受変電設備の実務

高圧ケーブルのサイズ選定|許容電流・電圧降下・短絡耐量

結論:mm²は電流表だけで決めず、運転・事故・施工・竣工の全条件を通った最小候補を選ぶ

高圧ケーブルのサイズは、負荷電流より許容電流が大きければ完了ではありません。電圧階級、線心構成、布設条件、温度・多回線補正、電圧降下、始動、主保護・後備保護のI²t、遮へい・接地、端末施工、環境劣化を同じ回線番号で照合します。

この記事は、高圧ケーブル工事の一般的な施工方法高圧ケーブルの劣化診断を繰り返すものではありません。設計時の候補断面積が、現地の布設・保護・端末・竣工状態まで一致しているかを追います。

この記事は活線ケーブルの測定・端末施工・接地線切離し手順ではありません

高圧ケーブルには感電、アーク、残留電荷、地絡、火災の危険があります。短絡耐量式や許容電流表は、材料、温度、時間、布設条件を限定した資料です。実設備では、有資格者が現行技術基準、メーカー設計資料、短絡計算、保護協調、施工要領、保安規程を優先してください。

選定を6層で読む|系統・通電・電圧・事故・環境・施工

同じ38mm²でも、単心・三心、CV・CVT、地中管路・ラック・直埋、周囲温度、回線間隔で許容条件が変わります。サイズ表へ進む前に、候補へ適用した表番号と前提を六つの層へ分けます。

設計値を一列に並べるだけでは、どの条件が候補サイズを決めたか分かりません。各候補について合格・不合格・対象外を残し、最大のmm²ではなく、全条件を満たす最小候補と採用余裕を説明できるようにします。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
系統 電圧、回路、電源、負荷、予備運転 単線図と運転状態
通電 連続・周期・始動電流、補正条件 補正後許容電流
電圧 R・X、距離、力率、始動 定常・過渡電圧降下
事故 最大/最小短絡、遮断時間、I²t 導体・遮へいの熱耐量
環境 水、熱、日射、火災、薬品、塩害 構造・材料・施工条件
施工 曲げ、張力、端末、接地、識別 施工・竣工記録

系統状態台帳|最大負荷と最大短絡を同じ運転状態にしない

負荷電流、電圧降下、短絡電流は、同じ系統状態で最大になるとは限りません。常用単独、変圧器並列、発電機給電、母線連絡、予備回線切替、将来増設を状態ごとに分け、各判定で使用する状態を指定します。

高圧受電点から負荷までの回路番号、送電端・受電端、長さ、接続機器、変圧器容量、保護装置を一行にします。ルート変更や中間接続がある場合、図面上の直線距離ではなく実布設長と接続点を反映します。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
常用 通常電源、通常負荷、母線構成 連続電流・電圧降下
最大需要 将来負荷、同時率、負荷率 設計電流と余裕
始動 最大電動機、投入前負荷、時間 過渡電圧降下
最大短絡 最大電源、並列源、最短経路 熱・機械・遮断定格
最小短絡 最小電源、最長経路、発電機 保護感度・遮断時間
保守・予備 迂回給電、片回線、母連 暫定容量と保護成立

許容電流|基準値・補正・保護設定を別の列で管理する

三相6.6kV・1,000kVAの負荷電流は、I=S÷(√3V)から約87.5Aです。しかし、この値だけでは断面積を決められません。メーカー許容電流表からケーブル構造と布設条件に合う基準値を選び、周囲温度、多条・多回線、管路、土壌熱抵抗等の補正を資料の定義どおり適用します。

異なる表で既に織り込まれた条件へ補正係数を二重に掛けないよう、基準表名、表の温度、布設状態、補正項目を記録します。負荷の周期性を使う場合は、周期、ピーク時間、熱時定数、前後負荷が適用資料の範囲内かを確認します。

補正後許容電流とOCR整定値は同じ数字ではありません。ケーブルを過負荷から保護しつつ始動・突入で不要動作せず、下位保護と協調する必要があります。整定はOCR整定計算保護協調曲線へ接続します。

電圧降下と始動|R・X・力率・距離・時間を同じ計算へ入れる

三相回路の電圧降下は、選定候補の交流抵抗R、リアクタンスX、電流I、力率、こう長を同じ単位へそろえて計算します。導体抵抗だけの簡略式を使う場合は、リアクタンスと温度を無視できる適用範囲を明記します。送電端と受電端のどちらを基準にした百分率かも固定します。

定常電圧降下が小さくても、大形電動機の始動、変圧器励磁、負荷一括投入では別の電流・力率になります。始動中の最低端子電圧、接触器保持、加速トルク、保護不動作を時間軸で判定します。発電機給電時は電源内部インピーダンスも変わります。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
定常 最大負荷I、R、X、力率、こう長 受電端電圧と損失
始動前 既投入負荷、送電端電圧 開始条件
始動中 始動電流、始動力率、時間 最低電圧・加速
発電機時 発電機過渡特性、負荷順 電圧・周波数回復
将来 増設負荷、ルート延長、力率変化 再計算条件

短絡I²t|導体・遮へい・接地線を主保護と後備保護で判定する

短絡熱耐量は、事故電流の大きさだけでなく、遮断完了までの時間との積I²tで決まります。メーカーの短時間耐量式や表は、導体材料、初期温度、最終温度、継続時間の範囲を持つため、係数だけを別製品へ転用しません。

主保護が高速でも、遮断器不動作時の後備保護では時間が延びます。最大短絡電流は熱耐量・遮断容量、最小短絡電流は保護感度・動作時間の確認に使います。事故点を受電端・中間点・末端へ置き、どの保護が遮断するかを曲線と時系列で結びます。

導体が合格しても、金属遮へい層、接地線、接続部、端末の地絡電流経路が不合格なら回線は成立しません。接地経路は高圧受電設備の接地系統図へ重ねます。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
主保護 事故点電流、継電器、遮断器全遮断 主保護I²t
後備保護 主保護失敗時の電流・時間 後備I²t
導体 材料、断面積、初期/最終温度 メーカー式の適用範囲
遮へい 地絡電流、接地方式、接続 遮へい層の熱耐量
接地・端末 接地線、端子、接続部 最小構成品の耐量

遮へい・接地・誘導|片端接地を固定ルールにしない

金属遮へいは、電界制御、地絡電流の経路、接触電位の抑制に関係します。両端接地、片端接地、クロスボンディング等の選択は、回線長、誘導電圧、循環電流、事故電流、接続箱、保守方式と組になり、用語だけで決められません。

接地方式を変更すると、遮へい損失、許容電流、誘導電圧、地絡保護へ影響します。ケーブル本体の断面積を変えない更新でも、遮へい接続、接地線、SVL等の構成が変われば再計算と試験が必要です。

相配列、単心ケーブルの配置、鉄製管路や金物への通し方は、誘導加熱と電流分担へ影響します。三相分を一組として施工図と現物を照合します。

布設環境台帳|水・熱・日射・火災・機械力をルート単位で分ける

同じ回線でも、屋外ラック、立上り、壁貫通、地中管路、ハンドホール、盤内で環境が変わります。全長を一つの布設条件にせず、最も厳しい区間と区間長をルート台帳へ分けます。

経済産業省の水トリー注意喚起は、更新推奨時期だけで健全性を判断しないことの重要性を示しています。水の侵入、端末・接続部、外傷、熱履歴、絶縁診断を重ね、年数未満だから安全、年数超過だから即交換という単純判定を避けます。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
屋外ラック 日射、周囲温度、支持、延焼 区間別補正・防火
地中管路 水、管路本数、土壌熱、張力 管路図・通線計画
ハンドホール 浸水、接続、曲げ、識別 排水・接続記録
貫通部 防火区画、止水、保護 認定工法・写真
盤内・端末 曲げ、相間、接地、応力 施工寸法・端末要領

端末・接続・施工|太くした副作用を外径・曲げ・張力で確認する

断面積を大きくすると、許容電流や電圧降下に余裕が出る一方、外径、質量、最小曲げ半径、許容張力、端末寸法、支持荷重が増えます。既設盤の端子、ケーブルヘッド、相間距離、引込方向へ納まるかをメーカー施工要領で確認します。

延線時は、ルート、曲がり、ローラ、張力、側圧、引込方向を計画します。中間接続を追加して施工を容易にする場合は、接続部の環境、施工資格、試験、保守アクセスという新しい弱点が増えるため、計算上の断面積だけでは比較できません。

竣工時はケーブル種別、製造情報、実長、相表示、端末・接続、接地、絶縁・耐圧試験、施工写真を回線番号へ結びます。端末の外観だけでなく、設計した接地経路と相配列まで確認します。

候補比較表|22・38・60mm²を判定理由付きで閉じる

候補比較では、各サイズへ同じ条件を適用します。許容電流は対象カタログと布設補正、電圧降下は候補ごとのR・X、短絡耐量はメーカー式、施工性は外径・曲げ・端末仕様を使います。数値の出典と版が違う候補を一つの表へ混ぜません。

例えば6.6kV・1,000kVAで設計電流約87.5Aでも、22mm²が許容電流を満たすかは布設条件次第です。電流条件で合格しても、後備遮断時間のI²tや端末仕様で38mm²以上が必要になることがあります。ここで重要なのは特定のサイズを一般解にせず、決定条件を残すことです。

区分 確認する事実 完了・判断の証拠
22mm² 許容・降下・短絡・施工を個別計算 不合格条件または採用余裕
38mm² 同じ資料版・同じ運転状態で比較 全条件の最小合格候補
60mm² 損失低減と施工副作用を比較 余裕の便益と追加コスト
採用案 端末・在庫・将来・標準化も確認 設計承認と根拠番号

変更と竣工を閉じる|計算サイズ・発注サイズ・施工サイズを一致させる

設計変更、ルート変更、代替メーカー、端末変更、母線構成変更では、計算の前提が変わります。『同等品』を名称だけで承認せず、構造、電気定数、許容電流、短絡式、外径、曲げ、端末、施工条件を比較します。

完成状態は、計算済み、承認済み、発注済み、施工済み、試験済み、図面反映済みを分けます。設計サイズが38mm²でも、現場で60mm²へ変更されたなら、端末・曲げ・保護・竣工図も変更後へそろえます。

診断・更新時は、敷設年だけでなく事故履歴、過負荷、浸水、端末修理、試験条件を引き継ぎます。劣化判断は高圧ケーブルの劣化診断、短絡電流の基礎は高圧配電線路の短絡計算へつなぎます。

公式資料・一次情報

内容確認日:2026年9月1日。対象設備の承認図、現行取扱説明書、契約・運用基準を優先してください。

目的から選ぶ関連記事

目的 次に読む記事 確認できる境界
系統計算 高圧配電線路の電圧降下・短絡計算変圧器の%Z 電流、電圧降下、短絡
保護 保護協調曲線OCR整定計算 主保護、後備、遮断時間
施工 高圧ケーブル工事接地系統図 布設、端末、遮へい、接地
診断 高圧ケーブルの劣化診断絶縁耐力試験 水トリー、試験、更新
機器定格 VCBの遮断容量高圧母線の選び方 kA、短時間耐量、接続
設備全体 高圧受電設備の単線結線図更新計画 回路番号、運転状態、変更
資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。経済産業省、日本電線工業会、ケーブルメーカー、試験センターの一次資料を照合し、mm²の計算だけでなく、布設・保護・端末・竣工状態までつながるよう編集しています。運営者情報と編集方針

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この記事内に高圧ケーブル、端末材、測定器、工事・点検サービスのアフィリエイトリンクは掲載していません。2026年9月1日に現行技術基準、水トリー注意喚起、メーカー技術資料へ再照合しました。状態台帳と候補比較の構成は当サイトのオリジナルで、実設備の設計・施工・保護協調を代替しません。

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