この記事でわかること
- 電圧降下の原因と現場で問題になる理由
- 単相2線式の電圧降下の公式(e=2Ir)の導き方と使い方
- 単相3線式の電圧降下の公式と平衡・不平衡の違い
- 試験に出る電圧降下の計算問題の解き方のコツ
結論から言います:電圧降下とは「電線を通る間に電圧が目減りすること」
結論から言います。電圧降下(でんあつこうか)とは、電源から負荷(ふか=電気を使う機器)まで電線を通る間に、電線自体の抵抗(ていこう)によって電圧が下がる現象のことです。
コンセントの電圧は100Vのはずなのに、長い電線の先では95Vや90Vしか届かない――。電圧降下はまさにそういう話です。第二種電気工事士の学科試験では「配電理論・配線設計」の分野で出題され、公式を使った計算問題がほぼ毎回出ます。
この記事では、単相2線式(たんそうにせんしき)と単相3線式(たんそうさんせんしき)の電圧降下の公式を、「なぜそうなるのか」から丁寧に解説していきます。公式の暗記だけでなく、現場での感覚もつかめるように書きましたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
まだオームの法則に自信がない方は、先に「オームの法則と合成抵抗をわかりやすく解説|第二種電気工事士 基礎理論」を読んでおくとスムーズです。
電圧降下はなぜ問題なのか
「ちょっと電圧が下がるくらい、大したことないのでは?」と思うかもしれません。でも実際の現場では、電圧降下は深刻なトラブルの原因になります。
- 照明が暗くなる ── 蛍光灯やLEDがチラついたり、所定の明るさが出ない
- モーターが回らない/過熱する ── エアコンや換気扇のモーターは電圧が下がると回転が不安定になり、最悪の場合は焼損(しょうそん)する
- 精密機器が誤動作する ── コンピュータや制御機器は電圧の変動に弱い
- 電線自体が発熱する ── 降下分のエネルギーは電線で「熱」に変わっているため、電力のムダでもある
つまり電圧降下は「機器の故障」「電力の浪費」「火災のリスク」という三重苦につながるわけです。だから電気工事の現場では、電圧降下を一定の範囲内に収めるように電線の太さや長さを設計する必要があります。
水流でイメージしよう
電気の話はイメージしにくいので、水流に例えてみましょう。
= 電源(100V)
= 長い電線(抵抗あり)
= 負荷の電圧↓
ホースが長いほど、細いほど、途中の摩擦で水圧が落ちますよね。電線もまったく同じで、長いほど・細いほど抵抗が大きくなり、電圧が多く降下します。
単相2線式の電圧降下公式
公式:e = 2IR
単相2線式の電圧降下の公式はこちらです。
I:負荷電流〔A〕
R:電線1本あたりの抵抗〔Ω〕
なぜ「2倍」なのか
ここが最大のポイントです。電流は行きと帰りの2本の電線を通るからです。
単相2線式は、電源から負荷まで「行きの線」と「帰りの線」の2本でつながっています。それぞれの電線に抵抗Rがあるので、往復で抵抗は2R。オームの法則(V = IR)を当てはめると、降下する電圧は「I × 2R = 2IR」になります。
現場でどう使う?
たとえば、倉庫に電灯を設置する工事を考えてみましょう。分電盤から電灯まで50mの距離があり、電流は10A。電線1本あたりの抵抗が0.2Ωだとすると、
e = 2 × 10 × 0.2 = 4V
100Vのうち4Vが電線で失われ、電灯には96Vしか届きません。これが許容範囲内かどうかをチェックするのが、電気工事士の大事な仕事です。
単相3線式の電圧降下公式
公式:e = IR
I:負荷電流〔A〕
R:電線1本あたりの抵抗〔Ω〕
「あれ?2倍じゃないの?」と思った方、いい着眼点です。単相3線式では、平衡(へいこう)負荷のとき中性線に電流が流れないため、片道分の降下だけで済むのです。
単相3線式の仕組み
単相3線式は、上の線・中性線(ちゅうせいせん)・下の線の3本の電線を使う配電方式です。
つまり、1つの回路から100Vと200Vの両方を取り出せるのが単相3線式の大きなメリットです。一般住宅の分電盤を見ると、単相3線式で引き込まれていることがほとんどです。
平衡負荷と不平衡負荷
| 項目 | 平衡(バランス)負荷 | 不平衡(アンバランス)負荷 |
|---|---|---|
| 上下の負荷 | 同じ | 違う |
| 中性線の電流 | 0A(流れない) | 差分が流れる |
| 電圧降下公式 | e = IR | 計算が複雑になる |
試験では基本的に平衡負荷(上下の負荷が同じ)の条件で出題されます。平衡時には中性線に電流が流れないので、電圧降下は電圧線1本分、つまり e = IR で計算できます。
中性線欠相(ちゅうせいせんけっそう)の危険
単相3線式で特に怖いのが、中性線が断線(だんせん)した場合です。これを「中性線欠相」と呼びます。
中性線が切れると、上下の負荷が直列(ちょくれつ)につながった状態になります。負荷のバランスが崩れていると、一方に異常に高い電圧がかかり、もう一方は電圧が低くなります。
- 負荷が軽い側 → 電圧が跳ね上がる(例:150V以上になることも)
- 負荷が重い側 → 電圧が極端に低下
結果として、家電製品が壊れたり、最悪の場合は火災につながります。だから中性線にはヒューズやブレーカーを入れてはいけない(中性線を遮断してはならない)というルールがあるのです。「電気設備技術基準をわかりやすく解説|絶縁抵抗・接地・電圧区分|第二種電気工事士」でも関連する規定を解説しています。
電線の抵抗の求め方:R = ρL/A
電圧降下を計算するには、まず電線の抵抗(R)を求める必要があります。そこで使うのが次の公式です。
ρ(ロー):抵抗率(ていこうりつ)〔Ω・mm²/m〕
L:電線の長さ〔m〕
A:電線の断面積〔mm²〕
この公式の意味
水道のホースに例えると、こうなります。
- ρ(抵抗率)= ホースの材質。ゴムホースよりも滑らかなホースのほうが水が通りやすい → 銅はアルミより抵抗率が低い(電気を通しやすい)
- L(長さ)= ホースが長いほど水圧が落ちる → 電線が長いほど抵抗が大きい
- A(断面積)= ホースが太いほど水が通りやすい → 電線が太いほど抵抗が小さい
試験でよく使う抵抗率
| 材質 | 抵抗率 ρ〔Ω・mm²/m〕 |
|---|---|
| 銅(どう) | 約 1/56 ≒ 0.0179 |
| アルミニウム | 約 1/35 ≒ 0.0286 |
試験問題では「銅の抵抗率は 1/56 Ω・mm²/m とする」のように条件が与えられることが多いので、公式の使い方をしっかり覚えておけばOKです。
現場でどう使う?
電気工事士が配線設計をするとき、「この距離でこの電流を流すなら、電線は何mm²以上必要か?」を判断する根拠になります。電線が細すぎれば電圧降下が大きくなり、太すぎればコストが余計にかかる。電線の許容電流とあわせて適切なサイズを選ぶのがプロの仕事です。
電圧降下率と内線規程の基準
電圧降下率の計算
電圧降下率(でんあつこうかりつ)は、電源電圧に対して何%の電圧が降下したかを示す値です。
内線規程(ないせんきてい)の基準
内線規程では、電圧降下の許容値を次のように定めています。
| 区間 | 電圧降下の上限 |
|---|---|
| 幹線(かんせん) | 3%以内 |
| 分岐回路(ぶんきかいろ) | 2%以内 |
| 幹線+分岐回路の合計 | 5%以内(電気使用場所の引込口から最遠端まで) |
ただし、電気使用場所内の幹線のこう長(電線の長さ)が60mを超える場合は、幹線で最大5%まで、合計7%以内まで認められています。大きな工場や倉庫などで配線距離が長くなるケースを想定したルールです。
現場での感覚
住宅の工事では分岐回路の長さがせいぜい20〜30m程度なので、電圧降下が問題になることはあまりありません。しかし、工場・倉庫・農業用ハウスなど広い施設で配線距離が100m以上になるようなケースでは、電圧降下を真剣に計算して、電線サイズを1段階・2段階太くすることがよくあります。
R = ρL / A
抵抗率×長さ÷断面積
2線式: e = 2IR
3線式: e = IR
幹線 3%以内
分岐 2%以内
配電方式(2線 or 3線)を確認してから公式を選ぶのがコツ!
計算例題にチャレンジ!
【例題1】単相2線式の電圧降下
問題:町工場の分電盤から、40m離れた作業場の照明(負荷電流15A)に単相2線式で配線する。使用する銅電線の断面積は5.5mm²、銅の抵抗率を 1/56 Ω・mm²/m とするとき、電圧降下〔V〕はいくらか。
【例題2】単相3線式の電圧降下
問題:住宅の分電盤から25m先のエアコン専用回路に、単相3線式(平衡負荷)で配線する。負荷電流は20A、使用する銅電線の断面積は8mm²、銅の抵抗率を 1/56 Ω・mm²/m とするとき、電圧降下〔V〕はいくらか。
まとめ:公式の整理
| 配電方式 | 電圧降下の公式 | ポイント |
|---|---|---|
| 単相2線式 | e = 2IR | 往復2本分 |
| 単相3線式(平衡負荷) | e = IR | 中性線に電流が流れないため片道分 |
- 電線の抵抗は R = ρL/A で求める
- 電圧降下率〔%〕= e ÷ V × 100
- 内線規程の基準:幹線3%以内、分岐回路2%以内、合計5%以内
- 中性線欠相は非常に危険 → 中性線にヒューズ・ブレーカーを入れてはいけない
公式自体はシンプルですが、「なぜ2倍なのか」「なぜ3線式は1倍なのか」を理解しておくと、試験本番で迷わなくなります。続けて三相3線式の電圧降下と電力計算も学んでおきましょう。
配電理論の計算問題をもっと解きたい方へ
電圧降下の計算は、数値を変えたパターン問題が繰り返し出題されます。過去問演習で計算手順を体に染み込ませましょう。テキスト選びに迷ったらおすすめ参考書ガイドをどうぞ。
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理解度チェック!まとめ問題
【問題1】
倉庫の分電盤から60m離れた投光器(とうこうき)に、単相2線式で配線する。負荷電流は10A、銅電線の断面積は3.5mm²、銅の抵抗率は1/56 Ω・mm²/m である。このときの電圧降下〔V〕に最も近いものはどれか。
イ.3.1V ロ.4.5V ハ.6.1V ニ.9.2V
【問題2】
単相3線式(平衡負荷)の回路において、電圧降下の公式が e = IR(2倍にならない)である理由として、正しいものはどれか。
イ.中性線の抵抗が電圧線より小さいから
ロ.平衡負荷のとき中性線に電流が流れないから
ハ.電源電圧が200Vで高いから
ニ.電線が3本あるため抵抗が3分の1になるから
【問題3】
単相3線式の配線で中性線が断線(中性線欠相)した場合に起こり得る現象として、正しいものはどれか。
イ.すべての負荷に均等に200Vが供給される
ロ.回路全体の電流がゼロになる
ハ.負荷が軽い側に異常な高電圧がかかる危険がある
ニ.漏電遮断器が必ず動作して回路を遮断する
お疲れさまでした!電圧降下の計算は、公式を覚えるだけでなく「なぜ2倍か」「なぜ1倍か」の理屈を理解しておくことが大切です。試験では数値を変えた類題が繰り返し出るので、R = ρL/A → e = 2IR(または IR)の流れを何度も手を動かして練習してみてください。
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