この記事でわかること
- 電気工事業法の目的と電気工事士法との違い
- 登録電気工事業者と通知電気工事業者(みなし含む)の区分
- 主任電気工事士の設置義務と必要な資格・経験
- 帳簿の備え付け・器具の備え付け義務と保存期間
結論から言います
電気工事業法(でんきこうじぎょうほう)は、電気工事の「事業者(会社や個人事業主)」を規制する法律です。
正式名称は「電気工事業の業務の適正化に関する法律」。名前が長いので、一般には「電気工事業法」と呼ばれています。
似た名前の「電気工事士法」は個人の資格を定める法律でしたよね(詳しくは「電気工事士法をわかりやすく解説|第二種電気工事士 法令」をどうぞ)。一方、電気工事業法は事業者の登録・届出・義務を定める法律です。
ざっくりイメージするとこうなります。
つまり、電気工事士の資格を持っている人を雇って電気工事をビジネスとして行うなら、この法律に従って登録や届出をしなければいけない――そういう法律です。
では、具体的に何が定められているのか、試験に出るポイントを中心に見ていきましょう!
電気工事業法の目的(第1条)
まずは法律の目的です。条文を確認してみましょう。
電気工事業法 第1条(目的)
この法律は、電気工事業を営む者の登録等及びその業務の規制を行うことにより、その業務の適正な実施を確保し、もつて一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安の確保に資することを目的とする。
かたい文章ですね。かみ砕くとこうなります。
【現代語訳】
電気工事を商売にする人(事業者)を登録制にして、仕事のやり方にルールを設けることで、電気設備の安全を守ろう!
キーワードは3つです。
- 登録等 → 事業者を登録・届出で管理する
- 業務の規制 → 器具の備付けや帳簿など、やるべきことを決める
- 保安の確保 → 最終目的は電気設備の安全を守ること
この法律がなかったら?
想像してみてください。もし電気工事業法がなかったら、誰でも「電気工事やります!」と看板を出して商売を始められてしまいます。資格のない人に工事をさせたり、測定器も持たずに検査を省略したり……。
そんな業者が増えたら、漏電や感電の事故が多発してしまいますよね。だからこそ、事業者を登録制にして管理する仕組みが必要なのです。
電気工事業者の4つの種類(超重要!)
電気工事業法で最も試験に出るポイントがこれ。電気工事業者は4種類に分類されます。
まずは全体像をつかみましょう。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 登録電気工事業者
一般用電気工作物(いっぱんようでんきこうさくぶつ)の電気工事を行う事業者です。一般用電気工作物とは、住宅や小さな店舗など、低圧(600V以下)で受電している電気設備のこと。
- 手続き:都道府県知事(2つ以上の都道府県にまたがる場合は経済産業大臣)に登録
- 有効期間:5年(5年ごとに更新が必要)
- 審査:あり(要件を満たしているか確認される)
一番メジャーなタイプです。街の電気屋さんや、住宅のコンセント工事・エアコン取付をやっている業者はほとんどがこれに該当します。
② 通知電気工事業者
自家用電気工作物(じかようでんきこうさくぶつ)のみの電気工事を行う事業者です。自家用電気工作物とは、工場やビルなど高圧(600V超)で受電している電気設備のこと。
- 手続き:都道府県知事(または経済産業大臣)に通知(届出)
- 有効期間:なし(更新不要)
- 審査:なし(届け出ればOK)
「自家用のみ」がポイント。一般用の工事も行う場合は、②ではなく①の登録が必要です。
③ みなし登録電気工事業者
建設業法に基づく建設業の許可を受けている事業者が、一般用電気工作物の工事も行う場合です。
- 手続き:都道府県知事(または経済産業大臣)に届出を行えば、登録電気工事業者とみなされる
- 有効期間:建設業許可の有効期間と連動
建設業の許可を取る時点ですでに厳しい審査を通過しているので、改めて登録審査をする必要がないというわけです。
④ みなし通知電気工事業者
建設業許可を持っていて、自家用電気工作物のみの工事を行う場合です。
- 手続き:都道府県知事(または経済産業大臣)に届出を行えば、通知電気工事業者とみなされる
覚え方のコツ
4種類もあると混乱しそうですが、次の2軸で整理すればスッキリです。
- 軸1:何の工事をやるか? → 一般用を含む → 登録系 / 自家用のみ → 通知系
- 軸2:建設業許可があるか? → なし → そのまま / あり → 「みなし」が付く
登録と届出(通知)の違い
4種類の事業者を理解するうえで重要なのが、「登録」と「届出(通知)」の違いです。
なぜ一般用は「登録」で、自家用は「通知」なのか?
一般用電気工作物は住宅や小規模店舗の設備です。つまり、電気の専門知識を持たない一般の人が使う設備です。だからこそ、工事業者を厳しく管理する必要があります。
一方、自家用電気工作物は工場やビルなどの大規模設備で、電気主任技術者という専門家が常駐して管理しています。設備側にもチェック機能があるため、事業者の管理は比較的緩い「届出制」で足りるという考え方です。
主任電気工事士の設置義務(重要!)
主任電気工事士(しゅにんでんきこうじし)とは、一般用電気工作物の電気工事に関する作業を管理する責任者のことです。
電気工事業法 第19条
登録電気工事業者は、その一般用電気工作物に係る電気工事の業務を行う営業所ごとに、主任電気工事士を置かなければならない。
【現代語訳】
一般用の電気工事をやる営業所には、必ず主任電気工事士を配置しなさい!
主任電気工事士になれる人
主任電気工事士になるための条件は以下のとおりです。
- 第一種電気工事士 → 免状があればすぐなれる
- 第二種電気工事士 → 免状取得後、電気工事に関する実務経験が3年以上必要
ここは試験で非常によく問われるポイントです。「第二種+実務経験3年」というセットで覚えてください。
なぜ主任電気工事士が必要なのか?
現場を想像してみましょう。ある電気工事会社に、入社したての新人がいるとします。新人にいきなり一人で住宅の配線工事をやらせたら、接続ミスや施工不良が起きるかもしれません。
そこで、経験豊富な主任電気工事士が現場の作業を管理・指導することで、工事の品質と安全を確保するわけです。
注意点
- 主任電気工事士の設置が必要なのは、一般用電気工作物の工事を行う営業所のみ
- 自家用電気工作物のみの工事を行う通知電気工事業者には、主任電気工事士の設置義務はありません
電気工事業者の義務
電気工事業法では、事業者に対していくつかの義務を課しています。試験でよく出るのは次の3つです。
1. 器具の備付け
営業所ごとに、以下の測定器具を備え付けなければなりません。
【一般用電気工作物の工事を行う場合】
- 絶縁抵抗計(ぜつえんていこうけい) ― 電線の絶縁状態を測定する
- 接地抵抗計(せっちていこうけい) ― アースの抵抗値を測定する
- 回路計(かいろけい) ― 回路の導通や抵抗値を測定する(テスターのこと)
これらの測定器は、工事完了後の竣工検査(しゅんこうけんさ)に欠かせないものです(詳しくは「絶縁抵抗測定・接地抵抗測定をわかりやすく解説」を参照)。
【自家用電気工作物の工事を行う場合】
上記3つに加えて、以下も必要です。
- 絶縁耐力試験装置 ― 高い電圧をかけて絶縁性能を試験する装置
- 継電器試験装置(けいでんきしけんそうち) ― 保護リレーの動作を試験する装置
自家用は高圧設備なので、一般用より高度な測定器が必要になるわけですね。
2. 標識の掲示
営業所および施工場所の見やすい場所に、電気工事業者であることを示す標識を掲げなければなりません。
標識には、氏名または名称、登録番号、登録年月日、営業所の名称などが記載されます。
3. 帳簿の備付け・保存
営業所ごとに帳簿を備え、電気工事の内容を記録しなければなりません。帳簿の保存期間は5年間です。試験では「3年」「10年」などのひっかけ選択肢が出るので、「帳簿も登録も5年」とセットで覚えましょう。
記載事項には、注文者の氏名・住所、工事の種類、施工場所、施工年月日、主任電気工事士の氏名などが含まれます。
義務のまとめ
電気工事士法と電気工事業法の違い(整理)
名前が似ているこの2つの法律、試験では「どちらの法律の話か?」を正確に見分ける必要があります。ここで整理しておきましょう。
試験対策としては、「免状」「資格」の話が出たら電気工事士法、「登録」「届出」「営業所」の話が出たら電気工事業法と判断しましょう。
関連して、「電気設備技術基準をわかりやすく解説|絶縁抵抗・接地・電圧区分|第二種電気工事士」も法令科目の重要テーマです。あわせて確認しておきましょう。
確認クイズ
Q1. 登録電気工事業者の登録の有効期間は何年ですか?
Q2. 第二種電気工事士が主任電気工事士になるための条件は何ですか?
Q3. 一般用電気工作物の電気工事を行う事業者が、営業所に備え付けなければならない測定器具を3つ答えてください。
まとめ
この記事で学んだポイントを振り返りましょう。
- 電気工事業法は、電気工事を事業として行う者を規制する法律
- 事業者は4種類(登録・通知・みなし登録・みなし通知)
- 一般用の工事を含む → 登録(審査あり・5年更新)
- 自家用のみの工事 → 通知(届出制・更新不要)
- 建設業許可がある → 「みなし」が付く
- 一般用の工事を行う営業所には主任電気工事士を設置
- 主任電気工事士の要件:第一種免状、または第二種免状+実務経験3年以上
- 事業者の義務:器具の備付け・標識の掲示・帳簿の備付け
関連記事
- 電気工事士法 → 「電気工事士法」
- 電気事業法 → 「電気事業法」
- 電気用品安全法 → 「電気用品安全法」
- 電気設備技術基準 → 「電気設備技術基準」
- 絶縁抵抗・接地抵抗測定 → 「絶縁抵抗測定・接地抵抗測定」
- 竣工検査 → 「導通試験・竣工検査」
まとめ問題
記事の内容が理解できたか、確認してみましょう!
【問題1】
ある電気工事会社が、住宅のコンセント増設工事やエアコンの取付工事を主な業務として営業しようとしている。この会社が電気工事業法上の手続きとして行うべきものは次のうちどれか。
イ.経済産業大臣への通知
ロ.都道府県知事への登録
ハ.都道府県知事への届出のみ
ニ.特に手続きは不要
【問題2】
電気工事業法に基づく主任電気工事士に関する記述として、正しいものはどれか。
イ.第二種電気工事士の免状があれば、実務経験がなくてもすぐに主任電気工事士になれる
ロ.主任電気工事士は、自家用電気工作物の工事を行う営業所にも設置しなければならない
ハ.第二種電気工事士の免状取得後、電気工事に関する実務経験が3年以上あれば主任電気工事士になれる
ニ.主任電気工事士は、事業者ごとに1名設置すればよい
【問題3】
ある電気工事業者の営業所に備え付けるべき器具として、電気工事業法で定められていないものはどれか。ただし、この事業者は一般用電気工作物の工事のみを行うものとする。
イ.絶縁抵抗計
ロ.接地抵抗計
ハ.回路計(テスター)
ニ.絶縁耐力試験装置
テキストで法令を含む全範囲を学べます。
よくある質問
Q. 電気工事業の登録と届出の違いは?
A. 登録は建設業許可を持たない電気工事業者が必要な手続き、届出(通知)は建設業許可を持つ事業者が行う手続きです。
Q. 主任電気工事士とは?
A. 一般用電気工作物の電気工事を行う営業所ごとに置く必要がある技術者です。第一種電気工事士または第二種電気工事士で3年以上の実務経験者が就任できます。
Q. 電気工事業者の義務は?
A. 主任電気工事士の配置、器具の備え付け、帳簿の備え付け・保存(5年間)、標識の掲示などが義務付けられています。
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