受変電設備の基礎

変圧器の%Zと高圧配電線路の計算|短絡電流・電圧降下・並行運転の条件

この記事では、試験成績書の%Zを読み、Ωへ換算し、電源から故障点までを同じ基準へそろえて合成し、短絡電流・電圧降下・電圧変動率と、並行運転の負荷の分担を計算できるようになります。判断軸は2つです。①いま求めているのは定常時(電圧降下・損失)か事故時(短絡電流)か、②その計算の基準容量・基準電圧・故障点はどこか。この2つを先に固定すると、%Zを見つけた順に足していく誤りを避けられます。

%Zは、定格電流を流したときに変圧器内部のインピーダンスで生じる電圧降下を、定格電圧に対する百分率で表した値です。%Zが小さいほど変圧器直下の短絡電流は大きくなり、%Zが大きいほど負荷時の電圧変動が大きくなりやすいため、「小さいほど高性能」とは決められません。

計算例は実設備の採用値ではない

短絡計算は、遮断器・母線・ケーブル・CT・保護整定の安全性へ直結します。この記事の計算例は考え方を示すもので、実設備の設計値や投入可否を決めるものではありません。電力会社から示される短絡容量、運転系統、機器の試験成績書、回転機寄与、遮断時間を、電気主任技術者・設計者・製造者が照合してください。

最初に6つの言葉を分ける

用語 意味 混同しやすい点
短絡インピーダンス%Z 定格電流時の内部電圧降下を百分率表示 効率や励磁インピーダンスではない
インピーダンス電圧 短絡試験で定格電流を流すのに必要な電圧 V表示と%表示を区別する
%R 巻線抵抗による抵抗電圧の百分率 負荷損・基準温度と関係する
%X 漏れリアクタンスによる電圧の百分率 %Zの大部分を占めることが多い
電圧変動率 負荷変化による二次端子電圧の変化率 %Zと同じ値ではない
励磁インピーダンス 鉄心を励磁する無負荷枝の性質 短絡インピーダンスとは別

求める量を4つに分けてから式を選ぶ

求める量 主に使う条件 結果を何へ使うか
電圧降下 負荷電流、力率、線路R・X、こう長 負荷端電圧、電圧調整、電線選定
電力損失 線電流、1線の全抵抗 効率、温度、損失低減
短絡電流 故障点、電源、全経路のインピーダンス 遮断能力、耐電流、保護協調
地絡電流 接地方式、対地静電容量、零相回路など GR・DGR、地絡保護

この記事の短絡計算は、3相を対称に扱える三相対称短絡です。1線地絡や線間短絡では故障回路が異なり、同じ式だけでは求められません。

%Zは短絡試験で何を測っているか

三菱電機のFAQは、片側巻線を短絡し、もう一方から定格周波数の電圧を加え、定格電流が流れたときの印加電圧を定格電圧に対する百分率で表すと説明しています。ダイヘンは、指定された基準巻線温度へ補正して示す点も明記しています。

%Z=5%なら、「定格電圧の5%に相当する電圧で、短絡状態の巻線へ定格電流が流れる内部インピーダンス」と読めます。定格一次電圧6,600Vを基準にすればインピーダンス電圧は330Vです。ただし、実際の短絡試験を現場で再現する話ではありません。銘板、試験成績書、メーカー資料の保証値を使います。

%Z = インピーダンス電圧 ÷ 定格電圧 × 100

%ZをΩへ換算する

三相回路で線間電圧V、三相定格容量Sを使うと、基準インピーダンスはV²/Sです。%Zを100で割った単位法値を掛ければ、その電圧側へ換算したインピーダンスの大きさが求まります。

Zbase = V² ÷ S

|Z| =(%Z ÷ 100)× V² ÷ S

三相1,000kVA・420V・%Z=5.0%なら、Zbase=420²÷1,000,000=0.1764Ω、|Z|=0.05×0.1764=0.00882Ωです。同じ変圧器を一次6,600V側へ換算すると、|Z|=0.05×6,600²÷1,000,000=2.178Ωになります。

一次側と二次側でΩ値は変わりますが、対応する電圧・容量ベースで表した%Zは同じです。一次側のΩ値と二次側の電流を混ぜる、線間電圧と相容量を混ぜる、といった基準の混同を避けます。

変圧器直下の短絡電流を計算する

上位電源を無限大母線とし、変圧器以外のインピーダンスと電動機寄与を無視する単純モデルでは、定格電流に100/%Zを掛けます。三菱電機の遮断器FAQも、この条件の近似式を示しています。

In = S ÷(√3 × V)

Isc ≒ In × 100 ÷ %Z

1,000kVA・420Vでは、In=1,000,000÷(√3×420)=約1,374.6Aです。%Z=5.0%なら、Isc≒1,374.6×20=約27,492A、つまり約27.5kAです。

同じ容量・電圧で%Z=4.0%なら約34.4kA、6.0%なら約22.9kAです。わずか1ポイントの違いでも、遮断器、低圧母線、ケーブル、保護装置が見る事故電流は大きく変わります。

この近似値を実設備の短絡電流と断定しない

変圧器単独近似は、上位電源が十分に強く、変圧器端子で三相対称短絡し、二次ケーブル等を無視した値です。実際の事故点では、次の条件を含めます。

  • 電力会社から示される受電点の短絡容量・電源インピーダンス。
  • 受電ケーブル、変圧器、低圧母線、幹線ケーブルのRとX。
  • 変圧器の単独・並列、母線連絡、非常用発電機の運転状態。
  • 誘導電動機・同期機から短時間流れ込む事故電流。
  • 三相短絡、線間短絡、地絡など故障の種類と接地方式。
  • 温度補正、周波数、タップ、製造許容差、計算規格。

変圧器の%Zだけを使う値は、下流ケーブルのインピーダンスを無視するため大きめになる場合があります。一方で、並列変圧器や大容量電動機の寄与を落とすと小さめになる場合があります。「必ず安全側」とは決めず、事故点と運転状態を固定して総合計算します。

%Rと%Xへ分ける理由

%Zは抵抗分とリアクタンス分を合わせた大きさです。直列機器を正確に合成するときや、電圧変動を計算するときは、%Rと%Xを分けます。

%Z = √(%R² + %X²)

%X = √(%Z² − %R²)

基準温度へ補正された定格負荷損Pkを使える条件では、%Rは概ねPk÷定格容量×100で求められます。例えば1,000kVA、負荷損10kW、%Z=5.0%なら、%R=1.0%、%X=√(5.0²−1.0²)=約4.90%です。

ここで、カタログの「負荷損」がどの温度・タップ・周波数の保証値かを確認します。現場測定した損失と銘板%Zを無条件に組み合わせません。

%Zは「基準に対するZの大きさ」なので基準をそろえる

基準容量Sbase、基準線間電圧Vbaseの三相回路では、基準インピーダンスと%インピーダンスを次のように表せます。

Zbase=Vbase2/Sbase 、 %Z=|Z|/Zbase×100

変圧器の短絡インピーダンスは、二次側を短絡し、定格周波数で定格電流を流すため一次側へ加える電圧を、一次定格電圧に対する百分率で表した値です。効率や力率ではなく、電源から事故点までの電流を制限する内部インピーダンスの尺度です。

基準容量換算

同じ基準電圧で容量だけを変えるとき、%Zは基準容量に比例します。

基準容量だけを変える換算

%Znew=%Zold×Snew/Sold

たとえば25MVA基準で15%なら、10MVA基準では15×10/25=6%です。2026年度上期の公式出題例も、異なる基準容量を10MVAへそろえ、R/X比が同じという指定条件の下で合成する問題です。

基準電圧も変える一般式は、%Znew=%Zold×(Snew/Sold)×(Vold/Vnew)²です。変圧器の一次側と二次側をまたぐときは、変圧比と選んだ電圧基準を対応させます。

%Zの大きさを常に足してはいけない

直列経路でも、%Zの大きさを単純加算できるのは、同一基準でR/X比が同じ、または問題がリアクタンスだけを扱うなどの条件がある場合です。一般には%Rと%Xを別々に合成し、次のように大きさへ戻します。

%Ztotal=√(%Rtotal2+%Xtotal2)

並列経路は直列の足し算ではなく、並列インピーダンスとして合成します。まず単線結線図で、故障点へ電流を供給する経路を拾うことが先です。

自己容量ベースの%Zを共通基準へ移す

電源、変圧器、ケーブルを%法で合成するには、基準容量と基準電圧をそろえます。同じ基準電圧で容量だけを変える場合は次式です。

%Znew = %Zold × Snew ÷ Sold

1,000kVA自己容量ベースで%Z=5.0%の変圧器を、10MVA基準へ換算すると5.0×10,000÷1,000=50%です。数字が大きくなっても、変圧器の物理的インピーダンスが変化したわけではありません。

また、%Zの「大きさ」をいつでも足せるわけではありません。一般には%Rを直列合成し、%Xを直列合成してから、√(%Rtotal²+%Xtotal²)へ戻します。電源・線路・変圧器を通した合成手順はこの記事の「合成%Zから短絡容量・短絡電流を求める」で確認してください。

合成%Zから短絡容量・短絡電流を求める

段階 式 単位・条件
短絡容量 Ssc=Sbase×100/%Ztotal MVA同士など、容量単位をそろえる
三相短絡電流 Isc=Ssc/(√3V) MVA÷kVならkA、Vは故障点の線間電圧
変圧器単独近似 Isc≒In×100/%Z 上位・線路を無視した端子三相短絡

計算例:10MVA基準、合成%Z=8%、6.6kV

  1. 短絡容量:Ssc=10×100/8=125MVA
  2. 三相短絡電流:Isc=125/(√3×6.6)≒10.94kA

%Zが小さいほど短絡容量・短絡電流は大きくなります。故障点までに直列ケーブルのインピーダンスを加えれば、一般に短絡電流は小さくなります。一方、変圧器を並列運転したり、発電機・運転中モーターから事故電流が供給されたりすると、大きくなる場合があります。

図1:電源から故障点までを一列に並べ、同じ基準で合成する

① 電力会社の電源
受電点の短絡容量から電源側%Zを求める。基準容量Sbaseをここで決める
↓
② 受電ケーブル・配電線
R・Xを長さから求め、選んだSbase・Vbaseの%R・%Xへ換算する
↓
③ 変圧器
試験成績書の%Zを自己容量ベースからSbaseベースへ換算する
↓
④ 故障点
①②③を同じ基準へそろえ、%Rどうし・%Xどうしで直列合成し、√(%R²+%X²)で%Ztotalへ戻す

図1が示すのは、足し算ができるのは同じ基準へそろえた後だけという点です。①は受電点、③は自己容量と、もともとの基準が違います。また④で分かるとおり、直列でも「%Zの大きさ」をそのまま加算できるのはR/X比が同じなどの条件があるときだけで、一般には%Rと%Xを別々に足します。故障点が③より下流のケーブル端なら、そのケーブル分も②と同じ方法で加えます。

高圧配電線路の電圧降下は√3I(R cosφ+X sinφ)で見る

平衡三相3線式で、受電端電圧と送電端電圧の位相差が小さいとする近似では、遅れ力率負荷の線間電圧降下は次式で表せます。

遅れ力率の三相電圧降下

ΔV≒√3I(R cosφ+X sinφ)[V]

Iは線電流、RとXは電源から負荷までの電線1線当たりの全抵抗・全リアクタンスです。r[Ω/km]、x[Ω/km]、こう長L[km]で与えられたら、R=rL、X=xLとしてから代入します。

進み力率負荷では、同じ電圧・電流の向きを基準にした近似式のリアクタンス項がR cosφ-X sinφになります。条件によって電圧降下が小さくなり、負の値なら受電端側の電圧が上昇することを示します。「Rにはcos、Xにはsin」だけでなく、遅れ・進みの符号も確認します。

計算例:6.6kV、50A、2km、遅れ力率0.8

1線当たりr=0.3Ω/km、x=0.4Ω/kmなら、R=0.6Ω、X=0.8Ωです。cosφ=0.8、sinφ=0.6として計算します。

  1. インピーダンス成分:0.6×0.8+0.8×0.6=0.96Ω
  2. 電圧降下:ΔV≒√3×50×0.96≒83.1V
  3. 6,600Vを基準にした割合:83.1/6,600×100≒1.26%

電圧降下率の分母は、問題が指定する送電端・受電端・公称電圧のどれかを確認します。この記事の1.26%は、指定した6,600Vを基準にした比較値です。すべての高圧線路に一律の許容率を当てはめるものではありません。

電力損失はリアクタンス項ではなくI²R

平衡三相3線式で、電線1線当たりの全抵抗をRとすると、3線合計の銅損は次のとおりです。

三相線路の抵抗損

Ploss=3I2R[W]

上の例では3×50²×0.6=4,500Wです。リアクタンスXは電圧降下や無効電力に関係しますが、それ自体を3I²Xとして有効電力損失へ加えません。

同じ有効電力と力率を送る条件なら、電圧を2倍にすると電流は2分の1となり、同じ抵抗の線路損失は4分の1になります。ただし、実際の電線選定は損失だけでなく、絶縁、許容電流、短絡時熱強度、電圧降下、機械強度、施設条件を合わせて行います。

%Zと電圧変動率は同じではない

短絡インピーダンスが大きいほど、負荷電流による内部電圧降下も大きくなりやすくなります。ただし電圧変動率は、%R、%X、負荷率、力率で変わります。遅れ力率負荷の近似では次の形で考えます。

電圧変動率 ≒ 負荷率 ×(%R cosφ + %X sinφ)

先ほどの%R=1.0%、%X=4.90%で、負荷率100%、力率0.8遅れならsinφ=0.6なので、近似値は1.0×0.8+4.90×0.6=約3.74%です。%Zの5.0%と同じではありません。

進み力率ではリアクタンス分の符号が逆になり、電圧上昇方向になることがあります。進相コンデンサの過補償、軽負荷時の電圧、タップ設定を分けて確認します。

%Zは小さすぎても大きすぎても困る

%Zが小さい
負荷時の内部電圧降下は小さくなりやすい一方、短絡電流が大きくなり、遮断器・母線・ケーブルの必要耐量が増えます。
%Zが大きい
短絡電流は抑えやすい一方、負荷時の電圧変動、電動機始動時の電圧低下、並列時の負荷分担へ影響します。

ダイヘンと三菱電機の解説も、この相反関係を示しています。したがって、%Zが低いことを「電圧降下が小さいから有利」とだけ見たり、高いことを「短絡電流が小さいから安全」とだけ見たりはできません。

図2:%Zを動かすと、短絡電流と電圧変動が逆へ振れる

%Z 4%短絡電流は大きい ← → 負荷時の電圧降下は小さい1,000kVA・420Vで約34.4kA
%Z 5%基準にした例同条件で約27.5kA
%Z 6%短絡電流は小さい ← → 負荷時の電圧降下は大きい同条件で約22.9kA

図2の3行は同じ容量・同じ二次電圧です。%Zを1ポイント動かすだけで、遮断器・低圧母線・ケーブル・保護装置が見る事故電流が数kA変わります。右列の値はIsc≒In×100÷%Zで計算しています(In≒1,374.6A)。どちらの端が有利かは、遮断器の定格遮断電流に余裕があるか、電動機始動時の電圧低下が許容できるかで決まります。

カタログの%Zは固定値ではなく範囲の場合がある

メーカーの特性表では、容量・相数・二次電圧・製品系列ごとに短絡インピーダンスが異なり、保証範囲で示されることがあります。日立産機システムの公開特性表でも、容量ごとに短絡インピーダンスの範囲が掲載されています。

範囲で示されているときは、短絡電流の最大を求めるなら低い側の%Z、電圧変動を厳しく見るなら高い側の%Zが、厳しい条件になります。

タップと基準温度を落とさない

短絡インピーダンスは、指定タップと基準巻線温度に対応する値です。試験成績書に複数タップの値がある場合、現在のタップと将来運用を照合します。異なる基準温度の%Rや負荷損を混ぜると、R/X分離や電圧変動の結果がずれます。

銘板写真だけでは、測定タップ、基準温度、保証範囲、%R・%X、試験年月が分からないことがあります。

変圧器の並行運転は、極性・変圧比・%Zがそろって成り立つ

2台以上の変圧器の一次側どうし、二次側どうしをつないで、1つの負荷へ電気を送る使い方を、並行運転(並列運転)といいます。条件は、①つないだだけで流れる循環電流を出さないための条件と、②負荷を容量に見合って分け合うための条件の、2つに分けられます。

図3:並行運転の2台と、変圧比が違うときの循環電流

条件がそろっている
一次側の母線二次側の母線AB負荷①①②

①AとBが同じ向きに電流を送る。②2つを合わせた電流が負荷へ届く。

変圧比が違う
一次側の母線二次側の母線AB③循環電流負荷なし

③二次電圧の高いAから低いBへ、負荷と関係なく循環電流が流れる。

図3の①のように、条件がそろった2台は同じ向きに電流を送り、図3の②の負荷へ届けます。二次電圧に差があると、図3の③のように、電圧の高い変圧器から低い変圧器へ、負荷と関係なく循環電流が流れます。循環電流は巻線を温めるだけで、そのぶん負荷へ送れる電流が減ります。

条件 そろっていないと起きること 対象
極性が合っている 2台の電圧が足し合わさり、短絡と同じ大きな循環電流が流れる 単相
変圧比(一次・二次の定格電圧)が等しい 二次電圧の差で、負荷がなくても循環電流が流れる 単相・三相
%Z(インピーダンス電圧)が等しい 分担が容量の比からずれ、%Zの小さいほうが先に定格を超える 単相・三相
抵抗とリアクタンスの比が等しい 2台の電流の位相がずれ、同じ負荷でも各変圧器の電流が増える 単相・三相
相回転と角変位が等しい 二次側の電圧の位相がずれ、循環電流が流れる 三相

試験では、同一容量の単相変圧器を並行運転するための条件として必要でないものが問われ、「各変圧器の効率が等しいこと」が正解でした。極性を一致させて結線すること、変圧比が等しいこと、インピーダンス電圧が等しいことは、必要な条件です。

変圧比に差があると、負荷がなくても循環電流が流れる

同じ容量で抵抗とリアクタンスの比(R/X比)も等しい2台について、共通の基準電圧で表した%Zを使い、接続線のインピーダンスを無視すると、循環電流は次の式で近似できます。

循環電流〔定格電流に対する%〕= 電圧の差〔%〕× 100 ÷(%ZA + %ZB)

%Zがどちらも5%で、二次電圧に1%の差があれば、1 × 100 ÷(5 + 5)= 10%です。わずか1%の差でも、定格電流の10%が負荷と関係なく流れ続けます。2台の%Zの和で割るのは、循環電流を妨げるものが、2台の内部インピーダンスしかないからです。

極性を逆につなぐと、2台の電圧は打ち消し合わずに足し合わさるので、差は200%になります。式の上では 200 × 100 ÷ 10 = 2,000%、定格電流の20倍で、短絡と同じ状態です。

三相は、相回転と角変位もそろえる

三相変圧器は、結線によって一次と二次の電圧の位相がずれます。このずれが角変位(位相変位)です。日本電気技術者協会の表では、Y-YとΔ-Δは0度、Y-Δは二次が30度遅れ、Δ-Yは二次が30度進みです。角変位が違う変圧器を並べると、二次電圧の大きさが同じでも位相がずれているので、差の電圧が生じて循環電流が流れます。

三菱電機のFAQは、並行運転できる結線の組み合わせとして、同じ結線どうしのほかにΔ-ΔとY-Yを挙げています。どちらも角変位が0度だからです。Δ-ΔとΔ-Yは角変位が30度違うので、組み合わせに入っていません。Δ-YとY-Δは、端子のつなぎ方に条件が付いた組み合わせです。

負荷の分担は「定格容量 ÷ %Z」の比になる

変圧比と極性・角変位がそろい、R/X比も等しく、循環電流を無視できるとき、負荷の分担は内部インピーダンスに反比例します。同容量500kVAの2台が%Z=4%と6%なら、分担比は1/4:1/6=3:2です。合計1,000kVAを供給しようとすると、4%側は600kVA、6%側は400kVAとなり、4%側が先に定格を超えます。

容量が違うときは、「定格容量 ÷ %Z」の比で分かれます。自己容量ベースの%Zを同じ基準容量へ換算すると、容量の大きい変圧器ほど値が小さくなるからです。変圧器A(500kVA・%Z=5%)とB(300kVA・%Z=4%)なら、500 ÷ 5 = 100 と 300 ÷ 4 = 75 で、分担比は4:3です。700kVAの負荷では、Aが400kVA、Bが300kVAで、Bが定格ちょうどになります。2台の定格の合計は800kVAですが、700kVAを超えるとBが定格を超えます。%Zがそろっていれば、分担は容量の比になり、800kVAまで使えます。

%Zが変わると、照らし合わせる短絡電流も変わる

同じ1,000kVA・420Vの変圧器でも、変圧器単独近似の短絡電流は、%Z=6%なら約22.9kA、%Z=4%なら約34.4kAです。容量と二次電圧が同じでも、%Zが小さい変圧器の下流では、遮断器が遮断する電流が大きくなります。

VCBの遮断容量の求め方はVCB・DS・LBS・PASの違い、保護協調曲線の読み方は保護継電器の種類と保護協調が対応します。

計算値は定格電流ではなく定格遮断電流へ照合する

短絡電流を求める目的は、数字を出すことではなく、設備が事故電流を安全に遮断・通過できるか確認することです。

確認項目 意味 混同しない点
定格電流 通常運転で連続して流せる電流の尺度 事故電流を切れる値ではない
定格遮断電流 規定条件で遮断できる短絡電流の尺度 設置点の電圧・推定短絡電流と照合
耐電流・保護協調 母線・CT・ケーブル等が遮断まで耐え、必要区間を選択遮断する 遮断器1台のkA値だけで完了しない

CB形の基本では、CTが電流を検出用に変成し、過電流継電器OCRが判定し、VCBが回路を開きます。機器の役割は高圧受電設備の仕組み、動作試験は高圧受電設備の検査方法につなげて確認してください。

励磁突入電流と短絡電流を混同しない

短絡インピーダンスは短絡電流の計算に使いますが、投入直後の励磁突入電流は、投入位相、残留磁束、鉄心飽和、電源インピーダンスなどに左右されます。短絡電流の100/%Zを、そのまま励磁突入電流倍率として使いません。

励磁突入電流で限流ヒューズが溶けない理由は、PF・S形とCB形の違いの図5で扱っています。

計算の順番を6段階で固定する

  1. 定常か事故かを分ける:電圧降下・損失か、短絡電流か。
  2. 計算点を決める:負荷端または故障点を単線結線図へ印す。
  3. 経路を拾う:電源から計算点までのR・X、または各%Zを並べる。
  4. 基準をそろえる:容量、電圧、一次・二次側、Ω・%・kAの単位を統一する。
  5. 条件に沿って合成する:遅れ/進み、直列/並列、R/X比の指定を確認する。
  6. 設備へ戻す:電圧、損失、遮断能力、耐電流、保護協調の可否を確認する。

自己チェック|基準・故障点・係数を取り違えない

問6・9の並行運転は、変圧比・極性・相回転・角変位が適合し、R/X比が等しく、循環電流と接続線のインピーダンスを無視できるものとします。問10もR/X比は等しく、%Zと電圧差は共通の基準電圧で表し、電圧差以外の並行条件を満たすものとします。

問1:三相1,000kVA・420V・%Z=5.0%。変圧器以外のインピーダンスと電動機寄与を無視した直下三相短絡電流は?

解答・解説:定格電流In=1,000,000VA÷(√3×420V)≒1,374.6A。Isc≒In×100÷%Z=1,374.6A×100÷5.0≒27,492A、約27.5kAです。100÷%Zを掛けるのは、%Zが「定格電流を流すのに必要な電圧の割合」だからで、定格電圧をかければその逆数倍の電流が流れると読めます。

問2:自己容量1,000kVAで%Z=5.0%の変圧器を、同じ電圧の10MVA基準へ換算すると何%ですか。

解答・解説:%Znew=%Zold×Snew÷Sold=5.0%×10,000kVA÷1,000kVA=50%です。数字が10倍になっても、変圧器の物理的なΩ値は変わっていません。基準が変わっただけです。

問3:同じ基準電圧で、25MVA基準の%Zが15%です。10MVA基準では何%ですか。

解答・解説:%Znew=15%×10MVA÷25MVA=6%です。基準容量の違う%Zをそろえずに合成すると、短絡電流が数倍ずれます。

問4:平衡三相3線式で、I=100A、1線当たりR=0.4Ω、X=0.3Ω、遅れ力率0.8。電圧降下の近似値は?

解答・解説:cosφ=0.8ならsinφ=0.6です。ΔV≒√3×100A×(0.4Ω×0.8+0.3Ω×0.6)=√3×100A×0.5Ω≒86.6Vです。遅れ力率ではR cosφとX sinφを足します。進み力率の近似ではリアクタンス項の符号が逆になります。

問5:10MVA基準で合成%Z=8%、故障点の線間電圧6.6kV。短絡容量と三相短絡電流は?

解答・解説:Ssc=Sbase×100÷%Ztotal=10MVA×100÷8=125MVA。Isc=Ssc÷(√3×V)=125MVA÷(√3×6.6kV)≒10.94kAです。MVA÷kVでkAになるよう単位をそろえてから割ります。

問6:同容量500kVAの変圧器A(%Z=4%)とB(%Z=6%)を並列運転し、合計1,000kVAを供給します。分担はどうなりますか。

解答・解説:負荷分担は内部インピーダンスに反比例するので、1/4:1/6=3:2です。Aが約600kVA、Bが約400kVAとなり、%Zの小さいA側が先に定格を超えます。容量比だけでは決まりません。

問7:配電用変電所の変圧器の%Zが20MVA基準で10%、変電所より電源側が10MVA基準で2.5%、高圧配電線が10MVA基準で1.5%です。抵抗とリアクタンスの比はどれも同じとして、受電点から電源側を見た合成%Zを10MVA基準で求めてください。

解答・解説:まず変圧器を10MVA基準へ換算します。10%×10MVA÷20MVA=5%です。3つは直列で、抵抗とリアクタンスの比が同じなので、大きさをそのまま足せます。2.5%+5%+1.5%=9%です。換算せずに足した14%は、基準の違う値を混ぜた誤りです。

問8:6.6kVの受電点の短絡容量が100MVAです。三相短絡電流を求め、定格遮断電流8kAの遮断器と12.5kAの遮断器のどちらなら遮断できるかを答えてください。定格電流はどちらも600Aです。

解答・解説:Isc=100MVA÷(√3×6.6kV)≒8.75kAです。8kAの遮断器では足りず、12.5kAの遮断器なら遮断できます。比べる相手は定格遮断電流です。定格電流の600Aは通常の運転で連続して流せる電流なので、この判定には使いません。

問9:変圧器A(500kVA・%Z=5%)とB(300kVA・%Z=4%)を並行運転します。どちらも定格を超えない負荷は、最大で何kVAですか。

解答・解説:分担は「定格容量÷%Z」の比なので、500÷5:300÷4=100:75=4:3です。Bが定格の300kVAになるとき、Aは400kVAで、合計700kVAです。定格の合計の800kVAまでは使えません。%Zの小さいBが、容量のわりに多く分担するからです。

問10:同じ容量の変圧器2台(%Zはどちらも4%)を並行運転します。二次電圧に2%の差があるとき、負荷がなくても流れる循環電流は、定格電流の何%ですか。

解答・解説:循環電流=2×100÷(4+4)=25%です。循環電流は2台の巻線を続けて通るので、片方の4%ではなく、2台の%Zの和で割ります。片方だけで割った50%は誤りです。

メーカー・技術者団体・試験センターの一次資料

更新履歴:2026年10月25日 図1の合成対象に上位電源を含め、循環電流と負荷分担の計算にR/X比などの前提を加えました。

並行運転の条件の資料(ダイヘン、三菱電機FA FAQ「変圧器2台の並列運転」、東芝産業機器システム、日本電気技術者協会の2講座、試験センターの令和7年度下期の問題)は2026年10月4日に、記載内容を確認して本文の式・数値と照合しました。そのほかの資料は、2026年8月17日(試験センターの出題例は同年7月)に記載内容を確認し、2026年10月4日にリンク先が開けることを確かめています。

更新履歴:2026年10月4日 並行運転の条件(極性・変圧比・%Z・相回転と角変位)の節と図3、自己チェック4問を加えた

次に読む記事

次は力率改善と高圧進相コンデンサへ進んでください。進み力率と電圧の関係の続きとして、コンデンサの容量の計算を扱っています。遮断器の遮断容量の求め方はVCB・DS・LBS・PASの違い、短絡を検出して遮断器を動作させるしくみは保護継電器の種類と保護協調で確認できます。

この記事を書いた人:資格太郎

電気工事士の独学合格を目指して学習中。公式資料と法令を確かめ、学習で説明できる範囲と実設備の作業を区別して編集しています。

運営者情報と編集方針

※当サイトの図は学習用に自作した模式図で、実際の機器・器具とは外観や寸法が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。

内容の誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。正確な情報をお届けできるよう、随時修正してまいります。

-受変電設備の基礎

← 戻る