安全上の注意
高圧受電設備には6,600Vの充電部があります。この記事は、機器の役割と単線結線図を理解するための解説であり、高圧機器の操作手順書ではありません。実設備の開閉操作・点検・測定は、選任された電気主任技術者または外部委託先の管理下で、設備固有の手順・インターロック・電力会社との連絡条件に従ってください。
先に違いをひとことで
- DS:無電流の回路を切り離し、点検区間を分ける断路器
- LBS:通常の負荷電流を開閉できる負荷開閉器。短絡電流の遮断はPFと組み合わせる
- VCB:通常の負荷電流と短絡電流を遮断できる真空遮断器
- PAS:主に受電点で使い、SOG制御装置との組合せで波及事故防止を担う柱上用気中負荷開閉器
結論|違いは「どの電流を切れるか」と「どこを守るか」
VCB・DS・LBS・PASの違いは、形ではなく機能で整理すると迷いません。最初に見るのは「通常の負荷電流を開閉できるか」「短絡電流を遮断できるか」、次に「単線結線図のどこへ置かれ、どの範囲を守るか」です。
| 機器 | 開閉・遮断できるもの | 主な役割 |
|---|---|---|
| DS | 無電流で開閉。負荷電流・短絡電流は遮断しない | 点検する電路の切り離し・区分 |
| LBS | 負荷電流を開閉。短絡電流はLBS単体では遮断しない | 変圧器などの開閉。PF付きなら短絡保護も担う |
| VCB | 負荷電流と短絡電流を遮断 | 継電器の指令を受けて事故回路を遮断 |
| PAS | 負荷電流を開閉。事故時の動作は本体と制御装置の仕様で確認 | 受電点の区分と、SOGによる波及事故防止 |
この表で特に大切なのは、「短絡電流を流せる」と「短絡電流を切れる」は別という点です。LBSは規定の短絡電流を投入し、一定時間通電できる機器ですが、LBS単体が短絡電流を遮断するわけではありません。短絡遮断はPF付きLBSのPF、またはVCBなどが担当します。
DS(断路器)|点検区間を電路から切り離す
DSはDisconnectorの略で、設備を点検するときに電路を切り離し、区分するための機器です。三菱電機の技術資料では、断路器は負荷電流を開閉できないため、VCBなどで電流を切った後に使う機器として説明されています。
DSを「ブレーカー」と考えない
DSは事故電流を遮断する保護装置ではありません。単線結線図でDSの前後にVCBがある場合、遮断を担うのはVCB、点検区間の切り離しを担うのがDSです。実際の操作順序は設備固有の手順によるため、図記号だけで自己判断してはいけません。
設備管理の視点では、DSがある場所から「どの機器を保守のために切り離せる設計か」を読みます。ただし、図面上でDSが開いて見えても、無電圧の確認や安全措置が完了したことを意味しません。
LBS(負荷開閉器)|通常電流を開閉し、PFと短絡保護を分担
LBSはLoad Break Switchの略です。通常の負荷電流を開閉でき、変圧器などの開閉に使われます。アークを消す構造を持つため、負荷電流を切れないDSとは役割が違います。
一方、LBS単体には短絡電流を遮断する能力がありません。そこでPF(電力ヒューズ)付きLBSとして、LBSが通常の開閉を、PFが短絡電流の遮断を受け持ちます。三菱電機の資料では、PF付きLBSはPF・S形キュービクルの主遮断装置として使われる構成が説明されています。
PFは一度動作したら元へ戻して再使用する機器ではありません。交換時は定格だけでなく保護協調やメーカー指定を確認します。現行製品の資料では、同じ定格表示でもメーカーにより特性が異なる場合があり、LBSとPFの組合せ確認が必要とされています。
VCB(真空遮断器)|継電器の判断で短絡電流を遮断する
VCBはVacuum Circuit Breakerの略です。真空中でアークを消し、負荷電流と短絡電流の両方を遮断できます。CB形の高圧受電設備では、主遮断装置として配置される代表的な機器です。
ただし、VCBが単独で事故の種類や大きさを判断しているわけではありません。一般的な構成では、CTなどの計器用変成器が電気量を取り出し、OCRやGR・DGRなどの保護継電器が異常を判断し、VCBへ引外し指令を送ります。
保護は「検出→判断→遮断」の一組で読む
単線結線図では、CTだけ、OCRだけ、VCBだけを見ず、CTが検出した電流をOCRが判断し、VCBが事故回路を遮断する流れで追います。点検でも継電器単体の試験だけでなく、遮断器との連動が重要になります。
VCBには定格電圧・定格電流・定格遮断電流などがあります。図面上に「VCB」と書かれているだけでは、現在の系統短絡電流に対して能力が足りるかまでは判断できません。設計図書、銘板、試験成績、保護協調資料を合わせて確認します。
PAS(柱上気中負荷開閉器)|受電点で波及事故を防ぐ
PASはPole Air Switchの略で、自家用高圧受電設備の入口付近、主に電柱上へ設置される気中負荷開閉器です。戸上電機製作所は、柱上用SOG開閉器が通称PASと呼ばれ、需要家側の事故を電力会社の配電線へ広げる波及事故の防止を目的に設置されると説明しています。
ここで覚えたいのは、PAS本体とSOG制御装置を一組で見ることです。地絡の検出方法、方向性の有無、VT・LA内蔵の有無、過電流ロックなどは製品と受電方式で異なります。「PASがあれば地絡も短絡もすべて遮断する」と一括りにせず、単線結線図と仕様書で組合せを確認します。
| 見るもの | 確認する内容 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 単線結線図 | 責任分界点、PAS、受電設備との並び | どこで需要家設備を区分するか |
| SOG制御装置 | 方向性、整定、制御電源、動作表示 | 事故をどう検出して開閉器へ指令するか |
| 銘板・仕様書 | 定格、形式、内蔵機器、製造年 | 現在の設備に必要な仕様との一致 |
略号を「本体・検出・遮断要素」へ分けて読む
同じ設備でも、図面に一つの略号だけを書く場合と、保護に関わる機器を分けて書く場合があります。そこで、略号を見たら主回路を開閉する本体・異常を検出して判断する要素・事故電流を遮断する要素へ分解します。
| 図面上の機器 | 組み合わせて読むもの | 略号だけでは確定しないこと |
|---|---|---|
| DS | 上流・下流の遮断器、接地開閉器、インターロック | 無電圧、接地完了、操作許可 |
| LBS | PF、ストライカ、変圧器容量、保護協調 | PFの種類・定格、三相開放の方式 |
| VCB | CT、OCR・DGR、引外し回路、制御電源 | 遮断電流、整定値、どの事故で開くか |
| PAS | SOG制御装置、ZCT・ZPD、制御電源、内蔵LA・VT | 方向性、ロック条件、内蔵機器の有無 |
たとえば「VCBあり」だけでは、短絡電流に対する定格遮断能力や、OCRの整定、制御電源喪失時の動作まで分かりません。機器名を答えにせず、何を検出し、誰が判断し、どの要素が電流を切るかを一組で確認するのが実務での読み方です。
単線結線図では上流から「区分・保護・負荷」の順で追う
代表的な受電設備なら、電力会社側から需要家側へ、次のように役割を追うと理解しやすくなります。
読み方の例(実設備の操作順ではありません)
配電線 → 責任分界点 → PAS(受電点の区分・SOG保護) → DS(切り離し) → CT・OCR(電流の検出・判断) → VCB(事故電流の遮断) → 母線 → LBS+PF(変圧器回路の開閉・短絡保護) → 変圧器 → 低圧負荷
実際の設備では、PF・S形、CB形、受電容量、電力会社との協議内容により並びも機器も変わります。基本の図記号と方式は「高圧受電設備の単線結線図と図記号|PF・S形とCB形の読み方」、図面から停電範囲・保護範囲を読む方法は「単線結線図の読み方・実務編|保護範囲と停電範囲を追う」で詳しく解説しています。
設備管理で混同しやすい4つのポイント
1. 「開閉器」と「遮断器」は同じではない
負荷開閉器のLBS・PASと、遮断器のVCBでは遮断できる電流が異なります。名称だけでなく、定格と保護装置との組合せまで確認します。
2. 開いている表示だけで安全と判断しない
開閉器や断路器の表示は、安全な作業状態を単独で保証するものではありません。停電確認、検電、接地などの安全措置は、有資格者が事業場の手順に従って行います。
3. 図面と現物が一致しているとは限らない
改修後に図面が更新されていない、機器形式だけ変更されている場合があります。単線結線図、現物銘板、保護継電器の整定表、点検報告書を突き合わせます。
4. 同じ略号でも仕様は一つではない
PASの方向性・内蔵機器、LBSとPFの組合せ、VCBの遮断能力は設備ごとに異なります。略号を覚えた段階は入口であり、形式と仕様書の確認が実務上の本題です。
1機器1行で「事実・組合せ・未確認」を残す
設備の確認結果を「VCBあり」「PAS良好」の一語で終えると、あとから定格や保護範囲を再確認できません。機器番号ごとに、図面と銘板で確認した事実・組み合わせる保護要素・まだ確認できていない項目を一行へまとめます。
| 記録欄 | 残す内容 | 書き分ける理由 |
|---|---|---|
| 対象の特定 | 盤・回路・機器番号、形式、定格、製造年 | 同じ略号の別機器や旧形式と混同しない |
| 組合せ | PF、CT、継電器、SOG、引外し回路、制御電源 | 本体だけで保護機能を断定しない |
| 照合資料 | 単線結線図、銘板、整定表、試験成績、取扱説明書 | 図面値と現物仕様の不一致を見つける |
| 未確認・引継ぎ | 未確認事項、確認先、担当者、期限、正式記録の場所 | 推測を確定事項として引き継がない |
この表は操作票や点検合否表ではありません。開閉・遮断・検電・接地・復電の条件は、電気主任技術者等が確認した設備固有の手順で別に管理します。
まとめ|略号ではなく「能力」と「保護範囲」で覚える
- DSは無電流の回路を切り離す機器で、負荷電流を開閉しない
- LBSは負荷電流を開閉し、PF付きならPFが短絡電流を遮断する
- VCBは負荷電流と短絡電流を遮断し、保護継電器と組み合わせて使う
- PASは主に受電点へ設置され、SOG制御装置と波及事故防止を担う
- 本体、検出・判断、遮断要素を分け、図面・銘板・整定表・試験成績を照合する
- 単線結線図や機器略号だけで、無電圧・操作可否・安全措置完了を判断しない
目的から選ぶ関連記事
機器の違いを確認したあと、設計・保護・点検のどこを深掘りするかで選べるよう、個別のリンク箱を目的別にまとめました。
| 目的 | 次に読む記事 | 確認できること |
|---|---|---|
| 設備の全体像 | 高圧受電設備の仕組み 単線結線図と図記号 |
受電・保護・計測・変圧・配電と図上の位置 |
| 保護方式の比較 | PF・S形とCB形の違い PAS・UGS・SOGの違い |
短絡・地絡時の分担、保護範囲、復旧 |
| VCBを詳しく | VCBの引外し回路 VCBの遮断容量 |
OCR・52a/52b・制御電源、遮断電流・短時間耐電流 |
| LBSを詳しく | LBSの選び方と点検 | 定格、PF・ストライカ、点検、更新判断 |
| 安全条件と図面 | 高圧受電設備のインターロック 単線結線図の読み方・実務編 |
操作許可条件、保護範囲、停電影響、版管理 |
| 点検・更新 | キュービクルの点検項目 キュービクルの更新時期 |
点検記録、経年変化、未改修事項、更新計画 |
| 試験と復習 | 高圧受電設備の検査方法 高圧機器の鑑別ミニテスト |
保護継電器・遮断器連動と、位置・接続・役割の復習 |
公式資料・確認先
内容確認日:2026年8月26日。製品仕様・規格・保安手順は変更される場合があります。実際の設計、選定、操作、点検は最新のメーカー資料と事業場の保安規程を確認してください。
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