結論:機器名を一列に暗記せず、5つの線を分けて読む
高圧受電設備の単線結線図は、①受電点、②主回路、③負荷・対地分岐、④計量二次回路、⑤保護信号の順に色分けする感覚で追うと読めます。PF・S形とCB形は主保護方式の違いです。PAS、LA、VCT、CT、OCRなどを、すべての設備に共通する一つの固定順として覚えないことが重要です。
第一種電気工事士の学科試験では、配線図の範囲にシーケンスの展開接続図と高圧受電設備の単線結線図が含まれます。公式例題では、DS・遮断器・計器用変成器・OCR・変圧器・LAなどの仕様や結線を読み、機器の名称・用途・結線、設置工事を判断します。
この記事は試験学習用です
実設備の停電範囲、開閉順序、保護範囲は、単線結線図だけでは決められません。保安規程、操作票、インターロック、展開接続図、機器仕様、電気主任技術者・作業責任者の指示を確認します。高圧設備を記事の説明だけで操作しないでください。
単線結線図の1本線は何を表すか
単線結線図(single-line diagram)は、三相回路などの複数導体を代表する1本線と図記号で、設備全体の電気的な接続を簡潔に示す図です。受電点から負荷までの系統、開閉・保護・計測・変圧の関係を把握しやすく、設計、積算、施工、検査、保守の基礎資料になります。
ただし、図の線1本を「実際のケーブル1心」とは読みません。相数・線数、ケーブル種類、端子番号、線番、制御配線、接地線の太さなどは、傍記、凡例、ケーブル表、展開接続図、仕様書で補います。試験センターは原則としてJIS C 0617シリーズとJIS C 0303の図記号を使用し、JISにない記号等は問題文中で説明するとしています。最初に凡例と注記を読むのが正解です。
図1は、CB形の学習用単線結線図を、この記事で使う5つの層に分けた自作図です。まず太い主回路を最初に一周し、枝線は2巡目以降で拾います。右側の1〜5を上から順にたどると、同じ機器を何度も行き来せずに読めます。

VCT→Whは取引用計量、VT・CT→V・Aは計測として分けます。さらに、CT→OCR→VCBは検出・判定・遮断の保護信号です。LA→接地とSC・SR分岐は主回路から分けて読むことで、LAを直列機器と誤認しにくくなります。図の実線・破線・色分けは学習用であり、実設備の標準配線色を示すものではありません。
| 図面の層 | 追うもの | 代表例 |
|---|---|---|
| 受電点 | 電源側、引込方式、責任分界・財産分界 | 架空引込のPAS、地中引込のUGS等 |
| 主回路 | 電力が受電から変圧器・負荷へ流れる経路 | DS、LBS・PF、VCB、母線、T |
| 分岐 | 主回路から分かれる負荷・対地接続 | 変圧器、SC・SR、LAと接地 |
| 計量・計測 | 一次量を変成して計器へ渡す二次回路 | VT・CT、VCT→Wh、A・V・W |
| 保護信号 | 検出→判定→遮断・警報の動作連鎖 | CT→OCR→VCB、ZCT・ZPD→DGR→開閉器 |
5ステップで単線結線図を読む
1 受電点と電源の種類を確認する
図の上流側から、電力会社の配電線、引込線、区分開閉器、責任分界点を確認します。架空引込ではPAS(柱上気中負荷開閉器)が責任分界点付近に設けられる例が多く、地中引込ではUGS(地中線用高圧交流負荷開閉器)等が使われます。ただし、PASやUGSの有無・所有・分界位置は契約、供給方式、地域の電力会社との協議で異なります。
PASは区分開閉器として負荷電流を開閉できます。地絡保護ではZCTが零相電流を検出し、SOG制御装置のGR・DGR機能が事故を判断してPASを開放する構成があります。「PASがあるから必ず同じ保護構成」と決めず、ZCT、ZPD、継電器、引外し信号を図で追います。
2 主回路を受電側から負荷側へ追う
まず枝線をいったん無視し、電力が通る太い道だけを追います。主回路上のDS(断路器)は、回路を目視できる形で切り離すための機器で、通常の負荷電流や短絡電流を遮断する機器ではありません。VCB(真空遮断器)は、定格範囲内の負荷電流・事故電流を遮断できます。LBS(高圧交流負荷開閉器)は負荷電流を開閉できますが、短絡保護は組み合わせるPF(高圧限流ヒューズ)が担います。
したがって、DSとVCBが直列にある設備を開路する基本は、VCBで電流を遮断してからDSで切り離す順です。閉路は一般にDSを先に閉じ、VCBを後に閉じます。ただし、実操作は電源状態、接地開閉器、インターロック、別電源を含む設備固有の操作票に従います。
3 主回路から分かれる枝を拾う
LA(避雷器)は、受電点から変圧器までを負荷電流が順番に通過する直列機器ではありません。主回路から対地へ分岐し、雷などによる異常過電圧を制限して、サージ電流を大地へ流します。図ではLAの下に接地記号があることまで一組で確認します。
変圧器、高圧進相コンデンサSCと直列リアクトルSRなども、母線から分かれる負荷分岐として描かれます。複数の変圧器がある場合は、分岐ごとの開閉・保護機器を見ます。PAS・DS・LA・VCB・変圧器を一列の文字列として暗記すると、LAを直列機器と誤認し、母線分岐を読めなくなります。
4 計量と計測の二次回路を分ける
VT(計器用変圧器)は高電圧を、CT(変流器)は大電流を、計器や継電器で扱える値へ変成します。代表的な二次定格はVTが110V、CTが5Aですが、すべての機器に固定された値ではありません。図の変成比・定格表示を優先します。
VCT(電力需給用計器用変成器)はVTとCTを一体化した計量用機器で、二次回路をWh(電力量計)へ接続します。試験センターの三相3線式の公式例題では、VCTとWhの間の心線数は結線方式により6心または7心です。単線図の主回路が1本でも、実際の計量二次回路が1本という意味ではありません。
5 保護は「検出→判定→遮断」で追う
CT:相電流
ZCT:零相電流
ZPD:零相電圧
OCR:過電流
GR:地絡
DGR:地絡の方向も判定
VCB、PAS・UGS等へ
引外し信号を送る
CB形の過電流保護なら、CTが電流を変成し、OCRが整定値・時限特性と照合し、VCBへ引外し指令を出します。地絡保護ではZCTの零相電流、DGRではさらにZPD等による零相電圧と位相関係を使います。CTやZCTが事故電流を直接遮断するわけではありません。
PF・S形とCB形の違い
PF・S形とCB形は、主回路にすべての機器を直列に並べた二段階の方式ではなく、受電設備の主遮断・過電流保護方式の区分です。JIS C 4620のキュービクル式高圧受電設備は、公称電圧6.6kV、系統短絡容量12.5kA以下、設備容量4,000kVA以下を対象とし、その範囲でPF・S形は300kVA以下、CB形は4,000kVA以下とされています。
| 比較 | PF・S形 | CB形 |
|---|---|---|
| 主方式 | PF付きLBS | 遮断器CB(主にVCB)と保護継電器 |
| 過電流時 | PFが短絡電流等を限流遮断 | CT→OCRの判定でCBを引き外す |
| JIS C 4620の容量 | 設備容量300kVA以下 | 設備容量4,000kVA以下 |
| 図の判定軸 | 主遮断装置がPF付きLBSか | 主遮断器とOCR・CTの動作連鎖があるか |
この容量はJIS C 4620が対象とするキュービクルの区分です。「世の中のCB形設備に容量制限が一切ない」という意味ではありません。また、CB形でも変圧器分岐にPF付き機器を使うことがあり、PFが図にあるだけで設備全体をPF・S形とは判定できません。反対に、PF・S形にも地絡・停電監視等の継電器があり得ます。主遮断装置と主過電流保護を見て判定します。
PF・S形の概念図
母線 ├→ SC・SR分岐
VCT ─二次→ Wh
機器の有無・位置は一例です。方式の判定点は主保護の「PF付きLBS」です。
CB形の概念図
母線 ├→ LA → 接地
母線 ├→ 変圧器・SC分岐
CTとVCB等の正確な位置・極性・保護範囲は、対象図面で確認します。
図記号・略号は「能力」と「接続先」で覚える
| 略号・名称 | 図で確認する役割 | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| PAS・UGS 区分用負荷開閉器 |
引込方式、責任分界付近、地絡保護との連動 | 全設備にPASがあるとは限らない |
| DS 断路器 |
無負荷状態で回路を切り離す | 負荷・短絡電流の遮断器ではない |
| LBS・PF 負荷開閉器・限流ヒューズ |
LBSが負荷開閉、PFが短絡保護 | LBS単体へ短絡遮断を任せない |
| VCB 真空遮断器 |
負荷・事故電流を遮断し、継電器と連動 | 事故を検出・判定するのはCT・OCR等 |
| VT・CT・VCT 計器用変成器 |
電圧・電流を計器・継電器へ渡す | VCTは取引用計量、VT+CTの一体機器 |
| ZCT・ZPD 零相検出 |
地絡電流・零相電圧を継電器へ入力 | それ自体が主回路を遮断する機器ではない |
| LA 避雷器 |
異常過電圧を制限する対地分岐 | 負荷電流が流れる直列機器ではない |
| SC・SR コンデンサ・リアクトル |
力率改善、高調波・突入電流への対策 | SRはSC回路に直列、設備主回路全体とは別 |
記号の形は公式例題と問題文の凡例で確認してください。名称だけでなく、主回路か二次回路か、何を入力してどこへ出力するか、どの事故をどの機器で切るかを説明できれば、未知の図にも対応できます。開閉器の能力差はVCB・DS・LBS・PASの違い、継電器はOCR・GR・DGRの種類と役割で深掘りできます。
CT・VTの安全ルールと極性
CTの二次回路は、一次電流が流れている状態で開放すると高電圧が発生し、絶縁破壊や焼損の危険があります。計器やOCRを外すときは、設備のCTT・試験プラグとメーカー手順に従い、必要な二次短絡を確保してから切り替えます。「通常運転中もCT二次を直接短絡する」という意味ではなく、計器・継電器等の負担を接続した閉回路で使用します。
反対にVT二次側は短絡してはいけません。VTは電圧源に近く、短絡すると過大電流が流れます。CT二次開放禁止、VT二次短絡禁止を対にして覚えます。
CTの極性表示は、一次側Kを電源側、Lを負荷側とし、二次側k・lを対応させるのが基本です。極性は電力計測や方向要素をもつ継電器の判断に関わります。単にCTが描かれているかだけでなく、K-L、k-l、二次接地、試験端子、接続先を確認します。
接地記号は「どの部分を、何のために」を読む
高圧機器の金属製外箱、LA、VT・CTの二次回路、変圧器の低圧側電路など、接地する対象と目的は異なります。図中のEA、EB、EC、ED等の傍記、共用・単独の区別、接地線・接地極の表を確認します。
B種接地は、高圧または特別高圧と低圧を結合する変圧器で混触時の低圧側電位上昇を抑えるものです。問題の変圧器結線に応じた低圧側の一端・中性点等に施されます。「すべての変圧器には必ず図上の中性点がある」とは限りません。LA用接地も、接地記号と対象線を見ずに外箱接地と混同しないようにします。
学科問題を解く6ステップ
- 凡例・注記:独自記号、電圧、容量、相数、線数、端子・心線数を先に読む
- 受電点:電源側、引込方式、区分開閉器、分界点を確認する
- 主回路:枝を無視して受電から母線・変圧器・負荷まで追う
- 分岐:LA、変圧器、SC・SRなどを直列経路と分ける
- 二次回路:VCT→Wh、CT→A・OCR、VT→Vなどを追う
- 保護連鎖:事故量、検出器、継電器、遮断機器、保護範囲を一組にする
図面から読み取れない定格、整定値、端子結線、インターロック、施工条件を推測で埋めないことも採点力です。実務で保護範囲と停電範囲まで追う場合は、単線結線図の読み方・実務編へ進んでください。
理解度チェック
問1:PF・S形とCB形の判定
CB形の受電設備で、変圧器分岐にPF付き機器が描かれています。設備全体の方式を判定するとき、最も適切な見方はどれですか。
ア.PFが1個でもあれば必ずPF・S形
イ.PFの有無だけでなく、主遮断装置と主過電流保護を見る
ウ.VCBがあっても必ずPF・S形
エ.設備容量だけで図を見ずに決める
問2:VCTと電力量計
公式例題の三相3線式高圧受電設備で、VCTとWhの間に必要な心線数の組合せはどれですか。
ア.1または2心 イ.3または4心
ウ.6または7心 エ.9または10心
問3:CB形の過電流保護
CB形で短絡・過電流を保護するとき、基本的な動作の流れはどれですか。
ア.VCBが検出→CTが判定→OCRが遮断
イ.VTが検出→Whが判定→DSが遮断
ウ.CTが変成→OCRが判定→VCBが遮断
エ.LAが検出→PFが判定→CTが遮断
PF・S形とCB形を事故時の動きまで比較する
PF・S形とCB形の違い|300kVA・保護方式・単線結線図を比較で、PF・LBS・CT・OCR・VCBの分担、短絡・過負荷・地絡、復旧・増設まで確認できます。
CT・VTの先にあるAS・VS・計器回路を読む
CT・VT二次回路の結線図|AS・VS・電流計・電圧計の読み方で、三相3線式2CT・V結線、極性、負担VA、試験端子まで一続きで確認できます。
LAの残留電圧・接地・点検・更新を深掘り
高圧避雷器(LA)の役割で、酸化亜鉛素子の動作、残留電圧と絶縁協調、単線結線図上の分岐、A種接地、日常・定期・臨時点検、15年の更新目安を整理できます。
VCTから請求用の一次電力量までを深掘り
VCT・MOFと取引用電力量計で、三相3線式の二要素計量、変成比と乗率、検定有効期間、封印、所有区分、更新協議、デマンド値との不一致を整理できます。
降圧後の100V・200V回路を端子から読む
変圧器二次側の結線図で、単相3線式105/210V、三相3線式、V結線、中性線電流、B種接地、二次側遮断器を確認できます。
番号・略号から保護の信号経路を読む
保護継電器の機器番号・英語略号一覧で、27・50・51・52・59・67・81・86・87と、OCR・DGR・UVR、接尾辞、図面凡例の読み方を確認できます。
公式資料・一次情報
- 電気技術者試験センター:第一種電気工事士 学科試験のポイント
- 電気技術者試験センター:配線図の公式例題(単線結線図・展開接続図)
- 三菱電機:JIS C 4620とキュービクルの適用範囲
- 三菱電機:CB形とPF・S形の区分
- 三菱電機:PAS・VCT・DS等の高圧機器
- 三菱電機:VT・CT・VCTの役割と二次定格
- オムロン:過電流継電器と受電設備の保護協調
- 三菱電機:計器用変成器の取扱いとCT二次開放禁止
- 日本配電制御システム工業会:配電盤・制御盤の概要
次は、元資料から図を組み立てる
記号と読み方を確認したら、高圧受電設備の単線結線図の書き方へ進みます。受電条件、主回路、計量、保護、接地、竣工照合まで8ステップで整理しています。
計測と保護の入力を、4つに分ける
CT・VT・VCT・ZCTの違いで、相電流、回路電圧、取引用計量、零相電流の役割と、CT二次開放・VT二次短絡を避ける理由を確認できます。
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単線結線図の読み方・実務編:保護範囲と停電範囲を追う
キュービクルの点検項目:図面と現物を点検へつなぐ
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広告・検証方針
この記事内に通信講座、工具、測定器、開閉器のアフィリエイトリンクは掲載していません。2026年7月31日に試験センターの現行科目・配線図公式例題、三菱電機のJIS C 4620・高圧機器・計器用変成器資料、オムロンの保護継電器資料へ照合しました。旧稿の固定的な機器順、CB方式の適用範囲を示さない説明、PASを全設備共通とする説明、PFの有無だけで方式を決める説明、CT二次の扱いを訂正しています。2026年8月26日に図1を独自作成して公開しました。図1と確認問題は当サイトのオリジナルです。
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