結論:PAS・UGSは主回路を区分する開閉器、SOGは事故を検出・判定して開放を指令する保護制御です
PASとUGSの違いは主に引込方式と消弧媒体、SOGとの違いは主回路機器か保護制御かです。波及事故防止機能は、開閉器を設置しただけでは完成しません。検出器、SOG制御装置、制御電源・制御線、トリップ回路、主接点開放までを一つの連鎖として照合します。
需要設備の事故を需要家側で切り離せないと、電力会社の配電線へ停電が広がることがあります。経済産業省の令和6年度電気保安統計では、波及要因として区分開閉器の不動作・未設置が集計され、不動作には保護継電器不良、誤投入・強制投入、保護協調不備などが含まれます。この記事では、名称の暗記ではなく、どの機器が何を検出し、どの条件で、どこを開放したかを記録できるところまで整理します。
高圧機器の操作・試験手順を示す記事ではありません
整定変更、強制開放・強制投入、位相試験、連動試験、停電後の再投入には、感電・アーク・波及事故の危険があります。実作業は電気主任技術者等の管理下で、保安規程、電力会社との協議、対象型式の取扱説明書、承認済み試験要領に従ってください。
この記事の役割|開閉器本体とSOG制御を分けて読む
VCB・DS・LBS・PASの違いは、開閉できる電流と機器能力の比較が主題です。保護継電器の種類と役割は、入力変成器、判定量、整定、出力先を整理しています。この記事では両者をつなぎ、PAS・UGS本体、ZCT・ZPD等の検出器、SOG制御装置、開放コイルを同じ設備単位で照合します。
PASはPole Air Switchの略で、一般に架空引込の需要家側入口で使う柱上気中負荷開閉器です。UGSはUnderground Gas Switchの略で、地中引込の需要家側回路に使う高圧交流ガス負荷開閉器です。地中線用には気中式のUASもあり、引込方式だけで型式を決めません。SOGはStorage Over Current Groundの略で、SOは短絡・過電流、Gは地絡に対する保護制御を表します。
機器構成台帳|本体・検出器・制御装置を一組で管理する
| 台帳項目 | 記録する事実 | 照合先 |
|---|---|---|
| 区分開閉器本体 | PAS・UGS・UAS、製造者、型式、製造年、定格、開閉状態 | 銘板、単線結線図、機器仕様書 |
| 内蔵要素 | ZCT・ZPD・VT・LAの有無、センサ位置、極性 | 内部接続図、端子図、現物表示 |
| SOG制御装置 | 方向性・無方向性、型式、整定、制御電圧、表示・警報 | 整定表、取扱説明書、保護協調資料 |
| 出力経路 | 制御線、端子番号、トリップ回路、遠方通報先 | 展開接続図、端子台図、連動試験記録 |
「GR付PAS」という呼称だけでは、方向性、VT・LA内蔵、地域仕様、整定、制御装置との組合せは確定しません。図番・版・確認日を持つ元資料から整理し、高圧受電設備の単線結線図の書き方に設備番号を合わせます。
既設がMDS(モールドジスコン)の場合は、UGSと同じ欄へ一括せず、断路器として別に記録します。NITEは2026年2月、MDSは地絡・短絡の保護機能を備えず、責任分界点で使う場合は保護機能を持つUGS・UASへの交換を推奨しました。製造年、推奨更新時期、可動電極の状態、点検結果、更新方針を分け、外観が似ていることを機能確認の代わりにしません。
信号経路|主回路・検出・判定・開放指令を混ぜない
| 経路 | 始点→終点 | 確認すること |
|---|---|---|
| 主回路 | 電力会社側→PAS・UGS→引込ケーブル→受電設備 | 責任分界点、常時状態、事故点の位置 |
| Io・Vo入力 | ZCT・ZPD等→SOG制御装置 | センサ位置、極性、端子、方向性の有無 |
| 制御電源 | VT等→SOG制御装置・トリップ回路 | 供給元、電圧、ヒューズ、停電時の動作条件 |
| 開放・警報出力 | SOG制御装置→開閉器・警報盤・遠方監視 | 指令出力と主接点開放を別に確認 |
ZCTはIoを検出しますが、ZCT自身が事故方向を判断して主回路を開くわけではありません。ZCT・ZPD・EVTの違いで入力信号を、高圧受電設備の単線結線図と図記号で主回路・保護信号・制御電源の層を確認できます。
G動作|地絡発生から主接点開放までを時系列で残す
| 順序 | 確認する事実 | 残す証拠 |
|---|---|---|
| 1 検出 | ZCTのIo、方向性ではZPD等のVoを入力 | 入力端子、極性、試験値、ログ |
| 2 判定 | Io・Vo・位相・動作時間が対象型式の条件内か | 整定表、位相特性、動作表示 |
| 3 指令 | SOG制御装置が開閉器へトリップ出力 | 出力接点、制御線、警報時刻 |
| 4 開放 | PAS・UGSの主接点が開き事故区間を分離 | 開閉表示、連動時間、停電範囲 |
方向性はIoの大きさだけでなくVoとの位相関係を使い、電源側・他回路の地絡による不要開放を抑えます。ただし、非接地地区とPC接地地区では対応機種や位相特性が異なる場合があります。全国共通の固定値を当てはめず、電力会社との協議、対象型式、保護協調表で確定します。
SO動作|短絡電流は電源側遮断後に切り離す
| 順序 | 概念動作 | 混同しないこと |
|---|---|---|
| 1 過電流 | 負荷側短絡等でロック電流以上を検出・蓄勢 | PAS・UGSで短絡電流を即時遮断しない |
| 2 上位遮断 | 電力会社側遮断器が短絡電流を遮断 | 区分開閉器と遮断器の能力は別 |
| 3 無電圧開放 | 無電圧状態でPAS・UGSを自動開放 | 表示だけで主接点開放を確定しない |
| 4 再閉路時 | 事故区間を切り離した状態を維持 | 原因不明のまま需要家側を再投入しない |
この順序は、負荷開閉器へ遮断能力を超える動作をさせず、電力会社側の再閉路で事故点へ再加電するのを防ぐためです。事故電流、動作時間、再閉路との協調は、保護協調曲線の見方と対象設備の協議資料を照合します。
保護範囲|開閉器の位置ではなくセンサ位置から追う
SOGがあるから「受電設備の上流から下流まで全てが保護範囲」とは限りません。内蔵ZCT等より上流にあるブッシング・本体内部の一部は、検出範囲外となる構成があります。単線結線図だけで推測せず、内部接続図でセンサの一次側・負荷側を分け、どの事故をGまたはSOで検出できるかを機器番号ごとに記録します。
NITEの2025年度事故事例には、保護範囲内の地絡で継電器が動作せずPASが開放しなかった例、埋設高圧ケーブルとSOG制御用電源ケーブルを同時に損傷してPASが開放しなかった例があります。保護範囲の線だけでなく、検出・判定・出力・開放の全経路を確認する必要があります。事故点と停電範囲の読み方は単線結線図の読み方・実務編で整理しています。
制御電源・制御線|信号が届かない故障を独立して見る
制御電源は外部VTから取る構成と、VT内蔵形があります。LA内蔵の有無、制御電源が失われた後に保護機能を維持できる時間、トリップ回路の自己診断も型式で異なります。「PASだからVT・LA内蔵」「制御電源表示灯が点灯しているから全経路正常」とは判断しません。
制御線は、端子番号、色、ケーブル番号、接地、行先を展開接続図と現物の両方で照合します。更新・掘削・解体工事では、高圧主回路だけでなくSOG制御線の位置を施工範囲へ明示します。微地絡監視機能も型式差があり、現行メーカー機種には表示・警報接点だけ動作し、トリップ出力しない仕様があります。微地絡ログや表示は、高圧ケーブルの劣化診断の点検結果と組み合わせて扱います。
微地絡表示と自己診断異常を同じ表示灯で知らせ、点滅パターンで区別する機種もあります。したがって「ランプ点灯」だけでは事象名を確定できません。発生時刻、点滅パターン、警報接点、保存されたIo・Vo・位相、制御電源の状態を対象型式の説明書と照合し、地絡兆候と装置異常を別の指摘として管理します。
点検記録|単体試験・連動試験・主接点開放を分ける
| 確認層 | 記録項目 | 完了根拠 |
|---|---|---|
| 外観・銘板 | 腐食、汚損、水侵入痕、型式、製造年、整定 | 写真、銘板転記、前回記録との差 |
| 制御装置単体 | Io・Vo・位相・時間、SOロック、表示、警報 | 型式別管理値と実測、試験器記録 |
| 回路健全性 | 制御電源、ヒューズ、制御線、端子、自己診断 | 導通・電圧・表示と図面の照合 |
| 連動・開放 | トリップ出力、主接点開放、GR/SO表示、遠方通報 | 連動時間、開閉状態、立会者、未確認事項 |
合否値や試験方法を記事の数値から決めてはいけません。対象型式、地域仕様、整定表、メーカー管理値、試験器の接続方法、残留電圧の影響を確認します。設備全体の点検粒度はキュービクルの点検項目、試験の安全境界は高圧受電設備の検査方法を参照してください。
動作後の照合|GR・SO表示を事故原因と決めつけない
PAS・UGSが開放して停電したときは、リセットや再投入より先に、事故・操作責任者の指揮系統へ入ります。発生時刻、GR・SO・微地絡・自己診断の各表示、Io・Vo・位相ログ、天候・落雷、電力会社側の停電情報、直前の工事、引込経路と受電設備の外観を同じ時系列へ並べます。
SO表示は過電流を蓄勢した手がかりであり、SOG制御装置の故障表示と同義ではありません。GR表示も事故点を一意に確定しません。表示・ログという事実、事故点候補、未確認範囲、確認担当を分け、保護範囲内の測定と現物確認で絞り込みます。事故報告が必要な場合は、所管の産業保安監督部とNITEの現行案内で期限・様式を確認します。
復旧状態|原因分離・健全性・操作許可を別々に閉じる
| 状態 | 閉じる条件 | 記録 |
|---|---|---|
| 事故点確認中 | 候補ごとの確認結果と未確認範囲が明確 | 表示、ログ、測定、写真、停電情報 |
| 事故点分離済み | 故障区間を電源・負荷の両側から確実に分離 | 開放点、施錠・表示、接地、作業者 |
| 健全性確認済み | 復旧対象回路と保護連鎖の必要試験が完了 | 試験結果、図面、未復旧設備、確認者 |
| 操作許可済み | 電力会社連絡、作業終了、安全確認、責任者許可 | 連絡先、時刻、指示、操作担当、結果 |
復旧対象回路の健全性確認と、再送電を許可する判断は同じではありません。図面承認や単体試験合格だけで操作許可へ進めず、保安規程に定めた責任者、電力会社との連絡、接地・施錠・作業者の状態を確認します。更新計画が必要な場合はキュービクル更新時期の決め方へ記録を引き継ぎます。
各状態には、担当者、期限、確認日、根拠資料、次の承認者を持たせます。「対応中」だけの記録では、事故点を分離したのか、試験が終わったのか、再送電が許可されたのかを後から判別できません。未復旧設備が残る場合は、運用制限と次回作業条件も明記します。
目的から選ぶ関連記事
| 確認目的 | 先に読む記事 | 次に読む記事 |
|---|---|---|
| 機器能力 | VCB・DS・LBS・PASの違い | 高圧受電設備の仕組み |
| 保護入力・判定 | 保護継電器の種類と役割 | GR・DGR・OVGRの違い |
| Io・Voの検出 | ZCT・ZPD・EVTの違い | 高圧地絡電流の計算 |
| 図面と停電範囲 | 単線結線図と図記号 | 単線結線図の読み方・実務編 |
| 引外し回路 | VCBの引外し・投入回路 | 保護協調曲線の見方 |
| 点検・試験 | キュービクルの点検項目 | 高圧受電設備の検査方法 |
| 学科試験 | 第一種電気工事士の学習ロードマップ | 単線結線図の書き方 |
公式資料・確認先
- 経済産業省|電気保安の現状について(令和6年度電気保安統計の概要)
- 経済産業省|令和6年度 電気保安統計
- NITE|モールドジスコンの長期使用に伴う波及事故への注意喚起
- NITE|詳報XMLテンプレート・事故事例紹介シート
- 中部近畿産業保安監督部近畿支部|令和6年度電気事故情報
- 戸上電機製作所|GR付PASとSOG動作
- 戸上電機製作所|VT内蔵GR付UGS
- 戸上電機製作所|SOG制御装置と簡易絶縁監視機能
- 戸上電機製作所|高圧絶縁監視機能付方向性SOG制御装置
- 戸上電機製作所|現行仕様書ダウンロード
- 電気技術者試験センター|第一種学科試験 配線図例題
内容確認日:2026年8月29日。SOGの位相特性、整定、試験条件、制御電源、保護範囲は、メーカー・型式・配電系統・地域仕様で異なります。実務では現行の電力会社協議資料、保護協調表、対象型式の取扱説明書を確認してください。
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