この記事でわかること
- Y結線とΔ結線の電圧・電流の関係
- Y-Δ変換(インピーダンス変換)の計算方法
- 三相電力の公式と計算手順
- V結線の利用率と出力計算
- 三相回路の問題を解く手順フロー
結論から言います
三相交流回路の計算は、第一種電気工事士の学科試験で毎回2〜3問出題される最頻出テーマです。第二種では「三相の電力計算」程度でしたが、第一種ではY結線とΔ結線の変換、線間電圧と相電圧の関係、三相電力の計算まで踏み込んで問われます。
公式が多くて敬遠されがちですが、Y結線とΔ結線の「電圧・電流の関係」をしっかり整理すれば、あとは当てはめるだけです。
三相交流とは?
三相交流は、120°(2π/3 rad)ずつ位相がずれた3つの交流を組み合わせたものです。発電所から需要家まで、電力の送電は基本的にすべて三相交流で行われています。
なぜ三相が使われるのか?
- 単相に比べて電線の量が少なくて済む(3本で3回路分の電力を送れる)
- 回転磁界が簡単に作れるので、モーターとの相性が良い
- 電力の瞬時値の合計が常に一定なので、振動が少ない
Y結線(スター結線)
3つの負荷(または巻線)の一端を1点にまとめた接続方法です。中心点を中性点と呼びます。
Y結線の電圧・電流の関係
Y結線の基本公式
線間電圧 VL = √3 × 相電圧 VP
線電流 IL = 相電流 IP(等しい)
覚え方:Y結線は電流がそのまま流れる(分岐しない)ので「電流が等しい」。電圧は2つの相を跨ぐので√3倍になる。
イメージ:水道管で例えると、Y結線は3本の管が1つの分岐点に集まっている状態です。水(電流)はそれぞれの管をそのまま流れるので変わりませんが、2本の管の間の圧力差(電圧)は1本分の√3倍になります。
Δ結線(デルタ結線)
3つの負荷(または巻線)を三角形(Δ)の形に接続する方法です。中性点はありません。
Δ結線の電圧・電流の関係
Δ結線の基本公式
線間電圧 VL = 相電圧 VP(等しい)
線電流 IL = √3 × 相電流 IP
覚え方:Δ結線はY結線の逆で、「電圧が等しく、電流が√3倍」。各辺に負荷が直接つながっているので電圧はそのまま。電流は分岐するので√3倍。
Y結線とΔ結線の比較まとめ
| 項目 | Y結線 | Δ結線 |
|---|---|---|
| 線間電圧と相電圧 | VL = √3 VP | VL = VP |
| 線電流と相電流 | IL = IP | IL = √3 IP |
| 中性点 | あり | なし |
| 主な用途 | 発電機、変圧器の高圧側 | 電動機、変圧器の低圧側 |
Y-Δ変換(インピーダンスの変換)
回路計算では、Y結線の負荷をΔ結線に変換(またはその逆)して計算を簡単にすることがあります。
平衡三相回路の場合(各相のインピーダンスが等しい場合)
Y-Δ変換(平衡時)
ZΔ = 3 × ZY
ZY = ZΔ / 3
Δ結線のインピーダンスはY結線の3倍——これだけ覚えておけば、平衡三相回路の変換は簡単です。
なぜ3倍? Δ結線では各相に線間電圧がそのまま掛かるのに対し、Y結線では線間電圧の1/√3しか掛かりません。同じ電力を消費するためには、Δ結線の方が3倍大きなインピーダンスが必要になるからです。
三相電力の計算
三相回路の電力計算は、Y結線でもΔ結線でも同じ公式が使えます。
三相電力の公式
三相電力(有効電力)
P = √3 × VL × IL × cosθ [W]
VL:線間電圧、IL:線電流、cosθ:力率
三相皮相電力
S = √3 × VL × IL [VA]
三相無効電力
Q = √3 × VL × IL × sinθ [var]
どの公式も√3 × 線間電圧 × 線電流がベースになっていることがわかります。
相電力からの計算
三相電力は「1相分の電力 × 3」で求めることもできます。
VP:相電圧、IP:相電流
線間電圧・線電流を使う方法と、相電圧・相電流を使う方法、どちらでも同じ答えが出ます。問題で与えられている値に応じて使い分けてください。
三相回路の計算例
例題1:Y結線の負荷
線間電圧200V、1相のインピーダンス10Ωの平衡Y結線負荷(力率1)の三相電力を求めよ。
① 相電圧を求める:VP = VL / √3 = 200 / √3 ≒ 115.5V
② 相電流を求める:IP = VP / Z = 115.5 / 10 = 11.55A
③ Y結線なので:IL = IP = 11.55A
④ 三相電力:P = √3 × VL × IL × cosθ = √3 × 200 × 11.55 × 1 = 4,000W = 4kW
例題2:Δ結線の負荷
線間電圧200V、1相のインピーダンス30Ωの平衡Δ結線負荷(力率1)の三相電力を求めよ。
① Δ結線なので相電圧 = 線間電圧:VP = 200V
② 相電流を求める:IP = VP / Z = 200 / 30 ≒ 6.67A
③ 線電流:IL = √3 × IP = √3 × 6.67 ≒ 11.55A
④ 三相電力:P = √3 × 200 × 11.55 × 1 = 4,000W = 4kW
例題1と例題2で同じ電力(4kW)になっています。実はΔ結線のインピーダンス30ΩはY結線の10Ωの3倍(ZΔ = 3ZY)です。等価なY結線とΔ結線は同じ電力を消費することが確認できました。
V結線
Δ結線の変圧器3台のうち1台を取り除いて、2台で三相電力を供給する方式をV結線と呼びます。
V結線の利用率
V結線の出力 = Δ結線の出力 × 1/√3 ≒ 57.7%
変圧器の利用率 = √3/2 ≒ 86.6%
① Δ結線(3台)の出力:SΔ = √3 × V × √3I = 3VI
② V結線(2台)の出力:SV = √3 × V × I = √3VI
③ 出力比 = √3VI / 3VI = 1/√3 ≒ 57.7%
④ V結線の設備容量 = 2 × VI(2台分)
⑤ 利用率 = √3VI / 2VI = √3/2 ≒ 86.6%
※ V:線間電圧、I:変圧器1台の定格電流
なぜV結線を使うのか?
- 将来の需要増加を見込んで、当初は2台で運用し、需要が増えたら3台目を追加してΔ結線にできる
- Δ結線の変圧器1台が故障しても、残り2台でV結線として運転を継続できる
三相回路の問題を解く手順
試験の計算問題は、以下の4ステップで解けます。どの問題でも同じ手順なので、体に染み込ませましょう。
書いてなければ「三相平衡負荷」→ どちらでも計算可能(Yで解くのが楽)
Δ結線:VP = VL(そのまま)、IP = VP / Z
Δ結線:IL = √3 × IP
線間電圧と線電流を使えば、Y・Δどちらでも同じ公式でOK
よくある計算ミス 3選
ミス1:Y結線で VL をそのまま相電圧に使ってしまう
Y結線では相電圧 VP = VL / √3 です。問題文に「線間電圧200V」とあったら、相電圧は200Vではなく 200/√3 ≒ 115.5V。「Y は割る」と覚える。
ミス2:Δ結線で IL をそのまま相電流に使ってしまう
Δ結線では相電流 IP = IL / √3 です。線電流と相電流を取り違えるとインピーダンスの計算が狂います。「Δ は割る(電流を)」と覚える。
ミス3:V結線の出力を「2/3」と間違える
変圧器の台数は 2/3 に減りますが、出力は 2/3 ではなく 1/√3 ≒ 57.7% です。「台数比と出力比は違う」を意識しましょう。
まとめ
✔ Δ結線:VL = VP、IL = √3IP
✔ Y-Δ変換:ZΔ = 3ZY
✔ 三相電力 P = √3 VL IL cosθ(Y・Δ共通)
✔ V結線の出力はΔ結線の1/√3(≒57.7%)
✔ V結線の利用率は√3/2(≒86.6%)
確認問題
【問題1】 三相3線式200Vの電源に、1相のインピーダンスが20ΩのΔ結線負荷(力率1)を接続したとき、線電流[A]として最も近い値はどれか。
イ.5.8
ロ.10
ハ.17.3
ニ.30
【問題2】 平衡三相回路において、Y結線の1相のインピーダンスが6Ωのとき、これと等価なΔ結線の1相のインピーダンス[Ω]はいくらか。
イ.2
ロ.6
ハ.12
ニ.18
【問題3】 三相3線式の回路で、線間電圧400V、線電流50A、力率80%のとき、三相電力[kW]として最も近い値はどれか。
イ.16
ロ.27.7
ハ.32
ニ.34.6
【問題4】 単相変圧器2台でV結線にして三相負荷に供給する場合、Δ結線(3台)に対する出力の比率として正しいものはどれか。
イ.1/3(約33.3%)
ロ.1/2(50%)
ハ.1/√3(約57.7%)
ニ.2/3(約66.7%)
第二種で学んだ交流回路の基礎は「交流回路の基礎をイメージで理解!インピーダンスと力率|第二種電気工事士」で復習できます。三相の電圧降下計算は「三相3線式の電圧降下と電力計算をわかりやすく解説|第二種電気工事士 配電理論」、高圧配電線路の計算は「高圧配電線路の電圧降下と短絡電流計算をわかりやすく解説|第一種電気工事士」も参照してください。
第一種の学科対策に
三相交流回路は公式の暗記だけでなく、問題を繰り返し解いて計算パターンを体に染み込ませることが重要です。テキストで体系的に学習しましょう。
独学に不安がある方は、通信講座でプロの解説を受けるのも一つの手です。
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