結論から言います
電力P〔W〕はエネルギーを使う速さ、電力量E〔Wh・J〕は一定時間に使ったエネルギー、発熱量H〔J〕は抵抗で熱に変わったエネルギーです。抵抗負荷なら、まずP=VIで電力を求め、時間を掛けてE=Pt、発熱を問われたらH=I2Rtへ進みます。
この記事でできるようになること
- P=VI、P=I2R、P=V2÷Rを条件に合わせて選ぶ
- W・kW、J・kJ、Wh・kWh、秒・分・時間を正しく換算する
- 電力量とジュール熱を混同せず、途中式と単位で検算する
- 水の加熱問題で、温度差・比熱・効率を分けて計算する
電力・電力量は第二種学科の基礎理論
電気技術者試験センターは、第二種電気工事士の学科試験「電気に関する基礎理論」の範囲に、電流・電圧・電力・電気抵抗と電気回路の計算を挙げています。公式例題も、公式を暗記するだけでなく、回路条件と単位を読んで計算する構成です。
この記事では公式問題を転載せず、試験範囲に合わせたオリジナル例題で、量を区別する→式を選ぶ→単位をそろえる→答えを検算する流れを練習します。先にV・I・Rを復習したい場合は「オームの法則と合成抵抗」から始めてください。
この記事で使う記号
電力量は教材によってW、Eなどの記号で表され、電力の単位W(ワット)と見た目が重なることがあります。混同を避けるため、この記事では電力をP、電力量をE、発熱量をHと書きます。問題を解くときは、記号だけでなく単位も確認してください。
最初に4つの量を区別する
| 量 | 意味 | 主な単位 |
|---|---|---|
| 電力P | 1秒あたりに変換・消費するエネルギー | W、kW |
| 電力量E | 電力を一定時間使ったエネルギー | J、Wh、kWh |
| 発熱量H | 抵抗で熱へ変わったエネルギー | J、kJ |
| 熱容量計算Q | 物体の温度を変えるのに必要な熱量 | J、kJ |
国際単位系では、1Wは1秒間に1Jのエネルギーを生じる電力です。したがって、1W=1J/sと考えると、PとEの関係が分かりやすくなります。
電力Pは、分かっている2つの量から式を選ぶ
直流回路、または交流の純抵抗負荷を考えるとき、基本はP=VIです。そこへオームの法則V=IRを代入すると、IとR、VとRだけで求める式へ変形できます。
P=V×I
P=I2×R / P=V2÷R
P:電力〔W〕、V:電圧〔V〕、I:電流〔A〕、R:抵抗〔Ω〕
| 分かっている量 | 選ぶ式 | 検算の視点 |
|---|---|---|
| VとI | P=VI | V×AがWになる |
| IとR | P=I2R | 電流は2乗する |
| VとR | P=V2÷R | 電圧は2乗する |
例題1:100V・5Aの抵抗負荷
電圧と電流が与えられているので、P=VIを使います。
P=100×5=500W
交流でコイルやモーターなどを含む負荷では、実効値V・Iを単純に掛けたVIは皮相電力であり、有効電力は力率を含むP=VIcosφで考えます。P=I2RやP=V2÷Rをあらゆる家電へ機械的に使わず、問題文が純抵抗か、力率が与えられているかを確認してください。交流の違いは「交流回路の基礎|インピーダンス・力率・RLCの計算を解説」で整理しています。
P=I²RとP=V²÷Rで増減が逆に見える理由
「抵抗Rが大きいほどP=I2Rは大きくなるのに、P=V2÷Rでは小さくなる」と迷うことがあります。2つの式は矛盾していません。何を一定にして比べているかが違います。
| 一定にする量 | 使う見方 | Rを2倍にしたとき |
|---|---|---|
| 電流Iが一定 | P=I2R | Pは2倍 |
| 電圧Vが一定 | P=V2÷R | Pは1/2 |
たとえば電流2Aを保ったまま5Ωから10Ωへ変えると、電力は20Wから40Wへ増えます。一方、電圧10Vを保ったまま5Ωから10Ωへ変えると、電流が2Aから1Aへ減り、電力は20Wから10Wへ減ります。問題文で一定とされる電圧・電流を先に囲むと、式の選択理由を説明できます。
電力量Eは「電力×時間」
E=P×t
P〔W〕×t〔s〕=E〔J〕
P〔W〕×t〔h〕=E〔Wh〕
時間を秒で入れればJ、時間で入れればWhになります。単位を先に決めてからtを換算するのが安全です。
| 換算 | 理由 | 確認例 |
|---|---|---|
| 1Wh=3,600J | 1時間=3,600秒 | 1W×3,600s |
| 1kWh=3.6MJ | 1kW=1,000W | 1,000×3,600J |
| 15分=0.25h=900s | 60分=1h | 15÷60、15×60 |
例題2:1.2kWの負荷を15分使う
Whで求めるなら、1.2kW×0.25h=0.30kWhです。Jへ直すと、0.30×3.6MJ=1.08MJになります。
どちらも同じエネルギーを別の単位で表した値です。資源エネルギー庁も、需要家が使用した電力量をkWhで計量し、電力量料金の算定などに用いることを説明しています。ただし実際の請求額は、基本料金、電力量料金、燃料費調整、再エネ賦課金など契約条件を含みます。試験用の単純な「kWh×単価」と実請求を同一視しないでください。
逆算問題は求める量を左側に置く
試験では電力や電力量を求めるだけでなく、電流、抵抗、使用時間を逆算する問題もあります。数値を入れる前に、求める記号が左側へ来るよう基本式を変形します。
| 求める量 | 変形式 | 単位 |
|---|---|---|
| 電流I | I=P÷V | W÷V=A |
| 抵抗R | R=V2÷P、R=P÷I2 | Ω |
| 使用時間t | t=E÷P | Wh÷W=h、J÷W=s |
800Wの負荷が0.4kWhを使う時間なら、0.4kWh=400Whへそろえ、t=400Wh÷800W=0.5h=30分です。0.4を800で直接割ると、kWとWが混ざって桁を誤ります。式の変形より先に単位を消さず、最後に単位同士が約分できるかを見ると、逆算のミスを発見しやすくなります。
定格電力と実際の使用電力量は分けて考える
機器に表示された定格消費電力は、指定された電圧・周波数・運転条件などでの仕様値です。温度調節器で加熱を断続する機器、運転状態が変わるエアコンやモーター、待機状態を持つ電子機器では、表示電力を全使用時間に掛けた値と実際の電力量が一致しない場合があります。
学科問題で「消費電力800Wの機器を30分使用した」と条件が固定されていれば、E=800×0.5=400Whと計算します。一方、実生活の使用量を確認する目的なら、問題用の理想計算をそのまま当てはめず、機器仕様、運転時間、電力量計の測定値を区別します。試験では与えられた条件を使い、実設備では測定・仕様条件を確認するという境界を覚えてください。
発熱量Hはジュールの法則で求める
抵抗に電流が流れて生じるジュール熱は、電流の2乗、抵抗、時間に比例します。
H=I2×R×t
H:発熱量〔J〕、I:電流〔A〕、R:抵抗〔Ω〕、t:時間〔s〕
純抵抗で電気エネルギーが熱へ変わる理想条件なら、P=I2Rなので、H=Pt=VIt=V2t÷Rとも書けます。電力を先に求めてから時間を掛ける方法でも、同じ答えになることを検算に使えます。
例題3:8Aを5Ωへ3分間流す
時間は3分=180秒です。
H=82×5×180=57,600J=57.6kJ
別解では、P=82×5=320W、H=320×180=57,600Jです。2通りが一致します。
水の加熱は「必要熱量÷有効な電力」
水や物体の温度を上げる問題では、まず必要熱量Qを求めます。
Q=m×c×ΔT
m:質量、c:比熱、ΔT:温度差
加熱器の入力電力すべてが水へ移るとは限りません。効率ηが与えられたとき、水へ届く有効な加熱電力はηPなので、加熱時間はt=Q÷(ηP)です。η=80%なら0.80として代入します。
例題4:2kgの水を20℃上げる
水の比熱を4.2kJ/(kg・K)、加熱器840W、効率80%とします。
- 必要熱量:Q=2×4.2×20=168kJ=168,000J
- 水へ届く電力:ηP=0.80×840=672W
- 時間:t=168,000÷672=250秒(約4分10秒)
温度差は20℃から40℃なら40-20=20Kです。温度差としては1Kと1℃の大きさは同じですが、絶対温度そのものと混同しないようにします。水1Lを約1kgとするか、比熱を4.2J/(g・℃)とするかは問題文の指定を優先してください。
計算は5手順で進める
- 求める量を書く:電力W、電力量Wh・J、発熱量J、時間sのどれか。
- 条件を決める:直流・純抵抗か、交流で力率が必要か、効率が与えられているか。
- 文字式を選ぶ:すぐ数値を入れず、P=VI、E=Pt、H=I2Rtなどを書く。
- 単位をそろえる:kWとW、分と秒・時間、kJとJ、%と小数を変換する。
- 別式と桁で検算する:1kWh=3.6MJ、H=Pt、効率が1未満なら必要時間は理想条件より長くなる。
よくある7つの間違い
| 間違い | 直し方 | 検算 |
|---|---|---|
| WとWhを同じ量と考える | Whには時間が含まれる | W×h=Wh |
| 分をそのままJの式へ入れる | 分×60で秒へ直す | 15分=900秒 |
| kWとWを混ぜる | 1kW=1,000W | 接頭語kを確認 |
| P=I2Rの2乗を落とす | I×I×Rと書く | P=VIでも確認 |
| 温度差に最終温度を入れる | 最終温度-初期温度 | 40-20=20 |
| 効率80%を80で掛ける | 0.80へ直す | 有効電力は入力以下 |
| 交流負荷をすべて純抵抗とする | 力率・インピーダンス条件を読む | P=VIcosφを確認 |
安全上の注意
この記事の数値例は学科試験用の理想回路です。家電の抵抗値を測って消費電力を推定したり、通電中の回路へ自己流で計器を接続したりする手順ではありません。実機は銘板・仕様書の定格入力、定格電流、力率、使用条件を確認してください。
式・単位・逆算を10問で確認
P=VI、E=Pt、H=I²Rt、WhとJ、効率を、途中式と単位付きの独自問題で確認できます。電力・電力量・発熱量ミニテストへ進む
理解度チェック
すべて当サイトで作成したオリジナル問題です。式だけでなく、単位まで書いてから答えを開いてください。
問1:電力と電力量
100Vで6Aが流れる純抵抗負荷を30分使いました。電力と電力量の組合せはどれですか。
ア.600W・0.3kWh イ.600W・18kWh ウ.60W・0.3kWh エ.60W・3kWh
解答を見る
正解:ア(600W・0.3kWh)
P=100×6=600W。30分=0.5hなので、E=600×0.5=300Wh=0.3kWhです。
問2:ジュール熱
抵抗4Ωに5Aを2分間流しました。発熱量はどれですか。
ア.1.2kJ イ.12kJ ウ.24kJ エ.120kJ
解答を見る
正解:イ(12kJ)
2分=120秒。H=52×4×120=12,000J=12kJです。
問3:効率を含む加熱
必要熱量が120kJ、加熱器が600W、効率80%のとき、必要時間はどれですか。
ア.160秒 イ.200秒 ウ.250秒 エ.400秒
解答を見る
正解:ウ(250秒)
有効な加熱電力は600×0.80=480W。120kJ=120,000Jなので、t=120,000÷480=250秒です。
公式資料と次の学習
- 電気技術者試験センター:第二種学科試験のポイント
- 電気技術者試験センター:基礎理論の公式例題・解説
- 電気技術者試験センター:第二種試験の問題と解答
- 資源エネルギー庁:電気の計量制度(kWh)
- 国際度量衡局:SI Brochure(J・Wの定義)
公表問題には著作権があり、試験センターは使用時の出典表記などの留意点を示しています。この記事の例題と確認問題は、公表問題の文章や数値を転載せず独自に作成しました。
広告・編集方針
この記事内に通信講座、参考書、電気料金比較サービスのアフィリエイトリンクは掲載していません。公式資料とサイト内の学習ページだけを案内しています。内容は2026年8月2日に公式範囲、単位、全例題の計算過程を再確認しました。
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