1種 基礎理論

三相交流回路の計算|Y・Δ結線、三相電力、V結線

この記事を読み終えると、三相の問題を見たときに「与えられたVとIに線か相かのラベルを付ける → 1相だけ取り出して解く → 線間値の式で検算する」の順で、√3を掛けるか割るかを迷わずに解き切れるようになります。

三相の計算でつまずく原因は、公式を忘れたことではありません。問題文のVとIが線間値なのか相値なのかを決めないまま式へ入れてしまうことが、答えが√3倍または√3分の1ずれる原因のほとんどです。この記事は、その1点を図で固めてから例題へ進みます。

この記事が扱う範囲

3相の電圧と負荷が等しく、位相が120°ずつずれた平衡三相回路を扱います。不平衡負荷、高調波を多く含む波形、地絡・短絡などの事故時の回路は、ここで使う式だけでは判定できません。また、計算上等価だからといって実機の結線を変更してよいわけではなく、銘板・結線図・保護方式の確認が別に必要です。

三相の値には「線」と「相」の2つの名前がある

三相回路には、同じ「電圧」「電流」という言葉で呼ばれる量が2種類ずつあります。まずこの4つを区別します。

  • 線間電圧 VL:R-S間、S-T間のように、電源線2本の間で測る電圧
  • 相電圧 VP:負荷1相(または巻線1相)にかかる電圧
  • 線電流 IL:電源線R・S・Tを流れる電流
  • 相電流 IP:負荷1相を流れる電流

Lはline、Pはphaseの頭文字です。この4つが結線によってどう対応するかを示したのが図1です。

図1 同じ「V」「I」でも、線で測るか1相で測るかで値が変わる

①〜⑥が、問題文のVとIがどれを指しているかを決める6か所です。

Y(スター)結線
N(中性点)RSTZZZVLVPIL=IP

負荷の片側を1点(N)へ集めるので、1本の線を流れた電流がそのまま1相を流れます。そのかわり1相にかかるのは線間電圧そのものではありません。

Δ(デルタ)結線
RSTZZZVL=VPILIP

負荷そのものが2本の線の間に入るので、1相にかかる電圧は線間電圧と同じです。そのかわり、1本の線には2つの相の電流が集まります。

ここを取り違えると答えが√3倍または√3分の1ずれます。問題用紙のVとIに小さくL(line)とP(phase)を書き込み、「与えられたのはどれか」「聞かれているのはどれか」を先に確定させてください。

図1の③のように、Y結線では線を流れた電流がそのまま1相を流れるのでIL=IPです。一方、図1の②の相電圧は線間電圧そのものではなく、VP=VL÷√3になります。

Δ結線は逆です。図1の④のとおり負荷が2本の線の間に直接入るのでVP=VLですが、図1の⑤の線電流には図1の⑥の相電流が2つ集まるため、IL=√3IPになります。

結線 そのまま等しいもの √3が付くもの
Y結線 電流 IL=IP 電圧 VL=√3VP
Δ結線 電圧 VL=VP 電流 IL=√3IP

「Yは電圧を割る、Δは電流を割る」という覚え方は、線間値から相値へ直すときだけ成り立ちます。逆向き(相値から線間値)に使うと掛け算になるので、どちらからどちらへ変換しているかを毎回書いてください。

√3はどこから出てくるのか

√3を「そういうもの」として覚えると、掛けるか割るかで迷います。出どころは、120°ずれた2つのベクトルの引き算です。

図2 √3は「120°ずれた2つを引き算した長さ」

線間電圧は相電圧2つの単純な足し算ではなく、120°ずれたベクトルの差です。

VRVSVT−VSVRSO30°
VRS=VR−VS → 大きさは 2×VP×cos30°=2×VP×0.866=√3VP
この30°の進みが、電力の式に出てこない理由:電力はVLとILの間の位相差φで決まりますが、VLが30°進むのと同時にILも30°ずれるため、力率cosφは相で見ても線で見ても同じになります。だから電力の式には√3だけが残り、30°は現れません。

図2の①が相電圧VR、図2の③が線間電圧VRSです。VRSはVRとVSの差なので、図2の②のように−VSをVRの先端へつなぎます。2つのベクトルは60°をはさむ同じ長さなので、合成の長さは2×VP×cos30°=√3VPになります。

Δ結線の線電流も同じ形です。1本の線には2つの相電流が集まりますが、その2つも120°ずれているため、単純な足し算(2倍)ではなく√3倍になります。√3は「2つの120°ずれを合成した係数」だと理解しておくと、Y・Δのどちらでも同じ理屈で導けます。

例題1 線間200〔V〕・1相10〔Ω〕のY負荷を解く

線間電圧200〔V〕の三相電源に、1相10〔Ω〕の抵抗を平衡Y結線でつないだときの線電流と三相電力を求めます。

  1. ラベルを付ける:与えられた200〔V〕は「線間電圧」なのでVL=200〔V〕。10〔Ω〕は1相分なのでZ=10〔Ω〕です。
  2. 相電圧へ直す:Y結線なのでVP=VL÷√3=200÷1.732≒115.5〔V〕。
  3. 1相だけで電流を出す:IP=VP÷Z=115.5÷10≒11.55〔A〕。
  4. 線電流へ戻す:Y結線はIL=IPなので、線電流も11.55〔A〕です(図1の③)。
  5. 三相電力を出す:P=3×VP×IP=3×115.5×11.55≒4,003〔W〕。抵抗だけなので力率は1です。
  6. 検算する:線間値の式でもP=√3×200×11.55×1≒4,001〔W〕。2つの式が一致したので、途中でL・Pを取り違えていないと確認できます。

インピーダンスにリアクタンスが含まれる場合は、手順3のZを大きさ|Z|=√(R2+X2)に置き換え、手順5で力率cosφ=R÷|Z|を掛けます。

例題2 同じ端子から見て等価なΔ負荷へ置き換える

例題1と同じ200〔V〕の電源に、1相30〔Ω〕の抵抗を平衡Δ結線でつなぎます。

  1. ラベルを付ける:Δ結線なので相電圧は線間電圧と同じ。VP=VL=200〔V〕です(図1の④)。
  2. 1相だけで電流を出す:IP=200÷30≒6.67〔A〕。これは辺を流れる相電流です。
  3. 線電流へ直す:IL=√3×6.67≒11.55〔A〕。図1の⑤と⑥の関係です。
  4. 三相電力を出す:P=3×200×6.67≒4,002〔W〕。

結果を見ると、Y結線10〔Ω〕とΔ結線30〔Ω〕は、端子から見た線電流も三相電力も同じでした。これが平衡負荷のY-Δ等価変換です。

平衡負荷の等価変換

ZΔ=3ZY / ZY=ZΔ÷3
Δ結線のほうが3倍大きい、と向きで覚えます。R+jXのようにリアクタンスを含む場合は、抵抗分だけでなく複素インピーダンス全体を3倍または3分の1にします。各相が等しくない不平衡回路では、この簡略式ではなく各枝を個別に扱う一般式が必要です。

三相電力は、線間値で書くと結線に関係なく同じ式になる

1相分から考えるとP=3VPIPcosφです。ここへY結線とΔ結線それぞれの関係を代入すると、どちらも同じ式になります。

  • Y結線:3×(VL÷√3)×IL×cosφ=√3VLILcosφ
  • Δ結線:3×VL×(IL÷√3)×cosφ=√3VLILcosφ

√3が電圧側から出るか電流側から出るかが違うだけで、結果は同じです。だから電力を線間値で計算するときは、結線を気にしなくてよいことになります。

求める量 線間値で書いた式 単位
有効電力P √3VLILcosφ 〔W〕
無効電力Q √3VLILsinφ 〔var〕
皮相電力S √3VLIL 〔VA〕

VL=400〔V〕、IL=20〔A〕、力率0.8なら、P≒11.1〔kW〕、S≒13.9〔kVA〕、sinφ=0.6としてQ≒8.31〔kvar〕です。S2=P2+Q2が成り立つので、これも検算に使えます。力率0.8だから残りの20%が無効分、ではありません。直角三角形の関係なので、無効分は0.6です。

例題3 電動機の軸出力から線電流を出す

定格出力3.7〔kW〕の三相誘導電動機を、線間電圧200〔V〕、力率0.8、効率0.9で運転したときの線電流を求めます。

  1. 銘板の値の意味を確定する:銘板の3.7〔kW〕は軸出力で、電源から取り込む電気入力ではありません。
  2. 電気入力へ直す:入力=出力÷効率=3,700÷0.9≒4,111〔W〕。
  3. 電力の式を電流について解く:P=√3VLILcosφより、IL=P÷(√3VLcosφ)。
  4. 代入する:IL=4,111÷(1.732×200×0.8)=4,111÷277.1≒14.8〔A〕。
  5. 検算する:逆に14.8〔A〕から入力を戻すと1.732×200×14.8×0.8≒4,102〔W〕、これに効率0.9を掛けると約3,692〔W〕で、銘板の3.7〔kW〕に一致します。

効率を掛け忘れると電流を約1割小さく見積もります。力率は電圧と電流の位相のずれ、効率は入力から軸出力への変換割合で、まったく別の量です。両方が問題文に出てきたら、両方使うと考えてください。

V結線の86.6%と57.7%は、比べている相手が違う

同一定格S0の単相変圧器2台をV結線して平衡三相負荷へ供給すると、三相出力は√3S0になります。ここから2つの割合が出てきますが、試験でよく問われるのはどちらの数字を答えるかです。

図3 V結線の86.6%と57.7%は、長さを比べている相手が違う

同じ「50kVAの単相変圧器」を基準に、3台のΔ結線と2台のV結線を並べます。

① 単相変圧器3台をΔ結線した場合
設備容量 150kVA / 三相出力 150kVA

3台のうち1台も遊ばせないので、設備容量と三相出力が一致します。

② 同じ変圧器2台をV結線した場合
設備容量 100kVA(50kVA×2台)
三相出力 86.6kVA(√3×50)

2台とも定格まで使っても、三相として取り出せるのは√3×50≒86.6kVAです。

③ 同じ86.6kVAを、2つの相手と比べる
86.6kVA ÷ 100kVA(②の設備容量)86.6% ← V結線の利用率
86.6kVA ÷ 150kVA(①の三相出力)57.7% ← Δ結線と比べた出力比
「V結線の利用率は57.7%」と覚えると1問落とします。57.7%は同じ変圧器3台のΔ結線と比べた出力の割合で、利用率(使っている2台の定格に対する割合)は86.6%です。問題文が「2台の合計容量に対して」と書いているか、「3台のΔ結線に対して」と書いているかで答えが変わります。

例題4 50〔kVA〕2台のV結線で供給できる三相出力

  1. 設備容量を出す:50〔kVA〕×2台=100〔kVA〕。これは「置いてある容量」です。
  2. 三相出力を出す:√3S0=1.732×50≒86.6〔kVA〕。取り出せるのはこちらです。
  3. 利用率を出す:86.6÷100=86.6%(図3の③の上段)。
  4. Δ結線と比べる:同じ変圧器3台のΔ結線なら150〔kVA〕なので、86.6÷150=57.7%(図3の③の下段)。

V結線は、将来Δ結線へ増設する前提の初期構成や、Δ結線の1台を切り離した制限運転で使われます。ただし1台が故障すれば自動的にV結線運転へ移れる、という意味ではありません。故障機の切り離し、残り2台の容量、保護協調、温度上昇、不平衡の確認が必要です。

自己チェック(6問)

解説を先に隠していません。答えを決めてから読み進めてください。

問1:線間電圧200〔V〕の三相電源に、1相10〔Ω〕の平衡Y結線負荷をつなぎました。線電流はおよそ何〔A〕ですか。

  1. 6.67〔A〕
  2. 11.55〔A〕
  3. 20〔A〕
  4. 34.6〔A〕

解答:2(11.55〔A〕)
Y結線なので相電圧はVP=200÷√3≒115.5〔V〕、相電流はIP=115.5÷10≒11.55〔A〕。図1の③のとおりY結線はIL=IPなので、線電流も約11.55〔A〕です。3の20〔A〕は200÷10と線間電圧をそのまま1相へ当てた値で、√3で割る手順を飛ばすとこの値になります。

問2:各相12〔Ω〕の平衡Δ結線負荷を、端子から見て等価なY結線へ置き換えると、Y結線の1相は何〔Ω〕になりますか。

  1. 4〔Ω〕
  2. 12〔Ω〕
  3. 24〔Ω〕
  4. 36〔Ω〕

解答:1(4〔Ω〕)
平衡負荷ではZY=ZΔ÷3なので、12÷3=4〔Ω〕です。4の36〔Ω〕は3倍する向きを逆にした値で、Δのほうが大きいと覚えておけば防げます。なお、この÷3は各相が等しい平衡負荷での簡略式で、不平衡な3枝には使えません。

問3:線間電圧400〔V〕、線電流20〔A〕、力率0.8の平衡三相負荷が消費する有効電力に最も近い値はどれですか。

  1. 6.4〔kW〕
  2. 11.1〔kW〕
  3. 13.9〔kW〕
  4. 19.2〔kW〕

解答:2(11.1〔kW〕)
P=√3VLILcosφ=1.732×400×20×0.8≒11,085〔W〕≒11.1〔kW〕。3の13.9〔kVA〕は力率を掛け忘れた皮相電力、1の6.4〔kW〕は√3を掛け忘れた値です。単位がWかVAかを書いておくと、力率の掛け忘れに自分で気づけます。

問4:正相順の平衡三相回路で、Y結線の線間電圧VRSは相電圧VRに対してどうなりますか。

  1. 大きさが√3倍で、位相が30°進む
  2. 大きさが√3倍で、位相が30°遅れる
  3. 大きさが3倍で、位相は同じ
  4. 大きさは同じで、位相が120°進む

解答:1(大きさが√3倍で、位相が30°進む)
図2のとおり、VRS=VR−VSというベクトルの引き算です。120°ずれた2つの差なので大きさは2cos30°=√3倍になり、向きはVRより30°進みます。3の3倍は√3を2乗してしまった値です。

問5:定格50〔kVA〕の同一単相変圧器2台をV結線し、平衡三相負荷へ供給します。変圧器を定格以内で使うときの三相出力に最も近い値はどれですか。

  1. 50〔kVA〕
  2. 57.7〔kVA〕
  3. 86.6〔kVA〕
  4. 100〔kVA〕

解答:3(86.6〔kVA〕)
V結線の三相出力は√3S0=1.732×50≒86.6〔kVA〕です(図3の②)。4の100〔kVA〕は2台の設備容量の単純合計で、これは取り出せません。2の57.7〔kVA〕は割合の57.7%と数字が同じなので、単位が%かkVAかを確認してください。

問6:定格出力11〔kW〕の三相誘導電動機を、線間電圧200〔V〕、力率0.8、効率0.9で運転します。線電流に最も近い値はどれですか。

  1. 32〔A〕
  2. 40〔A〕
  3. 44〔A〕
  4. 55〔A〕

解答:3(44〔A〕)
銘板の11〔kW〕は軸出力なので、電気入力は11,000÷0.9≒12,222〔W〕。I=12,222÷(1.732×200×0.8)≒44〔A〕です。2の40〔A〕は効率で割る手順を飛ばした値で、効率を忘れると電流を小さく見積もります。力率は電圧と電流の位相のずれ、効率は入力から軸出力への変換割合で、別々に掛ける量です。

この記事で確認した資料と確認日

2026年9月9日に、次の資料の記載内容を確認して本文の数値・用語を照合しました。

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資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。試験センターの科目説明・例題と日本電気技術者協会の技術解説を照合し、線間値と相値を書き分けて途中式を検算する方針で編集しています。運営者情報と編集方針

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