と限定しません。
- 耐圧防爆d:容器内部で爆発が起きても、容器が圧力に耐え、接合面などから外部の爆発性雰囲気へ火炎が伝わらないようにする。
- 内圧防爆p:保護ガスによる加圧などで、容器内部に爆発性雰囲気が形成されるのを防ぐ。
- 安全増防爆e:通常運転でアークや火花を生じない機器に、温度上昇や火花の発生を防ぐ安全度を増す。
- 本質安全防爆i:正常時と規定の故障時にも、回路の電気・熱エネルギーを点火できない水準に制限する。
実務では、構造記号だけで可否を決めません。危険場所区分に加え、対象ガス・粉じんのグループ、温度等級または最高表面温度、機器保護レベル、周囲温度、型式検定合格証の使用条件まで照合します。厚生労働省も、爆発危険濃度に達するおそれのある場所では、規格に適合し型式検定を受けた防爆電気機械器具が必要と案内しています。
「5山」「封止」は適用条件と一緒に覚える
電技解釈第175・176条には、粉じんや可燃性ガス等の条件に応じて、金属管を5山以上ねじ合わせる方法または同等以上の効力がある方法で堅ろうに接続する規定があります。また、配線を収める管やダクトを通じて、ガス等が危険場所以外へ漏れないように施設します。
ただし、「すべての防爆機器から一定距離に同じ封止器具を置く」と単純化してはいけません。採用する法令・規格ルート、機器の防爆構造、ケーブルグランドや引込方式、区画境界、メーカーの認証条件と施工要領を確認します。記事中の一般説明を、個別設備の施工指示として使用しないでください。
試験問題を解く5ステップ
- 電圧を確認:低圧、高圧、特別高圧を分ける。
- 場所を確認:屋内、架空、地中、粉じん、可燃性ガス等のどれか。
- 電線の種類を確認:絶縁電線か、ケーブルか、移動電線か。
- 工事方法を確認:がいし引き、ケーブル、金属管、直接埋設などの適用条件を見る。
- 保護と接地を確認:機械的保護、侵入防止、防爆機器、接地種別を該当条文で決める。
この順なら、「高圧だからA種」「危険場所だから厚鋼電線管だけ」といった早合点を避けられます。高圧受電設備内の機器配置は高圧受電設備の仕組み、施工後の試験は高圧受電設備の検査方法とつなげて学ぶと整理しやすくなります。
理解度チェック
問1:高圧屋内配線の電線選び
屋内の機械室に高圧配線を新設します。乾燥した展開場所ではない区間の施工として、適切な考え方はどれですか。
ア.高圧絶縁電線を合成樹脂管へ収める
イ.高圧絶縁電線を金属管へ収める
ウ.高圧ケーブルを用いてケーブル工事とする
エ.裸電線を金属ダクトへ収める
問2:接地の条件
高圧架空ケーブルによる引込線の点検表に、「高圧なので、ちょう架用線とケーブル被覆の金属体はA種接地工事」と記載されていました。学科試験の基準として正しい修正はどれですか。
ア.B種へ直す イ.C種へ直す
ウ.D種へ直す エ.接地不要へ直す
問3:防爆表示の読み方
保護ガスで容器内を加圧し、爆発性雰囲気の形成を防ぐ防爆構造を示す基本記号はどれですか。
ア.d イ.p ウ.e エ.i
絶縁抵抗から水トリー・部分放電の診断へ進む
高圧ケーブルの劣化診断|絶縁抵抗・水トリー・部分放電で、メガーの限界、停電・活線診断、シース・端末、精密診断と更新判断までを整理できます。
10,350Vの根拠と試験容量を一つの計画にする
高圧絶縁耐力試験の試験電圧・容量計算で、第15条の電路と機器の区分、交流10,350V・直流20,700V、充電電流2πfCV、監視・放電・記録を整理できます。
6.6kVケーブルの候補サイズを計算で絞り込む
高圧ケーブルのサイズ選定で、負荷電流、布設別許容電流、R・Xによる電圧降下、短絡I²t、遮へい、端末・管路条件を一続きで確認できます。
公式資料・一次情報
- 電気技術者試験センター:第一種学科試験例題「電気工事の施工方法」
- 電気技術者試験センター:第一種電気工事士 学科試験のポイント
- 経済産業省:電気設備の技術基準の解釈(現行版)
- フジクラ・ダイヤケーブル:6600V CV・CVT 製品資料
- SWCC:電力用CVケーブルの曲げ半径倍率
- 労働安全衛生総合研究所:ユーザーのための工場防爆設備ガイド
- 労働安全衛生総合研究所:工場電気設備防爆指針 第1編 総則
- 厚生労働省:防爆電気機械器具と型式検定
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