この記事でわかること
- 竣工検査と定期検査の種類と実施タイミング
- 絶縁耐力試験(耐圧試験)の電圧と印加時間
- 保護継電器(OCR等)の試験方法と判定基準
- 接地抵抗の測定方法と規定値
- 竣工検査の手順フローと安全上の注意
結論から言います
高圧受電設備の検査は、設備の安全を確認するために法令で義務付けられている重要な作業です。竣工検査(新設時)と定期検査(年次点検)があり、絶縁耐力試験・保護継電器試験・接地抵抗測定などを行います。
第一種電気工事士の学科試験では毎回2〜3問出題されます。第二種で学んだ低圧の絶縁抵抗測定に加えて、高圧の絶縁耐力試験(耐圧試験)や保護継電器の試験が加わります。
検査の種類と実施タイミング
| 検査 | タイミング | 目的 |
|---|---|---|
| 竣工検査 | 新設・増設工事の完了後 | 工事が適切に行われたか確認 |
| 定期検査(年次点検) | 1年に1回以上 | 設備の劣化・異常を早期発見 |
| 日常巡視(月次点検) | 月1回程度 | 外観・異音・異臭の確認(停電不要) |
| 臨時検査 | 事故発生後・異常発見時 | 原因究明と安全確認 |
絶縁耐力試験(耐圧試験)
高圧機器や高圧ケーブルの絶縁性能が十分かを確認する試験です。通常の使用電圧より高い電圧を一定時間加えて、絶縁が破壊されないことを確認します。
試験電圧と印加時間
| 対象 | 試験電圧 | 印加時間 |
|---|---|---|
| 最大使用電圧7,000V以下の機器 | 最大使用電圧の1.5倍 | 10分間連続 |
| 最大使用電圧7,000Vを超える機器 | 最大使用電圧の1.25倍 | 10分間連続 |
6,600V受電設備の場合:
・最大使用電圧 = 6,600 × 1.15/1.1 ≒ 6,900V
・7,000V以下なので試験電圧 = 6,900 × 1.5 = 10,350V
つまり、約10,350Vの交流電圧を10分間加えて、絶縁が破壊されなければ合格です。
試験の方法
試験用変圧器(昇圧器)を使って試験電圧を作り出し、対象機器に印加します。
・試験には高圧の危険が伴うため、安全柵を設置し、「充電中」の表示を行う
・試験終了後は、必ず残留電荷の放電を行ってから機器に触れる
・ケーブルのような静電容量の大きい対象は、放電に時間がかかるので特に注意
・試験中は接地された金属部分に触れない
・試験電圧は徐々に上げる(急激に印加しない)
直流耐圧試験
交流耐圧試験の代わりに、直流で試験を行うこともあります。直流耐圧試験の場合、試験電圧は交流の場合の2倍です。
直流耐圧試験のメリット:
- 試験用電源が小型・軽量で済む(ケーブルの静電容量への充電電流が不要)
- 漏れ電流の測定が可能(絶縁状態の判定に役立つ)
絶縁抵抗測定
絶縁抵抗計(メガー)を使って、電路と大地間、または電路相互間の絶縁抵抗を測定します。
高圧機器の絶縁抵抗測定
| 対象 | 使用するメガーの電圧 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 高圧回路 | 1,000Vメガー | 機器ごとの管理基準値以上 |
| 低圧回路(300V超) | 500Vメガー | 0.4MΩ以上 |
| 低圧回路(300V以下・対地150V超) | 250Vメガー | 0.2MΩ以上 |
| 低圧回路(300V以下・対地150V以下) | 125Vメガー | 0.1MΩ以上 |
低圧の絶縁抵抗基準は第二種で学んだ内容と同じです。第一種では、高圧回路に1,000Vメガーを使う点が加わります。
接地抵抗測定
接地(アース)が適切な抵抗値になっているか確認する測定です。
| 接地種別 | 抵抗値 | 受電設備での適用 |
|---|---|---|
| A種接地 | 10Ω以下 | 高圧機器の外箱、避雷器 |
| B種接地 | 150/Ig Ω以下 | 変圧器の二次側中性点 |
| C種接地 | 10Ω以下 | 300V超の低圧機器の外箱 |
| D種接地 | 100Ω以下 | 300V以下の低圧機器の外箱 |
接地抵抗は接地抵抗計を使って測定します。補助接地極を2本打ち込み、被測定接地極から10m間隔で直線上に配置します(電位降下法)。
保護継電器試験
保護継電器(リレー)が正常に動作するかを確認する試験です。これは第一種特有のテーマで、第二種では出題されません。
主な保護継電器の試験項目
| 継電器 | 試験内容 |
|---|---|
| 過電流継電器(OCR) | 動作電流と動作時間を確認。CT二次側に試験電流を流す |
| 地絡方向継電器(DGR) | 零相電流と零相電圧を加えて、方向判定と動作感度を確認 |
| 地絡継電器(GR) | 零相電流を加えて動作電流を確認 |
| 不足電圧継電器(UVR) | 電圧を徐々に下げて動作電圧を確認 |
| 過電圧継電器(OVR) | 電圧を徐々に上げて動作電圧を確認 |
OCR(過電流継電器)の試験方法
OCRの試験では、継電器試験装置を使って試験電流を流し、以下を確認します。
- 最小動作電流:継電器が動作する最小の電流値(タップ値の何%で動作するか)
- 動作時間:設定した電流倍数での動作時間が、動作時間特性曲線(タイムレバーの設定値)と一致するか
- 瞬時要素:瞬時動作の設定値で正しく動作するか
・タップ:動作電流値を設定する(CT二次側の電流値で設定)
・レバー(タイムレバー):動作時間を設定する(数値が大きいほど遅い)
例:CTの変流比が200/5Aで、OCRのタップが4Aに設定されている場合、一次側では200 × (4/5) = 160Aで動作します。
その他の試験・検査
変圧器の試験
| 試験 | 目的 |
|---|---|
| 絶縁油の試験 | 絶縁油の絶縁破壊電圧、酸価を測定(油入変圧器の場合) |
| 巻線抵抗測定 | 巻線の接触不良や断線がないか確認 |
| 変圧比測定 | 一次・二次の巻数比(電圧比)が正しいか確認 |
遮断器の試験
- 動作試験:開閉操作が正常に行われるか
- 動作時間測定:遮断にかかる時間が規定値以内か
- 接触抵抗測定:接点の接触抵抗が適正か(接触不良の検出)
高圧検電器による充電確認
作業前に、回路が充電されていない(停電している)ことを確認するために、高圧検電器を使用します。これは作業安全の基本中の基本です。
検査数値 早見表
試験で問われる数値を1枚にまとめました。耐圧試験の倍率とメガーの電圧は最頻出です。
7,000V以下:最大使用電圧 × 1.5倍(AC)
7,000V超 :最大使用電圧 × 1.25倍(AC)
直流の場合:交流試験電圧の 2倍
印加時間 :10分間連続
6,600V系 :最大使用電圧≒6,900V → 試験電圧≒10,350V
【メガー電圧と絶縁抵抗基準】
高圧回路 → 1,000Vメガー
300V超低圧 → 500Vメガー → 0.4MΩ以上
〜300V(対地150V超) → 250Vメガー → 0.2MΩ以上
〜300V(対地150V以下) → 125Vメガー → 0.1MΩ以上
【接地抵抗】
A種:10Ω以下(高圧機器外箱・避雷器)
B種:150/Ig Ω以下(変圧器二次側)
C種:10Ω以下(300V超の低圧機器)
D種:100Ω以下(300V以下の低圧機器)
竣工検査の手順フロー
竣工検査は「安全な項目から順に、段階的に電圧を上げる」のが原則です。
配線・機器の取付状態、損傷の有無を目視確認(無電圧)
A〜D種の各接地極が規定値以下であることを確認(無電圧)
メガーで各回路の絶縁抵抗を測定(無電圧・低圧)
試験用変圧器で高電圧を10分間印加。残留電荷の放電を忘れずに!
OCR・DGR等の動作電流・動作時間を継電器試験装置で確認
遮断器の連動動作を確認し、問題なければ送電開始
よくある試験の引っかけ 3選
引っかけ1:耐圧試験の倍率を逆に覚える
7,000V以下は1.5倍、7,000Vを超えると1.25倍。「低い方が倍率が高い」のがポイントです。覚え方:「7千以下はいちご(1.5)」。
引っかけ2:直流耐圧を「交流の半分」と間違える
直流耐圧の試験電圧は交流の2倍です。「直流は小さい電源で済む」→「電圧も低い」と思い込むと間違えます。電圧は2倍、電源が小型なのは充電電流が不要だからです。
引っかけ3:メガーの電圧を回路電圧と混同する
高圧回路でも、使うメガーは1,000V(6,600Vではない)。低圧300V以下でも125Vか250V(300Vではない)。メガーの電圧は回路電圧とは別の規格値です。
まとめ
✔ 直流耐圧の試験電圧は交流の2倍
✔ 高圧回路の絶縁抵抗測定には1,000Vメガーを使用
✔ OCR試験:動作電流と動作時間を継電器試験装置で確認
✔ DGR試験:方向判定と動作感度を確認
✔ 耐圧試験後は必ず残留電荷を放電してから機器に触れる
✔ A種接地10Ω以下、B種接地150/IgΩ以下
確認問題
【問題1】 6,600Vで受電する自家用電気工作物の竣工検査で、高圧ケーブルの絶縁耐力試験を行う。交流で試験を行う場合の試験電圧として、最も適切なものはどれか。
イ.6,600V
ロ.6,900V
ハ.9,900V
ニ.10,350V
【問題2】 過電流継電器(OCR)の試験において、動作特性を確認するために調整する要素の組み合わせとして、正しいものはどれか。
イ.電圧タップとタイムレバー
ロ.電流タップとタイムレバー
ハ.電流タップと感度調整
ニ.電圧タップと方向判定
【問題3】 高圧回路の絶縁抵抗を測定するために使用する絶縁抵抗計(メガー)の定格測定電圧として、正しいものはどれか。
イ.125V
ロ.250V
ハ.500V
ニ.1,000V
【問題4】 高圧ケーブルの絶縁耐力試験を直流で行う場合の試験電圧は、交流で行う場合と比べてどのような関係にあるか。
イ.交流の0.5倍
ロ.交流と同じ
ハ.交流の1.5倍
ニ.交流の2倍
第二種で学んだ低圧の検査・測定は「絶縁抵抗測定・接地抵抗測定をわかりやすく解説|第二種電気工事士」で復習できます。高圧受電設備の構成機器は「高圧受電設備の仕組みと構成機器|キュービクルの単線結線図を読もう」、単線結線図の図記号は「高圧受電設備の単線結線図と図記号|PF・S形とCB形の読み方」を参照してください。
第一種の学科対策に
検査方法は数値の暗記が勝負です。テキストで全体像を把握し、問題集で数値を定着させましょう。
独学に不安がある方は、通信講座でプロの解説を受けるのも効果的です。
- JTEX 電気工事士講座
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