受変電設備の実務

高圧受電設備の接地系統図|A種・B種・D種とLA接地

結論:接地記号ではなく「対象→接地線→端子→接地極」の4点を追う

高圧受電設備の接地系統図は、A種・B種・D種という名前を覚える図ではありません。何を接地するのか、どの接地線を通るのか、どの端子・試験用接続部を経由するのか、最終的にどの接地極へ至るのかを確認する図です。変圧器の外箱と低圧側中性点、LAの接地端子、CT・VT二次回路、低圧機器外箱は目的が違うため、一つの接地記号にまとめて読まないことが出発点です。

単線結線図では、受電点から負荷までの主回路が太く描かれ、接地線は小さな記号や注記だけになることがあります。しかし、事故時に外箱の電位を抑える経路、高低圧混触時に低圧側の電位上昇を抑える経路、雷サージを大地へ流す経路は、平常時に負荷電流を運ぶ主回路と同じではありません。

接地線を外して確認するための記事ではありません

高圧受電設備の接地線には、漏えい電流、事故電流、雷サージが流れる可能性があります。運転中の切離し、端子の増締め、接地抵抗測定、クランプ測定、接地極の施工は、感電・アーク・保護不動作・波及事故につながります。電気主任技術者、設計者、保守会社が、停電・検電・放電・短絡接地・誤投入防止、メーカー要領、保安規程、測定計画に基づいて実施してください。

接地経路を4点で読む|対象・導体・端子・接地極

A種・B種・D種という記号だけでは、事故電流の物理的な帰路を確認できません。接地する対象、接地線、機器端子・接地母線・試験用接続部、最終的な接地極を一続きで追います。

確認点 必要な情報 抜けると分からないこと
対象 外箱、鉄心、中性点、LA、二次回路 接地の目的と種別
導体 線種、太さ、線番、経路、接続点 連続性と事故電流の経路
端子 機器端子、母線、測定用接続部 測定・切離し・復旧位置
接地極 極番号、位置、共用/独立、実測値 物理接続先と履歴

A・B・C・D種接地工事の違いは法定値、絶縁抵抗・接地抵抗測定は測定原理が主題です。本記事ではキュービクル内外の物理経路と記録の対応へ集中します。

接地目的を分ける|保護・系統・雷・二次回路

同じ接地記号が付いていても、外箱の保護接地、高低圧混触時のB種接地、雷サージを流すLA接地、計器用変成器二次側の接地では対象と目的が違います。

接地種別の記号は法令上の要求を整理する入口ですが、実設備の経路を証明する資料にはなりません。単線図の接地記号、接地系統図の線番、端子台図の接続、接地極配置図の極番号、測定記録の対象名を相互参照します。同じ名称が使われていても版・場所・設備番号が一致しない記録は、別設備の可能性を先に除外します。

系統 代表対象・目的 混同しない相手
保護接地 高圧・低圧機器外箱の電位上昇抑制 変圧器低圧側B種
系統接地 高低圧混触時の低圧側電位上昇抑制 外箱接地・白線識別
雷保護 LAからサージ電流を大地へ流す 通常の負荷電流経路
二次回路 CT・VT混触時の二次側危険抑制 CT・VT外箱の接地

変圧器・CT・VT|外箱と電路の接地を分ける

変圧器では、高圧機器としての外箱・鉄心の接地と、低圧側電路に施すB種接地を別経路で追います。図面上で近くに描かれていても、対象、目的、端子、測定記録を一つにまとめません。二次結線と中性点は変圧器二次側の結線図で確認します。

高圧計器用変成器では、二次側電路の接地と外箱・鉄心の接地を分けます。CT・VTの端子安全と二次経路はCT・VT・VCT・ZCTの違いへ戻り、接地点の重複や未接続を端子台図で確認します。

接地側電線と保護接地線も別物です。白線などの識別だけで経路を推測せず、変圧器端子、低圧盤N/E、接地母線、ボンディング点を図面と現物で対応させます。

LA・ケーブル金属部|サージとシールドの帰路を追う

LAは雷サージ時に線路側から接地側へ大きな電流を流します。LA本体の定格だけでなく、高圧端子からLA、接地端子、接地線、接地極までの経路を確認し、不要に長い配線や急な曲げ、腐食・緩み、他設備との共用条件を図面へ戻します。

対象 追う経路 関連資料
LA 線路→LA→接地端子→接地線→極 単線図・配置図・メーカー要領
ケーブル 遮へい・金属シース→接続部→母線/極 施工図・端末図・保護方式
低圧SPD 保護モード→PE/N→等電位点 分電盤図・接地図・製品仕様

LAの選定・更新は高圧避雷器LAの選び方、低圧側は低圧SPDの選び方で固有条件を確認します。

接地点台帳|極番号と物理接続を一行で管理する

図面にEA、EB、EDと書くだけでは、同じ極か別の極か、母線で連接されているか、測定用接続部がどこかを判断できません。接地する対象ごとに物理経路と根拠を一行で残します。

記録単位 確定する事実 閉じる根拠
対象・端子 盤/機器/端子番号/接地目的 銘板・端子台図・現物写真
導体・経路 線種、太さ、線番、中継点、母線 施工図・連続性確認記録
接地極 極番号、位置、共用/独立、埋設情報 配置図・竣工記録・測定記録

主回路と接地経路を同じ版で管理するには高圧受電設備の単線結線図の書き方、設備全体の位置関係は高圧受電設備の仕組みを参照してください。

共用・独立・連接|抵抗値だけで判断しない

接地抵抗が低いという一事実だけで、異なる目的の接地を共用してよいとは決められません。事故電流・雷サージの流入、地電位上昇、保護装置への影響、通信・電子機器のノイズ、電位差、採用規格、電力会社・設計仕様を確認します。

「同じA種だから同じ極」「図記号が近いから共用」と推測せず、共用、独立、連接のどれかを配置図と施工記録で確定します。確定できない場合は未確認として、確認先と閉じる条件を台帳へ残します。

雷サージのような急峻な電流では、低い商用周波接地抵抗だけでなく配線の長さ・曲げ・相互配置も影響します。また、複数棟や離れた設備を接続すると、事故時・雷時に設備間の電位差が生じる可能性があります。そのため、共用可否は一つの抵抗測定結果ではなく、設計仕様、等電位ボンディング、雷保護、通信設備、保護方式を含めて判断します。

安全境界:接地線を外して目視確認することはしません。運転中の切離しや増締めは感電、保護不動作、雷保護喪失につながります。設備固有の停電・検電・放電・短絡接地・誤投入防止・復旧手順に従います。

測定記録|対象・条件・切離し・復旧を分ける

接地抵抗値だけでは、どの極をどの条件で測ったか分かりません。測定方式、補助極配置、天候・地表状態、切離し範囲、並列経路、測定器、前回値、判定基準、復旧確認を対応させます。

段階 記録する事実 別管理する事項
計画 対象極、方式、停止範囲、復旧点 操作票・安全措置
測定 日時、条件、測定器、値、前回差 漏えい電流・連続性
復旧 端子、締結、線番、カバー、確認者 図面改訂・残課題

B種接地線の漏えい電流は接地抵抗とは別の量です。抵抗値が適合していても漏えい電流の増加は別の異常を示し得るため、測定条件と推移を分けます。絶縁監視はIo・Ior・Igrとはで確認してください。

季節、降雨、地表状態、補助極配置が違う測定値は、その差を接地極の劣化だけへ結び付けません。前回と同条件で比較できない場合は条件差を明記し、必要に応じて再測定の条件を決めます。測定中に切り離した導体や試験用接続部は、復旧後の締結、線番、導通、カバー、写真、確認者まで記録して初めて完了とします。

図面と現物の不一致|経路・影響・是正を分ける

接地極番号が図面と現物で違う、接地母線に未記載の導体がある、更新機器の端子位置が変わった場合、どちらかを推測で正解にしません。図面記載、現物表示、導通・測定記録、竣工資料の事実を分けます。

不一致 評価する影響 閉じる条件
対象/端子 未接地、誤接続、測定対象違い 承認図と現物の一致
経路/線サイズ 連続性、事故電流、サージ経路 設計確認と是正記録
極/共用条件 地電位、保護、ノイズ、協議条件 配置・測定・仕様の照合

設備変更|主回路と同時に接地図を改訂する

変圧器、LA、CT・VT、ケーブル、低圧盤、SPDを更新すると、主回路が同じでも端子、線長、接地線サイズ、母線、共用条件が変わることがあります。変更番号で設計図、施工図、接地極配置、試験記録、写真、保全台帳を結びます。

  • 計画中:対象、目的、既設経路、変更範囲、協議先を確定する。
  • 図面照合済み:単線図、接地図、端子台図、配置図の版をそろえる。
  • 施工・測定済み:現物経路、締結、連続性、抵抗値、写真を対応させる。
  • 復旧確認済み:切離し点、カバー、表示、保護機能を確認する。
  • 承認配布済み:旧版を回収し、保安・点検資料へ反映する。

検査全体の安全管理は高圧受電設備の検査方法、巡視・年次点検の指摘状態はキュービクルの点検項目で確認します。

レビュー状態|未確認を「異常なし」に混ぜない

接地系統図は、線が描かれているだけでは完成ではありません。「作図中」「図面間照合済み」「現物照合済み」「測定・復旧確認済み」「承認配布済み」を分けます。停止や掘削が必要で確認できない経路は、推定線ではなく未確認として理由・確認方法・予定を残します。

接地抵抗が合格でも、対象の取り違え、切離し後の復旧漏れ、未記載の共用、LA経路の不連続は別問題です。合否、物理接続、図面一致、復旧状態を別々に閉じてください。

レビュー時は、現物を見た範囲と図面だけで確認した範囲を分けます。埋設部や停止が必要な端子を確認できない場合は「図面上接続」と記し、実在確認済みとはしません。次回停電、掘削記録、竣工写真、施工会社照会など、確認できる機会と証拠を指定して未確認事項を引き継ぎます。

まとめ|事故電流の帰り道を証拠付きで示す

  • 対象、接地線、端子・母線、接地極を一続きで追う。
  • 外箱、B種、LA、CT・VT二次、低圧保護接地を目的別に分ける。
  • 共用・独立・連接は抵抗値だけで決めず、配置と仕様を確認する。
  • 測定値だけでなく条件、切離し範囲、復旧点、確認者を残す。
  • 図面・現物・測定・改訂配布の状態を別々に管理する。

接地系統図の価値は、A種・B種・D種の文字数ではなく、事故電流や雷サージがどの導体と端子を通り、どの接地極へ流れるかを、現物と記録から説明できることにあります。

公式資料・一次情報

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法定値・測定 A・B・C・D種接地
接地抵抗測定
抵抗値、B種計算、測定原理
図面・設備 単線結線図の書き方
高圧受電設備の仕組み
版管理と設備位置
変圧器・計器 変圧器二次側結線
CT・VT・VCT・ZCT
B種と二次側接地
雷・監視 高圧避雷器LA
Io・Ior・Igr
サージ経路と漏えい電流
施工・検査 高圧設備の施工
高圧受電設備の検査
施工条件、測定、復旧
学習順 接地工事ミニテスト
第一種 学習ロードマップ
基礎確認と復習
資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。法令、業界団体、電力会社、機器メーカーの一次資料を照合し、接地種別の暗記と実設備の接地系統設計・測定作業が混ざらないよう編集しています。運営者情報と編集方針

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