結論:単線結線図は、記号を並べる図ではなく「確定した根拠を回路ごとに追える索引」にする
高圧受電設備の単線結線図は、受電条件、構内図、機器表、負荷表、保護協調資料、メーカー図を集め、受電点→主回路→分岐→計量・計測→保護→接地・別電源の順で作ります。図中の定格や接続には根拠資料の図番・版を持たせ、未確定値を標準図から推測して埋めないことが重要です。
単線結線図は、三相回路などの複数導体を1本の線と図記号で簡略表示し、受電点から負荷までの電気的なつながりを示す基礎図面です。単線図だけですべてを表すのではなく、機器表、負荷表、展開接続図、端子図、接地線表、試験成績書を結ぶ入口として使います。
実設備の設計・操作を指示する記事ではありません
ここで扱うのは、作図と照合の考え方です。設備構成、短絡容量、保護協調、整定値、接地、連系・切替条件は、電力会社との協議、現行法令、保安規程、メーカー仕様、対象設備の設計図書に基づき、有資格者・電気主任技術者・設計者が確定します。本記事の例を施工図、申請図、操作票の代わりに使わないでください。
この記事の役割|記号・読解・作図を分ける
単線結線図の学習は、目的を混ぜると同じ説明を繰り返しやすくなります。このページは「元資料から図を作り、根拠とレビュー状態を残す」作業だけを扱います。
| 目的 | 使うページ | 中心となる問い |
|---|---|---|
| 記号と基本 | 単線結線図と図記号 | 線・記号・機器は何を表すか |
| 既存図の読解 | 単線結線図の読み方・実務編 | 保護範囲・停電範囲・版不一致をどう読むか |
| 作成と照合 | この記事 | どの資料から何を書き、誰がどこまで確認したか |
設備全体の構成が曖昧な場合は、先に高圧受電設備の仕組みと構成機器で受電・保護・計測・変圧・配電の役割を確認します。
元資料台帳|図番・版・確認状態を固定する
最初に作るのは機器記号ではなく、作図に使う資料の一覧です。同じ名称のPDFや紙図面が複数ある場合、ファイル名だけでは最新版を判定できません。資料名、図番・版、発行元・確認状態をそろえます。
| 資料群 | 単線図へ移す情報 | 台帳に残す状態 |
|---|---|---|
| 受電条件・協議資料 | 受電電圧、相・線式、引込方式、受電点、計量、協議条件 | 回答日、回答元、条件付き事項 |
| 構内図・配置図 | 分界、受電設備位置、引込経路、別建屋との関係 | 図番、縮尺、改訂、現地照合日 |
| 機器表・仕様書・銘板 | 機器番号、型式、定格、容量、比率、遮断容量 | 計画値・承認値・現物値の別 |
| 負荷表・ケーブル表 | 回路名、変圧器との対応、低圧盤、幹線の続き先 | 回路数、合計値、欠番・予備回路 |
| 保護協調・整定資料 | CT・ZCT等の入力、継電器、整定、出力・引外し先 | 計算書番号、整定表版、承認者 |
| 発電・蓄電・UPS資料 | 連系点、切替点、対象負荷、逆潮流、制御電源 | 運転方式、インターロック、別図番号 |
資料を受領しただけで「確認済み」にしません。対象設備と図番・版が合い、図へ移す値の所在まで確認できた状態を区別します。資料間で不一致がある場合は、古い・新しいを推測で決めず、回答待ちとして残します。
作図順|受電点から回路単位で積み上げる
- 表題・改訂・凡例:事業場、設備名、図番、図面区分、作成・確認、線種と独自略号を先に固定する
- 受電条件・分界:受電電圧、相・線式、架空・地中、受電点、責任・財産分界を協議資料と構内図から移す
- 高圧主回路:枝線を後回しにし、区分開閉器、計量点、主保護、高圧母線までを上流からつなぐ
- 分岐・変圧・負荷:母線から回路番号ごとに変圧器、SC・SR、LA等を分け、低圧盤・負荷表の続き先を示す
- 計量・計測:VCT→電力量計、VT・CT→指示計器・保護入力を分け、端子・極性の別図参照を示す
- 保護・制御:CT・ZCT・ZPD等→継電器→遮断・開放・警報をつなぎ、整定表と制御電源を参照させる
- 接地・別電源:接地対象と接地線表、発電・蓄電・UPSの連系点・切替点・対象負荷を結ぶ
- 照合・改訂:機器表、負荷表、別図、試験結果、現物と双方向に照合し、未確定事項と改訂状態を閉じる
PF・S形とCB形は異なる主保護方式であり、同じ固定配列ではありません。LAは対地分岐、SC・SRは力率改善系統の分岐です。標準図にある機器をすべて直列に並べるのではなく、対象設備の確定資料だけを反映します。機器の能力差はVCB・DS・LBS・PASの違い、保護要素はOCR・GR・DGRの種類と役割で分けて確認できます。
回路根拠表|1回路1行で数値と出典を結ぶ
図を見ただけで根拠資料へ戻れるよう、単線図とは別に回路根拠表を持ちます。数値を図へ転記した後も、出典欄を残すことで仕様変更や現物照合時の戻り先が明確になります。
| 回路・対象 | 図へ反映する事項 | 根拠・未確認 |
|---|---|---|
| 受電・区分 | 電圧、受電点、区分開閉器、分界、常時状態 | 協議回答番号、構内図、所有・操作管理の確認先 |
| 主回路・母線 | 機器番号、定格、遮断容量、ケーブル、母線 | 仕様書、承認図、短絡計算、ケーブル表 |
| 変圧器・負荷 | 容量、一次・二次電圧、相数、低圧盤・負荷の続き先 | 機器表、負荷表、低圧単線図、予備回路の扱い |
| 計量・計測 | VCT・VT・CTの比率、一次位置、二次接続先 | 計量協議、計器結線図、端子・極性・二次接地の別図 |
| 保護・制御 | 検出位置、判定要素、遮断・開放・警報先、制御電源 | 保護協調、整定表、展開接続図、連動試験 |
| 接地・別電源 | 接地対象・種別、発電・蓄電・UPSの連系・切替点 | 接地線表、発電設備図、運転フロー、未確定条件 |
同じ機器番号を単線図、機器表、盤図、試験成績書で使い、別の名称が必要なら対応表を持ちます。回路名が「電灯」「動力」だけでは追跡できない場合は、低圧盤番号や負荷表の行番号まで結びます。
計量・保護・接地|主回路と信号を混ぜない
単線図の主回路が1本でも、二次配線や信号線が1本という意味ではありません。線種・色・矢印を使う場合は凡例を付け、白黒印刷でも役割が分かる表示にします。
VCT→Wh
VT・CT→V・A・保護入力
端子・極性は別図へ参照
CT・ZCT・ZPD等→継電器
継電器→VCB・PAS等
警報・ロック・制御電源
接地対象→接地線→端子・接地極
発電・蓄電・UPS→切替点→対象負荷
保護は「検出→判定→遮断・開放・警報」が途切れていないかを確認します。整定値を単線図へ記載する場合も、保護協調曲線・整定表・試験成績書の図番と版を併記します。CT・VT・VCT・ZCTの違いは計器用変成器と零相検出、上下位保護は保護協調曲線の見方、接地対象は高圧受電設備の接地系統図で確認できます。
図面間照合|単線図だけで完結させない
単線図から関連資料へ進む「順照合」と、関連資料の全行が単線図に存在するかを戻る「逆照合」を行います。片方向だけでは、単線図にない機器や、負荷表にない分岐を見逃します。
| 照合先 | 順照合 | 逆照合 |
|---|---|---|
| 機器表・承認図 | 図の機器番号・定格・型式を確認 | 機器表の全機器が図にあるか確認 |
| 負荷表・低圧単線図 | 各変圧器・分岐の続き先を確認 | 負荷・盤の供給元と容量集計を確認 |
| 展開図・端子図 | 保護入力・引外し先・制御電源を確認 | 端子・接点・信号の元回路を確認 |
| 試験成績書 | 図中の比率・整定・出力先を確認 | 試験対象と図の機器・回路を確認 |
| 現物・銘板 | 図の番号・型式・接続先を現地確認 | 現物の追加・撤去・変更が図にあるか確認 |
単線図へ書き込まない心線数、端子番号、インターロック、施工寸法、試験方法は別図へ分けます。ただし、別図番号を持たせずに省略すると追跡できません。「単線図に書かない」と「資料をつながない」は別です。
未確定事項|推測で埋めず、回答待ちを見える化する
作図途中では、VCBの採用は決まっていてもCT比・OCR整定が未確定、変圧器容量は決まっていても低圧盤名が未確定、という状態が起こります。空欄を標準値や他設備の値で埋めず、未確定事項表へ分離します。
| 未確定事項 | 確認経路 | 閉じる条件 |
|---|---|---|
| 対象回路・現在の仮表示・影響する図面 | 質問先、質問日、必要資料、回答期限 | 回答資料番号、反映図番・版、確認者 |
| 資料間の定格・名称・接続の不一致 | 設計者、施工者、メーカー、設備管理者へ照会 | 採用根拠と不採用資料を記録して改訂 |
| 現地で確認できない端子・配線・銘板 | 停電・安全条件を別途計画し、確認担当を決める | 写真・測定・現地記録と図面反映を確認 |
「要確認」とだけ書くと残り続けます。対象、影響、質問先、期限、回答根拠、反映版までを1行で管理します。回答が来ても図面・機器表・負荷表へ反映されるまでは完了にしません。
改修後の照合|現物・施工記録・試験結果を竣工図へ戻す
施工者の赤入れやマークアップは、変更を伝える途中資料です。それだけを最終図とせず、設計変更、承認図、現物銘板、実際の接続、試験結果、保護整定、関連表を照合して竣工図へ改訂します。
- 撤去・追加・移設した機器と回路番号を、図と現物の両方向から数える
- 型式、定格、容量、変成比、一次・二次電圧を銘板・成績書へ照合する
- 引外し・警報・切替の出力先を展開図と連動試験へ照合する
- 負荷表、機器表、ケーブル表、接地線表の図番・版を同時に更新する
- 旧版は最新版と混同しない保管状態へ移し、配布先の差替えを確認する
現物確認を伴う点検記録はキュービクルの点検項目、検査・試験の役割は高圧受電設備の検査方法と合わせて確認します。現地作業、遮断、検電、接地、復電は単線図のレビューとは別に、設備固有の安全手順と管理体制で行います。
レビュー状態|作成中・照合済み・承認済みを分ける
「確認済み」という一語では、何をどの資料で確認したか分かりません。回路または変更単位で、レビュー状態と残件を残します。
| 状態 | 成立条件 | 残す記録 |
|---|---|---|
| 作成中 | 確定資料を転記中。未確定・不一致が残る | 作成者、使用資料、未確定事項、影響範囲 |
| 図面間照合済み | 機器表・負荷表・別図との順逆照合が完了 | 照合者、対象図番・版、差異と是正 |
| 現物・試験照合済み | 施工結果、銘板、接続、試験結果を反映 | 確認日、現地記録、成績書、残工事 |
| 承認済み・配布済み | 権限者の承認と最新版の配布・旧版回収が完了 | 承認者、承認日、配布先、旧版の扱い |
図面承認は、設備の充電・操作・使用開始を自動的に許可するものではありません。必要な法定手続、検査、試験、安全確認、運用上の承認は別に管理します。
提出図・変更図|提出先の現行様式を優先する
高圧供給の新設・設備変更では、一般送配電事業者から単線結線図、受電設備一覧、負荷設備一覧、構内図、付近図、自家用図面確認・協議票等を求められる場合があります。東京電力パワーグリッドの現行案内でも、申込種別ごとに必要・条件付きの書類が分かれています。
必要書類、様式、申込経路、変更箇所の示し方は、地域、受電方式、発電設備の有無、工事内容で異なります。また、自家用電気工作物は保安規程、主任技術者、工事計画、使用前確認等の手続要否を設備条件ごとに確認する必要があります。記事内の一覧を提出要件として一律に使わず、管轄機関と提出先の最新版を優先してください。
公式資料・確認先
- 電気技術者試験センター|第一種電気工事士の学科試験のポイント(配線図の表示事項・図記号)
- 東京電力パワーグリッド|高圧・特別高圧供給の新設・契約変更・設備変更
- 経済産業省|自家用電気工作物に係る手続のご案内(PDF)
- 中部近畿産業保安監督部近畿支部|自家用電気工作物の各種手続
- 中国四国産業保安監督部四国支部|自家用電気工作物の手引きと様式
- 三菱電機|キュービクル式高圧受電設備とJIS C 4620
- 三菱電機|高圧受電設備のPAS・VCT・DS
内容確認日:2026年8月27日。申請様式、設備構成、保護条件、図面の承認区分は対象地域・事業場・工事内容で異なります。実務では提出先の現行様式、個別協議、保安規程、設計図書、メーカー資料を確認してください。
目的から選ぶ関連記事
単線図の作成中に追加確認する内容を、設備、計量、保護、接地、別電源、容量・更新へ分けました。公開側に追加されていた関連導線も、この表へ統合しています。
| 目的 | 次に読む記事 | 確認できること |
|---|---|---|
| 設備構成 | 高圧受電設備の仕組み 単線結線図と図記号 |
受電・保護・計測・変圧・配電、図記号の基本 |
| 読解・機器 | 単線結線図の読み方 VCB・DS・LBS・PASの違い |
保護範囲・停電範囲、開閉・遮断能力 |
| 計量・計測 | CT・VT・VCT・ZCTの違い | 取引計量、盤内計測、保護入力、二次側の区別 |
| 保護・協調 | OCR・GR・DGRの役割 保護協調曲線の見方 |
入力・判定・出力、上下位保護と機器耐量 |
| 接地・試験 | 高圧受電設備の接地系統図 高圧電気設備の接地工事 高圧受電設備の検査方法 |
接地対象から接地極まで、検査・試験との対応 |
| 別電源・受電方式 | 非常用発電機とATS 高圧・特別高圧の受電方式 |
切替点・対象負荷、常時状態・事故時の給電 |
| 容量・力率 | 変圧器容量の選び方 高圧進相コンデンサの点検 |
負荷とkVA、SC・SR分岐、運転条件 |
| 改修・学習 | キュービクルの点検項目 第一種電気工事士ロードマップ |
現物照合と是正状態、試験学習での位置付け |
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