受変電設備の実務

LBSの選び方と点検|定格電流・PF・ストライカ・交換時期

結論から言います

LBS(Load Break Switch、高圧交流負荷開閉器)は、負荷電流を開閉する本体と、必要に応じて短絡電流を遮断する高圧限流ヒューズPFを組み合わせて使います。選定では定格電圧・定格電流だけでなく、負荷の種類、開閉責務、短時間耐電流、PFとの組合せ、ストライカ引外し、操作方式、設置環境、開閉回数を一体で確認します。

LBSはキュービクル内でよく見かけるため、「変圧器一次電流より定格電流が大きければよい」「ヒューズがあるから短絡もLBSが切る」と考えられがちです。しかし、LBS本体が担う電流開閉とPFが担う短絡遮断は別の責務です。

この記事では6.6kV受電設備の屋内用LBSを中心に、機器の役割→定格の読み方→PF・ストライカ→用途別選定→点検→更新の順で整理します。PFの定格・溶断曲線は高圧限流ヒューズの選び方、PF・S形とCB形の設備方式はPF・S形とCB形の違いで詳しく解説しています。

高圧設備の操作手順ではありません

LBS・PFの目視、操作、清掃、測定、注油、部品交換は、停電範囲、無電圧確認、接地、残留電荷、インターロック、メーカー手順を定めた保安体制の下で行います。異音、焦げ臭、変色、放電痕、ヒューズ動作を見つけても、充電中に近づいたり機構へ触れたりしないでください。

LBS・DS・VCB・VCSの違い

機器 主な役割 短絡保護の考え方
LBS 規定された負荷電流を開閉し、開路時に断路機能を持つ PFとの組合せで短絡を保護
DS 無負荷回路の切離しと目視できる絶縁距離の確保 負荷・短絡電流の遮断装置ではない
VCB 負荷電流と規定の事故電流を遮断 保護継電器と組み合わせて遮断
VCS 電動機・コンデンサ等を多頻度開閉 PF等との組合せを製品仕様で確認

三菱電機はLBSを、負荷電流の開閉性能、断路性能、短絡事故状態での投入性能を持つ機器と説明しています。「投入性能」は短絡状態へ投入しても規定条件で耐える能力であり、LBS本体が短絡電流を遮断できるという意味ではありません。

LBS本体とPFの役割を分ける

LBS本体
通常の投入・開放、規定の負荷電流・過負荷電流の遮断、三相一括開放、断路、機械・電気インターロックを担います。
高圧限流ヒューズPF
短絡時にエレメントを溶断し、アーク電流を限流・遮断して変圧器や回路を保護します。定格・用途・曲線・遮断範囲を選びます。

短絡時はPFが事故電流を遮断し、ストライカ引外し機構がLBSを三相開放します。LBSだけ、PFだけでなく、LBS・PF・ホルダ・ストライカ・保護対象をメーカーが認める組合せで選びます。

最初に確認する8つの定格

  • 定格電圧・絶縁階級:6.6kV系統で一般に7.2kV級を使う理由を含め、対象系統へ照合する。
  • 定格周波数:50Hz・60Hzと操作・補助回路を確認する。
  • 定格電流:連続して流す主回路電流の上限。
  • 定格負荷開閉電流:規定の負荷を開閉できる電流。
  • 定格過負荷遮断電流・回数:定格を超える領域での限定された遮断責務。
  • 定格短時間耐電流:PF等が事故を除去するまでLBSが耐える実効値と時間。
  • 定格短絡投入電流:短絡状態へ誤投入したときの規定ピーク耐量。
  • 機械的・電気的開閉寿命:無通電操作と負荷開閉の回数限度。

カタログには同じシリーズでも、ヒューズ付・なし、ストライカ有無、過負荷遮断A級・C級、定格電流、短絡容量、取付方向が異なる機種があります。シリーズ名だけで定格を転記しません。

変圧器一次電流から連続電流を確認する

三相変圧器の一次定格電流は、容量Sと一次線間電圧Vから求めます。

I = S ÷(√3 × V)

6.6kV・1,000kVAなら、1,000,000÷(√3×6,600)=約87.5Aです。LBSの定格電流200Aという一例なら連続電流だけは上回りますが、これで選定完了ではありません。

変圧器励磁突入電流、PFの許容時間電流特性、短絡容量、開閉する負荷の種類、将来増設、周囲温度、接続導体、開閉頻度を続けて確認します。PF定格を一次定格電流と同じ値へ機械的に合わせないでください。

負荷の種類ごとに開閉責務を確認する

変圧器の励磁電流、ケーブルの充電電流、コンデンサ電流、電動機電流では、遮断時の過渡現象が違います。LBSカタログには、負荷開閉電流のほか、変圧器励磁電流、充電電流、コンデンサ電流等の開閉性能が別に示される場合があります。

「定格電流200Aだから、どんな200Aも同じように開閉できる」とは限りません。進相コンデンサでは再点弧・突入、高調波、直列リアクトルとの組合せも関係します。用途を仕様書に明記し、対象LBSの試験責務へ照合します。

短絡電流は遮断容量と短時間耐量へ照合する

事故点の推定短絡電流を求め、PFの定格遮断電流とLBS・PF組合せの短絡容量、LBS本体の短時間耐電流、短絡投入電流へ照合します。VCBと同じように「LBSの遮断電流○kA」と一項目だけを見るのは危険です。

PFが限流を開始するまでの電流、LBS・支持物に加わる電磁力、アークによる損傷、上位・下位保護との協調を確認します。短絡電流計算の入力は変圧器の%Z、PFの遮断範囲は高圧限流ヒューズの選び方が対応します。

ストライカ引外しは欠相を残さないための機構

PFの一相または二相が動作したとき、ヒューズのストライカがLBSのトリップ機構を動かし、三相を開放する方式がストライカ引外しです。三菱電機の教材は、PF・S形キュービクルの主遮断装置にストライカ引外し式を使用し、欠相防止を図ると説明しています。

ストライカは「ヒューズが切れた表示棒」だけではありません。突出力、動作量、LBSのラッチ・トリップ機構、可動形・固定形、電気式の場合の引外しコイルと制御電源を含む組合せです。

ヒューズ可動形と固定形を外観だけで決めない

ヒューズ可動形は、LBSのブレードとヒューズ側が機械的に連動する構成があります。固定形では、LBSとヒューズホルダが別配置となり、電気的ストライカ引外し回路を構成する機種があります。

更新時は、取付寸法、端子方向、相間バリヤ、ヒューズ形名、ストライカ方式、引外しコイル電圧、補助接点、制御電源位置を確認します。「固定形だからストライカなし」「可動形ならどのPFでも合う」とは決めません。

PFは同一メーカー・指定組合せを基本にする

ストライカ突出力、溶断特性、小電流遮断領域、LBSの開極時間、ホルダ寸法が適合して初めて組合せ保護が成立します。三菱電機の更新資料も、ヒューズ付LBSを他社製品から置き換える場合は、PFとLBSを同じメーカーの指定組合せで更新するよう案内しています。

既設PFの形名末尾や定格電流だけが同じでも、用途区分、ストライカ、動作表示、製造年代が違う場合があります。LBS本体・PF・ヒューズ台の形名を一組で台帳へ残します。

過負荷保護をLBSの常用責務にしない

三菱電機FAQでは、同社の200A LBSについて、200Aを超える電流を本体で遮断した場合、A級は1回、C級は3回で本体交換が必要となる例を示し、過負荷保護へOCRを組み合わせる運用を推奨していません。この数値は全LBS共通ではなく、対象製品の限定責務です。

過負荷遮断が繰り返される設備や、多頻度開閉する電動機・コンデンサでは、VCBやVCSを含む方式を検討します。異常停止のたびにLBSが開放する制御を組む前に、予想動作回数と遮断電流をメーカーへ確認します。

手動・遠方手動・電動操作を用途で選ぶ

年次点検時だけ操作するフィーダと、負荷管理で日常的に開閉するフィーダでは必要な操作方式が違います。手動操作、遠方手動操作器、電動操作機構、引外しコイル、補助スイッチ、鎖錠・クロスインターロックを選びます。

電動化すれば無条件に安全になるわけではありません。制御電源をLBSの一次側・二次側のどこから取るかで、開放後の再操作・インターロック状態が変わります。停電・制御電源喪失・手動バックアップ時を回路図で確認します。

設置環境と取付方向を仕様へ入れる

屋内用LBSの標準使用条件には、周囲温度、日平均温度、標高、振動、じんあい、腐食性ガス、油蒸気、湿潤などの範囲があります。標準条件を外れる場所は、盤の密閉・換気、スペースヒータ、耐食仕様、絶縁強化、保守周期を検討します。

水平・垂直・下向きなど取付方向が限定される機種もあります。既設盤へ「寸法が入る」だけで流用せず、外形図の取付方向、操作力、可動部クリアランス、バリヤ、端子荷重を確認します。

選定を進める12ステップ

  1. 単線結線図でLBSの位置、電源側、負荷側、保護対象を特定する。
  2. 系統電圧、周波数、接地方式、推定短絡電流を確認する。
  3. 負荷の種類、定格電流、始動・励磁・充電・突入条件を確認する。
  4. 通常・非常・増設後の最大連続電流を求める。
  5. 必要な負荷開閉、過負荷遮断、短時間耐電流、投入責務を決める。
  6. PFの用途区分、定格、許容・溶断曲線、遮断範囲を選ぶ。
  7. LBS・PF・ホルダ・ストライカの指定組合せを確認する。
  8. 手動・遠方手動・電動、引外しコイル、補助接点を選ぶ。
  9. インターロック、制御電源、警報・表示、操作権限を確認する。
  10. 温度、標高、湿気、粉じん、腐食、振動、取付方向を確認する。
  11. 開閉回数、点検方法、予備PF、交換部品、更新スペースを確認する。
  12. 製造者の選定表・外形図・試験責務で最終照合する。

日常巡視で見る異常兆候

  • 焦げ臭、異音、ジジジという放電音、盤内警報。
  • 端子・接触部・導体の変色、絶縁物の変形、すす。
  • がいし・消弧室・バリヤの割れ、欠け、汚損、結露。
  • PF動作表示、ストライカ突出、三相開放状態の不一致。
  • 操作表示、補助接点表示、遠方表示の食い違い。
  • 盤扉、鎖錠、インターロック、操作器の外観異常。

盤外から確認できる兆候を時刻、負荷電流、周囲温度、警報履歴とともに記録します。異常が疑われる状態で操作して「直るか試す」ことはしません。

停電点検では電気・機械・絶縁を分ける

区分 確認対象 判断の残し方
電気 絶縁抵抗、接触抵抗、補助回路、引外し回路 測定条件・相別値・前回値
機械 ブレード、接点、ばね、ラッチ、軸、連結部 操作回数・摩耗・動作状態
絶縁・消弧 がいし、バリヤ、消弧室、表面汚損・炭化 写真・位置・継続使用可否
保護連動 ストライカ、三相引外し、表示、警報、インターロック 入力・結果・復帰状態

接触抵抗や絶縁抵抗の合否値、注油箇所、締付トルク、摩耗限度は機種ごとに異なります。一般値で上書きせず、製造者の取扱説明書、保守点検マニュアル、対象製造番号の部品表を使います。

ストライカ引外し試験は三相の結果まで見る

ストライカの動作だけでなく、LBSが三相とも完全開放し、機械表示・補助接点・遠方表示・警報が一致するかを確認します。ラッチの固渋、グリース枯渇、粉じん蓄積があると、ストライカが突出してもLBSを開放できないおそれがあります。

実ヒューズを不用意に動作させるのではなく、メーカー指定の点検治具・試験方法・交換基準に従います。試験後はトリップ機構の復帰、閉路禁止条件、PFの装着状態まで記録します。

PFが動作したら原因調査と全相交換を分けない

JEMAの技術資料は、三相回路で1本が動作した場合、溶断していない残りのヒューズもエレメントが劣化している可能性があるため、各相とも新品へ交換するよう示しています。

交換前に短絡、地絡、変圧器内部故障、励磁突入、過負荷、誤定格、経年劣化などの原因を特定します。PFだけを交換して再投入する運用にせず、LBSの接点・消弧部、ストライカ機構、保護対象、上位保護の動作履歴も確認します。

開閉回数と過負荷遮断履歴を台帳化する

機械的開閉寿命と電気的開閉寿命は同じではありません。無負荷操作、定格負荷開閉、過負荷遮断、事故後動作では接点・消弧室へのストレスが違います。単に「年1回点検した」とだけ残すと、累積責務を判断できません。

操作年月日、操作理由、開閉時電流、負荷種類、遠方・手動、PF動作、過負荷遮断、異常音、交換部品を記録します。日常的な省エネ制御などで多頻度開閉するなら、LBSではなく適した機器方式へ見直します。

更新推奨15年を寿命保証と読まない

JEMAの考え方を基に、三菱電機は屋内用高圧交流負荷開閉器の更新推奨時期を使用開始後15年の目安として示しています。これは15年間の機能保証でも、15年までは故障しないという意味でもありません。

高温、多湿、腐食性ガス、粉じん、塩害、振動、頻繁な開閉、保守不足、事故電流で劣化は早まります。反対に外観が良好でも、グリース固化、ばね・ラッチ・補助スイッチの内部劣化は見えません。年数、状態、動作履歴、部品供給を合わせて更新計画を立てます。

他社品・旧形品への置換えで確認する項目

  • 本体外形、取付ピッチ、端子高さ・方向、主回路導体の応力。
  • 定格電圧・電流、短時間耐電流、短絡投入、負荷開閉責務。
  • PF形名・用途・ストライカ、ヒューズ台、可動・固定方式。
  • 引外しコイル電圧、制御電源、補助接点、遠方操作器。
  • バリヤ、相間距離、接地、盤内クリアランス、取付方向。
  • インターロック、表示、警報、単線図・展開接続図の変更。

「取付互換あり」でも、主回路接続、補助回路、仕様が完全互換とは限りません。LBSとPFを異なるメーカーの旧品・新品で混在させず、組合せ責務を製造者へ確認します。

仕様書・台帳へ残す26項目

設備番号、盤名称、製造者、LBS形式、製造番号、製造年、使用開始年、定格電圧、周波数、定格電流、負荷開閉電流、過負荷遮断区分・回数、短時間耐電流・時間、短絡投入電流、機械寿命、電気寿命、操作方式、取付方向、引外しコイル電圧、補助接点、PF形式・定格・用途、ヒューズ台、ストライカ方式、保護対象、累積操作・事故履歴、次回点検・更新判断を残します。

銘板写真、LBS外形図、PF選定表、I-t曲線、単線結線図、制御展開図、試験成績表を同じ設備番号へひも付けます。PF動作や過負荷遮断があった場合は、通常点検とは別の事故履歴として残します。

よくある12の誤解

  • LBSはVCBと同じように短絡電流を遮断する。
  • PFがあればLBS本体の短時間耐電流は確認不要である。
  • 変圧器一次電流より定格電流が大きければ選定完了である。
  • 定格電流内なら負荷種類を問わず同じ開閉性能である。
  • ストライカはヒューズ動作を表示するだけである。
  • PFとLBSは定格電圧が同じならメーカーを問わず組み合わせられる。
  • ヒューズが1相だけ溶断したら、その1本だけ交換すればよい。
  • 過負荷遮断定格があるので、OCRで日常的に開放してよい。
  • 電動操作式なら制御電源喪失時も同じように操作できる。
  • 外観がきれいならラッチ・ばね・グリースの劣化はない。
  • 15年は製品が必ず使える保証期間である。
  • 取付寸法が合えば旧形・他社品と完全互換である。

理解度チェック|オリジナル3問

問1:6.6kV・三相1,000kVA変圧器の一次定格電流に最も近いものはどれですか。
ア.約26A イ.約44A ウ.約87A エ.約152A

解答と理由を見る

正解:ウ。1,000,000÷(√3×6,600)=約87.5Aです。ただし、LBSとPFはこの連続電流だけでなく、突入、開閉責務、短絡、組合せ特性で選びます。

問2:ストライカ引外し式LBSの説明として正しいものはどれですか。
ア.PFを使わずLBSだけで短絡遮断する イ.PF動作に連動してLBSを三相開放する ウ.LBSの定格電流を自動で増やす エ.操作回数を初期化する

解答と理由を見る

正解:イ。PFの一相・二相動作時にストライカがトリップ機構を動かし、LBSを三相開放して欠相状態を残さないための方式です。

問3:三相回路でPFが1本動作しました。復旧前の基本判断として適切なのはどれですか。
ア.動作した1本だけ同定格へ交換する イ.原因を調べず3本交換して直ちに投入する ウ.原因を調査し、LBS・保護対象を確認してPFを全相新品へ交換する エ.ストライカを手で戻して継続使用する

解答と理由を見る

正解:ウ。残ったPFもエレメントが劣化している可能性があります。事故原因、LBS・ストライカ、保護対象、上位保護を確認し、メーカー手順で全相を新品へ交換します。

まとめ

  • LBS本体は負荷開閉、PFは短絡遮断を担い、指定組合せで一つの保護方式になる。
  • 定格電流だけでなく、負荷種類、開閉責務、短時間耐電流、短絡投入、開閉寿命を確認する。
  • ストライカ引外しはPF動作時にLBSを三相開放し、欠相を防ぐ。
  • PF動作時は原因を調査し、LBS・保護対象を確認して全相のPFを新品交換する。
  • 更新推奨15年は保証期間ではなく、環境・操作・事故・点検履歴と合わせて判断する。

公式資料・一次情報

この記事の作成方針

内容は2026年8月17日にJEMA、三菱電機、東芝産業機器システムの公式・一次12資料へ照合しました。特定製品の200A、過負荷遮断回数、15年等を全LBS共通値へ広げず、LBS本体・PF・ストライカの責務を分離しています。確認問題は当サイトのオリジナルです。LBS、PF、点検サービス等のアフィリエイトリンクは掲載していません。

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この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。法令・規格・メーカー一次資料を基に、試験学習と設備管理で混同しやすい境界を整理しています。運営者情報を詳しく見る



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