この記事では、三相・単相の配電方式と電圧を測る2点を確認し、√3Ir・2Ir・Irを条件から選んで、電圧降下・電力・電線損失を計算できるようになります。先に三相の線間値を整理し、続いて単相の往復線と中性線を比較します。Iは線電流〔A〕、rは電線1本の抵抗〔Ω〕、eは電圧降下〔V〕です。
√3の式は平衡した正弦波三相回路を基本とします。始動中のモーター、不平衡や波形ひずみ、インバータ出力側を定常状態の式だけで評価しません。
三相交流は120°ずれた3相で構成される
平衡した正弦波三相交流では、同じ周波数・同じ実効値の3つの相電圧が120°ずつずれています。3つの相電流の瞬時値の和は0となり、平衡負荷の三相有効電力は時間に対して一定です。この性質により、三相誘導電動機では回転磁界を作れます。
「三相なら単相より必ず効率がよい」「3本なら必ず√3倍の電力を送れる」とだけ覚えるのは不十分です。送れる電力や損失の比較には、線間電圧、線電流、導体量、力率、電線抵抗などの条件をそろえる必要があります。
線間値と相値をY結線・Δ結線で整理
線間電圧VLは線と線の間の電圧、相電圧VPは1相の巻線・負荷にかかる電圧です。線電流ILは電線を流れる電流、相電流IPは1相の巻線・負荷を流れる電流です。
| 結線 | 電圧の関係 | 電流の関係 |
|---|---|---|
| Y結線 | VL=√3VP | IL=IP |
| Δ結線 | VL=VP | IL=√3IP |
たとえば線間電圧200Vの平衡Y結線では、相電圧は200V/√3≒115.5Vです。線間電圧200Vの平衡Δ結線では、各相へ200Vがかかります。結線によって巻線にかかる電圧が変わるため、実機を試験目的で結線変更してはいけません。銘板、端子記号、メーカーの結線図を確認します。
三相電力|線間電圧と線電流なら√3を使う
平衡三相回路の1相当たりの有効電力はVPIPcosφ、3相合計は3VPIPcosφです。Y結線・Δ結線の関係を代入すると、どちらも線間値を使う同じ式になります。
P=√3VLILcosφ
| 電力 | 式 | 単位 |
|---|---|---|
| 皮相電力S | √3VI | VA |
| 有効電力P | √3VIcosφ | W |
| 無効電力Q | √3VIsinφ | var |
力率cosφはP/Sです。たとえば力率0.8ならP=0.8Sですが、QはSの「残り20%」ではありません。φを遅れ36.9°とすればsinφ=0.6なので、Q=0.6Sです。力率のベクトル関係は交流RLC回路の基礎で確認できます。
入力有効電力7.5kWから線電流を求める
三相200V、入力有効電力7.5kW、力率0.8の平衡負荷では、kWをW、%を小数へ直してから逆算します。
I=P/(√3Vcosφ)
I=7,500W/(1.732×200V×0.8)
I≒27.1A
ここで7.5kWは負荷へ入る有効電力です。皮相電力はS=7.5kW/0.8=9.375kVAであり、I=9,375VA/(√3×200V)としても同じ結果になります。
モーターの7.5kWが軸出力なら効率を入れる
モーターの定格出力は、一般に軸から取り出せる機械出力を表します。入力有効電力Pinと軸出力Pout、効率ηの関係はη=Pout/Pinです。
I=Pout/(√3Vcosφη)
軸出力7.5kW、200V、力率0.82、効率0.88なら、I=7,500W/(1.732×200V×0.82×0.88)≒30.0Aです。効率を省くと約26.4Aとなり、入力電流を小さく見積もります。実際の定格電流、始動電流、使用条件は必ず銘板とメーカー資料で確認してください。
三相3線式の電圧降下|抵抗負荷なら√3Ir
電線1本に生じる抵抗電圧降下Irは各相で120°ずれています。受電端の線間電圧は2相の相電圧差なので、2本の電圧降下をベクトル差で合成すると大きさが√3Irになります。
e=√3Ir
これは平衡した抵抗負荷で、電線のリアクタンスを無視する基本式です。rは1線当たりの抵抗であり、3本分の3rを代入しません。
例:線電流20A、電線1本の抵抗0.2Ω
e=1.732×20A×0.2Ω=6.93Vです。送電端線間電圧が200Vで、ほかの電圧変動を無視すれば、受電端は約193.1Vです。降下率は6.93V/200V×100≒3.46%ですが、適否はこの数値だけで一律に判定せず、問題の条件または適用する設計基準を確認します。
遅れ力率負荷ではリアクタンスを含める
電線1本の抵抗をr、リアクタンスをx、負荷力率をcosφとすると、遅れ力率負荷の線間電圧降下は次の近似式で表せます。
e≒√3I(r cosφ+x sinφ)
線電流30A、r=0.15Ω、x=0.10Ω、遅れ力率0.8(sinφ=0.6)なら、e≒1.732×30A×(0.15Ω×0.8+0.10Ω×0.6)≒9.35Vです。進み力率ではリアクタンス項の符号が変わり、条件によって受電端電圧が上昇することもあります。
電圧降下と電力損失は別の量
電圧降下の単位はVです。一方、3本の電線で発生する抵抗損失は、各線I2rを3相分足して求めます。
Ploss=3I2r
先ほどのI=20A、r=0.2Ωなら、Ploss=3×(20A)2×0.2Ω=240Wです。電圧降下6.93Vへ線電流20Aをそのまま掛けた138.6Wは、3相の線路損失にはなりません。
同じ有効電力と線間電圧を送るなら、力率が低いほど必要電流が増え、電力損失は電流の2乗で増えます。力率改善用コンデンサの役割はコンデンサの計算へつながります。
電圧降下は電線のインピーダンスで生じる
負荷電流が電線を流れると、電線の抵抗やリアクタンスによって電源側と負荷側に電位差が生じます。これが配線の電圧降下です。抵抗だけを考える基本問題では、電線1本の電圧降下はオームの法則からIrとなります。
電線の抵抗は、問題で1本当たりの値が与えられる場合と、長さ・断面積・抵抗率から求める場合があります。
r=ρL/A
| 記号 | 意味 | 確認点 |
|---|---|---|
| ρ | 抵抗率〔Ω・mm2/m〕 | 問題で指定された値を使う |
| L | 電線1本の長さ〔m〕 | 「こう長」は通常、片道の長さ |
| A | 導体断面積〔mm2〕 | 直径dとの混同に注意 |
長さが2倍なら抵抗も2倍、断面積が2倍なら抵抗は1/2です。円形導体の直径dが与えられたときはA=πd2/4なので、抵抗は直径の2乗に反比例します。
単相2線式|往路と復路の2本を数える
単相2線式では、電流Iが一方の電線を通って負荷へ進み、もう一方の電線を通って電源へ戻ります。2本の抵抗がどちらもrなら、回路の配線抵抗は2rです。
e=I(r+r)=2Ir
電圧降下はIr。Lは片道のこう長として抵抗rを求める。
往復2本に同じ電流が流れるため、合計は2Ir。
例:こう長12m、100V・1600Wの抵抗負荷
負荷端電圧が100Vなので、電流はI=P/V=1600W/100V=16Aです。電線の抵抗が1000m当たり5.0Ωなら、1本の抵抗は5.0Ω/km×(12m/1000m/km)=0.06Ω。したがって、
e=2×16A×0.06Ω=1.92V ≒ 2V
この計算では、負荷の「100V」は負荷端電圧です。電源側電圧を求めるなら約100V+1.92V=101.92Vとなります。令和8年度上期の公式問題でも、負荷端電圧から電流を先に求める形式が出題されています。
図2:単相2線式は負荷へ行く線と戻る線の両方で降下する
図2の右の二つの端子の間に負荷がつながります。上の線だけを数えるとIrですが、閉じた回路では下の線にも同じIが流れます。そのため、負荷端の2点間電圧は往復の降下2Irだけ電源側より低くなります。
単相3線式|100V側と200V側を分ける
100/200V単相3線式は、2本の電圧線L1・L2と中性線Nで構成されます。L1-NとN-L2は各100V、L1-L2は200Vです。ここで「3線式だからIr」ではなく、負荷のつながり方を確認します。
| 負荷条件 | 求める電圧 | 簡略式 |
|---|---|---|
| 平衡した2組の100V抵抗負荷 | 各電圧線-中性線 | e=Ir |
| L1-L2間の200V抵抗負荷 | 線間200V | e=2Ir |
| 不平衡な100V負荷 | 各電圧線-中性線 | 各線の電流と中性線電流で計算 |
平衡した100V負荷では中性線電流が0
L1-N側とN-L2側へ同じ大きさの100V抵抗負荷を接続し、各電流がIなら、中性線を流れる電流は差し引き0です。中性線の電圧降下が0となるため、各100V負荷までの降下は電圧線1本分のIrです。
たとえば各側10A、電線1本の抵抗0.1Ωなら、各100V側の電圧降下は10A×0.1Ω=1V、負荷端は各99Vです。3本の電線のうち中性線には電流が流れないため、配線の損失は2本分の2I2r=2×(10A)²×0.1Ω=20Wとなります。
200V負荷では電圧線2本に電流が流れる
200V負荷をL1-L2間へ接続すると、中性線は使いません。電流はL1とL2の2本を往復するので、線間電圧降下は2Irです。単相3線式の設備に接続されていることだけを見てIrとしないでください。
単相2線100Vと単相3線100/200Vを同じ電力・同じ電線抵抗で比較すると、200Vで送る側は電流が1/2になります。電圧降下は電流に比例するため、単相3線式の線間電圧降下は1/2、電源電圧に対する降下率は1/4になります。これは「3本だから」ではなく、電圧を2倍にして同じ電力を送ると電流が半分になるためです。
図3:単相3線式の平衡した100V負荷と中性線
図3は抵抗が等しい負荷A・Bが右側の上下に接続され、その接続点へ中性線Nがつながる構成です。中央の線の電流が0なので、各負荷の電圧降下は上または下の1本分のIrになります。200V負荷を上下端へ直接つなぐと上・下の2本を使い、降下は2Irです。
不平衡負荷|中性線には差電流が流れる
2組の100V負荷電流がI1とI2で異なる場合、抵抗負荷なら中性線電流の大きさは|I1-I2|です。このとき中性線にも電圧降下が生じるので、各100V側を単純なIrだけでは求められません。
試験問題では、各電線の抵抗、負荷抵抗、スイッチの状態などが図で与えられます。電源の中性点を0Vとして、電圧線と中性線それぞれの電圧降下を追うか、節点電圧を使って解きます。複数枝の立式はキルヒホッフの法則で確認できます。
中性線が断線すると2負荷が200Vへ直列につながる
中性線が断線した状態で2組の100V負荷が接続されていると、負荷はL1-L2の200Vに対して直列になります。抵抗が等しければ各100Vですが、抵抗が違えば分圧され、抵抗が大きい側に100Vを超える電圧がかかることがあります。
中性線断線の計算例
100Vで200Wの抵抗負荷はR1=(100V)2/200W=50Ω、100Vで450Wの抵抗負荷はR2=(100V)2/450W≒22.2Ωです。
中性線断線後は200Vに直列なのでI=200V/(50Ω+22.2Ω)≒2.77A。各電圧は2.77A×50Ω≒138.5V、2.77A×22.2Ω≒61.5Vです。定格消費電力が小さい側は抵抗が大きく、高い電圧が分担されます。
現行の電気設備技術基準の解釈は、接地側電線へ過電流遮断器を施設しないことを原則としつつ、多線式電路の中性線に施設した遮断器が動作したとき全極が同時に遮断される場合などを例外としています。そのため、「中性線にはブレーカーを絶対に入れない」と一律に覚えるのではなく、中性線だけが開いて電圧線が通電したままになる状態を防ぐという目的を理解してください。実設備の異常調査や結線変更は、有資格者が停電・無電圧確認を含む手順に従って行います。
交流負荷では力率とリアクタンスも確認
2Ir・Irは、抵抗負荷で電線のリアクタンスを無視できる基本式です。交流回路で電線1本の抵抗をr、リアクタンスをx、負荷力率をcosφとすると、遅れ力率負荷の近似式は次のように表せます。
単相2線式:e≒2I(r cosφ+x sinφ)
単相3線式の平衡100V側:e≒I(r cosφ+x sinφ)
第二種の基本問題で「抵抗負荷」「電線の抵抗だけ」が示されていれば2Ir・Irで解けます。条件に力率やリアクタンスがある場合は省略しません。交流のベクトルと力率は交流RLC回路の基礎で解説しています。
計算問題を解く6ステップ
- 平衡条件を確認:三相3線式でも不平衡なら基本式だけで処理しない
- 値の種類を確認:線間電圧・線電流か、相電圧・相電流か
- 求める量を確認:電力W、電流A、電圧降下V、損失Wを区別
- 入力と出力を確認:消費電力か、モーターの軸出力か
- 単位を変換:kW→W、%→小数
- 検算:P<S、効率<1なら入力>出力、損失は3I2r
単相では、100V側か200V側か、平衡か不平衡か、こう長が片道か、抵抗が往復合計として与えられていないかも確認します。許容電圧降下率は配線区間や供給条件・設計仕様で異なるので、常に2%または5%と固定しません。許容電流は熱の条件であり、電圧降下とは別に判定します。
自己チェック|同じ抵抗でも係数が変わる理由
問1:三相200V・入力6.0kW・力率0.75の平衡負荷の線電流は?
解答・解説:三相有効電力P=√3VIcosφから逆算します。6.0kW=6,000W、I=6,000W÷(1.732×200V×0.75)≒23.1Aです。
問2:平衡Y結線の線間電圧400Vに対する相電圧は?
解答・解説:Y結線では線間電圧が相電圧の√3倍なので、相電圧=400V÷1.732≒231Vです。
問3:線電流15A、1線の抵抗0.2Ω。平衡三相3線式の抵抗損失は?
解答・解説:各線のI²rを3本分足します。P損=3×(15A)²×0.2Ω=135Wです。電圧降下の係数√3とは異なります。
問4:単相2線式でこう長20m、抵抗4Ω/km、電流15Aの電圧降下は?
解答・解説:1本の抵抗r=4Ω/km×(20m÷1,000m/km)=0.08Ω。往復2本なのでe=2×15A×0.08Ω=2.4Vです。
問5:単相3線式の200V負荷に10A、1線0.1Ω。電圧降下はIrでよい?
解答・解説:200V負荷はL1とL2の2本を往復するため2Irです。e=2×10A×0.1Ω=2V。平衡した各100V側だけのIrを流用しません。
問6:中性線が切れ、40Ωと60Ωの抵抗が200Vに直列となった。60Ω側の電圧は?
解答・解説:回路電流I=200V÷(40Ω+60Ω)=2A、60Ω側は2A×60Ω=120Vです。他方は2A×40Ω=80V、合計200Vで検算できます。
電力計算・配電方式の原資料
編集日:2026年9月7日。図解・数値例・自己チェックは当サイト独自の学習用です。電技解釈の本文は移管前の2026年7月28日照合記録を引き継ぎ、2026年9月7日にe-Govの令和7年11月20日改正の公示・新旧対照表を確認しました。同改正で、本稿が扱う第35・148・149条の変更はありません。経産省の本文PDFが取得できないため、原本への再照合日は更新していません。
- 電気技術者試験センター:第二種電気工事士の学科試験のポイント
- 電気技術者試験センター:基礎理論の公式例題(平衡Y結線)
- 電気技術者試験センター:令和8年度上期第二種学科試験問題
- 電気技術者試験センター:令和8年度上期第二種学科試験解答
- 電気技術者試験センター:第二種試験の問題と解答
- 電気技術者試験センター:三相線路の電圧降下・損失の標準解答
- 三菱電機FA:三相交流回路の電力・電力量
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- 電気技術者試験センター:配電理論及び配線設計の公式例題
- 電気技術者試験センター:単相2線式・3線式の比較と中性線欠相の標準解答
- e-Gov:電技解釈の令和7年11月20日改正・結果公示
- e-Gov:同改正の新旧対照表(公募案・修正なし)
次に進む学習先
式の基礎へ戻る人は次にオームの法則・合成抵抗・キルヒホッフを復習します。電線サイズの判断は幹線・分岐回路の設計、力率の意味を深める人は交流RLC回路の基礎へ進んでください。
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