結論:電気応用は「入力→変換→有効出力」の順に解く
電動力・電熱・照明の式は別々に見えますが、共通する考え方は同じです。何を有効出力とするかを先に決め、効率と単位をそろえてから入力へ戻ると、掛け算と割り算の迷いを減らせます。
電気技術者試験センターが示す第一種電気工事士の「電気応用」の範囲は、照明・電熱・電動機応用です。令和8年度上期の公式出題例には、インバータによる速度制御、電熱器の熱量、照明器具の用途が出ています。分野ごとの出題数は固定されていないため、本記事では頻度を断定せず、公式範囲を横断して解ける判断手順を作ります。
3分野に共通する解き方
| 手順 | 確認すること | 代表例 |
|---|---|---|
| 1 有効出力 | 最終的に必要な仕事・熱・光は何か | 荷を上げる動力、水が得る熱量、作業面の照度 |
| 2 変換と損失 | 効率、照明率、保守率などをどこへ入れるか | 機械損、熱損失、室内面・器具による光の利用割合 |
| 3 入力・台数 | 必要な電力、時間、器具数へ戻す | 入力kW、加熱時間、切上げ後の器具台数 |
効率は「出力÷入力」です。したがって、入力から出力を求めるなら効率を掛け、必要な出力から入力へ戻るなら効率で割ります。効率80%は計算で0.80とし、複数段の変換があれば原則として各効率を掛け合わせます。
電動機応用:まず負荷が必要とする動力を求める
直線運動の機械出力は P=Fv [W] です。Fは進行方向の力[N]、vは速度[m/s]です。電動機入力を求める問題では、負荷側の有効出力を求めた後、電動機・伝達機構など、問題文で与えられた効率で割ります。
巻上げ
有効出力:Pout=mgv
入力:Pin=mgv/η
揚水ポンプ
Pin=9.8QH/(ηpηm) [kW]
巻上げ式のmは質量[kg]、gは重力加速度9.8m/s²、vは速度[m/s]です。水を扱うポンプ式のQは揚水量[m³/s]、Hは全揚程[m]、ηpはポンプ効率、ηmは電動機効率です。令和7年度下期の公式問題でも、ポンプと電動機の2つの効率を分母へ置く形が問われています。問題が総合効率ηだけを与えた場合は、そのηで割ります。
式の9.8は水・SI単位を前提にする
9.8QHの形は、水の密度を約1000kg/m³、gを約9.8m/s²とし、WからkWへ換算したものです。流量がm³/minやL/minで与えられたら、先にm³/sへ直します。
電動機の始動方式と速度制御を混同しない
| 方式 | 原理 | 判断の注意 |
|---|---|---|
| 全電圧始動 | 電動機へ電源電圧を直接加える | 構成は単純だが始動電流・機械的衝撃を検討する |
| スターデルタ | Yで始動し、加速後にΔ運転へ切り替える | 始動電流と始動トルクは、比較する直入れのおおむね1/3。Δ運転できる6端子と、低い始動トルクで加速できる負荷が前提 |
| リアクトル始動 | 直列リアクトルで始動時の印加電圧を下げる | 電圧低減とともに始動トルクも下がる |
| 二次抵抗始動 | 回転子二次回路へ抵抗を入れる | 巻線形誘導電動機の方式で、かご形には用いない |
| インバータ | 電圧と周波数を制御し、加減速・速度制御を行う | 電流は設定、負荷、加速時間、電動機特性で変わり、一律値ではない |
誘導電動機の同期速度は Ns=120f/p [min-1] です。fは周波数[Hz]、pは極数です。かご形誘導電動機の回転子は滑りがあるため同期速度より少し遅く回り、インバータは主に入力周波数を変えて速度を制御します。電動機単体の構造は変圧器・誘導電動機の仕組みで復習できます。始動電流と始動トルクが方式ごとにどう変わるかは、三相誘導電動機の始動と保護で比べられます。
電熱:有用熱量と電気入力を分ける
物体が受け取る有用熱量は Q=mcΔT です。mは質量[kg]、cは比熱[kJ/(kg・K)]、ΔTは温度差[K]とすれば、QはkJになります。温度差は℃差とK差で数値が同じです。
熱効率η、入力電力P[kW]、時間t[s]なら、電気入力エネルギーはPt[kJ]で、mcΔT=Ptη です。よって P=mcΔT/(tη)、t=mcΔT/(Pη) となります。令和8年度上期の公式問題では、水が得る熱量と熱効率から、電熱器側のエネルギーへ戻す判断が問われました。
| 加熱方式 | 発熱の場所・原理 | 見分ける語 |
|---|---|---|
| 抵抗加熱 | 発熱体または被加熱物の抵抗によるジュール熱 | 電熱線、抵抗炉、直接通電 |
| アーク加熱 | 電極間などのアークが生む高温 | アーク炉、溶解、溶接 |
| 誘導加熱 | 交番磁界で導電性の被加熱物に渦電流を生じさせる | IH、コイル、渦電流 |
| 誘電加熱 | 高周波電界中の誘電体に生じる誘電損を利用 | 高周波・マイクロ波、誘電損 |
| 赤外線加熱 | 放射を被加熱物が吸収して熱へ変える | 赤外線ヒータ、放射加熱 |
誘導加熱を「金属ならすべて同じ」、誘電加熱を「非金属ならすべて同じ」と覚えるのは不十分です。材質、形状、周波数、電気的・磁気的性質で加熱特性が変わります。電磁調理器は、試験センターの例題どおり、コイルの交番磁界によって鍋に生じる渦電流のジュール熱などを利用する誘導加熱です。
照明:光束・光度・照度・輝度を区別する
| 量 | 単位 | 何を表すか |
|---|---|---|
| 光束 | lm(ルーメン) | 光源から出る光の量 |
| 光度 | cd(カンデラ) | ある方向への光の強さ |
| 照度 | lx(ルクス) | 面が受ける光束の密度。1lx=1lm/m² |
| 輝度 | cd/m² | ある方向から見た面の輝きの強さ |
1点の照度は距離と入射角で決まる
点光源とみなせる条件で、光源から計算点までの距離をr、面の法線と光線の角度をθ、その方向の光度をI(θ)とすると、面の照度は E=I(θ)cosθ/r² です。光源が水平面から高さhにあり、θを鉛直下向きから測ればr=h/cosθなので、水平面照度は E=I(θ)cos³θ/h² になります。直下ではθ=0°なのでE=I(0)/h²です。
逆二乗則を使える条件
光源の大きさに比べ距離が十分大きく、点光源として扱える場合の式です。近距離の大きな面光源や直管形光源を、無条件で点光源として計算しません。実設計では器具の配光データも使います。
部屋全体の器具台数は光束法で求める
平均照度E[lx]、器具台数N、器具1台当たりの初期光束F[lm]、照明率U、保守率M、床面積A[m²]の関係は E=NFUM/A です。必要台数は N=EA/(FUM) で求め、端数は必要照度を下回らないよう切り上げます。
照明率Uは器具の配光、室指数、天井・壁・床の反射率などの影響を受け、保守率Mは光源の光束低下や汚れなどを見込む係数です。台数計算だけで設計完了ではなく、均斉度、グレア、演色性、色温度、作業内容、非常時の照明も確認します。
LEDは順方向電圧を加えると発光する半導体素子で、発光原理はエレクトロルミネセンスです。光を当てて発光させる原理とは区別します。一般的な白色LEDには青色LEDと蛍光体を組み合わせる方式がありますが、白色化の方式は一つだけではありません。
自己チェック|効率の向きと、速度・加熱の原理
問1:揚水ポンプの入力
揚水量0.04m³/s、全揚程30m、ポンプ効率0.80、電動機効率0.90のとき、電動機入力に最も近い値はどれですか。
ア.11.8kW イ.14.7kW
ウ.16.3kW エ.20.4kW
正解:ウ。9.8×0.04×30/(0.80×0.90)=約16.3kWです。ポンプと電動機の効率を両方とも分母へ置きます。
問2:加熱時間
8kgの水を50K上昇させます。比熱4.2kJ/(kg・K)、熱効率0.80、電熱器3.5kWのとき、加熱時間は何分ですか。
ア.6分 イ.8分 ウ.10分 エ.12分
正解:ウ。有用熱量は8×4.2×50=1680kJ。入力は1680/0.80=2100kJなので、時間は2100/3.5=600秒=10分です。
問3:光束法
床面積48m²の室で平均照度500lxを確保します。器具1台の光束4000lm、照明率0.60、保守率0.80のとき、最低限必要な台数はどれですか。
ア.10台 イ.12台 ウ.13台 エ.15台
正解:ウ。N=500×48/(4000×0.60×0.80)=12.5です。必要照度を下回らないよう13台へ切り上げます。
問4:誘導電動機の回転速度
周波数60Hz、4極の三相誘導電動機が、滑り5%で運転しています。回転速度に最も近い値はどれですか。
ア.1,710min-1 イ.1,800min-1
ウ.1,890min-1 エ.3,420min-1
正解:ア。同期速度はNs=120f/p=120×60/4=1,800min-1。滑りs=(Ns-N)/Nsより、N=Ns(1-s)=1,800×(1-0.05)=1,710min-1です。イは同期速度そのもの、ウは滑りの分を足した値、エはpへ極対数の2を入れた値です。回転子は同期速度より少し遅く回ります。
問5:インバータの速度制御
かご形誘導電動機をインバータで速度制御する基本原理として、正しいものはどれですか。
ア.電動機へ供給する周波数を変えて、同期速度を変える
イ.電源電圧だけを下げて、同期速度を変える
ウ.滑りを常に0に保って、回転速度を同期速度に合わせる
エ.二次回路の抵抗を増やして、同期速度を変える
正解:ア。Ns=120f/pのとおり、同期速度を決めるのは周波数と極数だけです。インバータは周波数を変え、電圧も合わせて制御します。イの電圧だけの変更では同期速度は変わらず、ウの滑り0ではトルクが出ません。エの二次抵抗は巻線形の方式で、変わるのは滑りです。
問6:加熱方式
金属の被加熱物に交番磁界を与え、内部に生じる渦電流のジュール熱で加熱する方式はどれですか。
ア.抵抗加熱 イ.誘導加熱
ウ.誘電加熱 エ.赤外線加熱
正解:イ。電磁誘導で導体の中に渦電流を流して発熱させるのが誘導加熱で、電磁調理器もこの方式です。ウの誘電加熱は、高周波の電界で誘電体に生じる誘電損を使います。アは発熱体や被加熱物の抵抗によるジュール熱、エは放射を吸収させる方式です。
出題例と電動力・電熱・照明の原理を確かめた資料
確認日:2026年7月30日(令和8年度上期の出題例、試験センターの電気応用の例題、令和7年度下期の問題、メーカー・業界団体の資料)
- 第一種電気工事士の試験概要
- 第一種電気工事士の学科試験のポイント
- 学科試験例題「電気応用」(LED・誘導加熱・始動方式)
- 令和8年度上期 学科試験出題例
- 令和8年度上期 学科試験出題例の解答
- 令和7年度下期 学科試験問題(揚水ポンプ)
- 三菱電機:スターデルタ始動時の始動電流
- 三菱電機:電動機の直入れ始動と減電圧始動
- ニデック:交流モータとインバータ制御
- NITE:IHこんろの加熱方式と安全
- 日本照明工業会:光束・光度・照度・輝度
- 日本照明工業会:LED照明ハンドブック
- 岩崎電気:点光源による直射照度
更新履歴:2026年7月30日 出題数を断定する説明と、始動電流・加熱対象を一律に言い切る説明を、公式資料に合わせて改訂
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