この記事を読み終えると、写真や実物を見たときに「シースの層を数える → 断面の形を見る → 表示を最後まで読む → 用途と条件に照合する」の4ステップで、IV・HIV・EM-IE・DV・OW・VVF・VVR・CV・CVT・EM 600V EEF/Fを見分けられるようになります。
鑑別でつまずく原因は、名称を覚えていないことよりも、色や太さの印象だけで決めてしまうことと、表示の数字を最後まで読まないことにあります。灰色ならVVF、黒ならOWといった覚え方では、600V CVと高圧CVのように形が同じものを区別できません。
この記事で扱う範囲
第二種電気工事士の学科・技能で登場する低圧の電線・ケーブルを、構造・表示・用途から識別できるようにします。許容電流の低減計算と幹線の設計、ケーブル工事の施工条件は、それぞれ専用の記事へ分けています。
実設備は名称だけで選ばない
同じ種類でも、定格電圧、導体サイズ、心数、許容電流、周囲温度、布設方法、機械的防護、接地の条件が異なります。実際の増設・交換は、設計図書、法令・規格、製品仕様を確認したうえで、必要な資格を持つ人が判断・施工してください。
見分けるときに使う判断軸は4つ
種類を丸暗記する前に、何を見て決めるのかを先に決めます。この記事では次の4つを順に使います。順番には理由があり、前の軸で絞れた候補だけが次の軸へ進みます。
- シースの有無:導体+絶縁体だけか、その外側に外被があるか(絶縁電線かケーブルか)
- 断面の形:平形か、丸形か、より合わせ形か
- 表面表示:種類記号、定格電圧、サイズ、心数
- 用途と施設条件:屋内配線、低圧架空引込線、低圧架空電線路、電力用のどれか
この4つのうち、1つでも飛ばすと答えが定まりません。たとえばCVには600V用と高圧用があるため、「CVだから高圧」と決めることはできません。定格電圧の表示まで読んで初めて確定します。
断面は3層(導体・絶縁体・シース)で見る
最初の軸はシースの有無です。導体は電流を流す部分、絶縁体は充電部を覆う材料、シースは線心や内部をまとめて保護する外被を指します。
図1 断面は3層(導体・絶縁体・シース)で見る
名称を覚える前に、外側から何層あるかを数えます。
図1の①が絶縁電線です。銅色の導体を絶縁体が覆っているだけで、外被がありません。②の平形ケーブルでは、白と黒の2本の線心を1枚の灰色のシースがまとめています。③のより合わせ形は、①や②と違って1条ずつがシースを持ち、それが3条より合わせてあります。断面の写真で②と③を迷ったら、図1の凡例にある灰色の層が何枚あるかを数えてください。
ここで注意したいのは、シースがあるからといって、どこへでも管なしで施設できるとは限らないことです。ケーブル工事にも支持間隔、防護、接続、場所ごとの条件があります。条件はケーブル工事の施工方法|支持間隔2m・6m・1mと防護・接地で確認してください。
表示は3つのブロックに切って読む
2つ目と3つ目の軸をまとめて使います。断面の形で候補を絞ったら、外被や絶縁体に印字された表示を最後まで読みます。
図2 表示は3つのブロックに切って読む
ケーブルの表示「VVF 1.6-2C」を、意味の切れ目で分けます。
絶縁電線は2ブロックになる
図2のように、表示は種類・サイズ・心数の意味の切れ目で分けられます。ケーブルなら3ブロック、絶縁電線なら心数がないので2ブロックです。サイズのブロックだけが単位で意味を変え、mmなら単線の直径、mm2ならより線の公称断面積になります。
直径mmと断面積mm2は、同じ太さでも書き方が違う
単線は直径、より線は公称断面積で表すため、数字をそのまま比べることはできません。直径dの円の断面積はπ(d÷2)2で求められるので、次のように対応します。
| 単線の直径 | 断面積に直すと | ほぼ同じ太さのより線 |
|---|---|---|
| 1.6mm | 約2.0mm2 | 2mm2 |
| 2.0mm | 約3.1mm2 | 3.5mm2 |
| 2.6mm | 約5.3mm2 | 5.5mm2 |
周囲温度30℃以下でがいし引きとした場合の許容電流も、1.6mmと2mm2がともに27〔A〕、2.0mmが35〔A〕に対し3.5mm2が37〔A〕と、この対応どおりに近い値になります。「2.0mmと2mm2は同じ」と読み替えると、1段階細い電線を選ぶことになります。
屋内の絶縁電線は許容温度で選ぶ|IV・HIV・EM-IE
図3のステップ1でシースが無いと判定でき、用途が屋内配線や盤内配線なら、次の3つが候補になります。違いは絶縁体の材料と導体の最高許容温度です。
| 種類 | 導体の最高許容温度 | 位置づけ |
|---|---|---|
| IV 600Vビニル絶縁電線 |
60℃ | 一般用電気工作物、機器用配線、盤内配線の標準 |
| HIV 600V二種ビニル絶縁電線 |
75℃ | 耐熱性を高めた形。同じサイズでも許容電流を大きく取れる場合がある |
| EM-IE 600V耐燃性ポリエチレン絶縁電線 |
75℃ | 重金属を含まず、焼却時にハロゲンガスを出さない環境配慮型 |
ただし、HIVなら高温の場所へ無条件で使えるわけではありません。周囲温度、施設場所、接続する機器の端子温度条件を含めて選定します。名称はメーカー資料や表面表示のとおりに覚え、英単語へ独自に分解しないでください。正式名称と自作の覚え方が混ざると、表示を読むときに迷います。
屋外の絶縁電線は用途で決まる|DVとOW
同じ「シースなし・屋外用」でも、引込線か架空電線路かで種類が変わります。ここは判断軸4(用途)を使う場面です。
| 種類 | 見分ける手掛かり | 主な用途 |
|---|---|---|
| DV(DVR等) | 2本または3本をより合わせてある | 低圧架空引込線 |
| OW | 単独の線。黒色のビニル絶縁 | 低圧架空電線路 |
| OC/PDC | 架橋ポリエチレン絶縁 | OCは高圧架空電線路、PDCは高圧引下げ用 |
「OWは高圧用」という覚え方は誤りです。矢崎エナジーシステムの現行製品情報では、OWが低圧架空電線路用、高圧用は別記号のOC・PDCとして区別されています。低圧か高圧かは記号で決まり、太さや色では決まりません。
VVFとVVRは断面の形で識別する
どちらも600Vビニル絶縁ビニルシースケーブルで、絶縁体もシースもビニルという点は共通です。違いは断面の形だけで、平形がVVF、丸形がVVRです。
VVFは600V以下の主に屋内配線に用いる電力用ケーブルで、2心・3心はJIS C 3342に基づき、絶縁体の許容温度は60℃、標準のシース色は灰色です。第二種技能試験では「VVF 1.6-2C」のように種類・導体径・心数が施工条件として示されるため、図2の3ブロックをそのまま読むことになります。
VVRは複数の線心を丸くまとめた形で、断面は円になります。「VVRは必ず幹線」「VVFは住宅ならどこでも」と用途を固定せず、導体サイズ、心数、布設環境、工事方法を先に確認してください。
CVとCVTは定格電圧とより合わせ条数まで読む
CVは架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルです。絶縁体の許容温度は90℃で、同じ導体サイズでもVVケーブルより許容電流を大きく取れる特長があります。
注意が必要なのは、CV系の名称は低圧にも高圧にもあることです。600V CVと6,600V CVは形が似ているため、図3のステップ3で定格電圧の表示を読むまで確定できません。
CVTは「3心CV」の別名ではありません。図1の③のとおり、単心CVケーブルを3条より合わせたトリプレックス形です。条数が2ならCVD、4ならCVQと呼びます。断面の写真では、各条にシースがあるかまで観察すると、3心の丸形ケーブルと区別できます。
EM 600V EEF/FはVVFの環境配慮型
EM 600V EEF/F(教材ではEM-EEFと書かれることがあります)は、600Vポリエチレン絶縁耐燃性ポリエチレンシースケーブル平形です。主に屋内配線に用いるVVFの環境配慮型で、絶縁体の許容温度は75℃です。
燃焼時に有害なハロゲンガスやダイオキシンが発生せず、煙が少ないという製品特長がありますが、不燃ケーブルという意味ではありません。外観がVVFに似ているため、迷ったらシース上の種類表示を確認します。図2のブロック1(種類)だけで判別できる例です。
例題|金属管に3.5mm2を4本収めたときの許容電流
許容電流は「種類とサイズ」だけでは決まりません。同じ電線でも、収める本数によって値が変わります。2026年度上期(2026年5月24日実施)の第二種学科試験でも、金属管に600Vビニル絶縁電線を4本収めた場合の1本あたりの許容電流が出題され、電流減少係数0.63が条件として与えられました。同じ条件で計算してみます。
- 基準値を読む:断面積3.5mm2の600Vビニル絶縁電線は、周囲温度30℃以下・がいし引きで37〔A〕です
- 本数から係数を選ぶ:同一管内4本なので、電流減少係数は0.63です(3本以下なら0.70)
- 掛ける:37〔A〕×0.63=23.31
- 切り捨てる:小数点以下を切り捨てて23〔A〕。公表された解答も23Aです
- 検算:減少係数は1より小さいので、答えは必ず基準値の37Aより小さくなります。大きくなったら掛け算の向きを間違えています
実際の許容電流は、このほかに導体の材質、単線かより線か、絶縁体の許容温度、周囲温度、気中・管内・暗きょ・直埋めなどの布設方法、ケーブルの配列でも変わります。「IV 1.6mmはいつでも27A」とは扱えません。幹線と分岐回路で許容電流をどう使うかは分岐回路と幹線の設計|許容電流・遮断器・コンセント・3mルールで確認してください。
迷ったら4ステップで判定する
ここまでの判断軸を、写真問題でも実物でもそのまま使える順番に並べたものが図3です。
図3 4ステップで候補を絞る
写真でも実物でも、この順に見れば同じ答えにたどり着きます。
図3のステップ1とステップ2は形だけで進められますが、ステップ3の表示を読まないと、定格電圧が違うだけの製品を取り違えます。ステップ4まで通すと、「形は合っているが用途が違う」という誤答も防げます。
用途から逆に引くと候補が絞れる
試験問題では用途が先に示されることが多いので、逆引きも用意しておきます。結論としては、屋内配線ならVVF、屋内の管内配線ならIV、低圧引込ならDV、電力用の幹線なら600V CVまたはCVTが最初の候補になります。そのうえで、下の表の右列にある条件を確認して確定します。
| 使う場面 | まず候補になるもの | 併せて確認する条件 |
|---|---|---|
| 住宅の屋内配線(ケーブル工事) | VVF、EM 600V EEF/F | 心数、導体径、支持間隔と機械的防護 |
| 金属管・合成樹脂管の中 | IV、HIV、EM-IE | 同一管内の本数と電流減少係数、周囲温度 |
| 低圧の架空引込 | DV | 引込線か架空電線路か(OWと取り違えない) |
| 電力用の幹線 | 600V CV、600V CVT | 定格電圧の表示、条数、布設方法 |
自己チェック|表示・構造・用途を取り違えない
解説は最初から表示しています。まず自分の答えを出してから、誤りの選択肢がどの種類の説明になっているかまで確認してください。
問1:ケーブルの表示「VVF 1.6-2C」の1.6と2Cは、それぞれ何を表していますか。
- 公称断面積1.6mm2と、より合わせ条数2条
- 導体の直径1.6mmと、心数2心
- 定格電圧1.6kVと、心数2心
- シースを含む外径1.6mmと、2本1組であること
解答:2(導体の直径1.6mmと、心数2心)
単線のサイズは直径mmで示します。Cは心(core)の数で、2Cは1本のケーブルに線心が2本入っているという意味です。1の「より合わせ条数」はCVT・CVD・CVQで使う数え方、4の「2本1組」と読むと、材料の拾い出しでケーブルの必要数を2倍に数えてしまいます。
問2:低圧の架空引込線に用いる、2本または3本をより合わせた絶縁電線はどれですか。
- IV(600Vビニル絶縁電線)
- OW(屋外用ビニル絶縁電線)
- DV(引込用ビニル絶縁電線)
- 600V CVT(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル・トリプレックス形)
解答:3(DV)
DVは低圧架空引込線用で、2個より・3個よりの形があります。2のOWは同じ屋外用でも低圧架空電線路用の単独の電線です。1のIVは屋内配線などに使う絶縁電線、4のCVTはシースを持つケーブルなので図1の①ではなく③の形です。
問3:600V CVTの構造として正しいものはどれですか。
- VVFを3枚重ねて1枚のシースで覆ったもの
- シースを持つ単心CVケーブルを3条より合わせたもの
- 3心VVRの別名で、丸形の外被を持つもの
- IVを3本束ねて外被なしで使うもの
解答:2(単心CVを3条より合わせたもの)
CVTはトリプレックス形で、図1の③がその断面です。1条ずつがシースを持つ点が、1枚のシースに線心が並ぶVVFやVVRと違います。条数が2ならCVD、4ならCVQです。3の「3心VVRの別名」と覚えると、絶縁体がビニル(VV)か架橋ポリエチレン(CV)かの区別も崩れます。
問4:直径2.0mmの単線とほぼ同じ太さになる、より線の公称断面積はどれですか。
- 2mm2
- 3.5mm2
- 5.5mm2
- 8mm2
解答:2(3.5mm2)
直径2.0mmの断面積は3.14×(2.0÷2)2=約3.1〔mm2〕で、3.5mm2が最も近い値です。許容電流も、周囲温度30℃・がいし引きの条件で2.0mmが35〔A〕、3.5mm2が37〔A〕と近い値になります。1の2mm2は直径1.6mm(約2.0mm2)に対応し、数字だけを見て「2.0mmと2mm2は同じ」と考えると1段階細い電線を選びます。
問5:金属管に5.5mm2の600Vビニル絶縁電線を3本収めて施設したとき、電線1本あたりの許容電流はいくらですか。がいし引き・周囲温度30℃以下での許容電流を49〔A〕、電流減少係数を0.70とします。
- 30A
- 34A
- 39A
- 49A
解答:2(34A)
49〔A〕×0.70=34.3となり、小数点以下を切り捨てて34〔A〕です。4の49Aは減少係数を掛け忘れた値で、管内に複数本を収めた条件では使えません。減少係数は同一管内の本数で変わり、3本以下なら0.70、4本なら0.63です。
問6:EM 600V EEF/F(教材ではEM-EEFと書かれることがあります)の説明として正しいものはどれですか。
- 絶縁体・シースともにビニルで、VVFと材料は同じ
- ポリエチレン絶縁・耐燃性ポリエチレンシースの平形で、絶縁体の許容温度は75℃
- 架橋ポリエチレン絶縁で、絶縁体の許容温度は90℃
- 燃えないケーブルなので、火気のある場所へ無条件に使える
解答:2(ポリエチレン絶縁・耐燃性ポリエチレンシースの平形。絶縁体の許容温度は75℃)
1はVVF(絶縁体の許容温度60℃)、3はCV(90℃)の説明です。4は誤りで、燃焼時にハロゲンガスやダイオキシンが発生しにくいという特長はあっても、不燃という意味ではありません。火気のある場所の施設条件は材料名だけでは決まりません。
照合したメーカー仕様と試験問題
本文の名称、構造、許容温度、用途は、電線メーカーの現行製品仕様と、電気技術者試験センターが公開する出題範囲・学科試験問題および解答と照合しました。確認日は2026年9月9日です。図1〜図3と自己チェック6問は当サイトで作成したもので、試験問題の文面は転載していません。
- 電気技術者試験センター:第二種電気工事士の学科試験のポイント
- 電気技術者試験センター:電気機器・材料・工具の公式例題
- 電気技術者試験センター:2026年度上期 第二種学科試験問題
- 電気技術者試験センター:2026年度上期 第二種学科試験解答
- 電気技術者試験センター:第二種試験の問題と解答
- フジクラ・ダイヤケーブル:IV・HIV製品カタログ
- フジクラ・ダイヤケーブル:電線・ケーブルの許容電流
- SFCC:600V VVF・VVF(G)製品情報
- SFCC:600V VV・VVR製品情報
- SFCC:600V CV・CVD・CVT・CVQ製品情報
- SFCC:EM 600V EEF/F製品情報
- 矢崎エナジーシステム:DV・OW・OC・PDC製品情報
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次は【10問】電線・ケーブルの種類ミニテスト|第二種で、図3の4ステップを問題文へ当てながら通してください。表示の読み違いがあれば、ここで見つかります。
そのあと第二種電気工事士の鑑別問題対策|工具・材料・計器の見分け方へ進むと、電線以外の材料・工具まで同じ手順で見分けられるようになります。
選んだケーブルを実際にどう施設するかは金属管・PF管・CD管工事|支持1.5m・接続・接地の判断で確認できます。
広告・編集方針
この記事内に通信講座、教材、電線・ケーブルのアフィリエイトリンクは掲載していません。2026年9月9日に、電線メーカーの現行製品仕様と、電気技術者試験センターの出題範囲・2026年度上期の学科試験問題と解答を照合し、名称、構造、許容温度、許容電流の条件を再確認しました。図1〜図3と自己チェック6問は当サイトのオリジナルです。
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
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