この記事でわかること
- 許容電流の意味と電線が発熱して火災になる仕組み
- IV電線の太さ別の許容電流値(1.6mm→27A、2.0mm→35A等)
- 電流減少係数の計算方法(管内の同一配線3本以上の場合)
- 幹線の太さを決める計算式と過電流遮断器の選定ルール
結論から言います:許容電流とは「電線に安全に流せる最大の電流値」
いきなり結論から言います。許容電流(きょようでんりゅう)とは、その電線に安全に流すことができる電流の最大値のことです。
「なぜそんな制限があるの?」と思いますよね。答えはシンプルです。許容電流を超える電流が流れると、電線が発熱して絶縁被覆(ぜつえんひふく)が溶け、最悪の場合は火災につながるからです。
家庭のブレーカーが落ちるのも、実はこの許容電流と深い関係があります。ブレーカーは電線の許容電流を超えないように回路を保護しているんですね。
この記事では、第二種電気工事士の筆記試験で頻出の「許容電流」「電流減少係数」「幹線設計」「分岐回路」について、現場のイメージとセットでわかりやすく解説します。
電気の基本的な計算が不安な方は、先に「オームの法則と合成抵抗をわかりやすく解説|第二種電気工事士 基礎理論」を読んでおくとスムーズです。
許容電流に影響する4つの要因
許容電流は電線の種類や使い方によって変わります。影響する要因を押さえておきましょう。
1. 電線の太さ(断面積)
水道のホースをイメージしてください。太いホースにはたくさんの水が流れますよね。電線も同じで、太い電線ほど多くの電流を安全に流せます。電線の太さは「直径(mm)」や「断面積(mm2)」で表します。
2. 絶縁体の種類
電線を覆っている被覆(ひふく)の材質によって、耐えられる温度が違います。一般的なビニル(60℃まで)よりも、架橋ポリエチレン(90℃まで)のほうが高い温度に耐えるため、許容電流も大きくなります。
3. 周囲温度
真夏の屋根裏と冬の地下では、電線を取り巻く温度が全然違いますよね。周囲温度が高いほど放熱しにくくなるため、許容電流は小さくなります。基準温度は30℃です。
4. 配線方法(管内配線か、露出配線か)
電線管の中に電線を通すと、熱がこもりやすくなります。露出配線のほうが放熱しやすいので、同じ電線でも配線方法で許容電流が変わるんです。
主な電線サイズと許容電流の一覧表
第二種電気工事士の筆記試験では、600Vビニル絶縁電線(IV)の許容電流がよく出題されます。以下の表は必ず覚えてください。
| 電線の太さ | 断面積 | 許容電流 |
|---|---|---|
| 直径 1.6mm | 2mm2 | 27A |
| 直径 2.0mm | 3.5mm2 | 35A |
| 直径 2.6mm | 5.5mm2 | 48A |
| – | 8mm2 | 61A |
| – | 14mm2 | 88A |
特に1.6mm=27A、2.0mm=35A、2.6mm=48Aの3つは最頻出です。語呂合わせで「ニーナ(27)、サンゴ(35)、シワ(48)」と覚える人も多いですよ。
現場では、コンセント回路(15A〜20A)には1.6mmか2.0mm、エアコン専用回路(20A)には2.0mm、IHクッキングヒーターなど大きな電流が流れる回路には2.6mm以上を使います。
試験での出題パターン:許容電流と電流減少係数は、第二種の学科でほぼ毎回出題される超重要テーマです。特に「1.6mm=27A」「2.0mm=35A」の2つの数値は即答できるようにしておきましょう。三相回路の電流値と組み合わせて出題されることも多いので、「三相3線式の電圧降下と電力計算をわかりやすく解説|第二種電気工事士 配電理論」もセットで押さえるのがおすすめです。
電流減少係数:管の中に電線が増えると許容電流が下がる
ここがちょっとした落とし穴です。同じ電線管の中に複数の電線を通すと、お互いの発熱で温度が上がるため、1本あたりの許容電流が下がります。この下がり具合を「電流減少係数(でんりゅうげんしょうけいすう)」と呼びます。
| 同一管内の電線本数 | 電流減少係数 |
|---|---|
| 3本以下 | 0.70 |
| 4本 | 0.63 |
| 5〜6本 | 0.56 |
使い方はシンプルです。
管内配線の許容電流 = 電線の許容電流 × 電流減少係数
具体例で考えよう
直径1.6mmのIV電線(許容電流27A)を、電線管の中に4本通す場合:
27A × 0.63 = 17.01A → 17A(小数点以下切り捨て)
もともと27Aまで流せた電線が、管に4本入れると17Aまでしか流せなくなるんです。「4人で1つの部屋に詰め込まれたら暑くなる」のと同じイメージですね。
注意:電流減少係数で数える「電線本数」は、接地線(アース線)を含みません。接地線には通常電流が流れないためです。
幹線の設計:電線の太さを決める3つのステップ
ここからが配線設計の本番です。幹線(かんせん)とは、引込口(ひきこみぐち)から分電盤(ぶんでんばん)までの太い電線のことです。家全体の電気を背負うメインの配線ですね。
幹線の太さを決めるには、まず「家全体でどれだけの電流が必要か」を計算する必要があります。
ステップ1:負荷を2つに分ける
家庭やビルの電気機器は、大きく2種類に分けて計算します。
- IM(電動機負荷の合計電流):エアコンのコンプレッサー、換気扇、ポンプなど、モーターが入っている機器の電流を合計
- IH(電熱負荷の合計電流):電気ストーブ、IHクッキングヒーター、照明など、モーター以外の機器の電流を合計
なぜ分けるのでしょうか? モーターは起動するときに定格電流の数倍の「始動電流(しどうでんりゅう)」が一瞬流れます。この突入電流を考慮するために、電動機負荷だけ割増し計算をするわけです。
ステップ2:幹線に必要な電流 IW を求める
IM ≦ IH のとき:IW = IH + IM
(電動機の割合が小さいので、そのまま足し算でOK)
IM > IH のとき:IW = IH + IM × 1.25
(電動機の割合が大きいので、25%割増し)
※電動機の合計が50Aを超える場合は、係数が1.25ではなく1.1になります。大きなモーターは始動電流の影響が相対的に小さくなるためです。
ステップ3:IW 以上の許容電流を持つ電線を選ぶ
求めた IW の値を上の許容電流表と照らし合わせて、IW 以上の許容電流を持つ電線サイズを選びます。
現場例:住宅の幹線設計
ある住宅の分電盤につながる負荷が以下のとおりだとします。
- エアコン3台(電動機負荷):合計 IM = 20A
- 照明・コンセント・IH(電熱負荷):合計 IH = 30A
IM(20A)≦ IH(30A)なので:
IW = 30 + 20 = 50A
許容電流表から、50A以上を流せるのは断面積 5.5mm2(48A)では足りないので、8mm2(61A)以上の電線が必要になります。
幹線の過電流遮断器(ブレーカー)の定格電流の決め方
幹線を保護するブレーカーの大きさも、IM と IH の比率で決まります。
| 条件 | 過電流遮断器の定格電流 |
|---|---|
| IM ≦ IH | IH + IM 以下 |
| IM > IH かつ IM ≦ 50A | 1.25 × IM + IH 以下 |
| IM > IH かつ IM > 50A | 1.1 × IM + IH 以下 |
つまり、ブレーカーの定格電流は幹線の許容電流(IW)以下でなければなりません。ブレーカーが電線の許容電流を超えた定格だと、電線が焼ける前にブレーカーが落ちてくれない危険な状態になります。
電気設備の安全基準について詳しく知りたい方は、「電気設備技術基準をわかりやすく解説|絶縁抵抗・接地・電圧区分|第二種電気工事士」もあわせてチェックしてみてください。
分岐回路の電線の太さとコンセントの定格
分電盤から各部屋のコンセントや照明に向かう回路を分岐回路(ぶんきかいろ)と呼びます。分岐回路は過電流遮断器(ブレーカー)の定格電流によって種類が決まり、それぞれ使える電線の太さやコンセントの定格が規定されています。
| 分岐回路の種類 | 電線の太さ | コンセントの定格 |
|---|---|---|
| 15A分岐 | 直径1.6mm以上 | 15A以下 |
| 20A分岐(配線用遮断器) | 直径1.6mm以上 | 20A以下 |
| 20A分岐(ヒューズ) | 直径2.0mm以上 (断面積3.5mm2以上) |
20A |
| 30A分岐 | 直径2.6mm以上 (断面積5.5mm2以上) |
20A以上30A以下 |
現場でのポイント
- 一般のコンセント回路(照明やテレビなど)は通常15Aまたは20A分岐で、1.6mmの電線を使います
- エアコン専用回路は20A分岐で、2.0mmの電線を使うことが多いです
- IHクッキングヒーターや大型エアコンは30A分岐で、2.6mm以上が必要です
- 30A分岐のコンセントは20A以上30A以下で、一般的な形状(引掛形など)のコンセントを使います
コンセント増設を考えるときは、「その回路のブレーカー容量に対して、電線の太さとコンセントの定格が合っているか」を必ず確認します。30Aのブレーカーに1.6mmの電線は絶対NGです。電線が耐えきれずに火災の原因になります。
接地(アース)の接続方法については「接地工事(アース)をわかりやすく解説!A種〜D種の違い|第二種電気工事士」で詳しく解説しています。
現場例:住宅の分電盤から各回路への配線設計
実際の住宅を例に、配線設計の流れを見てみましょう。
設計条件
- 単相3線式 100V/200V
- リビング照明+コンセント:15A分岐 × 2回路
- キッチンコンセント:20A分岐 × 1回路
- エアコン(リビング):20A分岐 × 1回路
- エアコン(寝室):20A分岐 × 1回路
- IHクッキングヒーター:30A分岐(200V) × 1回路
このように、各回路のブレーカー定格に応じて電線の太さを変えるのが配線設計の基本です。コンセントを追加したいときも、その回路の負荷を計算して、電線の許容電流を超えないか確認します。
試験でよくある引っかけ3選
許容電流・幹線設計の問題では、決まったパターンの引っかけが出ます。事前に知っておけば失点を防げます。
まとめ:覚えるべきポイント
- 許容電流は電線に安全に流せる最大電流。太さ・絶縁体・温度・配線方法で変わる
- IV電線の許容電流:1.6mm→27A、2.0mm→35A、2.6mm→48A(最頻出!)
- 電流減少係数:同一管内の電線が増えると許容電流が下がる(3本以下→0.70)
- 幹線の電流 IW:IM ≦ IH ならそのまま合計、IM > IH なら電動機分を1.25倍
- 分岐回路:ブレーカーの定格に応じて電線の太さとコンセントの定格が決まる
まとめ問題(理解度チェック)
問題1
ある住宅のリビングにコンセントを増設する工事を行います。直径1.6mmの600Vビニル絶縁電線(IV)3本を同一の電線管に通す場合、1本あたりの許容電流として正しいものはどれですか。
(1)17A (2)18A (3)18.9A (4)27A
問題2
ある工場で、電動機負荷の合計電流 IM が40A、電熱負荷の合計電流 IH が20Aです。この場合、幹線に必要な許容電流 IW として正しいものはどれですか。
(1)48A (2)60A (3)70A (4)75A
問題3
店舗のリフォームで、30A分岐回路のコンセント回路を新設します。使用する電線の最小太さとコンセントの定格電流の組み合わせとして、適切でないものはどれですか。
(1)電線 直径2.6mm + コンセント 20A
(2)電線 直径2.6mm + コンセント 30A
(3)電線 断面積5.5mm2 + コンセント 25A
(4)電線 直径2.0mm + コンセント 20A
以上、電線の許容電流と幹線設計について解説しました。計算問題が出題されやすい分野ですが、公式の意味(なぜ割増しするのか、なぜ減少係数を掛けるのか)を理解しておけば、数字を当てはめるだけで確実に得点できます。しっかり復習して本番に備えましょう!
次のステップ
許容電流と幹線設計を理解したら、次は分岐回路のルールをさらに深掘りしましょう。
- 「分岐回路の設計をわかりやすく解説|過電流遮断器・電線・コンセントの組み合わせ」── ブレーカー・電線・コンセントの選定ルールを詳しく学びます
- 「三相3線式の電圧降下と電力計算をわかりやすく解説|第二種電気工事士 配電理論」── 動力設備の電流計算と合わせて学ぶと、幹線設計の全体像が見えます
- 「単相2線式・単相3線式の電圧降下を計算しよう|第二種電気工事士 配電理論」── 住宅の電圧降下と許容電流は密接に関係しています
学習の全体像を確認したい方は「第二種電気工事士 学習ロードマップ|合格までの全ステップを完全ガイド」をご覧ください。
配電理論の計算問題を確実に得点するなら
許容電流・電流減少係数・幹線設計は、表の読み方と公式の使い分けがカギです。テキストで体系的に整理しておくと、本番で迷わずに解けるようになります。
過去問で出題パターンに慣れよう
許容電流と幹線設計は毎回出題される鉄板テーマ。過去問を繰り返し解いて、問題文の読み方(接地線を含むか?IMとIHの大小は?)を体に染み込ませましょう。
独学が不安なら、通信講座という選択肢も
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