この記事を読み終えると、第二種電気工事士の学科試験で、どの計算問題を先に練習してどれを後回しにするかを自分で決め、式が1〜3段階の問題を途中式と単位を省かずに解けるようになります。
結論|計算問題は全部捨てず、解ける型だけ拾う
結論から言います。第二種電気工事士の計算問題は、全部を捨てる必要も、すべてを完璧にする必要もありません。まず10時間を使い、式1つで解ける問題と、2〜3段階を順に進めれば解ける問題を拾える状態にしましょう。
電気技術者試験センターが案内する第二種の学科試験は、四肢択一式50問・120分です。1問2点で、合格基準は60点、つまり30問正解です。計算で4問正解を増やせれば8点、7問なら14点になります。この差は、合格ライン付近では小さくありません。
「4〜7問」は学習目標であり、出題数の保証ではありません
計算が必要な問題の数や難易度は、試験回や「どこまでを計算問題に含めるか」で変わります。公式は「計算問題が毎回10問」と固定していません。直近の公式問題を解き、自分が取れる型を4問、次に5問と増やすための目安として使ってください。
学科試験では電卓と計算尺を使えません。受験案内は、計算問題は四則計算などの筆算で解ける前提で作っていると説明しています。数値は筆算で終わる大きさなので、式さえ立てられれば計算そのものは長くなりません。
令和8年度上期の問題用紙で数えると、計算は8問だった
「計算問題は何問出るのか」は、公式の問題用紙を1回分読めば自分で数えられます。2026年5月24日に実施された令和8年度上期の学科試験(筆記方式)を、どの式を何段階使うかで分けたのが図1です。
図1 令和8年度上期の学科試験で、計算が要った8問を優先度で分ける
問の番号は公式の問題用紙の番号です。①〜③は次の節の優先度と同じ順で、右端は答えまでの段階の数です。
①最優先:オームの法則・電力と発熱量・合成抵抗2問
②次に取る:単相の電圧降下・許容電流・幹線4問
③余力で追加:三相回路・単相3線式の中性線2問
一般問題30問のうち、式を立てて数値を出す問題はこの8問。配線図問題20問に式を立てる計算はない。
図1の①の2問は、図か単位を1回整理すれば、式1つで答えが出ます。図1の②の4問は、電流を出してから抵抗を出すというように、1〜3段階を順に進めます。図1の③の2問は、断線やスイッチの前後で回路を描き直す問題で、ここに時間をかけるのは①と②が固まってからで間に合います。
この回なら、図1の①と②をすべて正解して6問、12点です。この記事の「4〜7問」は、図1の①と②の範囲を指しています。
なぜ「計算を全部捨てる」が危険なのか
1. 暗記分野だけに正解率を依存してしまう
学科試験は30問正解が合格基準です。図1の8問を最初から諦めると、残る42問から30問、30÷42≒0.71で約71%の正答率が必要になります。図1の①と②の6問を取れれば、残る42問で要るのは24問、24÷42≒0.57で約57%です。捨てる問題が増えるほど、残りで必要な正答率が上がります。
2. 公式1つで解ける問題まで失う
図1の③のように回路の変化を読む問題と、100V・800Wから電流を求める問題は、同じ「計算問題」でも負担が違います。後者は I = P ÷ V に数字を入れるだけです。苦手分野をまとめて捨てると、短時間で取れる2点まで手放してしまいます。
3. 配電理論・配線設計の理解も弱くなる
電気技術者試験センターは、基礎理論の正しい理解が後の科目にも必要だと説明しています。オームの法則がわかると、電圧降下、許容電流、過負荷、電線が熱くなる理由までつながります。公式暗記だけで終わらせず、どの値が増えると何が起きるかも一緒に確認しましょう。
10時間で優先する計算問題|3段階に分ける
| 優先度 | 分野 | 10時間での狙い |
|---|---|---|
| 最優先 | オームの法則、電力・電力量、直並列の合成抵抗 | 公式を選び、単位をそろえて代入できる |
| 次に取る | 単相の電圧降下、許容電流、幹線の基本 | 問題文から配線方式と必要な数値を拾える |
| 余力で追加 | 三相回路、単相3線式の中性線、交流回路・コンデンサ | 頻出の1型を選び、混ぜずに解ける |
この3段階に令和8年度上期の問題を当てはめたものが、図1の①〜③です。得意・不得意は人によって違います。三相電力が得意なら優先度を上げ、合成抵抗で毎回止まるなら時間を増やして構いません。大切なのは、難しそうな分野名ではなく、同じ型を3問続けて正解できるかで判断することです。
最初の入口はオームの法則
V・I・Rが不安なら「オームの法則と合成抵抗」、W・Wh・Jを混同するなら「電力・電力量・発熱量の計算」で、公式の意味と単位換算を先に確認してください。
10時間の勉強スケジュール|1時間ずつ区切る
10時間を一度に確保する必要はありません。1日1時間を10日、平日30分と休日2時間を組み合わせるなど、続けやすい形で進めます。学科全体の中でいつ計算に取りかかるかは「第二種電気工事士の独学ロードマップ」の12週間計画で確かめられます。
| 時間 | 学ぶ内容 | 終了条件 |
|---|---|---|
| 1時間目 | 公式問題を解いて現在地を確認 | 誤答を「公式・単位・計算」に分類 |
| 2時間目 | V・I・R、W・kW、分・秒の単位 | 単位変換だけの小問を連続正解 |
| 3〜4時間目 | オームの法則、電力、電力量、発熱量 | 何を求めるか見て公式を選べる |
| 5〜6時間目 | 直列・並列の合成抵抗 | 和と和分の積を使い分ける |
| 7〜8時間目 | 単相の電圧降下、許容電流の基本 | 往復長・電流・抵抗を整理できる |
| 9時間目 | 三相電力または自分の得意候補 | 選んだ1型を3問続けて正解 |
| 10時間目 | 混合演習と誤答の解き直し | 正解できる型と後回しを決定 |
演習は同じ問題の答えを覚えるのではなく、数値や聞かれ方が変わっても式を立てられるか確認します。このページの例題・自己チェックは学習用に作成した問題ですが、出題形式の確認には電気技術者試験センターが公表する最新の問題と解答も使ってください。
誤答メモは「5項目」だけ残す
解説を読んで終わると、次に同じ型が出ても止まりやすくなります。1問につき次の5項目だけ記録し、10時間目に「同じ原因の誤答が減ったか」を見直してください。
| 記録欄 | 書く内容 | 短い記入例 |
|---|---|---|
| 1 問題番号 | 試験回と問番号 | 令和8年度上期・問3 |
| 2 求める量 | 電流、抵抗、電力など | 発熱量[kJ] |
| 3 使う式 | 数字を入れる前の文字式 | W = P × t |
| 4 誤答原因 | 公式・単位・計算・読み違い | 時間を秒へ直し忘れ |
| 5 次の一手 | 次回に最初に確認すること | 単位へ下線を引く |
誤答原因を「計算が苦手」でまとめないのがポイントです。公式を選べなかったのか、単位を直し忘れたのか、四則計算で間違えたのかを分ければ、次の1時間で直す対象が決まります。
最初に覚える公式|数を増やしすぎない
| 問題の型 | 最初の公式 | 確認点 |
|---|---|---|
| 電圧・電流・抵抗 | V = I × R | 求める文字を左にする |
| 電力 | P = V × I | kWはWへ直す |
| 電力量・発熱量 | W = P × t | 求める単位に時間を合わせる |
| 直列抵抗 | R = R1 + R2 | 1本道なら足す |
| 抵抗2個の並列 | R = R1R2 ÷ (R1 + R2) | 答えは小さい抵抗より小さくなる |
電圧降下と三相の計算は「三相・単相の電圧降下と電力計算」で、式の意味を配線方式ごとに確かめられます。
どの計算問題にも使える5ステップ
公式を覚えていても、問題文から式へ移る順番が毎回違うと途中で止まります。次の例題1を使って、5つのステップを順に確かめます。
例題1:100Vのコンセントで、消費電力1.2kWの電気ケトルを使います。流れる電流は何Aですか。
図2 5ステップを例題1に当てはめる
①から⑤の順に進めます。白い枠が、例題1で実際に書く内容です。
電圧V・電流I・抵抗R・電力Pのどれを聞かれているかを決める。
数字と単位を、図の近くか式の横へ並べる。
kW→W、分→秒、%→小数を、式に入れる前に直す。
数字を入れる前に、求める文字を左辺に出す。
単位を付けたまま代入し、桁と大きさが不自然でないかを見る。
図2の④で P=V×I を選ぶのは、問題文が電力と電圧を与え、電流を聞いているからです。この3つを1本でつなぐ式は P=V×I だけなので、ほかの公式を探す必要がありません。図2の①と②を先に書くと、使う式は自動的に絞られます。
式をいきなり数字で埋めると、「何を求めていたか」「1,000倍するのか割るのか」が見えなくなります。単位をそろえる→文字式→代入の順を毎回そろえると、途中式そのものが見直しの表になります。
例題2・例題3|2段階と3段階の問題を途中式で解く
図1の②の型は、式を1つずつ順に使えば解けます。ここでは途中式と単位を省かずに書きます。
例題2:合成抵抗を出してから電流を求める(2段階)
例題2:20Ωと30Ωの抵抗を並列につなぎ、60Vの電源につなぎました。電源から流れる電流は何Aですか。
- 求める量と与えられた値:電流 I[A]。R1=20Ω、R2=30Ω、V=60V
- 段階1(合成抵抗):R=R1×R2÷(R1+R2)=20Ω×30Ω÷(20Ω+30Ω)=600÷50=12Ω
- 段階2(電流):I=V÷R=60V÷12Ω=5A
- 見積もり:合成抵抗12Ωは、小さい方の20Ωより小さい。枝ごとに出しても 60V÷20Ω=3A、60V÷30Ω=2A、合計5Aで一致する
先に合成抵抗を出すのは、電源から見ると2個の抵抗が1個の抵抗と同じ働きをするからです。1個にまとめれば、あとはオームの法則を1回使うだけになります。
例題3:単相2線式の電圧降下(3段階)
例題3:こう長25mの単相2線式の配線で、1,000Wの電熱器(抵抗負荷)に電気を送ります。負荷の両端の電圧は100V、電線の抵抗は1,000mあたり8.0Ωです。配線での電圧降下は何Vですか。
- 求める量と与えられた値:電圧降下 v[V]。P=1,000W、V=100V、こう長25m、電線1,000mあたり8.0Ω
- 段階1(電流):I=P÷V=1,000W÷100V=10A
- 段階2(電線1本の抵抗):r=8.0Ω×25m÷1,000m=0.2Ω
- 段階3(電圧降下):v=2×I×r=2×10A×0.2Ω=4V
- 見積もり:電源側は100V+4V=104V。電圧降下が負荷の電圧に近い値になったら、桁か単位を疑う
図3 例題3の電流の道すじ:行きと帰りで2回下がる
上から下へ、電流10Aが通る順です。番号の付いた段で電圧が下がります。
10A×0.2Ω=2V下がる
両端の電圧 100V・電流 10A
10A×0.2Ω=2V下がる
式に2が付くのは、図3の①と図3の③の2か所で同じ大きさの電圧が下がるからです。図3の②の電熱器に流れる10Aは、行きの電線にも帰りの電線にも同じだけ流れます。三相3線式ではこの2が√3に替わるので、問題文の配線方式を最初に確かめます。
本番で捨てるのは「分野」ではなく「その場の難問」
120分で50問なら、平均は1問2分24秒です。ただし、全問へ同じ時間を使う必要はありません。まず暗記・鑑別・図記号など即答できる問題を進め、計算は次の基準で判断します。
- 30秒見ても使う公式が決まらない → 印を付けて後回し
- 公式は決まるが計算が長い → 式だけ残して後回し
- 単位変換と1〜2段階の計算で終わる → その場で解く
- 解き直しで同じ型を3回正解した問題 → 本番の得点候補
「後回し」は捨てることではありません。1周目で確実な問題を取り、2周目で計算へ戻る時間管理です。筆記方式では問題番号へ印を付けます。CBT方式では、会場で貸し出されるメモ用紙に問題番号を書いておき、後から問題へ戻る操作は試験センターの体験版で先に確かめておきます。
自己チェック|式の選び方・単位・段階の数を確かめる5問
解説は最初から表示しています。選択肢を見る前に、紙に式と単位を書いてから答えを選んでください。本番と同じように、電卓を使わず筆算で解きます。
問1:100Vの回路で、消費電力1.5kWのドライヤーを使います。流れる電流は何Aですか。
- 0.015A
- 15A
- 約67A
- 150A
解答:2(15A)
I=P÷V=1,500W÷100V=15Aです。0.015Aは1.5kWをWへ直さずに割った値、約67Aは100÷1.5と逆に割った値、150Aは1.5×100と掛けた値です。図2の③と④を紙に書けば、どれも避けられます。
問2:6Ωと3Ωの抵抗を並列につないだときの合成抵抗は何Ωですか。
- 0.5Ω
- 2Ω
- 4.5Ω
- 9Ω
解答:2(2Ω)
6Ω×3Ω÷(6Ω+3Ω)=18÷9=2Ωです。9Ωは直列の足し算、4.5Ωは2個の平均、0.5Ωは 1/6+1/3 を計算したまま逆数に戻していない値です。並列の合成抵抗は小さい方の3Ωより必ず小さくなるので、4.5Ωと9Ωは見積もりだけで外せます。
問3:600Wの電熱器を20分間使いました。使った電力量は何kWhですか。
- 0.2kWh
- 12kWh
- 200kWh
- 12,000kWh
解答:1(0.2kWh)
0.6kW×(20÷60)h=0.2kWhです。12kWhは分を時間に直さず0.6×20とした値、200kWhはWをkWに直さず600×(20÷60)とした値、12,000kWhはどちらも直さず600×20とした値です。聞かれている単位がkWhなら、電力はkW、時間はhにそろえます。
問4:こう長15mの単相2線式の配線に20Aが流れています。電線の抵抗は1,000mあたり10Ωです。配線での電圧降下は何Vですか。
- 3V
- 約5.2V
- 6V
- 12V
解答:3(6V)
電線1本の抵抗は 10Ω×15m÷1,000m=0.15Ω、電圧降下は v=2×I×r=2×20A×0.15Ω=6Vです。3Vは片道だけ(図3の①だけ)の値、約5.2Vは三相3線式の√3を使った値、12Vは往復30mで抵抗を出したうえにさらに2倍した値です。
問5:50問のうち計算が要る問題が8問ある回で、計算を4問正解できるとします。合格基準の30問に届くには、計算以外の42問で何%の正答率が要りますか。
- 約52%
- 約57%
- 約62%
- 約71%
解答:3(約62%)
計算以外で要るのは 30問−4問=26問、計算以外の問題は 50問−8問=42問なので、26÷42≒0.62です。約52%は26÷50、約57%は分母を50−4=46問にした値、約71%は計算を1問も取らないときの30÷42です。計算で取れる数が増えるほど、暗記分野に要る正答率が下がります。
解き足りない人は「オームの法則と合成抵抗・キルヒホッフ」の自己チェック9問で、直列・並列が混ざった回路も確かめられます。
出題数と合格基準、図1の8問の出どころ
更新履歴:2026年10月25日 学習用に作成した問題という説明の範囲を、このページの例題・自己チェックへ限定しました。
2026年10月1日に、次の資料の記載内容を確認して、本文の試験時間・出題数・合格基準・電卓の扱いと、図1の8問の分け方を照合しました。図1は問題用紙と公式の解答を突き合わせて分類しています。
- 電気技術者試験センター|第二種電気工事士の学科試験のポイント(試験時間・出題数・科目と範囲)
- 電気技術者試験センター|CBT方式のご案内(出題形式・合格基準・体験版)
- 電気技術者試験センター|令和8年度第二種電気工事士下期試験 受験案内(PDF。電卓・計算尺の扱い、会場で貸し出す筆記用具)
- 電気技術者試験センター|令和8年度上期 第二種電気工事士学科試験の問題(PDF)
- 電気技術者試験センター|第二種電気工事士試験の問題と解答
- 電気技術者試験センター|基礎理論の出題範囲・例題(PDF)
- 電気技術者試験センター|配電理論・配線設計の出題範囲・例題(PDF)
更新履歴:2026年7月24日 公開/2026年8月2日 誤答メモの表を追加/2026年10月1日 令和8年度上期の問題を優先度で分けた図1、例題3問と図2・図3、自己チェック5問を加えた
次に読む記事
図1の①から始めるなら、次はオームの法則と合成抵抗・キルヒホッフで直列・並列の解き方を固めてください。
その次は電力・電力量・発熱量の計算で、W・Wh・Jの換算を練習します。
図1の②へ進む段階では三相・単相の電圧降下と電力計算で、2Irと√3Irの使い分けを確かめます。
※当サイトの図は学習用に自作した模式図で、実際の機器・器具とは外観や寸法が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
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