この記事を読み終えると、変圧器の問題は「巻数比を書く → 電圧か電流かを決める → 実機なら損失を足す」、誘導電動機の問題は「同期速度を先に出す → すべりを小数へ直す → 実回転速度へ戻す」の順で、途中式を省かず解き切れるようになります。
この分野でつまずく原因は、公式を忘れたことよりも、電流だけが逆向きになることを見落とすことと、同期速度と実回転速度を同じ量として扱ってしまうことにあります。この記事はその2つを潰す順番で並べています。
この記事で使う式
- 理想変圧器:V1÷V2=N1÷N2、V1I1=V2I2
- 効率:η=出力÷入力×100〔%〕、入力=出力+損失
- 同期速度:Ns=120f÷p〔min-1〕(fは周波数〔Hz〕、pは極数)
- すべり:s=(Ns−N)÷Ns、N=(1−s)Ns
実設備の結線変更は試験知識だけで行わない
変圧器や電動機の端子には感電・短絡・回転体の危険があります。相順の変更、始動器の選定、保護装置の整定は、電源を遮断して無電圧を確認し、銘板・結線図・設備図書を照合したうえで、必要な資格と権限を持つ人が行ってください。この記事は実機の作業手順ではありません。
変圧器と誘導電動機は、使う式の入口が違う
同じ「電気機器」の分野ですが、解き始めるときに見る量が違います。最初にここを分けておくと、式が混ざりません。
- 変圧器:巻数比から入る。電圧と巻数は同じ向き、電流だけが逆向き
- 実際の変圧器:入力=出力+損失。効率は必ず100%より小さい
- 誘導電動機:同期速度を先に求める。実回転速度はそこからすべりの分だけ下がる
変圧器は磁束を介して電圧を変える
変圧器は、一次巻線へ交流を加えて鉄心の中に変化する磁束をつくり、その磁束による電磁誘導で二次巻線に電圧を生じさせる機器です。巻数が多い側ほど電圧が高く、少ない側ほど電圧が低くなります。
一次と二次は磁束を介してエネルギーを伝えるため、一般的な複巻変圧器では電気的に絶縁されています。ただし単巻変圧器は巻線の一部を共用する別の構造なので、「変圧器なら必ず一次・二次が絶縁されている」とは言い切れません。
巻数比・電圧比・電流比は1枚の図で読む
3つの比を別々に覚えると、どれが逆向きだったか分からなくなります。数値を入れた図で、同時に確かめてください。
図1 電圧と巻数は同じ向き、電流だけ逆向き
6,600Vを200Vへ落とす変圧器で、3つの量がどう動くかを1枚にしています。
磁束 Φ
V1÷V2=N1÷N2=6,600÷200=33倍
I1÷I2=N2÷N1=33分の1
図1の一次側と二次側を見比べると、巻数が1,980回から60回へ33分の1になり、電圧も6,600Vから200Vへ33分の1になっています。一方で電流は0.91Aから30Aへ33倍です。図1の帯にあるとおり、V1I1=V2I2が成り立つ以上、電圧と電流が同じ向きに動くことはありません。
例題1|6,600Vを200Vへ落とす変圧器の巻数と一次電流
図1と同じ変圧器を、数値が与えられていない状態から求めます。一次電圧6,600〔V〕、二次電圧200〔V〕、一次巻数1,980〔回〕、二次電流30〔A〕とします。
- 巻数比を書く:N1÷N2=V1÷V2=6,600÷200=33。一次側が33倍です
- 二次巻数を求める:N2=N1÷33=1,980÷33=60〔回〕
- 電力の式へ移る:理想変圧器ではV1I1=V2I2が成り立ちます
- 一次電流を求める:I1=(200〔V〕×30〔A〕)÷6,600〔V〕=6,000÷6,600≒0.91〔A〕
- 検算:電圧が33分の1なら電流は33倍のはずです。0.91×33≒30〔A〕で二次電流に戻るので合っています
ここで「高い電圧なら細い電線でよい」と単独で結論づけないでください。実際の導体選定は電流だけでなく、絶縁性能、許容電流、電圧降下、短絡電流、機械的強度、施設条件で決まります。三相回路での電力と電圧降下の扱いは三相・単相の電圧降下と電力計算|√3Ir・2Ir・IrとY/Δ結線で確認できます。
実機では入力=出力+鉄損+銅損
例題1は損失を無視した理想変圧器の計算です。実機では入力の一部が熱として失われるため、入力電力と出力電力は一致しません。
図2 効率は「入力のうち出力へ出た割合」
入力5.0kWの変圧器で、0.5kWが損失になった場合の内訳です。
鉄心のヒステリシス損と渦電流損。電圧と周波数が一定なら、簡略計算では負荷が変わってもほぼ一定
巻線抵抗によるI2R損。負荷電流の2乗に比例するので、電流が2倍なら4倍になる
図2の帯のうち、緑の部分が出力、端に残った部分が損失です。損失は下段の2枚のカードのとおり鉄損と銅損に分かれ、性質が違います。鉄損は負荷が変わってもほぼ一定、銅損は負荷電流の2乗に比例します。この違いは自己チェックの問4で使います。
| 損失 | 主な発生原因 | 負荷との関係 |
|---|---|---|
| 鉄損 | 鉄心のヒステリシス損・渦電流損 | 電圧・周波数が一定なら、簡略計算ではほぼ一定 |
| 銅損 | 巻線抵抗によるI2R損 | 負荷電流の2乗に比例 |
例題2|出力4.5kW・損失0.5kWの効率
- 入力を求める:入力=出力+損失=4.5〔kW〕+0.5〔kW〕=5.0〔kW〕
- 効率の式へ入れる:η=出力÷入力×100=4.5÷5.0×100=90〔%〕
- 検算:損失が0でない限り効率は100%未満になります。100%を超えたら出力と入力を入れ替えています
- 単位を確かめる:出力と損失はどちらも〔kW〕でそろえます。片方が〔W〕のままだと1,000倍ずれます
なお、変圧器の容量は通常〔kV・A〕で表します。負荷が使う有効電力〔kW〕は力率にも左右されるため、kV・AとkWを無条件に同じ数値として扱えません。容量の選び方は変圧器容量の選び方|需要率・負荷率・増設をkVAで計算で扱っています。
三相誘導電動機は回転磁界との速度差で回る
三相交流を固定子巻線へ加えると回転磁界が生じます。回転磁界と回転子との速度差によって回転子導体に電圧と電流が誘導され、それが電磁力となってトルクになります。かご形誘導電動機の回転子は、導体を両端の環で短絡した構造です。
もし回転子が回転磁界とまったく同じ速度になると、回転子導体を横切る磁束の変化がなくなり、誘導電流もトルクも生じません。そのため、負荷を持って運転している回転子は、必ず同期速度より少し遅く回ります。
同期速度は周波数と極数だけで決まる
回転磁界そのものの速度が同期速度Nsで、実際の回転速度Nとの差の割合がすべりsです。単位はどちらも〔min-1〕です。
図3 実回転速度は同期速度に届かない
50Hz・4極の三相誘導電動機が1,440min-1で回っているときの内訳です。
1,500−1,440=60min-1
60÷1,500=0.04=4〔%〕
同期速度は周波数と極数だけで決まる(Ns=120f÷p)
図3の帯は全体が同期速度1,500min-1、色の付いた部分が実回転速度1,440min-1を表しています。帯の端に残った差60min-1を同期速度で割った0.04が、すべり4%です。図3の下にある同期速度の一覧のとおり、Nsは周波数と極数だけで決まり、負荷では変わりません。負荷で変わるのはすべりのほうです。
例題3|50Hz・4極で1,440min-1のときのすべり
- 同期速度を先に出す:Ns=120×50÷4=1,500〔min-1〕。pは極数なので4を代入します
- 差を取る:1,500−1,440=60〔min-1〕
- 同期速度で割る:s=60÷1,500=0.04=4〔%〕
- 逆算で検算:N=(1−0.04)×1,500=1,440〔min-1〕。与えられた回転速度に戻れば計算は合っています
- 上限を確かめる:Nが1,500を超えていたら、電動機としての運転ではありません
負荷が増えると一般にすべりが増え、回転速度は少し低下します。また、極数が同じなら60Hzから50Hzへ変わったときに同期速度も下がります。
単相誘導電動機は始動のしかたが違う
単相交流を主巻線へ加えただけでは、三相のような回転磁界ではなく交番磁界となり、自力では始動できません。そこで始動巻線やコンデンサによって主巻線と位相の違う電流をつくり、始動トルクを得ます。分相始動形、コンデンサ始動形、くま取りコイル形など、方式によって構造が異なります。
コンデンサは容量が大きければよいものではなく、不適切な容量は振動、発熱、トルク低下の原因になります。三相用の「任意の2線を入れ替えると逆回転する」という知識を、単相電動機へそのまま当てはめないでください。
始動・回転方向・速度制御・保護は別々に覚える
この4つは目的が違うため、方法も混ざりません。表の右列は、試験で取り違えやすい点です。
| 目的 | 代表的な方法 | 取り違えやすい点 |
|---|---|---|
| 始動 | 直入れ(全電圧)始動、Y-Δ始動 | Y-Δは始動電流だけでなく始動トルクも約3分の1になる |
| 回転方向 | 三相の任意の2線を入れ替えて相順を反転 | 単相電動機には当てはまらない |
| 速度制御 | インバータで主に周波数を変える | 周波数が変われば同期速度も変わる(図3) |
| 保護 | サーマルリレー、配線用遮断器・ヒューズ | 過負荷の検出と短絡の遮断は役割が別 |
直入れ始動は電動機へ全電圧を加えるため、始動電流が大きくなります。始動方式ごとの電流とトルク、適用条件は三相誘導電動機の始動方式|直入れ・Y-Δ・リアクトル・ソフトスタータで比べられます。サーマルリレーは主に過負荷や欠相を検出して電磁接触器を動作させる機器で、短絡電流を直接遮断する配線用遮断器やヒューズの代わりにはなりません。
2026年度上期の出題で、式と用語を確かめる
2026年度上期(2026年5月24日実施)の第二種学科試験では、一般用低圧三相かご形誘導電動機について、次の3つが正しい記述として扱われ、周波数と回転速度の関係を逆に述べたものが誤りの選択肢になりました。
- 負荷が増加すると回転速度はやや低下する(すべりが増えるため)
- 直入れ始動での始動電流は、全負荷電流の4〜8倍程度になる
- 3本の結線のうちいずれか2本を入れ替えると逆回転する
あわせて、低圧三相誘導電動機へ低圧進相コンデンサを並列に接続する目的が力率の改善であることも問われました。進相コンデンサは回転速度や相順を変える機器ではありません。なお「始動電流は全負荷電流の4〜8倍程度」は試験問題で与えられた条件であり、すべての製品をこの倍率で設計する根拠ではありません。
検算は「向き」と「上限」で行う
答えを出したあとに次の4つを確かめれば、この分野の失点はほとんど防げます。
- 向き:降圧なら二次電流は増えているか。電圧と電流が同じ向きに動いていたら式を取り違えています
- 上限:効率は100%未満か。実回転速度は同期速度未満か
- %の変換:すべり4%を0.04として代入したか。4のまま入れると100倍ずれます
- 極数:Ns=120f÷pのpへ、極対数ではなく極数を入れたか
自己チェック|巻数比・効率・すべりを数値で確かめる
解説は最初から表示しています。まず自分で計算してから、誤りの選択肢がどの計算から出た値かまで確認してください。
問1:一次電圧400V、二次電圧100V、二次電流8Aの理想変圧器があります。一次電流は何Aですか。
- 2A
- 4A
- 8A
- 32A
解答:1(2A)
V1I1=V2I2より、I1=(100〔V〕×8〔A〕)÷400〔V〕=2〔A〕です。電圧が4分の1になった側の電流は4倍、電圧が4倍の側の電流は4分の1になります(図1)。4の32Aは電圧比を掛ける向きを逆にした値で、降圧変圧器の一次側にこれだけの電流は流れません。
問2:一次巻数1,000回・一次電圧200Vの理想変圧器で、二次巻数が50回のとき、二次電圧は何Vですか。
- 4V
- 10V
- 20V
- 40V
解答:2(10V)
V2=V1×(N2÷N1)=200〔V〕×(50÷1,000)=10〔V〕。巻数が20分の1なので電圧も20分の1です。3の20Vは巻数比を10分の1と読み違えた値、4の40Vは1,000÷50=20ではなく÷5と計算した値です。巻数と電圧は同じ向きなので、巻数が減れば電圧も必ず減ります。
問3:出力9.5kW、損失0.5kWで運転している変圧器の効率は何%ですか。
- 90%
- 95%
- 105%
- 5%
解答:2(95%)
入力=出力+損失=9.5+0.5=10.0〔kW〕。効率=9.5÷10.0×100=95〔%〕です(図2)。3の105%は入力と出力を入れ替えた値で、効率が100%を超えることはありません。4の5%は損失の割合です。割る数は必ず入力だと覚えてください。
問4:変圧器の負荷電流が2倍になったとき、鉄損と銅損はそれぞれどうなりますか。電圧と周波数は一定とします。
- 鉄損は4倍、銅損は2倍
- 鉄損はほぼ一定、銅損は2倍
- 鉄損はほぼ一定、銅損は4倍
- 鉄損も銅損も4倍
解答:3(鉄損はほぼ一定、銅損は4倍)
鉄損は鉄心の中の磁束の変化で決まるため、電圧と周波数が一定なら負荷が変わってもほぼ一定です。銅損は巻線抵抗によるI2R損なので、電流が2倍になると22=4倍になります(図2)。2の「銅損は2倍」は、比例と2乗を取り違えたときの答えです。
問5:60Hz・6極の三相誘導電動機が、すべり5%で運転しています。実回転速度は何min-1ですか。
- 1,140min-1
- 1,200min-1
- 1,260min-1
- 1,710min-1
解答:1(1,140min-1)
Ns=120×60÷6=1,200〔min-1〕、N=(1−0.05)×1,200=1,140〔min-1〕。2の1,200は同期速度そのもので、電動機として運転している限りここには届きません(図3)。3の1,260は同期速度より速く、4の1,710は極数を4として計算した値です。すべりは5%なら0.05として代入します。
問6:一般用低圧三相かご形誘導電動機について、電源の周波数が60Hzから50Hzに変わったとき、回転速度はどうなりますか。極数と負荷の条件は同じとします。
- 増加する
- 減少する
- 変わらない
- 逆回転する
解答:2(減少する)
Ns=120f÷pで周波数fは分子にあるので、60Hzから50Hzへ下がれば同期速度も下がり、実回転速度も下がります。4極なら1,800min-1から1,500min-1へ変わります(図3)。2026年度上期の第二種学科試験でも、この関係を誤って「増加する」とした記述が誤りの選択肢として出題されました。4の逆回転は相順を入れ替えたときの現象で、周波数とは別の話です。
問7:同じ線間電圧で直入れ始動と比べたとき、適用できる三相誘導電動機のY-Δ始動はどうなりますか。
- 始動電流だけが約3分の1になり、始動トルクは変わらない
- 始動電流は変わらず、始動トルクだけが約3分の1になる
- 始動電流も始動トルクも、ともに約3分の1になる
- 始動電流も始動トルクも、ともに約3倍になる
解答:3(始動電流も始動トルクも、ともに約3分の1になる)
Y結線で始動すると各巻線にかかる電圧が線間電圧の√3分の1になるため、理論上は始動電流も始動トルクも約3分の1になります。電流だけが下がる方法ではないので、始動トルクが足りない負荷には使えません。Δ運転を前提とする端子構成であることなど、適用条件の確認も必要です。
式の出どころと、確認した日
本文の式と数値は、電気技術者試験センターが公開する出題範囲・2026年度上期の学科試験問題と解答、および日本電気技術者協会とメーカーの技術資料と照合しました。確認日は2026年9月9日です。図1〜図3、例題3本、自己チェック7問は当サイトで作成し、計算を再検算しています。試験問題の文面は転載していません。
- 電気技術者試験センター:第二種電気工事士の学科試験のポイント
- 電気技術者試験センター:電気機器・材料・工具の公式例題
- 電気技術者試験センター:2026年度上期 第二種学科試験問題
- 電気技術者試験センター:2026年度上期 第二種学科試験解答
- 日本電気技術者協会:変圧器の損失
- 日本電気技術者協会:変圧器の効率
- 日本電気技術者協会:誘導電動機の回転原理
- 日本電気技術者協会:単相誘導電動機
- 日本電気技術者協会:誘導電動機の始動法
- オリエンタルモーター:三相モーターの回転方向変更
- 三菱電機:電動機の始動・保護方式
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広告・編集方針
この記事内に通信講座、教材、変圧器・電動機関連製品のアフィリエイトリンクは掲載していません。2026年9月9日に、電気技術者試験センターの出題範囲・2026年度上期の学科試験問題と解答、日本電気技術者協会とメーカーの技術資料を照合し、理想式と実機の損失、単相・三相の違い、始動・保護の適用条件を再確認しました。図1〜図3、例題3本、自己チェック7問は当サイトのオリジナルです。
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。