結論:作品を一方向にたどると、見落としを減らせる
第一種電気工事士の技能試験は、作品に欠陥がないことが合格条件です。KIP・CVV・端子台だけを特別扱いするのではなく、①完成・配置、②回路・色、③接続、④損傷、⑤器具の順に一方向で確認します。このページでは、公式の判断基準を「どこを見るか」まで落とし込みます。
欠陥基準は第一種・第二種に共通する
電気技術者試験センターの技能試験の欠陥については、第一種・第二種に共通する判断基準を案内しています。第一種だけ別の採点方式になるのではありません。第一種ではKIP、CVV、高圧側・低圧側の端子台など確認箇所が増えるため、共通基準を材料に合わせて適用します。
公式の欠陥判断基準には、未完成、配線相違、寸法、電線の種類、誤接続、電線色、損傷、圧着・差込接続、器具・金属管などの項目があります。ただし、試験で欠陥にならない範囲が、そのまま実際の電気工事で許容されるという意味ではありません。公式資料も、実作業では基準より精度の高い作業を行うよう注意しています。
| 公式基準の役割 | 受験者の使い方 | 避けたい読み方 |
|---|---|---|
| 欠陥となる状態を示す | 練習作品を毎回同じ基準で採点する | 数値の境界ぎりぎりを加工目標にする |
| 当日の作品を判定する | 配線図・施工条件と一緒に確認する | 練習問題の色や寸法を固定して覚える |
| 試験上の許容範囲を示す | 安全側に余裕のある作品を目指す | 現場施工の合否基準として流用する |
候補問題だけでは決まらない
2026年度第一種の候補問題10問には、材料や施工方法などの詳細を試験問題に明記するとあります。線の色、長さ、端子番号、接続方法は、当日の配線図・材料表・施工条件で最終判断します。
完成後は5地点を一方向に確認する
あちこちを思いつきで見ると、同じ場所を二度見て別の場所を飛ばしがちです。作品を机の左上から右下へ、または電源側から負荷側へ、一方向にたどります。練習時から順番を固定すると、本番でも短い時間で再現できます。
地点1 未完成・配置・寸法・線種
最初に全体を見て、未接続や施工し忘れがないかを確認します。器具の配置や配線が配線図と異なるもの、指定と違う電線を使ったものも欠陥です。寸法は器具の中心間を基準にし、配線図に示された寸法の50%以下になると欠陥です。たとえば指定200mmに対して完成寸法100mmは、ちょうど50%なので欠陥に含まれます。
50%を少し超えれば必ず問題ない、という意味ではありません。端子へ無理な力がかかる、器具の配置が違う、別の損傷がある場合は、それぞれの項目で判定されます。練習では指定寸法に近づけ、短く切りすぎた作品を「境界内だから」と完成形にしないほうが安全です。
地点2 回路・端子番号・色・極性
次に、電源から負荷まで一本ずつ接続先を追います。誤結線・誤配線、施工条件と異なる接続方法、指定と違う電線色や極性は欠陥です。「白は必ず接地側」「黒は必ず非接地側」と記憶だけで決めず、その問題の施工条件を照合します。
第一種では、変圧器などを端子台で代用する候補があります。U・V、u・o・vなどの表示は、文字の見た目や過去作品の位置で決めません。当日の図に記載された端子記号と接続関係を指で追い、端子台の実表示と突き合わせます。三相回路の読み方は第一種技能試験の三相回路と変圧器結線、候補問題への適用は技能候補問題No.1の複線図・作業手順で練習できます。
地点3 圧着・差込・ねじ端子
接続部は、接続先が正しいだけでなく、指定された方法で保持されている必要があります。リングスリーブは、組合せに合うサイズと刻印、心線の挿入状態を確認します。差込形コネクタは、すべての心線が先端まで見え、下側から導体が露出していないかを見ます。端子台は、抜け、素線のはみ出し、導体露出、絶縁被覆のかみ込みを確認します。
地点4 シース・絶縁体・心線・素線
刃物を使った箇所を中心に、曲げながら傷を確認します。ケーブル外装の損傷部を曲げて絶縁体が見えるもの、縦方向の外装の割れが20mm以上のもの、絶縁体の傷を曲げて心線が見えるもの、心線が折れる程度の傷は欠陥です。より線は素線を一本でも減らさないようにします。
リングスリーブ下端から10mm以内の絶縁被覆の傷は、心線が見えても公式基準に例外があります。しかし、狙って傷を残す場所ではありません。圧着前に傷を見つけたら、長さに余裕がある範囲で加工し直します。
地点5 器具・管・取付枠・その他
最後に、器具の結線と固定、金属管・合成樹脂製可とう電線管の接続、ボンディング、取付枠への器具取付けを確認します。指定された接地工事がない、管とボックスの接続が不十分、器具を破損している、といった状態も見逃せません。
支給されていない材料の使用、不要な工事や余計な接続も欠陥です。支給材料をすべて使い切ることが目標ではありません。施工条件に不要な予備材が残っても、勝手に作品へ追加しません。作業上の注意は2026年版「技能試験のポイント」でも確認できます。
KIP・CVV・端子台で見る場所
KIP・CVV・端子台は、公式基準から外れた「第一種専用ルール」で判定するものではありません。材料の構造に合わせて、線種、接続先、損傷、素線、露出、保持という共通項目を当てはめます。加工手順そのものは第一種技能試験の基本作業|KIP・CVV・端子台に分け、ここでは完成後の判定に絞ります。
| 場所 | 欠陥につながる状態 | 完成後の確認 |
|---|---|---|
| KIP | 指定と違う線種・太さ、素線減少、絶縁体や心線の損傷、誤接続 | 材料表、端子記号、全素線、傷を照合 |
| CVV | 介在物の抜取り、シースの大きな割れ、素線減少、色・端子の相違 | 介在物、心数、色、素線、端子番号を照合 |
| 端子台 | 抜け、素線の一部が未挿入、導体の過大露出、被覆のかみ込み | 保持、露出、全素線、締付けを目視 |
KIPの太さとむき寸法は固定しない
KIPは、メーカー資料で高圧機器内配線用EPゴム絶縁電線と案内されるより線です。技能試験で使う太さを「必ず5.5mm²」「必ず8mm²」と固定せず、当日の材料表を読みます。端子台へ直接接続するか、別の接続方法を使うかも施工条件が基準です。
完成後は全素線が端子へ収まり、絶縁体をねじで締め付けず、高圧側端子台の端からの導体露出が20mm未満かを見ます。公式上は20mm以上が欠陥ですが、19mmを目標にするのではなく、導体は必要最小限にします。
CVVは介在物と素線を残す
CVVは制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブルです。公式基準では、VVR・CVVの介在物を抜き取ったものは欠陥です。シースを除去するときに介在物を引き抜かず、作品側へ残します。複数のより線は、一本ずつ素線切れと端子番号を確認します。
低圧側端子台では、端子台の端から導体が5mm以上露出すると欠陥です。高圧側の20mmと混同しないようにします。ただし、CVVだから常に低圧側、KIPだから常に特定端子という決め方はせず、問題の回路を優先します。
端子台は圧着端子が前提ではない
技能試験の端子台では、むいた心線をねじで直接保持する構成があります。「より線には必ず圧着端子を付ける」と一般化せず、支給材料と施工条件どおりに接続します。単線は引いて抜けるもの、より線は作品を持ち上げたときに抜け落ちるものが、公式の保持に関する欠陥例です。
端子台の4点確認
- 端子記号と電線色が施工条件どおり
- すべての素線が端子内に入り、電線が保持されている
- 高圧側20mm以上・低圧側5mm以上の導体露出がない
- 絶縁被覆を締め付けず、ねじ・端子台を破損していない
リングスリーブと差込形コネクタの数値
リングスリーブは、電線の組合せに対するスリーブの種類と刻印が違うもの、刻印が一部消える・二つあるもの、圧着部を破損したものが欠陥です。一つの接続箇所に二つ以上のリングスリーブを使って接続することもできません。
| 接続部 | 公式の欠陥例 | 見る位置 |
|---|---|---|
| リングスリーブ上端 | 心線の先端が見えない/上端から5mm以上出る | 全心線の先端と突出長さ |
| リングスリーブ下端 | 心線露出が10mm以上/絶縁被覆を圧着 | 被覆端とスリーブの間 |
| 差込形コネクタ | 先端まで心線が見えない/下端から心線が見える | 透明部の先端と差込口 |
リングスリーブでは、ケーブル外装のはぎ取りが足りず、絶縁被覆のある心線部分が20mm以下になるものも欠陥です。数値だけを別々に覚えるより、外装から接続部までを一枚の写真のように確認すると、むき不足、導体露出、刻印の三つをまとめて見られます。圧着の基礎はリングスリーブのサイズ・刻印、差込接続は差込形コネクタと器具の取付けも参照してください。
ねじなし器具とねじ端子も露出を見る
ねじなし端子の器具では、器具の外側から心線が2mm以上見えるものが欠陥です。引掛シーリングローゼットは1mm以上が基準です。心線を奥まで差し込めていない、引いて抜ける、より線をはんだ付けして差し込む、といった状態も確認します。
ねじ端子では、配線用遮断器・押しボタンなどで器具の端から5mm以上、ランプレセプタクル・露出形コンセントなどでねじの端から5mm以上、心線が露出するものが欠陥です。絶縁被覆をねじで締め付けた状態も不可なので、「見えないほど深く入れればよい」わけではありません。
見つけた欠陥を直す判断
修正は、残り時間と材料の長さを確認してから行います。ねじの締め直しや心線の差し直しで直るのか、切断して再加工が必要なのかを分けます。短く切り直して指定寸法の50%以下になるなら、そのまま進めず、別の修正方法が取れるかを判断します。
公式の「技能試験のポイント」では、試験開始後に材料の追加・交換を申し出られるのは、原則としてリングスリーブ、差込形コネクタ、端子台のねじです。電線を切りすぎても新しい電線を追加してもらえるとは限りません。焦って別の端子や器具まで傷めないよう、練習段階から「外す→傷を見る→長さを見る→再施工」の順にします。
安全上の区別
この記事は技能試験の作品判定を扱います。実設備の端子締付け、絶縁処理、耐電圧確認、検電などは、製品の施工要領、設計図書、関係法令、現場の安全手順に従ってください。試験基準だけで実設備を施工しないでください。
完成前チェックリスト
下の12項目を、毎回同じ順に声に出さず指で追います。時間配分は技能60分の残り時間ゲート、工具の準備は工具と教材の選び方へ分けて確認できます。
- 未完成、未接続、不要な工事がない
- 器具の配置、中心間寸法、線種・太さが指定どおり
- 電源から負荷まで回路がつながる
- 端子記号、電線色、極性が施工条件どおり
- リングスリーブの種類・刻印・心線位置が正しい
- 差込形コネクタの先端まで全心線が見える
- 端子ねじが締まり、全素線が保持されている
- 高圧側・低圧側・器具の導体露出が基準内
- 絶縁被覆を端子やねじで締め付けていない
- シース、絶縁体、心線、素線に欠陥となる損傷がない
- CVV・VVRの介在物を抜き取っていない
- 管、ボンディング、取付枠、器具に緩み・破損がない
理解度チェック
問1:CVVの介在物
CVVのシースを除去したとき、見栄えを整えるため作品側の介在物をすべて引き抜きました。判定はどうなりますか。
ア.欠陥ではない イ.介在物を短く切ればよい
ウ.欠陥になる エ.端子台へ接続すれば欠陥ではない
問2:端子台の導体露出
ほかの状態に問題がないとして、高圧側端子台の端から19mm、低圧側端子台の端から4mmだけ導体が露出しています。この数値だけで欠陥に該当しますか。
ア.高圧側だけ該当 イ.低圧側だけ該当
ウ.両方該当 エ.どちらもこの数値項目には該当しない
問3:完成寸法
配線図の指定寸法が200mmの区間を、器具の中心間で測ると100mmでした。公式基準ではどうなりますか。
ア.50%なので欠陥 イ.50%を下回っていないので欠陥ではない
ウ.電線色が正しければよい エ.端子台があれば寸法は判定しない
公式資料・一次情報
- 電気技術者試験センター:技能試験の欠陥について
- 電気技術者試験センター:技能試験の欠陥判断基準
- 電気技術者試験センター:技能試験のポイント(2026年版)
- 電気技術者試験センター:第一種技能試験の候補問題・注意事項
- 電気技術者試験センター:2026年度第一種技能試験候補問題
次に練習する記事
第一種技能試験の基本作業|KIP・CVV・端子台:加工・接続の手順へ戻る
第一種技能試験の三相回路と変圧器結線:端子記号と回路を理解する
第一種電気工事士 学習ロードマップ:学科から技能までの順番と、60分の配分・工具の判断を確認する
広告・検証方針
この記事内に工具、練習材料、通信講座のアフィリエイトリンクや1px追跡画像は掲載していません。2026年8月1日に試験センターの欠陥判断基準、2026年版「技能試験のポイント」、2026年度第一種候補問題を照合しました。旧稿のKIPの固定サイズ、端子台へ圧着端子を使う一律表現、CVVの介在物除去、支給材料を全部使うという説明、固定された電線色を修正しました。確認問題は当サイトのオリジナルです。
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