2種 配電理論・配線設計

三相3線式の電圧降下と電力計算をわかりやすく解説|第二種電気工事士 配電理論

この記事でわかること

  • 三相交流の仕組みと単相に比べたメリット
  • Y結線とデルタ結線の線間電圧・線電流・相電流の関係
  • 三相3線式の電圧降下の公式(e=√3Ir)の使い方
  • 三相電力の計算(P=√3VIcosθ)と試験での出題パターン

結論から言います:三相3線式は「大きな電力を効率よく送る方式」

三相(さんそう)3線式とは、位相(いそう)が120°ずつずれた3つの交流を使って電力を送る方式です。工場のモーターやビルのエレベーター、業務用エアコンなど、大きな電力が必要な「動力設備(どうりょくせつび)」に使われています。

単相(たんそう)に比べて同じ電力をより少ない電線で送れるため、コスト面でもエネルギー効率面でも優れています。第二種電気工事士の筆記試験では、三相の電圧降下(でんあつこうか)や電力の計算問題が出題されるので、公式の意味をしっかり理解しておきましょう。

この記事では、三相交流のしくみから電圧降下・電力の計算、Y結線・デルタ結線の違いまで、試験に出るポイントをまるごと解説します。

なお、交流回路の基本(インピーダンスや力率)がまだ不安な方は、先に「交流回路の基礎をイメージで理解!インピーダンスと力率|第二種電気工事士」をチェックしておくとスムーズです。

三相交流とは?──3つの波が120°ずつずれた交流

三相交流のイメージ

家庭のコンセントに来ている電気は「単相交流」。電圧の波が1つだけです。一方、三相交流は電圧の波が3つあり、それぞれ120°(1/3周期)ずつタイミングがずれています。

自転車のペダルをイメージしてください。1人で漕ぐと、ペダルが真上・真下のときに力が入りにくい「ムラ」がありますよね。もし3人が120°ずつ位置をずらしてペダルを踏めたら? ──常に誰かが力を入れている状態になり、回転がとてもスムーズになります。三相交流も同じで、常にどれかの相(そう)が大きな電圧を出しているため、電力の供給が途切れないのです。

三相交流のイメージ
第1相(R相)
0° スタート
第2相(S相)
120° ずれ
第3相(T相)
240° ずれ

3つの波が 120°ずつずれて 交互に電力を供給 → 常に安定した出力

なぜ三相が使われるのか?

理由はシンプルで、「同じ電力を送るのに、単相より電線が少なくて済む」からです。

比較項目 単相3線式 三相3線式
電線本数 3本 3本
送れる電力 基準 約1.73倍
主な用途 住宅・照明 動力(モーター等)

同じ3本の電線なのに、三相のほうが約1.73倍(= √3倍)多くの電力を送れます。電線の材料費が減る=コスト削減になるので、大きな電力を使う工場やビルでは三相が標準です。

三相3線式の電圧降下公式:e = √3 × I × R

公式の全体像

電線には抵抗(ていこう)があるため、送電する途中で電圧が下がります。これが電圧降下です。「オームの法則と合成抵抗をわかりやすく解説|第二種電気工事士 基礎理論」で学んだ V = I × R の応用ですね。

三相3線式では、電圧降下の公式が次のようになります。

e = √3 × I × R

e:電圧降下〔V〕 I:線電流〔A〕 R:電線1本の抵抗〔Ω〕

リアクタンス(誘導性の抵抗成分)を考慮する場合は次の式になります。

e = √3 × I ×(R cosθ + X sinθ)

X:電線1本のリアクタンス〔Ω〕 cosθ:力率

第二種電気工事士の試験では、リアクタンスを無視した e = √3 × I × R が頻出です。まずはこちらを確実に押さえましょう。

三相3線式 電圧降下の計算ステップ
Step 1 問題文から I(線電流)と R(電線1本の抵抗)を読み取る
Step 2 「三相3線式」を確認 → 公式は e = √3 × I × R
Step 3 √3 = 1.732 として数値を代入
Step 4 選択肢と照合(2IR や 3IR の引っかけに注意!)

ポイント: 「三相」と見たら √3、「単相2線」と見たら 2 を掛ける

電圧降下の公式比較(全方式)
方式 公式 覚え方
単相2線式 e = 2IR 行き+帰りの2本分
単相3線式 e = IR 中性線で相殺 → 1本分
三相3線式 e = √3IR 120°ずれ → √3倍

試験では「何線式か」を確認 → 係数(2 / 1 / √3)を選ぶのが最初のステップ!

なぜ√3が出てくるのか?

「なんで単相みたいに e = 2IR じゃないの?」と思いますよね。

単相2線式では、行きと帰りの2本分の電圧降下で e = 2IR でした。三相3線式では3本の電線がありますが、3つの電流が120°ずつずれているため、単純に足し算できません。ベクトル(矢印)として合成すると、その大きさが「2」ではなく「√3(約1.73)」になるのです。

直感的に言えば──

  • 単相:行きと帰りが真逆(180°)→ 電圧降下は「足し算」→ 2倍
  • 三相:位相差が120° → 電圧降下はベクトル合成 → √3倍

120°のずれがあるおかげで、単相より電圧降下が小さくなるのも三相のメリットです。

現場ではどう使う?

たとえば、工場の分電盤(ぶんでんばん)から30m先のモーターに三相200Vを送るとき、電線の太さによっては電圧降下が大きくなりすぎて、モーターが正常に回らないことがあります。この公式を使って「許容範囲内に収まるか」を事前に確認し、必要なら太い電線に変更するわけです。

線間電圧と相電圧の関係

三相回路を理解するうえで欠かせないのが、線間電圧(せんかんでんあつ)相電圧(そうでんあつ)の区別です。

  • 線間電圧(VL:電線と電線の間の電圧。テスターで2本の電線間を測ったときの値
  • 相電圧(VP:電源や負荷の「1つの相」にかかる電圧

これらの関係は結線方式によって変わりますが、最も基本的な関係式は次のとおりです。

VL = √3 × VP

(Y結線の場合)

ここでも√3が登場します。「三相で120°のずれがあると、合成したときに√3倍になる」──これが三相の基本原則です。

身近な例でいうと、三相200Vの動力回路の場合、Y結線であれば相電圧は 200 ÷ √3 ≒ 約115V です。

三相電力の公式:P = √3 × V × I × cosφ

公式と各項の意味

P = √3 × V × I × cosφ

P:三相電力〔W〕 V:線間電圧〔V〕 I:線電流〔A〕 cosφ:力率

記号 意味 補足
P 三相電力〔W〕 3相分の合計電力
V 線間電圧〔V〕 通常200Vか400V
I 線電流〔A〕 電線を流れる電流
cosφ 力率(りきりつ) 有効に使われる電力の割合

cosφ(力率)って何だっけ?

交流回路の基礎をイメージで理解!インピーダンスと力率|第二種電気工事士」で詳しく解説しましたが、簡単に振り返ると──

交流回路では、電圧と電流にタイミングのずれ(位相差)が生じることがあります。力率 cosφ は「電力のうち実際に仕事をしている割合」を示す数値で、0〜1の範囲です。

  • cosφ = 1(力率100%):全電力が有効に使われている
  • cosφ = 0.8(力率80%):電力の80%が有効、残り20%は無効電力

モーターのようなコイル(誘導性負荷)が多い工場では力率が下がりやすく、力率改善のためにコンデンサを設置することがあります。試験でも力率の値が問題文に与えられるので、公式にそのまま代入すればOKです。

なぜこの公式が必要か?

工場やビルの電気設備を設計するとき、「この設備に必要な電力はいくらか?」「ブレーカーや電線の容量は足りるか?」を計算するために使います。電気工事の現場では、設計図面に書かれた三相電力から逆算して電流値を求め、電線やブレーカーの選定に使うことが多いです。

Y結線とΔ結線──2つの結線方式を比較

三相回路の電源や負荷のつなぎ方には、スター(Y)結線デルタ(Δ)結線の2種類があります。

Y結線(スター結線)

3つのコイル(巻線)の一端を1点に集めて接続する方式です。集まった点を中性点(ちゅうせいてん)と呼びます。アルファベットの「Y」の形に似ているのでY結線と呼ばれます。

Y結線(スター結線)

特徴

  • 3つのコイルを1点(中性点)に集める
  • 中性線を引き出せる
  • 変圧器によく使われる

電圧・電流の関係

  • 線間電圧 = √3 × 相電圧
  • 線電流 = 相電流(同じ)

Δ結線(デルタ結線)

3つのコイルを三角形(Δ)の形に環状(かんじょう)につなぐ方式です。

Δ結線(デルタ結線)

特徴

  • 3つのコイルを三角形に接続
  • 中性点がない
  • 大型モーターによく使われる

電圧・電流の関係

  • 線間電圧 = 相電圧(同じ)
  • 線電流 = √3 × 相電流

Y結線とΔ結線の比較表

項目 Y結線 Δ結線
線間電圧 √3 × 相電圧 相電圧と同じ
線電流 相電流と同じ √3 × 相電流
覚え方 電圧に√3 電流に√3

覚え方のコツ:Y結線は「電圧に√3がかかる」、Δ結線は「電流に√3がかかる」と対になっています。「YはV(電圧)に√3」「ΔはI(電流)に√3」──この対応だけ覚えれば、試験で迷いません。

試験での出題パターン:三相の電圧降下・電力計算は第二種の学科で毎回1〜2問出題されます。公式の丸暗記だけでなく、「なぜ√3なのか」を理解しておけば、単相との使い分けで引っかからなくなります。前提知識として「単相2線式・単相3線式の電圧降下を計算しよう|第二種電気工事士 配電理論」も合わせて復習しておくと万全です。

現場で使われる三相200V設備の例

「三相って何に使うの?」というイメージを持てるように、代表的な設備を紹介します。

  • 業務用エアコンの室外機:ビルやオフィスの空調はほぼ三相200V。家庭用の単相に比べて消費電力が大きいため
  • エレベーター:大型モーターで人を運ぶので、大電力が必要
  • 工場のモーター:コンベア、ポンプ、コンプレッサーなど。工場の主力設備はほとんど三相
  • 業務用冷蔵庫・冷凍庫:スーパーや飲食店の大型冷蔵設備

電気工事士として現場に出ると、三相の動力盤(どうりょくばん)を扱う機会は非常に多いです。「三相=動力=大きな電力」というイメージをしっかり持っておきましょう。

計算例題で実力チェック!

例題1:三相3線式の電圧降下を求める

【問題】
ある工場で、三相3線式200Vの分電盤から50m離れた場所にモーターを設置します。使用する電線1本あたりの抵抗は0.2Ω、モーターの線電流は20Aです。このとき、電圧降下はいくらになりますか?

解答を見る

正解:約6.93V

公式 e = √3 × I × R に代入します。

  • I = 20A
  • R = 0.2Ω(電線1本あたり)

e = √3 × 20 × 0.2
e = 1.732 × 4
e = 6.93V

電圧降下は約6.93Vです。供給電圧200Vに対して約3.5%の降下なので、一般的な許容範囲(5%以下)に収まっています。

例題2:三相電力を求める

【問題】
ビルの機械室に三相200Vで接続された空調設備があり、線電流が30A、力率が0.85です。この空調設備の消費電力はいくらですか?

解答を見る

正解:約8,834W(約8.8kW)

公式 P = √3 × V × I × cosφ に代入します。

  • V = 200V(線間電圧)
  • I = 30A(線電流)
  • cosφ = 0.85

P = √3 × 200 × 30 × 0.85
P = 1.732 × 200 × 30 × 0.85
P = 1.732 × 5,100
P = 8,833W ≒ 約8.8kW

ビルの業務用空調としては一般的な消費電力です。この値をもとに、分岐ブレーカーの容量や電線サイズを決定します。

試験でよくある計算ミス3選

三相の計算問題では、多くの受験生が同じパターンでミスをします。試験前に必ず確認しておきましょう。

よくある計算ミス 3選

ミス1: 係数の取り違え

三相なのに e = 2IR(単相2線の公式)で計算してしまう。「三相→√3」「単相2線→2」「単相3線→1」を反射的に選べるようにしておこう。

ミス2: √3 と √2 の混同

√3 ≒ 1.732、√2 ≒ 1.414。似た数字なので要注意。三相の計算で 1.414 を使うと答えが全く合わない。「三 → 3 → √3 → 1.732」と覚えよう。

ミス3: 電力公式で cosφ を忘れる

P = √3 × V × I × cosφ のcosφを忘れて P = √3VI で計算してしまう。問題文に「力率○%」と書いてあったら、必ず cosφ を掛ける。力率の記載がなければ cosφ = 1(力率100%)として計算。

まとめ──三相3線式の重要ポイント

三相3線式のまとめ
  • 三相交流 = 位相が120°ずれた3つの交流
  • 電圧降下:e = √3 × I × R
  • 三相電力:P = √3 × V × I × cosφ
  • Y結線:線間電圧 = √3 × 相電圧/線電流 = 相電流
  • Δ結線:線間電圧 = 相電圧/線電流 = √3 × 相電流
  • 三相のキーナンバーは √3 ≒ 1.732

まとめ問題(4択クイズ)

ここからは理解度チェックです。3問ありますので、じっくり考えてから解答を開いてください。

第1問

【問題】
工場の三相3線式回路で、電線1本の抵抗が0.3Ω、線電流が15Aのとき、電圧降下〔V〕として最も近い値はどれか。

(1)4.5  (2)7.8  (3)9.0  (4)13.5

解答を見る

正解:(2)7.8V

e = √3 × I × R = 1.732 × 15 × 0.3 = 7.79V ≒ 7.8V

三相3線式なので e = √3 × I × R を使います。単相2線式の e = 2IR と混同しないように注意しましょう。(1)の4.5は1本分の電圧降下(IR = 15×0.3 = 4.5)、(3)の9.0は2倍した値(2IR)、(4)の13.5は3倍した値で、いずれも間違った公式を使った場合の引っかけです。

第2問

【問題】
三相200V、線電流25A、力率0.8の空調用コンプレッサーがある。この設備の消費電力〔kW〕として最も近い値はどれか。

(1)4.0  (2)5.0  (3)6.9  (4)8.7

解答を見る

正解:(3)6.9kW

P = √3 × V × I × cosφ = 1.732 × 200 × 25 × 0.8 = 6,928W ≒ 6.9kW

(1)の4.0は V×I×cosφ÷1000 = 200×25×0.8÷1000 = 4.0 で、√3を掛け忘れたパターンです。(2)の5.0は力率を掛け忘れ、(4)の8.7は力率1.0で計算した場合の値です。三相電力の公式では√3・V・I・cosφの4つすべてを忘れずに掛けましょう。

第3問

【問題】
三相交流のY結線(スター結線)において、相電圧が115Vのとき、線間電圧〔V〕として最も近い値はどれか。

(1)115  (2)163  (3)200  (4)345

解答を見る

正解:(3)200V

Y結線では VL = √3 × VP なので、
VL = 1.732 × 115 = 199.2V ≒ 200V

(1)の115は「線間電圧 = 相電圧」としたΔ結線の関係と混同した場合、(4)の345は相電圧の3倍(115×3)で、√3ではなく3を掛けてしまったミスです。Y結線の「線間電圧 = √3 × 相電圧」をしっかり覚えておきましょう。ちなみに200 ÷ √3 ≒ 115V なので、三相200Vの動力回路でY結線の相電圧は約115Vになります。

次のステップ

三相3線式の電圧降下と電力計算、お疲れさまでした! √3という数字が何度も出てきましたが、「三相の120°のずれがある → 合成すると√3倍」という原則さえ押さえれば、公式の暗記だけに頼らず問題を解けるようになります。

もう一度おさらいしたい方は、基礎にあたる「オームの法則と合成抵抗をわかりやすく解説|第二種電気工事士 基礎理論」や「交流回路の基礎をイメージで理解!インピーダンスと力率|第二種電気工事士」も合わせて復習してみてください。

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