受変電設備の実務

保護協調曲線の見方|OCR・VCB・PFの動作時間を比較

結論:下位保護を先に、上位保護を後に動かし、上位にはバックアップを残す

保護協調曲線は、事故電流の大きさと遮断までの時間を同じグラフへ重ね、事故に近い下位機器が先に切ること、下位が失敗したとき上位が後から切ること、機器が損傷する前に遮断することを確認する資料です。曲線が交差していないだけでは不十分で、CT比、電流換算、遮断器の開極時間、ヒューズの全遮断時間、突入電流、短絡電流の範囲まで同じ条件へそろえます。

OCRの整定表には「限時4A、ダイヤル3、瞬時40A」のような値が並びます。しかし、その1台だけを見ても、負荷側の遮断器より先に受電VCBが切れないか、変圧器の励磁突入電流で不要動作しないか、構内短絡時に電力会社側の保護より先に動けるかは分かりません。

この記事は整定値の決定・変更手順ではありません

実設備のOCR整定、CT・遮断器・PFの選定、試験電流の印加、協調表の提出は、感電・アーク・波及事故に関わります。電気主任技術者、設計者、保守会社が、電力会社との技術協議、短絡計算、メーカーの最新特性曲線、保安規程に基づいて行ってください。本文中の数値例は読み方を説明する仮想例で、推奨整定値ではありません。

保護協調を4条件で判定する|選択・後備・感度・耐量

保護協調は、曲線が交差しなければ終わりではありません。事故に近い装置が先に切る選択遮断、下位不動作時に上位が切る後備保護、最小事故電流でも検出できる感度、機器が損傷する前に全遮断する耐量の4条件を同じ事故点で確認します。

判定は「下位が速い」という一文で終えません。事故点ごとに流れる電流を求め、その電流の縦線上で下位の検出開始、継電器動作、遮断器の全遮断、上位の動作を時系列に並べます。さらに各曲線の許容差、CTの誤差・飽和、遮断器時間のばらつきを含めても順序が保てるかを確認します。これにより、見た目では離れている曲線が実際には余裕不足という状態を見落としにくくなります。

条件 曲線上の確認 不足時の影響
選択 下位の全遮断が上位動作より先 不要な上位停電
後備 下位不動作時に上位が遮断 事故電流の継続
感度 最小事故電流が動作域に入る 事故を検出できない
耐量 ケーブル・変圧器等の限界より先 遮断前の機器損傷

保護継電器の種類と役割で入力・整定・出力を、高圧配電線路の短絡電流計算で事故電流を確認し、本記事で時間軸上へ重ねます。

元資料台帳|曲線・整定・短絡計算の版をそろえる

同じ設備名でも、メーカー特性曲線、短絡計算書、単線図、整定表の版が違えば比較は成立しません。曲線を描く前に資料番号、改訂、対象回路、基準電流、確認状態を台帳へ残します。

メーカーのWebページは製品系列の概要確認に使い、実際の判定では設備に付く型式・製造時期に対応した特性図を使います。後継機の曲線が似ていても、動作時間、許容差、瞬時要素、引外し方式が同一とは限りません。旧機器の資料が見つからない場合は、現行品の値で置き換えず「特性未確定」としてメーカー照会・保守資料・竣工図書の確認経路を残します。

資料 確定する条件 版不一致の影響
単線図・機器表 系統、事故点、機器定格 比較対象そのものが変わる
短絡計算書 最小/最大事故電流、計算条件 感度・遮断能力を誤る
メーカー曲線 型式、定格、許容差、全遮断 時間差を誤って読む
整定・試験記録 現設定、実測動作、連動時間 計画と現物がつながらない

作図の元資料管理は高圧受電設備の単線結線図の書き方、停電範囲との対応は単線結線図の読み方・実務編を参照してください。

軸と電流基準|一次値・二次値・入力倍数を混ぜない

横軸は電流、縦軸は時間で、広い範囲を一枚へ収めるため対数目盛が使われます。CT二次4Aという整定値と一次側事故電流を同じ位置へ置くには、CT比と入力倍数を明示して一次側へ換算します。

一枚の曲線上では、原則として一次電流か二次電流のどちらかへ基準を統一します。低圧側の電流を高圧側へ換算する場合は、変圧比だけでなく三相値・相値、結線、基準容量、効率をどのように扱ったかを計算書へ残します。グラフの凡例には基準電圧、CT比、対象相、事故点、単位を書き、別担当者が同じ点を再計算できる状態にします。

表示値 換算に必要な値 記録例
OCR二次A CT一次/二次定格 4A×200/5=160A
入力倍数 動作値整定と試験電流 整定4Aへ12A=300%
一次事故A 事故点・系統条件・CT特性 最小/最大を別々に表示

数値例は換算方法の説明で、推奨整定値ではありません。CTの負担・飽和で実入力が変わり得るため、CT・VT・VCT・ZCTの違いと機器仕様へ戻って確認します。

OCR・VCB|継電器動作と全遮断を分ける

OCRには過負荷保護を担う限時要素と、大きな短絡電流で速く動く瞬時要素があります。反限時特性では入力が大きいほど動作時間が短くなりますが、グラフに描かれた継電器動作時刻は、必ずしも電流が完全に切れた時刻ではありません。

VCBではOCR動作後にトリップ回路が成立し、引外しコイルが動き、主接点が開き、アークが消弧して全遮断します。協調余裕はOCR曲線だけでなく、継電器許容差、補助接点・トリップ時間、VCB開極・遮断時間を含めて判定します。引外し経路はVCBの引外し回路、現物確認はVCBの点検方法で分けます。

試験成績書の「OCR動作時間」は、注入開始から接点出力までを測った値か、VCB主接点開放まで含む値かを確認します。異なる測定点の時間を同列に比較すると、協調余裕を過大評価します。継電器接点、トリップコイル電流、補助リレー、主接点、事故電流消滅のどこを終点としたかを記録し、計算曲線と実測の対応点を明示します。

PF・低圧保護|点ではなく特性帯と全遮断を置く

PFは限時OCRの一本線と同じ読み方をしません。メーカー資料の最小溶断、全遮断、許容差を確認し、変圧器の励磁突入電流を通過させながら、短絡時には機器耐量内で遮断する範囲を見ます。

保護要素 曲線へ置く情報 比較相手
PF 最小溶断・全遮断・最小遮断電流 突入、変圧器耐量、上位OCR
MCCB/ACB 長限時・短限時・瞬時・遮断時間 下位分岐と高圧側保護
機器耐量 ケーブル・変圧器等の許容時間 全遮断曲線

PF選定は高圧限流ヒューズの選び方、低圧側はMCCBの選び方ACBの選び方で機器固有の条件を確認します。

事故点ごとの時系列|主保護と後備を入れ替えて読む

受電点、変圧器一次、低圧母線、分岐末端では、同じ電流値でも事故を切るべき機器が違います。事故点ごとに主保護、主保護の全遮断、上位後備、健全区間への影響を一行で残します。

事故点 主保護→全遮断 後備・確認事項
高圧分岐 分岐OCR/VCBまたはPF 受電OCR、他分岐の停電影響
変圧器二次 低圧主幹または分岐遮断器 PF/高圧OCR、変圧器結線
受電点近傍 受電OCR/VCB 電力会社側保護との技術協議

負荷・突入・事故電流|通す領域と切る領域を分ける

最大負荷電流、変圧器励磁突入、電動機始動は、事故でなくても大きな電流になります。一方、末端の最小短絡電流は上位側最大短絡電流より小さく、瞬時要素に届かない場合があります。正常時の包絡線、最小事故、最大事故、機器耐量を別々に描きます。

  • 通す領域:最大負荷、許容過負荷、励磁突入、始動電流を不要動作なしで通過させる。
  • 切る領域:最小事故で感度を持ち、最大事故で遮断能力・CT特性を満たす。
  • 守る領域:ケーブル、変圧器、母線、開閉器の熱・機械耐量より早く全遮断する。

励磁突入は変圧器の励磁突入電流、変圧器保護全体は変圧器の保護方式で確認します。

変更管理|増設・機器交換・系統変更で再計算する

変圧器容量、CT比、OCR型式、VCB、PF、低圧主幹、ケーブル、受電方式のどれかが変われば、過去の協調曲線をそのまま流用できるとは限りません。変更前提、再計算範囲、電力会社協議、試験、図面改訂を同じ変更番号で結びます。

変更 再確認する範囲 完了根拠
容量・系統 負荷、突入、最小/最大短絡、耐量 承認計算書・協議記録
保護機器 型式曲線、整定、CT、遮断時間 設定票・試験成績書
図面・現物 単線図、展開図、銘板、端子 現物照合・改訂配布記録

試験と不一致|計画曲線と実測動作をつなぐ

協調計算が成立していても、現物の整定値、OCR動作時間、トリップ回路、VCB全遮断が一致しなければ運用上の根拠になりません。試験記録を「整定照合」「継電器単体」「VCB連動」「全遮断確認」「復旧確認」に分け、計画曲線のどの点を確認したかを残します。

実測値は前回値だけでなく、計画値との差も同じ入力倍数で比較します。入力電流、相、波形、電源周波数、制御電圧、試験器、温度、測定開始・終了点が違えば単純比較できません。差が許容範囲内でも、毎回同じ方向へ増えている場合は傾向として残し、機構部、制御電源、トリップ回路、VCB動作時間のどこに変化があるかを切り分けます。

不一致は、事実、協調への影響、暫定安全対応、判断責任者、閉じる条件に分けます。試験方法や許容差は対象機器の現行説明書・試験要領を使い、記事の仮想例を合否基準にしません。詳しくは保護継電器試験の見方高圧受電設備の検査方法を参照してください。

「整定表と現物が違う」「試験値は合格だが曲線の余裕が不足」「計算書の事故点が現在の系統と違う」は別の不一致です。設定をその場で変更するのではなく、現状値を保存し、系統・負荷への影響、電力会社側との協調、変更後の再試験、図面・整定表の改訂までを一つの是正番号で管理します。

まとめ|誰が・どこを・何秒で切るかを版付きで残す

  • 選択遮断、後備保護、感度、機器耐量の4条件を事故点ごとに確認する。
  • 一次値、二次値、入力倍数を混ぜず、CT比と基準を明記する。
  • OCR動作、トリップ回路、VCB・PFの全遮断を別の時刻として読む。
  • 正常時電流、最小事故、最大事故、機器耐量を一枚へ重ねる。
  • 資料版、変更番号、試験結果、未確認事項を対応させる。

保護協調曲線はきれいな線を作る資料ではありません。事故点を決め、誰が主保護で、失敗時に誰が後備となり、機器損傷前に何秒で全遮断するかを説明できる状態へ整える資料です。

公式資料・一次情報

目的から選ぶ関連記事

目的 次に読む記事 確認できること
事故電流 短絡電流計算
CT・VT・VCT・ZCT
事故点と一次換算
OCR・VCB 保護継電器の種類
VCB引外し回路
入力、整定、トリップ
PF・変圧器 高圧限流ヒューズ
変圧器の保護方式
特性帯、突入、耐量
低圧保護 MCCBの選び方
ACBの選び方
長/短限時・瞬時
試験・図面 保護継電器試験
単線結線図の書き方
実測、連動、版管理
学習順 保護継電器ミニテスト
第一種 学習ロードマップ
基礎確認と復習
資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。試験センター、電力会社、機器メーカーの一次資料を照合し、学習用の曲線読解と実設備の整定作業が混ざらないよう編集しています。運営者情報と編集方針

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