受変電設備の実務

保護継電器試験の見方|OCR・DGRの動作値・時間・位相特性

結論から言います

保護継電器試験の成績表は、①何を入力したか、②どの要素が何値・何秒で動いたか、③どこまで連動させたか、④何を基準に合否を決めたかの4点で読みます。「OCR試験 合格」だけでは、CT、継電器、制御回路、VCBまで保護の鎖がつながっているか判断できません。

OCR(過電流継電器)なら動作電流と限時・瞬時の動作時間、DGR(地絡方向継電器)なら零相電流Io、零相電圧Vo、位相方向、動作時間を分けます。さらに単体試験と遮断器連動試験は確認範囲が違います。

この記事では、6.6kV受電設備の点検報告書を読む設備管理者と、第一種電気工事士の学習者を主な対象に、試験条件→実測値→判定→連動範囲を一続きで解説します。整定値を設計する記事はOCR整定計算の考え方、継電器の種類を整理する記事は保護継電器の種類と役割です。

この記事は実設備の試験手順書ではありません

高圧設備の停電、CT・VT・ZCT・ZPD回路への試験入力、トリップ回路の開放・短絡、VCB連動は、感電、アーク、CT二次開放、誤遮断、誤送電、機器損傷につながります。実作業は電気主任技術者の保安監督、保安規程、単線・展開接続図、メーカー取扱説明書、試験器説明書に従い、必要な教育を受けた者が行ってください。

この記事の役割|検査総論・整定計算・継電器種類と分ける

高圧受電設備の検査方法は、接地抵抗、絶縁抵抗、絶縁耐力、継電器試験を並べて竣工・点検全体を理解する記事です。保護継電器の種類と役割はOCR・GR・DGRの役割、整定表、点検記録の入口を扱います。

この記事では、その中の保護継電器試験だけを掘り下げます。試験器のつまみ操作や実配線ではなく、成績表から次の疑問へ答えられることを目標にします。

  • 継電器単体だけか、CT・ZCT・ZPDを含むか、遮断器まで連動したか
  • 整定値、試験入力、実測値、許容範囲が同じ条件で比較されているか
  • OCRの限時・瞬時、DGRのIo・Vo・位相・時間を取り違えていないか
  • 前年からの変化、試験後の復帰、図面・整定表の改訂が残っているか

保護継電器試験の目的|「リレーが鳴るか」ではない

保護継電器は、異常を検出して判断し、出力接点から遮断器へ開放指令を送ります。したがって、試験の目的は単なる接点動作ではなく、想定した異常に対して、決めた境界と時間で事故区間を切り離せる状態かを確認することです。

事故を火災報知設備に例えると、CT・ZCT・VT・ZPDはセンサ、保護継電器は判断器、トリップ回路とVCBは消火区画を閉じる装置です。判断器だけを試しても、センサの極性が反対、配線が断線、トリップ電源が喪失、VCB機構が固着していれば保護は完結しません。

入力
CT・ZCT
VT・ZPD
判断
OCR・DGR
整定・位相
出力
接点・86
トリップ回路
結果
VCB開放
警報・表示

4つの試験範囲|外観・単体・一次系・連動を分ける

範囲 主に確認するもの 確認できない代表例
外観・自己監視 表示、端子、整定、電源、自己診断 動作値・動作時間
単体特性 継電器入力端子から出力接点まで CT・ZCT一次側、VCB機構
変成器を含む CT・ZCT等の変成、極性、配線を含む入力経路 含めなかった出力・遮断経路
遮断器連動 継電器出力、制御電源、トリップ、VCB、表示 試験入力より上流の未試験部分

「総合試験」「連動試験」という名称だけで範囲を推測しません。試験入力点、時間計測の開始点・停止点、開放させた機器を成績表・試験要領書で確認します。同じ「動作時間」でも、リレー接点までとVCB主接点開放まででは値の意味が違います。

試験前記録|設備条件を固定してから実測値を見る

試験成績表は、測定結果の前に設備の同一性を確認します。少なくとも次を一組で残します。

  • 事業場、盤・回路名称、単線結線図・展開接続図番号
  • 継電器メーカー、形式、製造番号、定格周波数、制御電源
  • 保護要素、動作値、時間目盛、特性種類、瞬時要素、方向設定
  • CT・ZCT・VT・ZPDの形式、比率、極性、接続対象
  • 遮断対象のVCB・PAS、引外し方式、連動・警報・表示範囲
  • 試験器形式、校正・点検の識別、試験日、周囲条件、実施・確認者

整定表と現物が違う場合、どちらかを無断で合わせてから試験するのではなく、相違を保留事項として管理します。保護協調の根拠は保護協調曲線の見方、CTの負担・飽和はCTの飽和・精度階級・負担で確認できます。

OCR試験1|最小動作電流はCT比と入力点をそろえる

OCRの最小動作電流試験は、入力電流を変化させ、限時要素が始動・動作する境界を測ります。成績表には「整定4A、実測3.98A」のような二次電流だけが書かれることがあります。一次電流へ換算するなら、試験が継電器二次入力へ行われたこととCT比を確認します。

一次換算の基本

一次側相当動作電流 = 二次側実測動作電流 × CT一次定格 ÷ CT二次定格

CT 200/5A、二次実測3.98Aなら一次相当は3.98×200÷5=159.2Aです。ただし、この換算値はCT一次側から実際に159.2Aを流した証明ではありません。単体試験ならCT本体・一次配線は試験範囲外です。

OCR試験2|限時動作時間は入力倍数をそろえて比較する

反限時OCRは、入力が大きいほど短時間で動作します。したがって「動作時間1.48秒」だけでは判定できません。整定電流に対する入力倍数と、特性種類・時間目盛が必要です。

入力倍数M = 試験電流 ÷ 動作電流整定値です。整定4Aへ12Aを入力したならM=3、つまり300%入力です。前年が300%、今年が700%なら、時間の大小をそのまま劣化傾向として比較できません。

オムロンK2CA-Dの公開仕様には、JIS C 4602に関係する代表条件として300%と700%の時間特性が示されています。一方、数値は形式・特性・時間目盛ごとに異なります。記事中の一例を、現場の別形式へ流用しないでください。

OCR試験3|瞬時要素を限時要素と混ぜない

瞬時要素は大電流の短絡へ速く応答する要素です。確認するのは、主に動作電流の境界と、所定の過電流入力に対する時間です。限時整定と瞬時整定を同じ欄へまとめると、「限時は合格したが瞬時が未試験」「瞬時を使わない設計なのに0と記載」といった違いが見えません。

また、瞬時設定を低くすれば安全側とは限りません。変圧器の励磁突入、下位遮断器との協調、最小短絡電流、CT飽和を含めて設定する必要があります。設計側の4判定はOCR整定計算の考え方で整理しています。

DGR試験1|Io・Vo・位相の3条件を分ける

DGRは、ZCTから得る零相電流Ioだけでなく、ZPD・EVT等から得る零相電圧Voと、その位相関係を使って地絡方向を判定します。このため、DGRの「動作した」という結果を一行で済ませず、少なくとも次の特性を分けます。

  • 動作零相電流:所定のVo・位相条件でIoの境界を確認
  • 動作零相電圧:所定のIo・位相条件でVoの境界を確認
  • 位相特性:IoとVoの関係を変え、動作域・不動作域を確認
  • 動作時間:指定したIo・Vo・位相を急変させて時間を確認
  • 慣性・復帰:短時間入力での不動作や入力消滅後の復帰を必要に応じて確認

Io・Voを作る機器と極性はZCT・ZPD・EVTの違い、GR・DGR・OVGRの保護範囲はGR・DGR・OVGRの違いで先に整理できます。

DGR試験2|位相角は基準・進み遅れ・極性を確認する

位相特性で最も危険な読み違いは、成績表の角度を別メーカー・別方式の図へそのまま当てはめることです。角度は、どの量を基準にしたか、進み・遅れをどちら向きに表したか、ZCT・ZPDの極性、相回転、継電器の位相設定で見え方が変わります。

オムロンK2GS-Hの公開仕様では、JIS C 4609準拠、動作電流・動作電圧・位相・時間の性能が個別に示されています。別形式では最大感度角や整定範囲が違うため、判定基準は必ず試験対象形式の仕様・取扱説明書から転記します。

逆方向不動作も同じくらい重要

正方向で動くだけでは、構外事故を構内事故と誤判定しないことまで確認できません。試験器によっては位相特性の全測定ではなく、逆方向の不動作確認だけに対応する機種もあります。試験器の機能と実施項目を混同しないでください。

メーカー仕様の数値は「試験条件」まで一組で読む

記載例 一緒に確認する条件 避ける読み方
動作電流±10% Vo、位相、時間設定、周波数 全DGR共通の法定値とする
130%・400%入力 対象形式、時間整定、急印条件 任意の入力倍数へ同じ許容値を使う
位相±15度 基準量、最大感度角、ZPD組合せ 別方式の角度表と直接比較する
瞬時70ms以下 入力倍数、計測停止点、出力接点 VCB全遮断時間とみなす

数値を引用するときは、形式、整定、入力倍数、位相、周波数、計測範囲を同じ行へ残します。古い継電器から後継機へ更新した場合、性能許容値や試験端子、自己監視機能が変わることがあるため、旧成績表の欄をそのまま使い回しません。

誤差率の計算|符号と基準値を残す

動作値の差を割合で示す場合は、一般に次の形で整理できます。

誤差率〔%〕=(実測値-基準値)÷基準値×100

整定4.00Aに対して実測4.12Aなら、(4.12-4.00)÷4.00×100=+3.0%です。ただし、メーカー仕様が「整定値に対して」「公称動作時間に対して」「20℃実測値に対して」など別の基準を定める場合は、その定義を優先します。

絶対値だけを残すと高い側か低い側か分かりません。符号、丸め前の値、計器分解能、判定に使った許容範囲を残すと再計算できます。

全遮断時間|継電器時間とVCB開極時間を混ぜない

事故電流を止めるまでには、継電器の判断だけでなく、出力接点、補助リレー・86、制御配線、トリップコイル、VCB機構、主接点開離・消弧が関係します。

全遮断時間 ≒ 継電器動作時間+出力・制御回路時間+遮断器開極・遮断時間と考えると、単体試験と連動試験の差が分かります。実際の計測値には試験器の開始・停止条件も入るため、単純加算結果と一致するとは限りません。

VCBの52a・52b、トリップコイル、制御電源はVCBの引外し回路、開極時間・三相同時性はVCBの点検方法で確認してください。

遮断器連動試験|開放後の警報・表示・再閉路防止まで見る

連動試験は「VCBが一度開いた」で終わりません。対象回路の保護設計に応じて、次の結果を対応させます。

  1. 対象継電器・要素の始動、動作表示、事故記録
  2. 出力接点、86ロックアウト、トリップ回路の動作
  3. 正しいVCB・PASが開放し、誤った機器が開放していないこと
  4. 52a・52b、盤表示灯、集合表示、ベル・ブザー、遠方監視の一致
  5. 制御電源異常、トリップ回路監視、再閉路・投入許可条件
  6. 試験後の表示復帰、機器復帰、整定・試験端子・回路の原状確認

警報停止と設備復帰は別操作です。30F・30L、自己保持、再鳴動の考え方はキュービクルの警報回路で整理しています。

CT・VT・ZCT・ZPD回路の安全境界

CT二次回路は、一次電流が流れている状態で開放すると危険な高電圧が生じるおそれがあります。VT・ZPD側には電圧入力と接地・極性の管理があり、DGRはIoとVoの組合せを誤ると方向判定が逆になることがあります。

この記事では、試験プラグの挿抜順、端子短絡、接地の着脱、試験器の具体的な結線を示しません。成績表では、主回路の安全状態、試験対象の分離方法、CT二次開放防止、VT逆充電防止、接地・極性の復旧確認が所定の記録で追えるかを確認します。

ディジタル形・複合継電器|自己試験だけで代用しない

ディジタル形は、自己監視、入力値表示、イベント、事故波形、整定群、出力接点試験などの機能を持つ場合があります。これらは故障発見と原因分析に役立ちますが、自己試験の範囲外にある外部変成器、配線、トリップ電源、遮断器機構まで正常と証明するものではありません。

複合継電器では、OCR、DGR、OVR、UVR、RPRなど複数要素が同じ筐体に入ります。要素ごとの入力・整定・出力マトリクス、共通電源・共通出力の単一故障点、ファームウェア・整定ファイル、通信時刻を記録します。

前年値との比較|合格範囲内の変化も見る

合否が同じでも、動作値・時間・位相が連続して一方向へ変化していれば、端子、電源、機構、電子部品、試験条件の変化を疑う材料になります。ただし、試験器、入力倍数、温度、周波数、測定点が違うデータを一つのトレンドへ混ぜません。

差が大きいときは、直ちに継電器故障と断定せず、整定・レンジ、試験器校正、配線・接触、電源、入力波形、周囲条件、対象形式の許容値を順に照合します。再試験で値を合わせるのではなく、初回値と再試験理由も残します。

試験成績表を読む12ステップ

  1. 盤・回路・継電器形式・製造番号を現物台帳と照合する
  2. 単線結線図と展開接続図で入力変成器・出力先を確認する
  3. 整定表の版、変更履歴、承認、保護協調計算書を確認する
  4. 試験範囲を外観・単体・変成器含み・連動に分ける
  5. 試験器、校正識別、周波数、試験日の条件を確認する
  6. OCRの限時動作値、入力倍数、時間目盛、特性を対応させる
  7. OCRの瞬時動作値・時間を限時と別に確認する
  8. DGRのIo、Vo、位相、時間、正方向動作・逆方向不動作を確認する
  9. 基準値、実測値、誤差、許容値の定義を対象形式へ照合する
  10. 連動した遮断器、警報、表示、遠方信号、復帰結果を確認する
  11. 前年値、事故履歴、自己監視、未改修事項との関連を見る
  12. 試験後の原状復旧、図面・整定表・台帳の改訂を確認する

試験記録へ残す24項目

区分 記録項目 照合先
設備 事業場、盤、回路、図面、継電器形式、製造番号 台帳・図面
入力 CT/ZCT/VT/ZPD、比率、極性、周波数、入力点 銘板・結線図
整定 動作値、時間、特性、瞬時、位相、整定群 整定表・計算書
実測 試験入力、動作・復帰値、時間、位相、誤差 形式別仕様
連動 出力接点、86、VCB/PAS、警報、表示、遠方 展開図・I/O表
管理 試験器、校正、実施者、判定者、前回差、処置、復旧 保安規程・履歴

よくある12の誤解

  1. テストボタンが動けば特性試験も合格:自己試験の対象範囲を確認します。
  2. 単体試験合格ならCTからVCBまで正常:入力・出力の未試験部分が残ります。
  3. 動作時間は秒数だけ比較できる:入力倍数、特性、時間目盛をそろえます。
  4. 130%・400%入力は全機種共通:対象形式のメーカー条件を優先します。
  5. DGRはIoだけ流せば方向まで確認できる:Voと位相条件が必要です。
  6. 正方向で動けば方向性は完全:逆方向不動作と境界も確認します。
  7. 位相角はメーカーが違っても同じ基準:基準量、極性、進み遅れを確認します。
  8. 誤差が許容内なら前年差は不要:同条件のトレンドは劣化の手掛かりです。
  9. VCBが開けば全遮断時間は継電器時間:制御・機構・計測範囲を分けます。
  10. ディジタル形は定期試験不要:自己監視外の回路と性能があります。
  11. 不合格値は再試験で消してよい:初回値、原因、処置、再試験を残します。
  12. 試験後は表示復帰だけで完了:整定、端子、回路、接地、機器状態を原状確認します。

理解度チェック

問1:CT 200/5Aに接続されたOCRを二次端子から単体試験し、動作電流3.98Aを測定しました。正しい説明はどれですか。
ア.CT一次へ必ず159.2Aを流した イ.一次相当は159.2AだがCT本体は単体試験範囲外 ウ.一次相当は39.8A エ.VCB連動も確認済み

解答と理由を見る

正解:イ。3.98×200÷5=159.2Aです。ただし継電器二次端子からの単体試験では、CT一次・二次変成特性まで試したことにはなりません。

問2:DGR試験でIoとVoの動作値は基準内でした。方向判定の確認として不足しているものはどれですか。
ア.IoとVoの位相特性・逆方向不動作 イ.変圧器油量だけ ウ.デマンド値 エ.VCB接触抵抗だけ

解答と理由を見る

正解:ア。DGRはIo・Voの大きさに加えて位相関係で方向を判定します。正方向動作だけでなく、逆方向で不要動作しないことも試験範囲に応じて確認します。

問3:OCR単体試験は合格でしたが、連動試験でVCBが開きません。最も適切な判断はどれですか。
ア.OCR合格なので保護設備全体も合格 イ.整定を無断で下げる ウ.出力接点・制御電源・トリップ回路・VCBを図面と記録で切り分ける エ.成績表から連動試験を削除する

解答と理由を見る

正解:ウ。単体合格は継電器入力から出力までの確認です。事故回路の切離しには、出力接点、86、制御電源、配線、トリップコイル、VCB機構までが必要です。

まとめ|試験条件・実測値・連動範囲を一行につなぐ

  • 試験範囲は外観、単体、変成器含み、遮断器連動に分ける
  • OCRは動作値、入力倍数、限時時間、瞬時要素を別々に読む
  • DGRはIo、Vo、位相、時間、正方向動作・逆方向不動作を読む
  • メーカー許容値は形式と試験条件を一組にして使う
  • 全遮断時間は継電器時間だけでなく制御回路・VCBを含む
  • 合否だけでなく前年差、不適合処置、試験後の原状復旧を残す

公式資料・一次情報

根拠・検証方針

内容は2026年8月14日にJEMA、保護継電器メーカー、試験器メーカーの公式・一次10資料へ照合しました。公開仕様の130%・400%入力や許容誤差は形式固有の例として扱い、全機種共通値にはしていません。実設備の端子結線、停復電、試験プラグ操作は掲載していません。確認問題は当サイトのオリジナルです。

関連する解説

資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。法令・規格・メーカー一次資料を基に、試験学習と設備管理で混同しやすい境界を整理しています。運営者情報を詳しく見る



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