安全上の注意
この記事は、設備管理者が保護継電器の役割と点検報告書を理解するための解説です。整定値の決め方や変更手順ではありません。整定変更、試験電流・電圧の印加、遮断器との連動試験は、電気主任技術者・保守会社が系統条件、保護協調、電力会社との協議内容、メーカー資料を確認して行ってください。
先に役割をひとことで
- OCR:過負荷・短絡につながる過電流を監視する
- GR:ZCTで地絡時の零相電流を検出する
- DGR:零相電流と零相電圧から地絡の方向も判定する
- OVR・UVR:過電圧・不足電圧を監視する
- OVGR:地絡時に生じる零相電圧を検出する
結論|保護継電器は事故電流を切らず、遮断器へ指令を出す
保護継電器は、事故を検出・判断して、VCBやPASなどへ開放信号を出す装置です。継電器そのものが高圧の事故電流を遮断するわけではありません。
単線結線図と点検報告書では、継電器の略号だけを見ず、次の一連の流れで読みます。
保護システムの基本
CT・ZCT・VT・ZPDが電流・電圧を取り出す → OCR・GR・DGRなどが異常を判断する → VCB・PASなどへ指令を出す → 事故区間を電路から切り離す
このうち一つでも正しく働かなければ、保護システム全体として事故を止められません。そのため点検記録は「リレー単体が動いたか」だけでなく、入力回路、出力接点、遮断器との連動まで追う必要があります。
保護継電器の種類|何を検出するかで分ける
| 継電器 | 主な検出対象 | 組み合わせる検出器 |
|---|---|---|
| OCR | 過負荷・短絡による過電流 | CT |
| GR | 地絡時の零相電流 | ZCT |
| DGR | 地絡電流・地絡電圧と事故方向 | ZCT+ZPD・ZVT等 |
| OVR・UVR | 過電圧・不足電圧 | VT等 |
| OVGR | 地絡時の零相電圧 | ZPD・ZVT等 |
三菱電機の技術資料では、過負荷・短絡にOCR、異常電圧にOVR・UVR、地絡にGR・DGR・OVGRを使うと整理されています。ただし、どの継電器をどの遮断器へ接続するかは設備構成によって異なります。
OCR(過電流継電器)|動作値だけでなく時間特性を見る
OCRはOver Current Relayの略で、CTから受けた電流が整定条件に達したとき、遮断器へ指令を出します。設備管理者が整定表を見るときは、単一の「○A」だけでなく、次の項目を一組で確認します。
- 接続されるCTの一次・二次定格とCT比
- 限時要素の動作値と動作特性
- 動作時間倍率・タイムダイヤルなど時間を決める設定
- 瞬時要素の使用有無と動作値
- 指令を出す遮断器・トリップ回路
- 上位・下位の保護装置との協調条件
OCRには、入力電流が大きいほど早く動作する反限時特性、設定時間で動作する定限時特性、短絡時の大電流へ高速に対応する瞬時要素などがあります。採用する特性は継電器の形式と保護対象で異なるため、「OCRなら必ず同じ時間」とは考えません。
整定値を無断で変えない
不要動作を止めるために動作値を上げたり、早く遮断したいから時間を短くしたりすると、下位遮断器や電力会社側の保護装置との協調が崩れるおそれがあります。整定変更は、負荷電流・短絡電流・CT比・動作特性曲線を検討し、必要な協議と記録を行ったうえで実施します。
GRとDGRの違い|方向判定の有無
GRはZCTが検出した零相電流を監視します。正常な三相回路では3相電流の合計がほぼ打ち消し合いますが、地絡により大地へ電流が流れると零相電流が現れ、GRが地絡を判断します。
DGRはDirectional Ground Relayの略で、零相電流に加えて零相電圧との位相関係から事故方向を判定します。三菱電機の資料では、構内ケーブルが長く対地静電容量が大きい場合でも、構外地絡による誤動作を避けるために方向判定を行うと説明されています。
| 比較 | GR | DGR |
|---|---|---|
| 入力 | 主に零相電流 | 零相電流+零相電圧 |
| 判断 | 地絡電流の大きさ | 地絡の大きさと方向 |
| 確認資料 | ZCT・動作値・時間 | ZCT・零相電圧入力・位相・時間 |
DGRを単純に「GRの上位機種」と考えるのではなく、構内の対地静電容量、受電方式、電力会社側の保護との協調に応じて選定される別の保護方式として理解します。PASとSOG制御装置の関係は「VCB・DS・LBS・PASの違い|高圧開閉器の役割と見分け方」でも解説しています。
整定表の見方|6項目を同じ機器番号でつなぐ
整定表は、保護継電器に何を監視させ、どの条件で、どの遮断器へ指令を出すかを管理する資料です。設備ごとに様式は異なりますが、次の順で読むと抜けを見つけやすくなります。
- 設置場所・機器番号:どの盤・どの回路の継電器か
- 入力変成器:CT・ZCT・VT等の比率と接続先
- 保護要素:過電流、地絡、方向、電圧のどれを監視するか
- 動作値・時間特性:どの条件で何秒後に動作する設定か
- 出力先:どのVCB・PAS・警報回路へ信号を出すか
- 根拠と履歴:計算書、協議資料、変更日、承認者、試験結果
単線結線図の機器番号と整定表の機器番号が一致しているかが最初の確認点です。改修でVCBやCTを交換したのに、整定表だけ旧機器のままなら、数値が正しく見えても信頼できません。
ディジタル形は事故記録も確認する
機種によっては事故時の電流値、時刻、動作要素、接点出力、整定変更履歴、自己監視異常などを記録できます。警報が復帰していても履歴が残る場合があるため、メーカーの取扱説明書に従って点検・原因調査へ活用します。
点検報告書の見方|単体試験と連動試験を分ける
保護継電器の点検結果は、大きく外観・回路確認、継電器単体の特性試験、遮断器との連動試験に分けます。
| 確認区分 | 報告書で見る内容 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 外観・回路 | RUN表示、端子、制御電源、CT・VT二次回路 | 入力・出力回路の前提を確認 |
| 特性試験 | 動作値、動作時間、位相特性、復帰 | 整定とメーカー管理値への適合を確認 |
| 連動試験 | 出力接点、トリップ回路、VCB・PASの開放 | 検出から遮断まで一連で働くか確認 |
「合格」の文字だけで終わらせず、整定値、実測した動作値・動作時間、判定基準、前回値を見ます。メーカー管理値内でも前回から変化が大きい、自己監視警報がある、端子やタップに緩みがある場合は、原因と対応予定を確認します。
三菱電機は、保護継電器が性能を保つには日常・定期の保守点検が必要とし、JEMA技術資料JEM-TR 156の参照、端子・タップ栓、RUN表示、CT・VT二次側接地などの確認点を紹介しています。実際の周期と判定値は、機種の取扱説明書と事業場の保安規程を優先します。
整定変更・機器更新で残す記録
- 変更前後の整定値、変更理由、計算書・特性曲線
- CT・ZCT・VT・ZPDと遮断器の形式・定格
- 電力会社・設計者・メーカーとの協議結果
- 単体試験と遮断器連動試験の結果
- 単線結線図、整定表、盤内表示の改訂版
- 変更日時、実施者、確認者、復旧確認
保護継電器を更新しても、旧機種と新機種で動作特性や接点構成が同じとは限りません。形式を置き換えるだけでなく、入力回路、出力先、制御電源、特性曲線、試験方法をメーカー資料で再確認します。
確認クイズ|継電器が動けば十分か
【問題】 年次点検でOCR単体の動作値と動作時間が基準内でした。保護システムの確認として次に重要なのはどれでしょうか。
ア. OCRの整定値を少し高く変更する
イ. OCRの外箱だけ清掃して終了する
ウ. 出力回路を通じて対象の遮断器が開放するか連動を確認する
エ. CT比を記録から削除する
まとめ|略号・整定・出力先を一つの流れで読む
- 保護継電器は異常を検出・判断し、遮断器へ開放指令を出す
- OCRは過電流、GRは零相電流、DGRは地絡の大きさと方向を監視する
- 整定表はCT比、動作値、時間特性、出力先、協調根拠を一組で読む
- 点検報告書は実測値、前回値、判定基準、単体試験・連動試験を確認する
- ディジタル形は事故・動作・自己監視・整定変更の履歴も活用する
- 整定値は自己判断で変更せず、電気主任技術者等が保護協調を確認する
公式資料・確認先
内容確認日:2026年7月24日。継電器の仕様、整定、判定基準は機種・系統・電力会社との協議内容で異なります。実務では最新の取扱説明書、整定計算書、保安規程を確認してください。
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