発電・送電・変電

発電・送電・変電の基礎知識|電力系統の全体像をわかりやすく解説|第一種電気工事士

この記事でわかること

  • 電力系統「発電→送電→変電→配電」の全体像
  • 水力・火力・原子力・再エネの各発電方式の特徴
  • なぜ高電圧で送電するのか(電力損失の計算)
  • 変電所の種類と配電方式の違い
  • 試験で問われる引っかけポイント3選

結論から言います

私たちが使っている電気は、発電所で作られ、送電線で運ばれ、変電所で電圧を下げて届けられています。この「発電→送電→変電→配電」の流れを電力系統と呼びます。

第二種電気工事士では「使う側」の低圧配線を学びましたが、第一種では「届ける側」の仕組みまで問われます。学科試験では毎回1〜2問出題される分野です。全体像をしっかり掴んでおきましょう。

電力系統の全体像

発電所から家庭やビルに電気が届くまでの流れを見てみましょう。

電力系統の流れ
発電所(数千V〜2万V程度で発電)
昇圧変電所で電圧を上げる
超高圧送電線(275,000V〜500,000V)
一次変電所
一次送電線(154,000V)
二次変電所
二次送電線(66,000V〜77,000V)
配電用変電所
配電線(6,600V)
柱上変圧器 or 高圧受電設備
需要家(100V / 200V)

なぜ高い電圧で送るのか?

これは水道に例えるとわかりやすいです。大量の水を遠くまで運ぶとき、太いホースを使う代わりに圧力を上げれば細いホースでも同じ量を送れます。電気も同じで、電圧を上げれば電流が小さくなり、送電線の電力損失を減らせるのです。

送電線の電力損失は P = I²R で計算できます。電圧を10倍にすれば電流は1/10になり、損失は1/100に減ります。だから発電所から遠くに送るほど高い電圧を使うわけです。

発電方式の種類

水力発電

水の位置エネルギーを利用して水車を回し、発電機で電気を作る方式です。

方式 特徴
流れ込み式(自流式) 河川の水をそのまま利用。出力は水量に依存(ベース供給向き)
調整池式 小さなダムで水量を調整。日中のピーク需要に対応
貯水池式 大きなダムに水を貯め、必要なときに放水して発電
揚水式 夜間の余った電力で水を上のダムにくみ上げ、昼間に発電(巨大な蓄電池)

水力発電の出力の公式:

P = 9.8 × Q × H × η [kW]

P:出力[kW]、Q:流量[m³/s]、H:有効落差[m]、η:効率

この公式は試験でよく出ます。9.8は重力加速度(≒ 9.8m/s²)です。「水の量 × 落差 × 効率」で発電量が決まるとイメージしてください。

火力発電

燃料を燃やして水を蒸気にし、蒸気タービンを回して発電する方式です。日本の発電量の約7割を占めています。

方式 仕組みと特徴
汽力発電 ボイラ→蒸気タービン→発電機。石炭・石油・LNGを使用。最も一般的
ガスタービン発電 燃焼ガスでタービンを直接回す。起動が速くピーク対応向き
コンバインドサイクル ガスタービン+蒸気タービンの組み合わせ。熱効率が高い(約60%)
ディーゼル発電 ディーゼルエンジンで発電。離島や非常用に使用

火力発電の熱サイクルは、汽力発電ではランキンサイクルが基本です。

汽力発電の4工程(ランキンサイクル)
① ボイラで水を加熱 → 高温・高圧の蒸気に

② 蒸気タービンで膨張 → タービンを回す(発電)

③ 復水器(コンデンサ)で冷却 → 蒸気を水に戻す

④ 給水ポンプで再びボイラへ送る

(①に戻る)

熱効率を上げる方法として、以下が出題されます。

  • 再熱サイクル:タービンの途中で蒸気をボイラに戻して再加熱する
  • 再生サイクル:タービンから蒸気の一部を抜き出して給水の予熱に使う
  • 再熱再生サイクル:上記2つの組み合わせ(実際の発電所で採用)

原子力発電

ウラン235の核分裂で発生する熱エネルギーを使い、蒸気タービンを回す方式です。基本的な仕組みは火力発電の汽力発電と同じですが、ボイラの代わりに原子炉を使います。

日本で主に使われている原子炉は軽水炉で、次の2種類があります。

種類 特徴
PWR(加圧水型) 一次冷却水を高圧で加熱し、蒸気発生器で二次冷却水を蒸気にする(間接的)
BWR(沸騰水型) 原子炉内で直接水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回す(直接的)

太陽光発電・風力発電

再生可能エネルギーによる発電方式として、近年急速に導入が進んでいます。

太陽光発電は、太陽電池(シリコン半導体)に光が当たると直接電気が発生する光電効果を利用しています。発生するのは直流なので、パワーコンディショナ(PCS)で交流に変換して系統に接続します。

風力発電は、風で風車を回して発電する方式です。出力は風速の3乗に比例するため、安定した風が吹く場所に設置する必要があります。

送電方式

発電所から変電所まで電気を送る方式には、大きく2つあります。

交流送電
現在の主流
変圧器で容易に電圧変換
三相3線式が基本
送電損失はI²Rで計算
誘導障害が発生しうる
直流送電
海底ケーブルや長距離向き
充電電流がない
安定度の問題がない
周波数変換にも使用
変換装置が必要

送電線路の構成

送電線路(架空送電線)は、次の部材で構成されています。

部材 役割
電線(導体) 電気を流す。ACSR(鋼心アルミより線)が主流
架空地線 鉄塔の最上部に張る接地線。雷を受け止めて送電線を守る
がいし 電線と鉄塔を絶縁しながら支持する。懸垂がいし・長幹がいし等
鉄塔 電線を高い位置で支持する構造物

ACSR(鋼心アルミより線)は、中心に強度のある鋼線、周囲に導電性のよいアルミ線を配置した電線です。「軽くて強い」ため、架空送電線の標準となっています。

送電線の障害と対策

障害 対策
雷害(らいがい) 架空地線、避雷器(LA)、アークホーン
塩害(えんがい) 耐塩がいし、がいしの洗浄
着雪害 難着雪リング、相間スペーサ
風害 ダンパ(振動防止)、アーマロッド
コロナ放電 多導体方式(電線を複数束ねる)、電線の太径化

コロナ放電は、電線の表面電界が空気の絶縁耐力を超えたときに発生する放電現象です。「シュー」という音とともに電力損失が生じます。電線を太くしたり、複数本の電線を束ねる多導体方式で表面電界を下げることで防止します。

変電所の種類と役割

変電所は、電圧を変換(変圧)して次の区間に送る中継ステーションです。

変電所 電圧変換 送り先
昇圧変電所 発電電圧 → 275〜500kV 超高圧送電線
一次変電所 275〜500kV → 154kV 一次送電線
二次変電所 154kV → 66〜77kV 二次送電線・大工場
配電用変電所 66〜77kV → 6.6kV 配電線(高圧需要家・柱上TR)

配電方式

配電用変電所から需要家に電力を届ける方式には、次のようなものがあります。

方式 特徴
放射状方式 変電所から放射状に配線。構造が単純で安価。事故時は全停電
ループ方式(環状) 線路をループ状に接続。事故時もう片側から給電可能。信頼性高い
ネットワーク方式 複数の変電所から網目状に配電。最も信頼性が高い。大都市のビル街で採用
スポットネットワーク方式 特定の大口需要家に複数回線で供給。プロテクタ遮断器で保護

電力系統の安定度

電力系統では、発電機が同期運転を維持できるか(同期外れが起きないか)が重要です。これを安定度と呼びます。

安定度の種類 内容
定態安定度 負荷が緩やかに変化するときに同期を維持する能力
過渡安定度 短絡事故など急激な外乱に対して同期を維持する能力

安定度を向上させる方法:

  • 送電電圧を高くする
  • リアクタンスを小さくする(直列コンデンサの挿入)
  • 中間調相設備の設置
  • 高速度再閉路方式の採用(事故回線を瞬時に切り離し、再投入する)

電力系統の電圧 早見表

発電所から需要家まで、電圧がどのように変わるかを1枚にまとめました。変圧器の種類と合わせて押さえましょう。

電力系統の電圧 早見表
【発電所】 数千V〜2万V
 → 昇圧変圧器で送電電圧へ
【超高圧送電】 275〜500kV
 → 一次変電所で降圧
【一次送電】 154kV
 → 二次変電所で降圧
【二次送電】 66〜77kV
 → 配電用変電所で降圧
【配電線(高圧)】 6.6kV(6,600V)
 → 柱上変圧器で降圧
【需要家】 100V / 200V

ポイント:送電距離が長いほど高電圧 → 電流が小さくなり送電損失(I²R)が減る

発電方式 比較早見表

各発電方式の特徴を一覧で比較します。試験では「どの方式がベースロードに向くか」「効率の大小」が問われます。

方式 エネルギー源 効率 起動時間 用途
水力(揚水) 位置エネルギー 80〜90% 数分 ピーク対応・蓄電
火力(汽力) 化石燃料 40〜45% 数時間 ベース・ミドル
火力(CC) ガス+蒸気 約60% 30分〜1時間 ミドル
原子力 核分裂 約33% 数日 ベース
太陽光 15〜20% 即時 日中のみ
風力 30〜40% 即時 風まかせ
CC=コンバインドサイクル(ガスタービン+蒸気タービンの複合発電)

再熱 vs 再生サイクルの覚え方

この2つを混同しない — ビジュアルで整理

再熱サイクル
「蒸気をボイラに戻して温め直す
→ 蒸気の温度UP → タービン後段の効率UP
流れ:タービン前段 → ボイラ(再加熱)→ タービン後段

再生サイクル
「蒸気の一部を抜いて給水を温める
→ 給水の温度UP → ボイラの負担DOWN
流れ:タービン途中から蒸気を抽気 → 給水加熱器 → 給水温度UP

覚え方:「再」は「再びする」(蒸気→ボイラ→タービン)
「再」は「給水を再する」(蒸気→給水ヒーター)

よくある試験の引っかけ 3選

この3つで落とさない — 紛らわしいポイントを整理

引っかけ1:水力発電の出力公式で効率を掛けるか割るか
水力発電は「エネルギーを出す側」なので「×η」(P=9.8QHη)。一方、ポンプは「エネルギーを使う側」なので「÷η」です(電気応用で学んだ通り)。「出すなら掛ける、使うなら割る」で覚えましょう。

引っかけ2:再熱と再生を混同する
「再=蒸気をもう一度ボイラへ戻してする」「再=蒸気で給水を温めて再生する」。上の覚え方カードで整理しましょう。試験では「再熱サイクルの説明」として再生の内容が書かれた選択肢が出ます。

引っかけ3:コロナ放電の対策で「電線を細くする」を選んでしまう
正しくは「太くする」or「多導体方式」。コロナは電線表面の電界が高すぎて起きる現象です。電線を太くすれば表面の電界が下がり、コロナを抑制できます。「細い=表面電界が集中=コロナ発生」と覚えましょう。

まとめ

この記事のポイント
✔ 電力系統は「発電→送電→変電→配電」の流れ
✔ 高電圧で送電する理由:電力損失(I²R)を減らすため
✔ 水力発電の出力:P = 9.8QHη [kW]
✔ 火力発電はランキンサイクル、再熱・再生で効率向上
✔ ACSRが架空送電線の標準(鋼心アルミより線)
✔ 変電所は昇圧→一次→二次→配電用の順に電圧を下げる
✔ 配電方式:放射状・ループ・ネットワーク・スポットネットワーク

確認問題

【問題1】 ある水力発電所の有効落差が100m、流量が5m³/s、水車と発電機の総合効率が85%のとき、この発電所の出力[kW]として最も近い値はどれか。

イ.2,450
ロ.3,200
ハ.4,165
ニ.4,900

解答を見る

正解:ハ
公式 P = 9.8 × Q × H × η に代入します。
P = 9.8 × 5 × 100 × 0.85 = 4,165 kW
水力発電の出力計算は頻出問題です。公式を確実に覚えておきましょう。

【問題2】 火力発電所において、タービンで膨張した蒸気を再度ボイラに戻して加熱し、再びタービンに送り込むことで熱効率を向上させる方法は何か。

イ.再生サイクル
ロ.再熱サイクル
ハ.コンバインドサイクル
ニ.ランキンサイクル

解答を見る

正解:ロ
再熱サイクルは、タービンの途中で蒸気をボイラに戻して再加熱する方法です。一方、再生サイクルはタービン途中から蒸気を抜いて給水の予熱に使う方法です。コンバインドサイクルはガスタービン+蒸気タービンの組み合わせ、ランキンサイクルは汽力発電の基本サイクルです。

【問題3】 架空送電線のコロナ放電を防止するための対策として、正しいものはどれか。

イ.電線を細くする
ロ.送電電圧を上げる
ハ.多導体方式にする
ニ.がいしの連結数を減らす

解答を見る

正解:ハ
コロナ放電は電線表面の電界が空気の絶縁耐力を超えたときに発生します。多導体方式(電線を複数本束ねる)にすると、等価的な電線の半径が大きくなり、表面電界が下がるためコロナ放電を防止できます。電線を太くするのも有効です。細くするとかえって悪化します。

【問題4】 大都市のビル街などで、複数の変電所から網目状に配電し、1回線が事故で停止しても無停電で供給を継続できる配電方式はどれか。

イ.放射状方式
ロ.ループ方式
ハ.バンキング方式
ニ.ネットワーク方式

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正解:ニ
ネットワーク方式は、複数の変電所から網目状に配電する方式で、信頼性が最も高い配電方式です。1回線や1つの変電所が事故で停止しても、他の経路から供給を継続できます。大都市のビル街など、停電が許されない地域で採用されています。

高圧受電設備の構成機器については「高圧受電設備の仕組みと構成機器|キュービクルの単線結線図を読もう」で詳しく解説しています。三相交流回路の計算は「三相交流回路の計算|Y-Δ変換と三相電力をわかりやすく解説」、高圧配電線路の電圧降下・短絡電流は「高圧配電線路の電圧降下と短絡電流計算をわかりやすく解説」を参照してください。第二種で学んだ交流回路の基礎は「交流回路の基礎をイメージで理解!インピーダンスと力率」で復習できます。

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