1種 配電理論・配線設計

高圧配電線路の電圧降下と短絡電流計算をわかりやすく解説|第一種電気工事士 配電理論

この記事でわかること

  • 三相3線式の電圧降下公式(リアクタンス含む)
  • %インピーダンスを使った短絡電流の計算
  • 基準容量換算の考え方と計算例
  • 電力損失と電圧変動率の求め方
  • 高圧で送電する理由を数字で理解する

結論から言います

第一種電気工事士の配電理論では、高圧配電線路の電圧降下計算と短絡電流計算が重要テーマです。第二種では低圧の単相・三相回路の電圧降下だけでしたが、第一種では6,600V配電線の電圧降下や、変圧器の%インピーダンスを使った短絡電流計算が加わります。

公式を暗記するだけでなく、「なぜその計算が必要なのか」を理解すると、試験でも応用が利きます。

高圧配電線路の電圧降下

なぜ電圧降下を計算するのか?

電線には抵抗やリアクタンスがあるので、電流が流れると電圧が下がります。配電線の末端で電圧が下がりすぎると、モーターの出力低下や照明のちらつきなど、機器の正常な動作に支障をきたします。

電気設備技術基準では、低圧配電線の電圧降下は供給変圧器の二次端子から最遠端までの間で、標準電圧の2%以下(60m超は4%以下)と定められています。高圧配電線でも、末端の電圧が適正範囲に収まるよう計算・管理する必要があります。

三相3線式の電圧降下公式

三相3線式 電圧降下

v = √3 × I × (R cosθ + X sinθ) × L [V]

v:電圧降下[V]、I:線電流[A]、R:1線の抵抗[Ω/km]
X:1線のリアクタンス[Ω/km]、L:こう長[km]、cosθ:力率

第二種で学んだ三相の電圧降下公式と同じ形ですが、第一種ではリアクタンス(X)の項が加わるのがポイントです。低圧の太い電線では抵抗成分が支配的ですが、高圧の配電線ではリアクタンス成分も無視できないためです。

電圧降下率

電圧降下率 ε = (v / V) × 100 [%]

V:送電端電圧(線間電圧)

計算例

三相3線式6,600Vの配電線路で、こう長2km、線電流50A、1線の抵抗0.3Ω/km、リアクタンス0.4Ω/km、力率80%(遅れ)のとき、電圧降下と電圧降下率を求めよ。

解き方:
cosθ = 0.8 → sinθ = 0.6
v = √3 × 50 × (0.3 × 0.8 + 0.4 × 0.6) × 2
v = √3 × 50 × (0.24 + 0.24) × 2
v = √3 × 50 × 0.48 × 2 = √3 × 48 ≒ 83.1V

電圧降下率 ε = (83.1 / 6,600) × 100 ≒ 1.26%

短絡電流の計算

短絡電流とは?

短絡(ショート)が起きると、回路のインピーダンスが極めて小さくなり、通常の数十倍〜数百倍の大電流が瞬間的に流れます。この電流が短絡電流です。

短絡電流の大きさを知ることは、遮断器や保護装置の選定に不可欠です。遮断器が短絡電流を遮断できなければ、設備が焼損して大事故につながります。

%インピーダンス(%Z)

短絡電流の計算には%インピーダンスを使います。変圧器や発電機の内部インピーダンスを、定格値に対する百分率で表したものです。

%インピーダンスの定義

%Z = (In × Z / Vn) × 100 [%]

In:定格電流、Z:インピーダンス、Vn:定格電圧(相電圧)

%インピーダンスの意味:「定格電流を流したとき、インピーダンスによる電圧降下が定格電圧の何%に相当するか」を表しています。変圧器の銘板に必ず記載されている値です。

短絡電流の計算公式

短絡電流の公式

Is = In × (100 / %Z) [A]

Is:短絡電流、In:定格電流、%Z:%インピーダンス

つまり、%Zが小さいほど短絡電流は大きくなります。%Z = 5%の変圧器なら、短絡電流は定格電流の20倍(100/5)になります。

定格電流の求め方

変圧器の定格電流は、容量と電圧から求めます。

三相変圧器:In = P / (√3 × V) [A]
単相変圧器:In = P / V [A]

P:定格容量[VA]、V:定格電圧(線間)[V]

計算例

定格容量500kVA、定格電圧6,600V/210V、%インピーダンス5%の三相変圧器の二次側で短絡が発生した場合の短絡電流を求めよ。

解き方:
① 二次側定格電流を求める
In = P / (√3 × V) = 500,000 / (√3 × 210) ≒ 1,374A

② 短絡電流を求める
Is = In × (100 / %Z) = 1,374 × (100 / 5) = 27,480A ≒ 27.5kA

27,500A——定格電流の20倍もの電流が流れます。遮断器はこの短絡電流を安全に遮断できる遮断容量を持つものを選定する必要があります。

短絡容量

短絡電流の大きさを電力(VA)で表したものが短絡容量です。遮断器の選定では短絡容量[MVA]でカタログを比較することもあります。

三相短絡容量 Ps = √3 × V × Is [VA]
= 定格容量 × (100 / %Z) [VA]

V:定格電圧(線間)、Is:短絡電流

上の計算例では Ps = √3 × 210 × 27,480 ≒ 10,000kVA = 10MVA です。この値を超える遮断容量を持つ遮断器が必要になります。

%インピーダンスの基準容量換算

複数の変圧器や電源が関係する回路では、%インピーダンスを同じ基準容量に揃えてから計算する必要があります。

基準容量換算

%Z' = %Z × (Pb / Pn)

%Z':換算後の%Z、Pb:基準容量、Pn:機器の定格容量

例えば、基準容量を10MVAとし、定格容量500kVA・%Z=5%の変圧器を換算すると、%Z' = 5 × (10,000/500) = 100% になります。

電力損失の計算

配電線路の電力損失も、第一種で出題されるテーマです。

三相3線式 電力損失

Ploss = 3 × I² × R × L [W]

I:線電流[A]、R:1線の抵抗[Ω/km]、L:こう長[km]

3本の電線それぞれでI²Rの損失が生じるので「3倍」します。電力損失は電流の2乗に比例するので、電圧を上げて電流を減らすことが損失低減に効果的です。

電圧変動率

変圧器に負荷をかけたとき、二次側の電圧がどれだけ変動するかを表す指標です。

電圧変動率

ε ≒ %R cosθ + %X sinθ [%]

%R:%抵抗降下、%X:%リアクタンス降下、cosθ:負荷の力率

電圧変動率が小さい変圧器ほど、負荷変動に対して安定した電圧を供給できます。

公式早見表

この記事の公式を1枚にまとめました。試験直前の最終確認にも使えます。

高圧配電理論 公式早見表
【電圧降下】
 v = √3 × I × (Rcosθ + Xsinθ) × L [V]
 電圧降下率 ε = v / V × 100 [%]
【短絡電流】
 In = P / (√3 × V) [三相] / In = P / V [単相]
 Is = In × (100 / %Z)
 Ps = √3 × V × Is [短絡容量]
【%Z基準容量換算】
 %Z' = %Z × (Pb / Pn)
【電力損失】
 Ploss = 3I²RL [W]
【電圧変動率】
 ε ≒ %Rcosθ + %Xsinθ [%]

計算問題の解き方フロー

試験の計算問題は大きく「電圧降下」と「短絡電流」の2パターン。それぞれの手順を整理しておきましょう。

パターン① 電圧降下の計算
Step 1:力率cosθから sinθを求める(sinθ = √(1-cos²θ))
Step 2:公式に代入 → v = √3 × I × (Rcosθ + Xsinθ) × L
Step 3:電圧降下率を聞かれたら → ε = v / V × 100 [%]
パターン② 短絡電流の計算
Step 1:定格電流を求める → In = P / (√3 × V) [三相]
Step 2:基準容量が違えば換算 → %Z' = %Z × (Pb / Pn)
Step 3:短絡電流 → Is = In × (100 / %Z)
Step 4:短絡容量を聞かれたら → Ps = √3 × V × Is

よくある計算ミス 3選

試験で差がつくポイント — この3つを潰せば得点源

ミス1:cosθとsinθを逆に使う
電圧降下 v = √3I(Rcosθ + Xsinθ)L の「R(抵抗)にはcos、X(リアクタンス)にはsin」。覚え方:「R-cos、X-sin」をセットで暗記。力率100%(cosθ=1, sinθ=0)のときXの項が消えることからも確認できます。

ミス2:三相の定格電流で √3 を忘れる
三相変圧器の定格電流 In = P / (√3 × V)。単相(In = P / V)と混同して√3を忘れると、短絡電流が√3倍ずれます。「三相は√3で割る」を徹底しましょう。

ミス3:%Zの基準容量換算を忘れる
複数機器の%Zを足し合わせるには、全て同じ基準容量に揃える必要があります。定格容量が違う機器の%Zをそのまま足すと計算結果が狂います。迷ったら「%Z' = %Z × (Pb/Pn)」を確認。

なぜ高圧で送電するのか? — 数字で実感

同じ100kWの電力を送るとき、電圧を変えると電流と損失はこう変わります。

送電電圧 電流(力率1) 電力損失の比率
200V 289A 1,089倍
6,600V 8.75A 1倍(基準)
66,000V 0.875A 0.01倍

※ Ploss = 3I²RL で、P=100kW, cosθ=1, 同一電線の場合。I = P/(√3V)

200Vで送ると6,600Vに比べて損失は約1,089倍にもなります。だから発電所から需要家までの長距離は高圧〜特別高圧で送電し、需要家の直前で変圧器によって低圧に落とすのです。この仕組みを理解していると、確認問題4のような問題に迷いなく答えられます。

まとめ

この記事のポイント
✔ 三相の電圧降下 v = √3I(Rcosθ + Xsinθ)L
✔ 第一種ではリアクタンス成分(Xsinθ)が加わる
✔ %インピーダンス = インピーダンスによる電圧降下の割合
✔ 短絡電流 Is = In × (100/%Z)
✔ %Zが小さいほど短絡電流は大きい
✔ 基準容量換算:%Z' = %Z × (Pb/Pn)
✔ 電力損失 P = 3I²RL(電流の2乗に比例)

確認問題

【問題1】 定格容量300kVA、定格二次電圧210V、%インピーダンス4%の三相変圧器の二次側端子で短絡事故が発生した。短絡電流[kA]として最も近い値はどれか。

イ.10.3
ロ.17.2
ハ.20.6
ニ.25.7

解答を見る

正解:ハ
定格二次電流 In = 300,000 / (√3 × 210) ≒ 824.8A
短絡電流 Is = 824.8 × (100/4) = 20,620A ≒ 20.6kA

【問題2】 三相3線式6,600Vの高圧配電線路で、こう長3km、線電流40A、電線1条の抵抗が0.5Ω/km、リアクタンスが0.3Ω/km、負荷力率が100%のとき、電圧降下[V]として最も近い値はどれか。

イ.60
ロ.104
ハ.120
ニ.180

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正解:ロ
力率100%なのでcosθ=1、sinθ=0
v = √3 × 40 × (0.5×1 + 0.3×0) × 3 = √3 × 40 × 0.5 × 3 = √3 × 60 ≒ 103.9V ≒ 104V
力率100%の場合、リアクタンス成分は消えて抵抗成分のみになります。

【問題3】 定格容量1,000kVA、%インピーダンス5%の変圧器を、基準容量10MVAに換算したときの%インピーダンスはいくらか。

イ.0.5%
ロ.5%
ハ.10%
ニ.50%

解答を見る

正解:ニ
%Z' = %Z × (Pb/Pn) = 5 × (10,000/1,000) = 50%
基準容量が定格容量の10倍なので、%インピーダンスも10倍になります。

【問題4】 三相3線式配電線路の電力損失を減らす方法として、最も効果的なものはどれか。

イ.送電距離を2倍にする
ロ.送電電圧を2倍にする
ハ.負荷の力率を下げる
ニ.電線の抵抗を大きくする

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正解:ロ
同じ電力を送る場合、電圧を2倍にすれば電流は1/2になります。電力損失はI²Rに比例するので、電流が1/2になれば損失は1/4に減ります。送電距離を2倍にすると損失は2倍、力率を下げると電流が増えて損失増、抵抗を大きくすれば損失増です。

第二種で学んだ電圧降下の基礎は「単相2線式・単相3線式の電圧降下を計算しよう|第二種電気工事士」「三相3線式の電圧降下と電力計算をわかりやすく解説|第二種電気工事士」で復習できます。三相交流回路の基礎は「三相交流回路の計算|Y-Δ変換と三相電力をわかりやすく解説|第一種電気工事士」を参照してください。

第一種の学科対策に

配電理論の計算は公式の暗記だけでなく、問題を繰り返し解いて計算パターンを身につけることが重要です。

独学に不安がある方は、通信講座でプロの解説を受けるのも効果的です。

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