受変電設備の実務

変圧器の%Zとは?短絡インピーダンス・短絡電流・電圧変動

結論から言います

変圧器の短絡インピーダンス(%Z、%IZ)は、定格電流を流したときに内部インピーダンスで生じる電圧降下を、定格電圧に対する百分率で表した値です。%Zが小さいほど変圧器直下の短絡電流は大きくなり、%Zが大きいほど負荷時の電圧変動が大きくなりやすいため、「小さいほど高性能」とは決められません。

例えば、三相1,000kVA・420V・%Z=5.0%の変圧器では、二次定格電流は約1,375Aです。上位電源、ケーブル、電動機の影響を無視した変圧器端子の三相短絡電流は、約27.5kAになります。しかし、この値をそのまま低圧盤の推定短絡電流として採用することはできません。

この記事では、6.6kV受電設備の配電用変圧器を中心に、試験成績書の%Zを定義→Ω換算→短絡電流→%R・%X→電圧変動→並列運転・更新仕様の順で読みます。系統全体の基準容量換算は高圧配電線路の電圧降下・%Z・短絡電流、複数台の負荷分担は変圧器の並列運転条件で詳しく解説しています。

安全上の境界

短絡計算は、遮断器・母線・ケーブル・CT・保護整定の安全性へ直結します。この記事の計算例は考え方を示すもので、実設備の設計値や投入可否を決めるものではありません。電力会社の短絡容量、運転系統、機器の試験成績書、回転機寄与、遮断時間を電気主任技術者、設計者、製造者が照合してください。

最初に6つの言葉を分ける

用語 意味 混同しやすい点
短絡インピーダンス%Z 定格電流時の内部電圧降下を百分率表示 効率や励磁インピーダンスではない
インピーダンス電圧 短絡試験で定格電流を流すのに必要な電圧 V表示と%表示を区別する
%R 巻線抵抗による抵抗電圧の百分率 負荷損・基準温度と関係する
%X 漏れリアクタンスによる電圧の百分率 %Zの大部分を占めることが多い
電圧変動率 負荷変化による二次端子電圧の変化率 %Zと同じ値ではない
励磁インピーダンス 鉄心を励磁する無負荷枝の性質 短絡インピーダンスとは別

%Zは短絡試験で何を測っているか

三菱電機のFAQは、片側巻線を短絡し、もう一方から定格周波数の電圧を加え、定格電流が流れたときの印加電圧を定格電圧に対する百分率で表すと説明しています。ダイヘンは、指定された基準巻線温度へ補正して示す点も明記しています。

%Z=5%なら、「定格電圧の5%に相当する電圧で、短絡状態の巻線へ定格電流が流れる内部インピーダンス」と読めます。定格一次電圧6,600Vを基準にすればインピーダンス電圧は330Vです。ただし、実際の短絡試験を現場で再現する話ではありません。銘板、試験成績書、メーカー資料の保証値を使います。

%Z = インピーダンス電圧 ÷ 定格電圧 × 100

%ZをΩへ換算する

三相回路で線間電圧V、三相定格容量Sを使うと、基準インピーダンスはV²/Sです。%Zを100で割った単位法値を掛ければ、その電圧側へ換算したインピーダンスの大きさが求まります。

Zbase = V² ÷ S

|Z| =(%Z ÷ 100)× V² ÷ S

三相1,000kVA・420V・%Z=5.0%なら、Zbase=420²÷1,000,000=0.1764Ω、|Z|=0.05×0.1764=0.00882Ωです。同じ変圧器を一次6,600V側へ換算すると、|Z|=0.05×6,600²÷1,000,000=2.178Ωになります。

一次側と二次側でΩ値は変わりますが、対応する電圧・容量ベースで表した%Zは同じです。一次側のΩ値と二次側の電流を混ぜる、線間電圧と相容量を混ぜる、といった基準の混同を避けます。

変圧器直下の短絡電流を計算する

上位電源を無限大母線とし、変圧器以外のインピーダンスと電動機寄与を無視する単純モデルでは、定格電流に100/%Zを掛けます。三菱電機の遮断器FAQも、この条件の近似式を示しています。

In = S ÷(√3 × V)

Isc ≒ In × 100 ÷ %Z

1,000kVA・420Vでは、In=1,000,000÷(√3×420)=約1,374.6Aです。%Z=5.0%なら、Isc≒1,374.6×20=約27,492A、つまり約27.5kAです。

同じ容量・電圧で%Z=4.0%なら約34.4kA、6.0%なら約22.9kAです。わずか1ポイントの違いでも、遮断器、低圧母線、ケーブル、保護装置が見る事故電流は大きく変わります。

この近似値を実設備の短絡電流と断定しない

変圧器単独近似は、上位電源が十分に強く、変圧器端子で三相対称短絡し、二次ケーブル等を無視した値です。実際の事故点では、次の条件を含めます。

  • 電力会社から示される受電点の短絡容量・電源インピーダンス。
  • 受電ケーブル、変圧器、低圧母線、幹線ケーブルのRとX。
  • 変圧器の単独・並列、母線連絡、非常用発電機の運転状態。
  • 誘導電動機・同期機から短時間流れ込む事故電流。
  • 三相短絡、線間短絡、地絡など故障の種類と接地方式。
  • 温度補正、周波数、タップ、製造許容差、計算規格。

変圧器の%Zだけを使う値は、下流ケーブルのインピーダンスを無視するため大きめになる場合があります。一方で、並列変圧器や大容量電動機の寄与を落とすと小さめになる場合があります。「必ず安全側」とは決めず、事故点と運転状態を固定して総合計算します。

%Rと%Xへ分ける理由

%Zは抵抗分とリアクタンス分を合わせた大きさです。直列機器を正確に合成するときや、電圧変動を計算するときは、%Rと%Xを分けます。

%Z = √(%R² + %X²)

%X = √(%Z² − %R²)

基準温度へ補正された定格負荷損Pkを使える条件では、%Rは概ねPk÷定格容量×100で求められます。例えば1,000kVA、負荷損10kW、%Z=5.0%なら、%R=1.0%、%X=√(5.0²−1.0²)=約4.90%です。

ここで、カタログの「負荷損」がどの温度・タップ・周波数の保証値かを確認します。現場測定した損失と銘板%Zを無条件に組み合わせません。

異なる設備の%Zは基準容量をそろえる

電源、変圧器、ケーブルを%法で合成するには、基準容量と基準電圧をそろえます。同じ基準電圧で容量だけを変える場合は次式です。

%Znew = %Zold × Snew ÷ Sold

1,000kVA自己容量ベースで%Z=5.0%の変圧器を、10MVA基準へ換算すると5.0×10,000÷1,000=50%です。数字が大きくなっても、変圧器の物理的インピーダンスが変化したわけではありません。

また、%Zの「大きさ」をいつでも足せるわけではありません。一般には%Rを直列合成し、%Xを直列合成してから、√(%Rtotal²+%Xtotal²)へ戻します。系統全体の計算手順は高圧配電線路の計算で確認してください。

%Zと電圧変動率は同じではない

短絡インピーダンスが大きいほど、負荷電流による内部電圧降下も大きくなりやすくなります。ただし電圧変動率は、%R、%X、負荷率、力率で変わります。遅れ力率負荷の近似では次の形で考えます。

電圧変動率 ≒ 負荷率 ×(%R cosφ + %X sinφ)

先ほどの%R=1.0%、%X=4.90%で、負荷率100%、力率0.8遅れならsinφ=0.6なので、近似値は1.0×0.8+4.90×0.6=約3.74%です。%Zの5.0%と同じではありません。

進み力率ではリアクタンス分の符号が逆になり、電圧上昇方向になることがあります。進相コンデンサの過補償、軽負荷時の電圧、タップ設定を分けて確認します。

%Zは小さすぎても大きすぎても困る

%Zが小さい
負荷時の内部電圧降下は小さくなりやすい一方、短絡電流が大きくなり、遮断器・母線・ケーブルの必要耐量が増えます。
%Zが大きい
短絡電流は抑えやすい一方、負荷時の電圧変動、電動機始動時の電圧低下、並列時の負荷分担へ影響します。

ダイヘンと三菱電機の解説も、この相反関係を示しています。したがって、変圧器更新時に旧機より低い%Zの高効率機を「電圧降下が小さいから有利」とだけ評価したり、高い%Zを「短絡電流が小さいから安全」とだけ評価したりしません。

カタログの%Zは固定値ではなく範囲の場合がある

メーカーの特性表では、容量・相数・二次電圧・製品系列ごとに短絡インピーダンスが異なり、保証範囲で示されることがあります。日立産機システムの公開特性表でも、容量ごとに短絡インピーダンスの範囲が掲載されています。

概算段階ではカタログ範囲を使えますが、最終計算では対象製造番号の試験成績書・保証値を使います。短絡電流の最大を求める場面では低い側の%Z、電圧変動を厳しく見る場面では高い側の%Zが支配する可能性があります。計算目的に合わせて製造者と採用値を決めます。

タップと基準温度を落とさない

短絡インピーダンスは、指定タップと基準巻線温度に対応する値です。試験成績書に複数タップの値がある場合、現在のタップと将来運用を照合します。異なる基準温度の%Rや負荷損を混ぜると、R/X分離や電圧変動の結果がずれます。

銘板写真だけでは、測定タップ、基準温度、保証範囲、%R・%X、試験年月が分からないことがあります。更新設計では、銘板と試験成績書を同じ製造番号でひも付けます。

並列運転では%ZとR/Xが負荷分担を決める

電圧比と位相が一致し、循環電流を無視できる場合、並列変圧器の負荷分担は内部インピーダンスに反比例します。同容量500kVAの2台が%Z=4%と6%なら、分担比は1/4:1/6=3:2です。

合計1,000kVAを供給しようとすると、4%側は約600kVA、6%側は約400kVAとなり、4%側が先に定格を超えます。さらにR/X比が違えば、有効電力と無効電力の分担も偏ります。並列可否は%Z一項目では決めず、変圧器の並列運転条件の電圧比、極性・角変位、循環電流、温度上昇まで確認します。

変圧器更新時は既設遮断器まで再計算する

同じ1,000kVAでも、既設%Z=6%から新設%Z=4%へ変わると、変圧器単独近似の短絡電流は約22.9kAから約34.4kAへ増えます。容量と二次電圧が同じだから「同等品」とは限りません。

低圧主遮断器の定格遮断電流、母線の短時間耐電流、幹線ケーブルの短絡耐量、CT、OCR・瞬時要素、選択協調を再確認します。VCB側の考え方はVCBの遮断容量、母線側は高圧母線・ブスバーの選び方、保護時間は保護協調曲線の見方が対応します。

励磁突入電流と短絡電流を混同しない

短絡インピーダンスは短絡電流の計算に使いますが、投入直後の励磁突入電流は、投入位相、残留磁束、鉄心飽和、電源インピーダンスなどに左右されます。短絡電流の100/%Zを、そのまま励磁突入電流倍率として使いません。

一方で、電源と変圧器のインピーダンスは投入時の波形にも関わるため、メーカーの突入電流データと保護協調を別に確認します。詳しくは変圧器の励磁突入電流を参照してください。

計算書を作る12ステップ

  1. 単線結線図で事故点と対象変圧器を特定する。
  2. 変圧器の相数、容量、一次・二次電圧、周波数、結線を確認する。
  3. 銘板と試験成績書の製造番号、タップ、基準温度を照合する。
  4. 短絡インピーダンスの保証値・実測値・範囲のどれを使うか決める。
  5. 必要に応じて%R・%Xへ分ける。
  6. Ω法か%法かを決め、全設備の基準容量・基準電圧を統一する。
  7. 電力会社の電源インピーダンスと受電ケーブルを加える。
  8. 運転中の変圧器、母線連絡、発電機、回転機寄与をケース分けする。
  9. 事故点までの母線・ケーブルのRとXを加える。
  10. 三相短絡等、検討する故障種類ごとに電流を求める。
  11. 遮断器、母線、ケーブル、CT、保護整定・遮断時間へ照合する。
  12. 最小・最大短絡電流と採用値、計算から除外した条件を記録する。

仕様書・台帳へ残す24項目

設備番号、製造者、形式、製造番号、製造年、相数、定格容量、一次定格電圧、二次定格電圧、周波数、結線・角変位、定格タップ、使用タップ、短絡インピーダンス、保証範囲、基準温度、負荷損、%R、%X、試験成績書番号、単独・並列運転条件、計算最大短絡電流、計算最小短絡電流、保護・遮断器照合結果を残します。

更新前後を一表にし、容量と電圧だけでなく%Z、R/X、突入電流、損失、温度、結線、タップを比較します。短絡計算書、保護協調図、遮断器仕様書を同じ改修番号で管理すると、次回更新時に判断を再現できます。

よくある12の誤解

  • %Zは変圧器の効率を表す。
  • %Zが小さい変圧器ほど、あらゆる面で高性能である。
  • %Z=5%なら、通常運転で必ず5%電圧降下する。
  • 電圧変動率は常に%Zと同じ値になる。
  • 変圧器直下短絡電流は、どの事故点でも同じである。
  • 変圧器単独近似は必ず安全側になる。
  • 異なる基準容量の%Zをそのまま足せる。
  • %Zの大きさだけを、R/Xを見ずに常に足せる。
  • 一次側と二次側のΩ値は同じである。
  • 同容量・同電圧なら、更新後も短絡電流は変わらない。
  • 並列運転では容量比だけで負荷を分担する。
  • 励磁突入電流は定格電流×100/%Zで求められる。

理解度チェック|オリジナル3問

問1:三相1,000kVA・420V・%Z=5.0%の変圧器について、変圧器以外のインピーダンスと電動機寄与を無視した直下三相短絡電流の近似値はどれですか。
ア.約6.9kA イ.約13.7kA ウ.約27.5kA エ.約55.0kA

解答と理由を見る

正解:ウ。定格電流は1,000,000÷(√3×420)=約1,374.6A、短絡電流は1,374.6×100÷5=約27,492Aです。実設備では他のインピーダンスと電源寄与を含めます。

問2:自己容量1,000kVAで%Z=5.0%の変圧器を、同じ電圧の10MVA基準へ換算すると何%ですか。
ア.0.5% イ.5% ウ.50% エ.500%

解答と理由を見る

正解:ウ。5.0×10,000÷1,000=50%です。基準容量が変わっただけで、変圧器の物理的なΩ値は変わりません。

問3:同容量500kVAの変圧器A(%Z=4%)とB(%Z=6%)を、電圧比・位相・R/Xが一致する条件で並列運転します。合計1,000kVA負荷の分担として近いものはどれですか。
ア.A 500・B 500kVA イ.A 600・B 400kVA ウ.A 400・B 600kVA エ.A 750・B 250kVA

解答と理由を見る

正解:イ。分担はインピーダンスに反比例し、1/4:1/6=3:2です。Aは約600kVAとなり、低%Z側が先に定格を超えます。

まとめ

  • %Zは、定格電流時の内部インピーダンス電圧を定格電圧に対する百分率で表す。
  • 変圧器単独近似ではIsc≒In×100/%Zだが、実設備は電源・線路・並列機器・回転機寄与を含める。
  • %Zは%Rと%Xへ分け、同一基準へ換算して合成する。
  • %Zが小さいと短絡電流、大きいと電圧変動が厳しくなりやすい。
  • 更新・並列運転では、試験成績書のタップ、基準温度、R/X、保証範囲まで照合する。

電圧変動率を見込んでタップを選ぶ

変圧器のタップ切替で、%Zによる電圧変動を織り込んだタップ選定の手順と、変更後に測る項目を確認できます。

公式資料・一次情報

この記事の作成方針

内容は2026年8月17日に三菱電機、ダイヘン、日立産機システム、日本電気技術者協会の公式・一次11資料へ照合し、数値例を再計算しました。メーカーごとの保証値・基準温度・適用規格を一律化せず、変圧器単独近似と実設備の総合短絡計算を分離しています。確認問題は当サイトのオリジナルです。変圧器、遮断器、教材等のアフィリエイトリンクは掲載していません。

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資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。法令・規格・メーカー一次資料を基に、試験学習と設備管理で混同しやすい境界を整理しています。運営者情報を詳しく見る



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