この記事を読み終えると、DS・LBS・VCB・PASを「どの電流まで切れるか」で区別し、単線結線図の位置と図記号から見分けて、VCBの遮断容量を計算できるようになります。
第一種電気工事士の学科では、高圧受電設備の開閉器が、写真・図記号・役割の説明・計算のそれぞれの形で問われます。名前は「開閉器」「遮断器」「断路器」と似ていますが、切れる電流の大きさがはっきり違います。この記事は試験の学習用で、実際の設備の操作手順を示すものではありません。
見分ける軸は「切れる電流」と「置かれる位置」の2つ
高圧の電路に流れる電流を、3つの大きさに分けて考えます。電圧はかかっているが電流はほとんど流れていない無電流の状態、ふだん機器が使っている負荷電流、電線どうしが触れる事故で流れる短絡電流です。受電用の遮断器の定格遮断電流が12.5kAといった大きさであるように、短絡電流は負荷電流とは桁が違います。
図1 5つの機器が「開閉・遮断できる電流」
塗りの札は開閉・遮断できる電流、取り消し線の札はできない電流です。
①DS(断路器) 切り離すだけ
電流が流れていない電路を開いて、点検する区間を切り離す。
②LBS(高圧交流負荷開閉器) 負荷電流まで
短絡電流は、流れても一定の時間は耐えられるが、遮断はできない。
③PF付LBS LBSと限流ヒューズの組
負荷電流はLBSが開閉し、短絡電流は限流ヒューズ(PF)が溶けて遮断する。
④VCB(真空遮断器) 短絡電流まで
保護継電器の合図で、短絡電流も遮断する。
⑤PAS(柱上の気中負荷開閉器) 負荷電流まで
短絡電流は遮断せず、配電線が停電してから開く。
図1の①のDSは、無電流のときにしか開閉できません。図1の②のLBSと図1の⑤のPASは負荷電流まで、図1の④のVCBは短絡電流まで遮断できます。図1の③のPF付LBSは、LBSに限流ヒューズ(PF)を組み合わせて、短絡電流の遮断をヒューズに任せた形です。
もう1つの軸は、単線結線図のどこに置かれるかです。切れる電流と合わせて表にすると、次のようになります。
| 機器 | 開閉・遮断できる電流 | 単線結線図での位置と役割 |
|---|---|---|
| DS(断路器) | 無電流だけ | 主遮断装置の電源側。点検する区間を切り離す |
| LBS(高圧交流負荷開閉器) | 負荷電流まで | 変圧器やコンデンサの手前。機器ごとに開閉する |
| PF付LBS | 負荷電流はLBS、短絡電流はPF | 変圧器やコンデンサの手前。PF・S形では主遮断装置になる |
| VCB(真空遮断器) | 負荷電流と短絡電流 | CB形の主遮断装置。保護継電器の合図で事故電流を遮断する |
| PAS(柱上の気中負荷開閉器) | 負荷電流まで | 受電点の引込柱。構内の事故を配電線から切り離す |
単線結線図では、電源側からPAS・DS・VCB・LBSの順に並ぶ
図2 単線結線図での並び方(CB形の例)
上が電源側(配電線)、下が負荷側です。直列リアクトルや避雷器などは省いています。
図2の①のPASは、配電線から構内へ入る最初の開閉器で、引込柱の上にあります。図2の②のDSは受電設備の入口にあり、図2の③のVCBを点検するときに電源側から切り離します。VCBのすぐ下にあるCTが電流を測り、図2の⑤のOCR(過電流継電器)が「大きすぎる」と判断すると、破線のとおりVCBへ開く合図を送ります。
高圧母線から先は、変圧器やコンデンサごとに図2の④のPF付LBSが付きます。1台の機器で事故が起きたとき、その回路だけをPFが切り離すためです。主遮断装置にVCBを使うこの形がCB形で、VCBの代わりにPF付LBSを主遮断装置にする形がPF・S形です。2つの形の違いはPF・S形とCB形の違いで扱っています。
図記号は、固定側の接点に付く印で見分ける
図3 図記号は、固定側の接点に付く印で見分ける
4つとも「斜めの刃」は同じです。上の接点に何が付いているかを見ます。
単線結線図の問題では、機器の名前が書かれていない図記号を指して、名称や役割を問われます。図3の①は横棒だけなので断路器、図3の②は丸が加わるので負荷開閉器、図3の④は×印なので遮断器です。図3の③のように刃の途中に長方形があれば、ヒューズが組み込まれています。
ほかの機器も含めた図記号の一覧は、高圧受電設備・キュービクルの単線結線図にまとめています。
DSは電流を切れない。VCBを開いてから開く
DS(断路器、Disconnecting Switch)は、点検のときに電路を切り離したり、電路を区分したりするための機器です。電流を切るときに出るアークを消すしくみを持たないので、負荷電流の開閉はできません。試験でも「負荷電流が流れているとき、誤って開路しないようにする」が正しい記述として出ています。
図4 DSとVCBを操作する順番
DSを動かすのは、どちらの場合もVCBが開いている間だけです。
そのため、図4の①でVCBが電流を遮断してから、図4の②でDSを開きます。送電するときは図4の③と図4の④の順で、DSを入れる時点ではまだ電流が流れません。操作は、離れた位置からフック棒で行います。
試験では、次の3つが問われています。DSは「区分開閉器」ではありません(区分開閉器は受電点のPASです)。DSは、接触子(刃受)を電源側、ブレード(断路刃)を負荷側にして取り付けます。避雷器の電源側には、保安上、電路から切り離せるように断路器を設けます。ここに限流ヒューズや、限流ヒューズ付きの負荷開閉器を入れるのは不適切です。
LBSは負荷電流まで。短絡電流は限流ヒューズが遮断する
LBS(高圧交流負荷開閉器、Load Break Switch)は、アークを消すしくみを持つので、負荷電流を開閉できます。変圧器やコンデンサの開閉に使われます。短絡電流については、「流れている間は壊れずに耐える」「短絡している電路へ投入しても耐える」ことはできますが、遮断はできません。
そこで、限流ヒューズ(PF、Power Fuse)と組み合わせます。限流ヒューズは、短絡電流が大きくなりきる前に溶けて、電流を抑えながら遮断するヒューズです。高圧の電路に使う過電流遮断器は、その場所を通過する短絡電流を遮断できるものでなければなりません(電気設備の技術基準の解釈 第34条)。PF付LBSでは、この役目をPFが受け持ちます。
ストライカは、1相だけ切れた状態を残さないための装置
ヒューズは相ごとに溶けるので、1本だけ溶けると、三相のうち2相だけがつながった状態になります。
図5 PFが1本だけ溶けたとき、ストライカがあるとどうなるか
R・S・Tの3相に、上からLBSの接点、限流ヒューズ(PF)、変圧器の順に並べた図です。S相で事故が起きた場合を描いています。
図5の①と図5の②の状態を欠相といい、三相の電動機などに無理がかかります。ストライカ引外し式のLBSは、図5の③のストライカが図5の④の機構を押して、図5の⑤のとおり3相とも開きます。
JIS C 4620に基づくキュービクル式高圧受電設備では、PF付LBSを主遮断装置とするPF・S形の受電設備容量は300kV·A以下です。このときの主遮断装置には、限流ヒューズ、ストライカによる引外し装置、相間と側面の絶縁バリヤが要ります。過電流継電器は要りません。短絡を見つけて遮断するのが、ヒューズ自身だからです。
VCBは短絡電流まで遮断する。開く合図は保護継電器が出す
VCB(真空遮断器、Vacuum Circuit Breaker)は、真空の容器の中で接点を開いてアークを消す遮断器で、負荷電流も短絡電流も遮断できます。ただし、VCB自身は電流の大きさを判断しません。図2の⑤のとおり、CTで測った電流を過電流継電器が見て、VCBへ引外しの合図を送ります。試験でも、高圧受電設備の短絡保護の組み合わせは「過電流継電器と高圧真空遮断器」です。合図が伝わる回路はVCBの引外し回路で扱っています。
なお、高い頻度で開閉する用途には、遮断器ではなく高圧交流真空電磁接触器が使われます。
遮断容量は「√3 × 定格電圧 × 定格遮断電流」で求める
遮断器がどれだけ大きな短絡電流を遮断できるかは、定格遮断電流[kA]で表します。これを三相の容量[MV·A]に直したものが遮断容量です。
遮断容量[MV·A] = √3 × 定格電圧[kV] × 定格遮断電流[kA]
この式になるのは、三相の皮相電力が「√3 × 線間電圧 × 線電流」だからです。線電流のところへ、遮断できる最大の短絡電流を入れています。kVとkAを掛けると、単位はMV·Aになります。
例題1 公称電圧6.6kVの受電設備に使う高圧交流遮断器(定格電圧7.2kV、定格遮断電流12.5kA、定格電流600A)の遮断容量を求めます。
遮断容量 = √3 × 7.2kV × 12.5kA = 1.732 × 7.2 × 12.5 ≒ 155.9MV·A
計算値は約156MV·Aで、試験の選択肢では、いちばん近い160MV·Aが正解になります。式に入れる電圧は、電路の公称電圧6.6kVではなく、遮断器の定格電圧7.2kVです。定格電流600Aは負荷電流に対する値で、この計算には使いません。
例題2 受電点の三相短絡電流が9kAの場所に、例題1の遮断器を使えるかを確かめます。
9kA < 12.5kA なので、この遮断器は受電点の短絡電流を遮断できます。受電用の遮断器の遮断容量を決めるもとになるのは、受電点の三相短絡電流です。変圧器の容量や契約電力からは決まりません。
PASは受電点の開閉器。短絡電流は遮断せず、配電線が止まるのを待つ
PAS(Pole Air Switch)は、引込柱の上に取り付ける気中の負荷開閉器です。電力会社の配電線と構内の設備の境目にあり、SOG制御装置と組み合わせて使います。構内で地絡事故が起きると、すぐに開いて構内を配電線から切り離します。
図1の⑤のとおり、PASは短絡電流を遮断できません。短絡事故のときは開かずに待ち、配電線が停電して電流が流れなくなってから開きます。この動きと、地中から引き込む場合に使うUGSは、PAS・UGS・SOGの違いで順を追って説明しています。
結局どう見分けるか|図記号・位置・切れる電流の順に確かめる
- 図記号を見る:固定側の接点が横棒だけならDS、丸が付けばLBSかPAS、×印ならVCB(図3)。
- 位置を見る:丸が付く図記号が引込柱にあればPAS、変圧器やコンデンサの手前にあればLBS(図2)。
- 切れる電流を答える:DSは無電流、LBSとPASは負荷電流まで、VCBは短絡電流まで。PF付LBSは短絡電流をPFが遮断する(図1)。
迷ったときは「短絡電流を遮断できるのは、遮断器と限流ヒューズだけ」に戻ると、選択肢を絞れます。
自己チェック|切れる電流・位置・図記号から機器を選ぶ
解説は最初から表示しています。図を見ないで答えられるかを試してください。
問1:負荷電流が流れているときに開いてはいけない機器はどれですか。
- PAS
- DS
- LBS
- VCB
解答:2(DS)
図1の①のとおり、DS(断路器)が開閉できるのは無電流のときだけです。PASとLBSは負荷電流を開閉でき、VCBは短絡電流まで遮断できます。
問2:変圧器の一次側に、限流ヒューズと組み合わせた負荷開閉器(PF付LBS)があります。役割の分担として正しいものはどれですか。
- LBSが短絡電流を遮断し、PFは負荷電流を開閉する
- PFが負荷電流を繰り返し開閉し、LBSは点検のときだけ開く
- LBSが負荷電流を開閉し、PFが短絡電流を遮断する
- LBSだけで負荷電流も短絡電流も遮断でき、PFは予備である
解答:3(LBSが負荷電流、PFが短絡電流)
図1の③のとおり、ふだんの開閉はLBS、短絡電流の遮断はPFが受け持ちます。PFは溶けて遮断するので、動作した後は取り替えが要り、繰り返しの開閉には使えません。
問3:引込柱の上に取り付けられ、構内で地絡事故が起きると自動的に開きます。短絡電流は遮断できません。この機器はどれですか。
- PAS
- VCB
- PF付LBS
- DS
解答:1(PAS)
図2の①の位置にあるのがPASです。SOG制御装置と組み合わせて、構内の事故を配電線から切り離します。VCBとPF付LBSは短絡電流を遮断でき、DSは自動では開きません。
問4:受電設備を停電させて点検します。DSとVCBを操作する順番として正しいものはどれですか。
- DSを開いてから、VCBを開く
- DSだけを開き、VCBは入れたままにする
- DSとVCBを同時に開く
- VCBを開いてから、DSを開く
解答:4(VCBを開いてから、DSを開く)
図4の①②の順です。DSは負荷電流を切れないので、先にVCBで電流を遮断します。送電するときは図4の③④のとおり、DSを先に入れます。
問5:定格電圧7.2kV、定格遮断電流8kAの高圧交流遮断器の遮断容量は、およそ何MV·Aですか。
- 58MV·A
- 91MV·A
- 100MV·A
- 173MV·A
解答:3(100MV·A)
√3 × 7.2kV × 8kA ≒ 99.8MV·A で、およそ100MV·Aです。58MV·Aは√3を掛け忘れた値、91MV·Aは定格電圧の代わりに公称電圧6.6kVを使った値、173MV·Aは√3ではなく3を掛けた値です。
問6:PF付LBSを主遮断装置にするPF・S形の受電設備で、短絡電流を遮断しているものはどれですか。
- ストライカによる引外し装置
- 限流ヒューズ
- 過電流継電器と引外しコイル
- LBSの接点
解答:2(限流ヒューズ)
図5のとおり、短絡電流を遮断するのは溶けたPFです。ストライカは、その後にLBSを3相とも開かせます。過電流継電器で遮断器を引き外すのはCB形で、PF・S形の主遮断装置には過電流継電器が要りません。
問7:単線結線図で、固定側の接点に横棒と小さな丸が付き、斜めの刃の途中に長方形が描かれている機器はどれですか。
- ヒューズ付断路器
- 高圧交流遮断器
- 断路器
- 限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器
解答:4(限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器)
図3の③の図記号で、PF付LBSのことです。丸がなく横棒だけなら図3の①の断路器、×印なら図3の④の遮断器です。
公式の問題とメーカーの解説で確かめたところ
更新履歴:2026年10月25日 PF・S形の300kV·Aという容量を、JIS C 4620に基づくキュービクル式高圧受電設備の範囲へ限定しました。 三菱電機:高圧受電設備を照合しました。
2026年10月1日に、次の資料の記載内容を確認して、本文の機器の役割・図記号・操作の順番・遮断容量の計算と図を照合しました。
- 電気技術者試験センター:令和6年度第一種上期学科試験(出題例)の問題(PDF。遮断容量の計算、単線結線図の図記号)
- 電気技術者試験センター:令和6年度第一種下期学科試験の問題(PDF。高頻度開閉の機器、PF・S形の主遮断装置)
- 電気技術者試験センター:令和7年度第一種上期学科試験(出題例)の問題(PDF。遮断容量を決めるもの、DSと避雷器)
- 電気技術者試験センター:令和7年度第一種下期学科試験の問題(PDF。短絡保護の組み合わせ、PF・S形の300kV·A)
- 経済産業省:電気設備の技術基準の解釈(PDF。第34条)
- 三菱電機:断路器
- 三菱電機:LBSの概要
- 三菱電機:ストライカ引外し
- 三菱電機:真空遮断器
- 戸上電機製作所:GR付PAS(柱上用SOG開閉器)
更新履歴:2026年10月1日 図1〜図5と自己チェックを加え、切れる電流の違いから見分ける構成に改めた。LBSとストライカ、VCBの遮断容量の説明を加えた
次に読む記事
次はPAS・UGS・SOGの違いへ進んでください。図2の①の受電点で、地絡と短絡のときにPASがどう動くかを扱います。
主遮断装置の2つの形は、PF・S形とCB形の違いで比べられます。
図記号をまとめて確かめるなら、高圧受電設備・キュービクルの単線結線図へ戻ります。
※当サイトの図は学習用に自作した模式図で、実際の機器・器具とは外観や寸法が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
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