電気応用

電気応用の基礎|電動力応用・電熱・照明の計算をわかりやすく解説|第一種電気工事士

この記事でわかること

  • 巻上げ機・ポンプ・ベルトコンベヤの電動機出力計算
  • 電気加熱方式(抵抗加熱・誘導加熱・誘電加熱等)の違い
  • 照明の基本用語と光束法による照度計算
  • 効率の×(発電)と÷(ポンプ)の使い分け
  • 第一種で追加される計算公式の一覧と覚え方

結論から言います

「電気応用」は、電気エネルギーを動力・熱・光に変換する技術のことです。モーターでエレベーターを動かす、ヒーターで鋼材を熱する、照明で部屋を明るくする——どれも電気応用の具体例です。

第二種では出題されない第一種だけの科目であり、学科試験で毎回3〜4問出題されます。計算問題が多いですが、公式を整理すれば得点源にできます。

電動力応用

電動機(モーター)を使って機械を動かす分野です。エレベーター・ポンプ・ベルトコンベヤなどの動力計算が出題されます。

電動機の出力の基本公式

P = F × v [W]

P:動力[W]、F:力[N]、v:速度[m/s]

「力 × 速度 = 動力」という、物理の基本式です。この公式を場面ごとに変形して使います。

巻上げ機(エレベーター・クレーン)

物体を垂直に持ち上げる場合の電動機出力を計算します。

P = (m × g × v) / η [W]

m:質量[kg]、g:重力加速度(9.8m/s²)、v:巻上速度[m/s]、η:効率

現場イメージ:建設現場のクレーンが1トン(1,000kg)の鋼材を毎秒0.5mで持ち上げる場合、効率90%なら必要な電動機出力は P = (1000 × 9.8 × 0.5) / 0.9 ≒ 5,444W ≒ 約5.4kW です。

ポンプ

水をくみ上げるポンプの電動機出力を計算します。

P = (9.8 × Q × H) / η [kW]

Q:流量[m³/s]、H:全揚程[m]、η:効率

水力発電の出力公式 P = 9.8QHη とよく似ていますが、ポンプは電気→動力の変換なので効率で割る(÷η)、水力発電は動力→電気の変換なので効率を掛ける(×η)——という違いがあります。

覚え方のコツ
・発電(出す側)= 9.8QH×η → 効率分だけ目減りする
・ポンプ(使う側)= 9.8QH÷η → 効率の分だけ余計に電力が必要

ベルトコンベヤ

物体を水平方向に運搬するベルトコンベヤの場合、摩擦力に打ち勝つ動力が必要です。

P = (μ × m × g × v) / η [W]

μ:摩擦係数、m:質量[kg]、v:速度[m/s]、η:効率

傾斜がある場合は、重力に逆らう分も加わります。

電動機の始動方式

大きな電動機を直接電源につなぐと、定格電流の5〜7倍もの始動電流が流れ、電圧降下やブレーカの動作を引き起こします。これを防ぐため、始動時の電流を抑える方法があります。

始動方式 仕組み 始動電流
全電圧始動(直入れ) 電源に直接接続 定格の5〜7倍
スターデルタ始動 始動時Y結線→運転時Δ結線 直入れの1/3
リアクトル始動 直列リアクトルで電圧を下げて始動 タップ値に応じて低減
インバータ始動 周波数・電圧を徐々に上げる 定格以下で始動可能
⚠ スターデルタ始動の重要ポイント
Y結線では相電圧が線間電圧の1/√3になるため、始動電流は直入れの1/3になります。始動トルクも1/3に下がるので、軽負荷で始動できるポンプやファンに使われます。

電熱

電気エネルギーを熱エネルギーに変換する分野です。工場の炉や食品加工の加熱装置などで使われます。

基本公式

Q = m × c × ΔT [J]
(= mcΔT)

Q:熱量[J]、m:質量[kg]、c:比熱[J/(kg·K)]、ΔT:温度上昇[K]

「質量 × 比熱 × 温度差 = 必要な熱量」です。水の比熱は4,186 J/(kg·K)(≒ 4,200)です。

電力との関係:

P × t × η = m × c × ΔT

P:電力[W]、t:時間[s]、η:効率

現場イメージ:100リットル(100kg)の水を20℃から80℃まで加熱する場合(効率90%)、必要な熱量は Q = 100 × 4,200 × 60 = 25,200,000J。3kWのヒーターなら、t = 25,200,000 / (3,000 × 0.9) ≒ 9,333秒 ≒ 約2時間36分 かかります。

電気加熱の方式

方式 原理 用途例
抵抗加熱 電流を流して発熱(ジュール熱) 電気炉、ニクロム線ヒーター
アーク加熱 アーク放電の高温を利用 アーク炉(製鋼)、溶接
誘導加熱 交番磁界でうず電流を発生させ加熱 IHクッキングヒーター、高周波焼入れ
誘電加熱 高周波電界で誘電体を内部から加熱 電子レンジ、木材乾燥
赤外線加熱 赤外線の輻射熱で加熱 塗装乾燥、食品加熱
誘導加熱と誘電加熱の違い
誘導加熱:金属(導体)を加熱。うず電流による発熱。IHコンロが代表例
誘電加熱:非金属(誘電体)を加熱。分子の振動による発熱。電子レンジが代表例

「金属→誘導、非金属→誘電」と覚えましょう。

照明

照明に関する物理量と計算は、第一種の頻出テーマです。まず基本用語を整理します。

照明の基本用語

用語 単位 意味
光度(こうど) cd(カンデラ) 光源がある方向に出す光の強さ
光束(こうそく) lm(ルーメン) 光源が全方向に出す光の総量
照度(しょうど) lx(ルクス) 面に届く光の明るさ(=光束÷面積)
輝度(きど) cd/m² 光源や反射面のまぶしさ

身近な例で言えば、光束はランプのパッケージに書いてある明るさ(〇〇ルーメン)照度はデスクの上がどれくらい明るいかです。

点光源による照度の計算

光源の真下の照度は距離の2乗に反比例します。

E = I / r² [lx]

E:照度[lx]、I:光度[cd]、r:距離[m]

光源の真下ではなく、斜めの位置の水平面照度は次の公式です。

Eh = (I × cos³θ) / h² [lx]

h:光源の高さ[m]、θ:鉛直方向からの角度

cos³θ(コサインの3乗)が出てくるのがポイントです。角度が大きくなると照度は急激に低下します。

照明設計(光束法)

室内に必要な照明器具の台数を求める方法が光束法です。

N = (E × A) / (F × U × M)

N:必要台数、E:必要照度[lx]、A:床面積[m²]
F:1台の光束[lm]、U:照明率、M:保守率

照明率(U)は、ランプの光が実際に作業面に届く割合です。天井や壁の反射率、器具の形状によって変わります。保守率(M)は、ランプの汚れや劣化による光束低下を見込んだ係数です。

現場イメージ:オフィス(床面積200m²)で照度500lxを確保するとき、1台5,000lmの照明器具、照明率0.6、保守率0.7なら、N = (500 × 200) / (5,000 × 0.6 × 0.7) ≒ 47.6 → 48台必要です。

光源の種類と特徴

光源 効率[lm/W] 特徴
白熱電球 10〜20 演色性が高い、効率が低い、寿命が短い
蛍光ランプ 60〜100 効率が高い、安定器が必要、低温で暗くなる
水銀ランプ 40〜60 高天井の工場照明、再始動に時間がかかる
ナトリウムランプ 100〜180 効率最高、演色性が低い(オレンジ色)、トンネル照明
LED 100〜200 高効率・長寿命・小型、現在の主流

電気化学

電気分解や蓄電池に関する基礎知識です。出題頻度は低めですが、基本を押さえておきましょう。

ファラデーの法則

電気分解で析出する物質の量は、流した電気量に比例します。

m = (A × I × t) / (z × F)

m:析出量[g]、A:原子量、I:電流[A]、t:時間[s]
z:イオンの価数、F:ファラデー定数(96,500 C/mol)

蓄電池の種類

種類 公称電圧 特徴
鉛蓄電池 2V/セル 安価、受電設備のUPS・自動車に使用
アルカリ蓄電池 1.2V/セル 過充放電に強い、非常照明に使用
リチウムイオン電池 3.6〜3.7V/セル 高エネルギー密度、小型軽量

公式早見表

この記事の公式を1枚にまとめました。試験直前の最終確認にも使えます。

電気応用 公式早見表
【電動力応用】
 巻上機:P = mgv / η [W]
 ポンプ:P = 9.8QH / η [kW]
 ベルトコンベア:P = μmgv / η [W]
【電熱】
 発熱量:Q = mcΔT [J]
 電気加熱:P × t × η = mcΔT
【照明】
 点光源の照度:E = I / r² [lx]
 水平面照度:Eh = I cos³θ / h² [lx]
 光束法:N = EA / (FUM)
【電気化学】
 ファラデーの法則:m = AIt / (zF)
 F = 96,500 C/mol

効率の×と÷を間違えない判定フロー

電動力応用の計算で最もやりがちなのが「効率を掛けるのか割るのか」の混同です。以下のフローで判断しましょう。

効率(η)を掛ける? 割る?
パターン1:電気 → 動力(ポンプ・クレーン)
必要な電力 = 機械出力 ÷ η
効率分だけ余計に電力が必要 → 答えは大きくなる
パターン2:動力 → 電気(水力発電)
得られる電力 = 水力エネルギー × η
効率分だけ電力が減る → 答えは小さくなる
覚え方:「使う側は割る、出す側は掛ける」

よくある計算ミス 3選

試験で差がつくポイント — この3つを潰せば得点源

ミス1:ポンプの効率を「×η」にしてしまう
ポンプは「電気→動力」なので P = 9.8QH ÷ η です。効率を掛けると必要電力が小さくなり、実際には足りない値を選んでしまいます。「使う側は割る」を徹底しましょう。

ミス2:照度計算で cos³θ を cosθ にしてしまう
水平面照度 Eh = Icos³θ / h² の「3乗」を忘れると照度が過大評価になります。「水平面は3乗」と覚えてください。なお、鉛直面照度は cos²θsinθ です(出題頻度は低め)。

ミス3:光束法の保守率(M)を忘れる
N = EA / (FUM) の M(保守率)を入れ忘れると、器具台数が足りなくなります。M は経年劣化や汚れを考慮した係数(0.6〜0.8程度)で、忘れると台数が少なく見積もられるため要注意です。

まとめ

この記事のポイント
✔ 巻上げ機の出力 P = mgv/η、ポンプ P = 9.8QH/η
✔ スターデルタ始動で始動電流は直入れの1/3
✔ 電熱の基本 Q = mcΔT、水の比熱≒4,200 J/(kg·K)
✔ 誘導加熱は金属、誘電加熱は非金属
✔ 照度 E = I/r²、水平面照度 E = Icos³θ/h²
✔ 光束法 N = EA/(FUM)で照明器具の台数を求める
✔ ナトリウムランプが最も効率が高い(演色性は低い)

確認問題

【問題1】 工場のクレーンで質量800kgの資材を毎秒0.4mで巻き上げる。総合効率が80%のとき、電動機の所要出力[kW]として最も近い値はどれか。

イ.2.5
ロ.3.1
ハ.3.9
ニ.4.9

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正解:ハ
P = mgv/η = 800 × 9.8 × 0.4 / 0.8 = 3,920W ≒ 3.9kW
巻上げ機の出力公式に代入するだけの基本問題です。効率で「割る」ことを忘れないようにしましょう。

【問題2】 三相誘導電動機をスターデルタ始動したとき、始動電流は全電圧始動(直入れ始動)の何倍になるか。

イ.1/√3
ロ.1/3
ハ.1/2
ニ.√3

解答を見る

正解:ロ
スターデルタ始動では、始動時にY結線にすることで各相に加わる電圧が線間電圧の1/√3になります。電流は電圧に比例するので、1相の電流は1/√3倍。さらに線電流とも1/√3の関係になるため、始動電流は全電圧始動の1/3に低減します。始動トルクも同様に1/3になります。

【問題3】 ある事務室(床面積150m²)に照度400lxを確保したい。使用する照明器具は1台あたり4,000lm、照明率0.5、保守率0.8とするとき、最低限必要な照明器具の台数として正しいものはどれか。

イ.28台
ロ.32台
ハ.38台
ニ.45台

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正解:ハ
光束法の公式 N = EA/(FUM) に代入します。
N = (400 × 150) / (4,000 × 0.5 × 0.8) = 60,000 / 1,600 = 37.5
台数は切り上げるので38台必要です。

【問題4】 IHクッキングヒーターのような、交番磁界によって金属にうず電流を生じさせて加熱する方式は何か。

イ.抵抗加熱
ロ.アーク加熱
ハ.誘導加熱
ニ.誘電加熱

解答を見る

正解:ハ
誘導加熱は、コイルに交流を流して発生させた交番磁界で、金属内にうず電流を生じさせて加熱する方式です。IHクッキングヒーターや高周波焼入れが代表例です。一方、電子レンジのように非金属(水分子など)を高周波電界で加熱するのは誘電加熱です。

第二種で学んだ交流回路の基礎は「交流回路の基礎をイメージで理解!インピーダンスと力率|第二種電気工事士」で復習できます。高圧受電設備の変圧器やコンデンサについては「高圧受電設備の仕組みと構成機器|キュービクルの単線結線図を読もう」で詳しく解説しています。三相交流回路の基礎は「三相交流回路の計算|Y-Δ変換と三相電力をわかりやすく解説|第一種電気工事士」、高圧配電線路の計算は「高圧配電線路の電圧降下と短絡電流計算をわかりやすく解説|第一種電気工事士」も参照してください。

第一種の学科対策に

電気応用の計算は公式の暗記だけでなく、問題を繰り返し解いて「効率を掛けるのか割るのか」を体に染み込ませることが重要です。

独学に不安がある方は、通信講座でプロの解説を受けるのも効果的です。

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