この記事を読み終えると、KIPとCVVで刃を入れる層が何層違うのかを断面で説明でき、端子台の結線を「かみ込み」と「むき過ぎ」の両側から自分で判定できるようになります。第一種の技能試験で初めて出てくる材料と器具に絞って整理します。
第二種から第一種へ進むと、KIP・CVV・端子台という見慣れない言葉が並びます。ただし作業の軸は変わりません。支給材料を確認し、配線図と施工条件のとおりに加工・接続し、欠陥の判断基準で見直すという順番です。この記事は、その3つのうち第一種で形が変わる部分だけを扱います。
いつ条件が決まるのかで、練習のしかたが変わる
電気技術者試験センターが公表した令和8年度の第一種技能試験の候補問題はNo.1〜No.10の10問で、試験時間は60分の予定です。ただし公表資料には、配線図・施工条件等の詳細は試験問題に明記する、と書かれています。つまり候補問題は「範囲の予告」であって、当日の作品の指示書ではありません。
図3 いつ分かるかで、覚え方を変える
同じ「材料」「寸法」でも、事前に確定しているものと、当日まで分からないものがあります。
図3の①が今日から練習できる範囲、図3の②が当日まで確定しない範囲です。練習キットに付いてくる寸法や電線の色は、あくまで一例と考えてください。図3の③に挙げた欠陥の判断基準だけは、候補問題が変わっても動きません。ここから先は、その③にあたる部分を1つずつ見ていきます。
KIPとCVVは、むく層の数が違う
KIPは、メーカー資料で「高圧機器内配線用EPゴム絶縁電線」と案内される電線です。住友電工は公称6.6kVのキュービクル内の高圧配線用途を示しています。CVVは「制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル」で、複数の絶縁心線をシースでまとめた制御用のケーブルです。名前が長いだけで似た線に見えますが、断面はまったく違います。
図1 KIPとCVVは「太い線」ではなく、むく層の数が違う
断面で見ると、刃を入れる回数と、傷つけてはいけない相手が変わります。
図1の①はEPゴムの絶縁体で、KIPはこの1層をむけば図1の②のより線導体が出てきます。刃を入れる相手は絶縁体、止める相手は素線です。
CVVは2段階です。図1の③のビニルシースをむくと図1の④の介在物が現れ、その中に図1の⑤の絶縁心線が入っています。心線をつなぐには、さらに心線1本ずつの絶縁体をむきます。図1の④の介在物を心線と一緒に引き抜くと、それだけで欠陥(判断基準5-1ハ)です。どちらの線も導体はより線なので、素線を切り落とせば減線(5-4)の欠陥になります。
固定して覚えないもの
「KIPは必ず5.5mm2」「CVVは必ず2mm2の3心」「この線は必ずこの端子へ」とは決まっていません。図3の②のとおり、材料の詳細は試験問題に明記されます。覚えるのは構造の違いと、そこから来る加工手順の違いです。
端子台は、むき過ぎとかみ込みの間へ入れる
端子台は、本試験で器具の実物の代わりに使われることがあります。座金付き端子への結線になるため、確認するのは「どの番号へつないだか」だけではありません。
図2 端子台は「むき過ぎ」と「かみ込み」の間へ入れる
心線の露出は、端子台の端を起点に、心線の先端までを測ります。
図2の①が目標の状態です。絶縁被覆が端子台の端まで来ていて、心線は座金の下だけにあります。ここから被覆側へ寄せすぎると図2の②、心線側へ寄せすぎると図2の③になります。つまり許される幅は、被覆の端と心線の先端の位置で決まります。
図2の③の寸法は、起点が「端子台の端」、測る対象が「心線」です。高圧側は20mm以上、低圧側は5mm以上で欠陥(判断基準8-3イ・ロ)になります。同じ5mmでも、配線用遮断器や押しボタンスイッチでは「器具の端から」(8-3ハ)、ランプレセプタクルや露出形コンセントでは「ねじの端から」(8-3ニ)と起点が変わります。数字だけを覚えると器具をまたいだ瞬間に間違えるので、起点とセットで覚えてください。
単線とより線で、保持の確かめ方が変わる
締め付けの確認方法は、電線の種類で書き分けられています。判断基準8-1は、単線を「電線を引っ張って外れるもの」、より線を「作品を持ち上げる程度で外れるもの」と定めています。
- 単線:引っ張っても外れないように、しっかり締め付ける
- より線:引っ張ると外れることがあるが、持ち上げる程度で外れなければ欠陥ではない
- 共通:素線がはみ出していれば、締まっていても欠陥(8-2)
ただし、必要以上に強く締めるとねじ山がつぶれたり頭部をねじ切ったりします。器具を破損させれば別の欠陥です。「確実に保持された」と感じたところで止めるのが、練習で身につける感覚です。
材料の確認は、開始前にしかできない
作業に必要な材料はすべて支給され、持ち込んだ材料は使えません。そして作業開始後に交換・追加支給を受けられるのは、リングスリーブ・差込形コネクタ・端子ねじだけです。ケーブルや電線は追加されないため、誤って切断すると取り返しがつきません。
そのため、試験開始前の材料確認の時間に次を済ませます。
- 材料表と照合する:電線の種類・長さ・心数、器具、端子台の極数を1つずつ数えます。
- 見分けをつける:KIP、CVV、VVF、VVR、EM-EEFを図1の断面で見分けます。
- 不良品を申し出る:不具合があれば、この時間に申し出ます。
工具は、電動機能をOFFにしても使えない
公式資料は、電動機能付工具は電動工具にあたり、電動機能をOFFにして利用する場合でも使用できないと明記しています。試験中の使用は不正行為として失格の対象です。あわせて、改造した工具や自作した工具、テスタなどの計測器も使えません。他の受験者からの借用も禁止です。
一方で、電線を一時的に束ねるクリップのような物は使えます(試験終了までに取り外します)。使える工具の範囲は毎年の公式資料で確認し、自分の工具だけで、傷をつけずにKIP・CVVを加工できるかを事前に試しておいてください。
60分をどう配分するか
第一種の60分は、第二種の40分より長いぶん、確認に回せる時間があります。目安として、複線図と施工条件の読み取りに5〜10分、加工と接続に35〜40分、見直しに5〜10分を確保します。
見直しでは、図2の①の状態になっているかを端子ごとに見ます。器具ごとの欠陥基準は第一種電気工事士 技能試験の欠陥判定基準に一覧でまとめています。
自己チェック(6問)
解説を先に隠していません。判断基準の項目番号まで言えるかを確かめてください。
問1:端子台の低圧側の結線で、心線の露出が欠陥と判定されるのはどこからどれだけ出たときですか。
- 絶縁被覆の端から3mm以上
- 端子台の端から5mm以上
- 端子台の端から20mm以上
- ねじの端から10mm以上
解答:2(端子台の端から5mm以上)
判断基準8-3ロです。起点は「端子台の端」で、測る対象は「心線」です(図2の③)。3の20mm以上は同じ8-3のイで、こちらは高圧側の基準です。4のねじの端からという言い方は、ランプレセプタクルや露出形コンセントの巻き付け結線(8-3ニ)の基準で、器具が違えば起点も変わります。
問2:端子台の高圧側にKIPを結線しました。端子台の端から心線が15mm露出しています。判定はどうなりますか。
- 欠陥。高圧側は5mm以上で欠陥になる
- 欠陥ではない。高圧側は20mm以上で欠陥になる
- 欠陥。露出は0mmでなければならない
- 心線が座金に入っていれば露出は判定されない
解答:2(欠陥ではない。高圧側は20mm以上で欠陥になる)
判断基準8-3イは高圧側20mm以上を欠陥としているため、15mmは欠陥にはあたりません。ただし公式資料は、この数値が試験環境を考えた許容であって、実際の工事では限りなく0mmに近い施工が求められると述べています。4のように露出を見ないわけではありません。
問3:より線を端子台へ結線しました。作品を持ち上げても外れませんが、電線を強く引っ張ると外れます。判定はどうなりますか。
- 欠陥。単線と同じ基準で判定する
- 欠陥ではない。より線は持ち上げる程度で外れなければよい
- 欠陥。より線は圧着端子を使わなければならない
- 判定は施工条件によって変わる
解答:2(欠陥ではない。より線は持ち上げる程度で外れなければよい)
判断基準8-1は、単線を「電線を引っ張って外れるもの」、より線を「作品を持ち上げる程度で外れるもの」と書き分けています。公式資料も、より線は引っ張ると外れることがあるが持ち上げる程度で外れなければ欠陥ではない、と説明しています。ただし素線がはみ出していれば8-2の欠陥です。
問4:充電式の電動ドライバーを、電動機能をOFFにして手回しドライバーとして使うことはできますか。
- できる
- 端子台のねじだけできる
- 監督員の許可があればできる
- できない
解答:4(できない)
公式資料は、電動機能付工具は電動工具にあたり、電動機能をOFFにして利用する場合でも使用できないと明記しています。試験中に使用すると不正行為として失格の対象になります。改造した工具や自作した工具、テスタなどの計測器も使えません。
問5:試験開始後に、交換や追加支給を受けられる材料はどれですか。
- ケーブルと電線
- リングスリーブ・差込形コネクタ・端子ねじ
- 端子台と配線用遮断器
- 支給されたすべての材料
解答:2(リングスリーブ・差込形コネクタ・端子ねじ)
作業開始後は、この3つ以外の材料の交換・追加支給は行われません。だから試験開始前の材料確認の時間に、材料表との照合と不良品の確認を済ませます。1のケーブルは追加されないため、誤った切断は取り返しがつきません。
問6:CVVのシースをはぎ取るとき、中の介在物を一緒に引き抜いてしまいました。判定はどうなりますか。
- 欠陥。介在物が抜けたものは欠陥にあたる
- 欠陥ではない。介在物は絶縁に関係しない
- 欠陥ではない。心線に傷がなければよい
- 欠陥。ただし高圧側の結線に限る
解答:1(欠陥。介在物が抜けたものは欠陥にあたる)
判断基準5-1ハは、VVR・CVVの介在物が抜けたものを欠陥としています。図1の④のとおり、CVVはシースと心線の間に介在物がある構造です。シースを深く握って一気に引くと、介在物ごと動きます。シースだけを切り、介在物は心線の根元で切りそろえます。
この記事で確認した資料と確認日
2026年9月9日に、次の資料の記載内容を確認して本文の数値・用語を照合しました。
- 電気技術者試験センター:第一種電気工事士の技能試験の候補問題
- 電気技術者試験センター:令和8年度第一種電気工事士技能試験候補問題の公表について(PDF)
- 電気技術者試験センター:技能試験に係る欠陥の判断基準等について
- 電気技術者試験センター:電気工事士技能試験(第一種・第二種)欠陥の判断基準(PDF)
- 電気技術者試験センター:電気工事士技能試験の概要と注意すべきポイント(2026年3月更新)(PDF)
- 住友電工:高圧機器内配線用EPゴム絶縁電線「KIP」
- 住電HSTケーブル:一般設備用電線・ケーブル(CVV)
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次は第一種 技能候補問題No.1|複線図の読み方へ進み、この記事の手順を実際の候補問題へ当てはめてください。端子台の端子番号を追う練習になります。
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