受変電設備の実務

OCR整定計算|CT比・限時・瞬時・保護協調の決め方

結論:OCR整定は、負荷と事故の間にある検出・時間の窓を全運転ケースで探す

OCR(過電流継電器)の整定は、よく使われる倍率を一つ選ぶ作業ではありません。保護範囲→運転ケース→一次電流→CT二次電流→限時・瞬時判定→VCB全遮断→試験・変更記録を同じ条件で結び、不要動作、事故感度、選択遮断、設備耐量の四条件を同時に通します。

この記事は保護継電器の種類と整定の総論や、保護協調曲線の見方の作図手順を繰り返しません。OCR一台について、どの入力資料をそろえ、一次値と二次値をどう往復し、限時・瞬時・全遮断をどの証拠で決めたかを計算書へ残すことに絞ります。

記事の計算例や倍率を、実設備の整定値へ転記しないでください

必要な整定値、時限、特性、瞬時要素の使用可否は、電力会社との協調条件、系統短絡電流、負荷・突入、CT性能、上下位保護、機器耐量で変わります。設定変更や試験は停電範囲と誤遮断に直結します。電気主任技術者等の管理下で、承認済み単線図、保護連動表、現行メーカー資料、保安規程、試験・復旧手順を優先してください。

整定を7境界で組み立てる|範囲・ケース・CT・限時・瞬時・遮断・記録

OCRの盤面には限時電流、時間目盛、瞬時電流等が並びますが、つまみの値だけでは整定根拠になりません。まず事故点を置き、その事故を主保護として切るのか、下位保護不動作時の後備として切るのかを単線図へ囲みます。

次に常用、予備、変圧器並列、発電機連系、母線連絡等の運転ケースを分けます。同じOCRでも、電源インピーダンス、事故電流の流入方向、最大負荷、下位機器が変われば、検出できる電流の窓と必要な時限が変わります。

最後にCT二次入力からOCR判定、出力接点、86や補助リレー、52トリップコイル、VCB主接点開放、電流消滅までをつなぎます。OCR動作表示を事故除去完了の証拠にはしません。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
保護範囲 主保護・後備、事故点、上下位境界 単線図・保護連動表
運転ケース 常用/予備、並列、連系、母線連絡 運用図・ケース番号
CT入力 比、二次定格、精度、負担、極性 銘板・二次回路図
限時・瞬時 動作値、特性、時間目盛、誤差帯 整定表・特性曲線
遮断・記録 出力、52開放、全遮断、復旧 試験結果・SOE・変更票

入力資料台帳|負荷・短絡・突入・上下位・耐量の版をそろえる

整定計算を始める前に、単線図、系統短絡容量、変圧器%Z、ケーブル、負荷実績、CT、OCR、VCB、下位遮断器・PFの資料を一つの台帳へ集めます。図番、メーカー資料番号、改訂、取得日を付け、異なる版の数値を混ぜません。

事故電流は最大値だけでなく、保護範囲の末端で電源が最も弱いときの最小値も必要です。最大値は遮断容量や瞬時域、最小値はOCRが事故を確実に拾えるかの感度確認に使います。変圧器の%Z高圧配電線路の短絡電流計算と計算条件をそろえます。

負荷は契約値だけでなく、実測最大、将来増設、相偏り、変圧器・電動機の投入順序を確認します。励磁突入は変圧器の励磁突入電流、ケーブル耐量は高圧ケーブルのサイズ選定へ分け、同じ時間電流図へ戻します。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
系統 受電電圧、短絡容量、%Z、運転結線 計算条件票・単線図版
正常電流 実測最大、将来負荷、始動・突入、継続時間 トレンド・負荷表
事故電流 事故点別の最大/最小、電源ケース 短絡計算書・ケース番号
保護機器 上位/対象/下位の曲線、誤差、全遮断 現行カタログ・整定表
設備耐量 変圧器、ケーブル、母線、CT、VCB 銘板・耐量曲線・仕様書

一次・二次換算|CT比と電流基準を一行ごとに明記する

OCRへ入るのはCT二次電流です。CT一次定格Ipn、二次定格Isn、一次電流Ipから、公称二次電流は Is=Ip×Isn÷Ipn で換算します。反対に、OCR二次整定Isetを一次相当へ戻すと Ip,set=Iset×Ipn÷Isn です。

例としてCT 200/5A、OCR限時整定4Aなら、公称一次相当は4×200÷5=160Aです。一次300Aが流れたときの公称二次入力は300×5÷200=7.5A、整定値に対する入力倍数は7.5÷4=1.875倍です。動作時間は対象形式の1.875倍点で読みます。

これは換算の例であり、160Aを整定推奨値とするものではありません。実際の事故域ではCT誤差、二次負担、飽和、OCR誤差があるため、公称比だけの計算を合格証拠にしません。CTの確認はCT・VT・VCT・ZCTの違いCTの飽和・精度階級・負担へ接続します。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
二次入力 Is=Ip×Isn÷Ipn 一次300A、200/5Aなら7.5A
一次整定相当 Ip,set=Iset×Ipn÷Isn 4A整定、200/5Aなら160A
入力倍数 M=Is÷Iset 7.5A÷4A=1.875倍
曲線照合 Mと時間目盛から動作時間を読む 形式・特性・誤差帯を併記

限時電流整定|最大正常電流より上、最小事故電流より下へ置く

限時要素は、最大負荷や許容される始動・突入で不要動作しない下限と、保護範囲末端の最小事故を誤差込みで検出できる上限の間へ置きます。『契約電力の何%』という一式だけでは、この二つの境界を証明できません。

限時整定を上げると負荷余裕は増えますが、入力倍数が下がり、事故時の動作が遅くなったり最小事故を拾えなくなったりします。下げると感度は上がりますが、負荷増加、変圧器投入、電動機始動で不要動作する可能性があります。

候補値ごとに、最大正常入力÷整定値と最小事故入力÷整定値を計算します。正常側は不動作域、事故側は確実動作域に入ることを対象機種の誤差・復帰特性込みで確認し、端数を都合よく丸める前後の判定を残します。

時間特性と全遮断|入力倍数・時間目盛・VCB動作を分ける

反限時、強反限時、超反限時、定限時等では、同じ入力倍数でも動作時間が異なります。名称が同じでも規格、機種、曲線番号、ソフトウェア版が違えば特性を同一視できません。現行メーカー曲線または特性式を計算書へ添付します。

時間目盛やタイムダイヤルは、一般にその数字をそのまま秒として読むものではありません。事故一次電流をCT二次へ換算し、整定値に対する入力倍数を求め、採用した特性・時間目盛の曲線上でOCR動作時間を読みます。

事故除去時間はOCRの動作時間だけでは終わりません。出力接点、補助回路、トリップコイル、VCB開極、アーク消弧を経た全遮断までを加えます。信号経路はVCBの引外し回路、VCB定格はVCBの遮断容量の選び方と照合します。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
検出・演算 CT二次入力、入力倍数、特性、時間目盛 OCR試験値・曲線上の時間
出力回路 出力接点、補助リレー、86、制御電源 展開図・接点動作時刻
機械動作 52トリップコイル、開極、アーク消弧 VCB仕様・開極信号
全遮断 事故電流が消滅するまで 波形・SOE・連動試験

瞬時電流整定|突入を避け、近端事故を高速に拾う窓を探す

瞬時要素には、変圧器励磁突入、電動機始動、下位保護範囲の通過事故で不要動作しない下限があります。一方、自保護範囲内の近端事故をCT飽和・誤差込みで検出する上限があります。候補値はこの二つの間に必要です。

瞬時とは機械的な完全0秒ではありません。検出・演算、出力、VCB開極、アーク消弧の時間があります。下位OCR、MCCB、ACB、PFを飛び越えて受電全体を遮断しないか、事故点を移動させながら確認します。PFの領域は高圧限流ヒューズの選び方と重ねます。

突入最大値が自範囲の最小短絡電流へ近づき、瞬時の窓が作れない場合があります。そのときは瞬時目盛だけを上げ下げせず、CT、保護範囲の分割、別保護要素、上下位機器、系統構成へ戻します。瞬時要素を使わない判断にも、事故除去時間と耐量の根拠が必要です。

4判定ゲート|不要動作・事故感度・選択遮断・設備耐量を同時に通す

限時・瞬時の候補は、四つのゲートを同じ電流基準と時間軸で通します。一つでも不合格なら、他の三つが良くても採用しません。『曲線が交差していない』だけでは、誤差帯、CT飽和、VCB全遮断、運転ケースの変化が抜けます。

選択遮断では、事故区間に最も近い保護が先に動き、対象OCRは必要な後備余裕を持ちます。ただし上位を遅くすればよいとは限りません。遅延中の通過電流が変圧器、ケーブル、母線の熱的・機械的耐量を超えないことを同時に確認します。

同じ候補値を、最大電源・最小電源、常用・予備、母線連絡開閉、変圧器台数、発電機連系等へ展開します。ケースごとに合否と不合格理由を残すと、どの運転状態を禁止または再設計すべきか説明できます。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
不要動作 最大負荷、始動・突入、許容過渡を避ける 正常域と誤差帯の余白
事故感度 末端・最弱電源の最小事故を拾う CTを含む最小入力倍数
選択遮断 下位主保護が先、対象OCRは後備 上下位の全遮断時間差
設備耐量 変圧器・ケーブル・母線の限界内で除去 耐量曲線との時間余裕

CT・VCBの非理想性|計算値が入力と遮断へ届くか確認する

大きな一次短絡電流をCT比で割った値が、そのままOCRへ届くとは限りません。CTの精度階級、過電流定数、実負担、二次配線、残留磁束、過渡直流分により飽和し、二次電流の大きさや波形が変わることがあります。

CT比を大きくすると通常負荷の二次入力が小さくなり、OCR最小整定に対する余裕が減る場合があります。小さくし過ぎると最大負荷、事故時精度、二次負担との整合が崩れます。CT更新はOCR整定と計器表示を同時に再計算します。

OCRが正しく動作しても、制御電源、ヒューズ、補助リレー、配線、トリップコイル、VCB機構に不具合があれば事故電流は消えません。OCR単体合格、出力回路合格、連動遮断合格を別の状態で管理します。点検境界はVCBの点検方法へつなぎます。

整定計算書|事故点×運転ケース×候補値を一行で比較する

計算書は、OCR一台につき一つの最終値だけを置くより、事故点と運転ケースを行に、最大/最小事故電流、CT二次値、入力倍数、OCR時間、VCB全遮断、上下位余裕、設備耐量を列にした比較表にします。途中の不合格候補も理由付きで残します。

各数値には元資料番号、図番、改訂、単位、一次/二次基準を付けます。メーカー曲線を読み取った値は、曲線名、時間目盛、読み取り方法、誤差帯を記録します。手計算、表計算、保護協調ソフトの結果は入力条件をそろえて相互に検算します。

変更前後では、設定値だけでなく保護範囲、CT、曲線、出力先、運転ケース、試験判定値を差分化します。機器番号・英語略号変圧器の保護方式を使い、50/51の出力がどの52を開くかまで記録します。

試験・事故・変更|計算値から電流消滅と復旧まで状態で残す

試験では、現状整定の保存、試験範囲の隔離、限時最小動作、所定入力倍数の動作時間、瞬時、出力接点、警報、VCB連動、試験線撤去、設定復帰を別項目にします。具体的な注入結線や端子操作は機種固有で危険を伴うため、この記事では扱いません。保護継電器試験の安全境界を優先します。

事故時は整定を変える前に、事故点、各相電流、動作要素、入力倍数、イベント・波形、出力接点、86、52a/52b、電流消滅、上下位動作、停電範囲を保存します。想定より遅いときは、計算、CT入力、OCR判定、出力回路、VCBのどこから差が始まるかを切り分けます。

復旧は表示リセットと同義ではありません。事故原因の隔離、機器健全性、承認済み整定、試験端子・制御電源・警報・通信の原状、図面・計算書の改訂、再投入承認を確認します。負荷、CT、OCR、VCB、ケーブル、系統構成を変えたら、全ケースを四ゲートへ戻します。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
計算済み 全ケースで四ゲートを通過 承認済み計算書・曲線
設定済み 変更前後値、設定群、照合者 盤面記録・設定ファイル
単体試験済み 限時・瞬時・出力の実測 校正情報・試験成績書
連動遮断済み 出力から52開放・電流消滅 SOE・波形・開極状態
復旧済み 試験線、設定、警報、図面、承認 復旧票・再投入承認

公式資料・一次情報

内容確認日:2026年9月2日。対象設備の承認図、現行取扱説明書、契約・運用基準を優先してください。

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全体と曲線 保護継電器の種類と整定保護協調曲線 50/51、上下位協調、四判定
入力回路 CT・VT・VCT・ZCTCTの飽和・負担 CT比、精度、負担、飽和
正常過渡 励磁突入電流変圧器%Z 突入包絡線、短絡電流
出力と遮断 VCB引外し回路VCB遮断容量 制御電源、52、全遮断
保護対象 変圧器の保護方式高圧ケーブル選定 主保護・後備、短絡耐量
PFとの協調 高圧限流ヒューズ単線結線図と図記号 PF溶断・全遮断、事故点
試験・復旧 保護継電器試験VCB点検 単体、出力、連動、復旧
資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。保護継電器メーカー、経済産業省、試験センターの公開資料を照合し、OCR整定を入力値から全遮断・復旧まで追える計算記録として再構成しています。運営者情報と編集方針

広告・検証方針

この記事内にOCR、CT、VCB、試験器、工事・点検、通信講座のアフィリエイトリンクは掲載していません。2026年9月2日に保護継電器メーカー、経済産業省、電気技術者試験センターの現行公開資料へ再照合しました。七境界、四判定ゲート、試験・復旧状態の管理方法は当サイトの編集構成で、実設備の整定票や操作手順書ではありません。

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