受変電設備の基礎

高圧絶縁耐力試験|試験電圧10,350Vの求め方と充電電流・試験容量の計算

この記事を読み終えると、公称電圧6.6kVの電路の絶縁耐力試験の電圧(交流10,350V・直流20,700V)を自分で求め、ケーブルの充電電流と、試験に要る電源の容量を計算できるようになります。

第一種電気工事士の学科では、絶縁耐力試験の電圧と時間の組み合わせや、ケーブルを直流で試験するときの計算式が繰り返し出ています。10,350Vという数値を丸ごと覚えるより、公称電圧から順に掛けていく道すじで覚えると、選択肢の数値がどの掛け忘れで出たものかまで見分けられます。この記事は試験の学習用で、実際の設備で試験をする手順を示すものではありません。

絶縁耐力試験は、決められた電圧を10分間加えて耐えるかを見る

高圧の電路は、ふだんの電圧だけでなく、事故や開閉のときに生じる高い電圧にも耐えなければなりません。電気設備の技術基準の解釈 第15条は、高圧の電路について、試験電圧を電路と大地との間に「連続して10分間加えたとき、これに耐える性能を有すること」と定めています。これを確かめるのが絶縁耐力試験です。

図1 絶縁耐力試験は、電路と大地の間に試験電圧を加える

黒い3本の横線が高圧の電路、緑の横線が大地です。紫の記号は、電路と大地の間にある静電容量を表します。

大地試験用変圧器昇圧高圧の電路(3線を一括)対地静電容量①②③④
図1で押さえるところ:電圧を加えるのは「電路と大地の間」です。③の静電容量が大きいほど、④の電流が大きくなります。

図1の①の試験用変圧器で電圧を上げ、図1の②のように3線をまとめた電路と、大地との間に加えます。電路と大地の間には図1の③の対地静電容量があるので、交流を加えると図1の④の充電電流が流れます。この電流の大きさが、記事の後半で計算する電源の容量を決めます。

低圧の電路の絶縁は絶縁抵抗の値で定められていますが、高圧の電路は「どの電圧に耐えるか」で定められています。絶縁抵抗が高くても、高い電圧に耐えるとは限らないからです。絶縁抵抗測定との違いは高圧受電設備の検査方法で比べています。

試験電圧は「公称電圧→最大使用電圧→試験電圧」の順に求める

図2 試験電圧は、公称電圧から順に掛けて求める

公称電圧6.6kVの電路の例です。上から下へ、矢印の横の数を掛けていきます。

①公称電圧 6,600V
電路を代表する線間電圧。

× 1.15 ÷ 1.1

②最大使用電圧 6,900V
ふだんの使用で電路に加わる最大の線間電圧。

× 1.5

③交流の試験電圧 10,350V
電路と大地の間に、連続して10分間加える。

× 2(ケーブルを直流で試験するとき)

④直流の試験電圧 20,700V
電線にケーブルを使う交流の電路で選べる方法。時間は同じ10分間。

図2の読み方:1.5を掛ける相手は、①の公称電圧ではなく②の最大使用電圧です。

図2の①の公称電圧は、6.6kVのように電路を代表する線間電圧です。図2の②の最大使用電圧は、ふだんの使用で電路に加わる最大の線間電圧で、公称電圧に係数を掛けて求めます。図2の③の交流の試験電圧は、最大使用電圧の1.5倍です。ケーブルを直流で試験するときは、図2の④のようにさらに2倍します。

この順番のどこかを飛ばすと、値が変わります。公称電圧にそのまま1.5を掛けると9,900Vになり、正しい値より小さくなります。試験では、1.5の代わりに1.25を掛けた8,625Vが、誤りの選択肢として出ています。

最大使用電圧は、公称電圧に1.15÷1.1を掛ける(例題1)

解釈 第1条は、最大使用電圧を「通常の使用状態において電路に加わる最大の線間電圧」と定め、公称電圧に次の係数を掛けて求めるとしています。

公称電圧の区分 掛ける係数 例
1,000V以下 1.15 200V → 230V
1,000Vを超え500,000V未満 1.15 ÷ 1.1 6,600V → 6,900V、3,300V → 3,450V

電路の電圧は、負荷が軽いときなどに公称電圧より少し高くなります。その上がりぶんを見込んだ電圧が最大使用電圧です。試験電圧は最大使用電圧を基準に決められているので、計算の最初に、公称電圧を最大使用電圧へ直します。

例題1 公称電圧6,600Vの電路の最大使用電圧を求めます。

最大使用電圧 = 6,600V × 1.15 ÷ 1.1 = 6,900V
同じ係数で、公称電圧3,300Vなら 3,300V × 1.15 ÷ 1.1 = 3,450V です。

7,000V以下の電路は1.5倍、ケーブルを直流で試験するなら2倍(例題2)

解釈 第15条の表では、最大使用電圧が7,000V以下の交流の電路の試験電圧は「最大使用電圧の1.5倍の交流電圧」です。

例題2 最大使用電圧6,900Vの電路の試験電圧を、交流と直流で求めます。

交流の試験電圧 = 6,900V × 1.5 = 10,350V(電路と大地の間に連続して10分間)
ケーブルを直流で試験するとき = 10,350V × 2 = 20,700V(同じく連続して10分間)

試験では、最大使用電圧6,900Vの高圧電路を一括して交流で試験するときの組み合わせとして、「10,350V・連続10分間」が正解になっています。時間を1分間とした選択肢は誤りです。

電線にケーブルを使う交流の電路は、交流の試験電圧の2倍の直流電圧を加える方法でもよいと定められています(第15条第二号)。試験では、公称電圧6.6kVの電路のケーブルを直流で試験するときの式として「6,600 × 1.15/1.1 × 1.5 × 2」が正解です。公称電圧に直接1.5と2を掛けた式や、1.5の代わりに2を掛けた式が、誤りの選択肢になっています。正解の式は、図2の①から④までを1行につないだものです。

最大使用電圧が7,000Vを超える電路は、倍率が変わります(60,000V以下は原則1.25倍で、10,500V未満になるときは10,500V)。6.6kVの受電設備で使うのは1.5倍です。

変圧器や開閉器は、第16条の決まりで試験する

第15条は電路の決まりで、変圧器・回転機・開閉器などの機器の電路は第16条が定めています。倍率は同じ1.5倍でも、電圧を加える場所が違います。

試験する対象 試験電圧 電圧を加える場所
高圧の電路(最大使用電圧7,000V以下・交流) 最大使用電圧の1.5倍の交流電圧 電路と大地の間
電線にケーブルを使う交流の電路(直流で試験) 上の値の2倍の直流電圧 電路と大地の間
変圧器の巻線(最大使用電圧7,000V以下) 最大使用電圧の1.5倍(500V未満になるときは500V) 試験する巻線と、他の巻線・鉄心・外箱の間
開閉器・遮断器・計器用変成器などの器具(高圧) 電路と同じ 電路と大地の間

どれも、加える時間は連続して10分間です。回転機は巻線と大地の間に加え、交流の回転機は1.6倍の直流電圧でもよいと定められています。

交流で試験すると、ケーブルの静電容量に充電電流が流れる

図3 ケーブルは、導体と遮へい層ではさんだコンデンサになる

左がケーブル1線の断面、中央と右はそれを回路の記号に置き換えたものです。

1線の断面
①②③

①導体
②絶縁体
③遮へい層(接地)

1線ぶん
導体C遮へい層

④導体と遮へい層が、絶縁体をはさんだコンデンサ(静電容量 C)になる。

3線を一括
合わせて 3C

⑤3線をまとめて試験すると、3本ぶんが並列になる。

図3で押さえるところ:計算に使う静電容量は、電圧を加える範囲の合計です。3線一括なら1線ぶんの3倍です。

高圧のケーブルは、図3の①の導体のまわりを図3の②の絶縁体が包み、その外側に図3の③の遮へい層があります。遮へい層は接地するので、導体と大地の間に絶縁体をはさんだ形になり、図3の④のように1つのコンデンサとして働きます。3線を一括して試験すると、図3の⑤のように3本ぶんが並列になります。

コンデンサに交流の電圧を加えると、絶縁が良好でも電流が流れます。これが充電電流です。ケーブルが長いほど静電容量が大きく、充電電流も大きくなります。

充電電流は I=2πfCV で求める(例題3)

コンデンサが交流の電流を妨げる大きさ(容量性リアクタンス)は 1 ÷ (2πfC) です。電流は電圧をこれで割った値なので、充電電流は I = 2πfCV になります。fは周波数〔Hz〕、Cは静電容量〔F〕、Vは加える電圧〔V〕です。

日本電気技術者協会の表では、6.6kVのCVTケーブル(38mm²)を10.35kVで3線一括して試験するときの充電電流が、50Hzで1kmあたり3.12Aです。静電容量に直すと、1線あたり約0.32μF/kmになります。

例題3 38mm²のCVTケーブル200mを、50Hz・10,350Vで3線一括して試験します。1線あたりの静電容量は0.32μF/kmです。

静電容量 C = 0.32μF/km × 0.2km × 3線 = 0.192μF = 0.192 × 10⁻⁶F
充電電流 I = 2 × 3.14 × 50Hz × 0.192 × 10⁻⁶F × 10,350V ≒ 0.624A
表の値で確かめると、3.12A/km × 0.2km = 0.624A で一致します。

式のとおり、充電電流は周波数にも比例します。同じケーブルを60Hzの地域で試験すると、60 ÷ 50 = 1.2倍の約0.75Aです。絶縁が良好でも流れる電流なので、充電電流が流れること自体は異常ではありません。地絡したときに対地静電容量を通って流れる電流も同じ式から求められ、ZCT・ZPD・EVTの違いで扱っています。

試験容量は、試験電圧と充電電流を掛けて求める(例題4)

試験用の変圧器は、試験電圧を保ったまま充電電流を流し続けます。必要な容量は、電圧と電流の積です。単相の電源から1か所へ加えるので、三相の式のように√3は掛けません。

例題4 例題3の試験に要る試験用変圧器の容量を求めます。

試験容量 = 10,350V × 0.624A ≒ 6,461VA = 約6.5kVA

I = 2πfCV を入れると、試験容量 = 2πfCV² です。電圧の2乗と、ケーブルの長さに比例します。

図4 ケーブルが長いほど、交流で試験するための容量が大きくなる

38mm²のCVTケーブルを、50Hz・10,350Vで3線一括して試験する場合の計算値です。数値は左から長さ・充電電流・試験容量で、棒の長さが試験容量を表します。

①100m 約0.31A・約3.2kVA

②200m 約0.62A・約6.5kVA

③500m 約1.56A・約16.2kVA

④1km 約3.12A・約32.3kVA

図4の見方:長さが2倍になると、静電容量も充電電流も試験容量も2倍です。

例題4は図4の②です。図4の①の100mでは約3.2kVAですが、図4の③の500mで約16kVA、図4の④の1kmでは約32kVAになります。ケーブルが長い設備では、交流で試験するための電源が大きくなります。

補償リアクトルは、充電電流を打ち消して電源の容量を減らす(例題5)

充電電流は、電圧より位相が90度進んだ電流です。コイル(リアクトル)に流れる電流は90度遅れるので、2つを並列につなぐと互いに打ち消し合います。交流の試験装置にはこの性質を使った補償リアクトルがあり、日本電気技術者協会の解説は「供試物の静電容量による充電電流を補償して試験に使う電源容量を節減するためのもの」と説明しています。

図5 補償リアクトルは、進みの電流を遅れの電流で打ち消す

上が回路、下が電流の向きを矢印で表した図です。Tは試験用変圧器です。数値は例題5のものです。

回路
~電源リアクトルTケーブル①②③

①ケーブルの静電容量へ流れる電流。②リアクトルへ流れる電流。③電源が受け持つ電流。

電流の向き(電圧を基準)
電圧進み 6.5遅れ 5差 1.5①②③

①は電圧より90度進み、②は90度遅れる。向きが逆なので、③は2つの差になる。

図5で押さえるところ:リアクトルは試験電圧を変えません。電源が出す電流を減らすだけです。

図5の①がケーブルの静電容量へ流れる進みの電流、図5の②がリアクトルへ流れる遅れの電流です。電源が受け持つのは、図5の③のように2つの差だけになります。力率改善の進相コンデンサは、この逆です。負荷の遅れの無効電力を、コンデンサの進みで打ち消します(力率改善と高圧進相コンデンサの図2)。

例題5 例題4の試験で、ケーブルが取る進みの無効電力は約6.5kvarです。遅れの無効電力を5kvar取るリアクトルを並列につなぎます。損失は無視します。

電源が受け持つ無効電力 = 6.5kvar − 5kvar = 1.5kvar(電源の容量は約1.5kVAで足りる)

ケーブルが長いときは直流で試験し、終わったら電荷を放電する

直流で試験すれば、交流のように充電電流が流れ続けないので、電源の容量は小さくて済みます。第15条が、ケーブルを使う電路に交流の2倍の直流電圧での試験を認めているのは、交流では電源と試験設備が大きくなり、試験が難しくなるためです。

直流の電圧を加えた後の漏れ電流は、時間とともに減って落ち着くのが正常です。試験でも、6,600VのCVTケーブルの直流漏れ電流測定で、この形のチャートが正常を示すものとして出ています。チャートの形は高圧受電設備の検査方法の図3で比べられます。

ケーブルはコンデンサなので、試験の後も電荷が残ります。労働安全衛生規則 第339条は、電力ケーブルなど残留電荷による危険のある電路について、「安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させること」を求めています。

結果は、試験電圧を連続して10分間加えて耐えたかで判定します。完成したときの検査では、絶縁耐力試験の後に絶縁抵抗を測定して、絶縁に異常がないことも確かめます。

自己チェック|試験電圧と充電電流を自分で計算する

解説は最初から表示しています。図2を見ないで、公称電圧から試験電圧までを順に掛けられるかを試してください。

問1:公称電圧6,600Vの電路の最大使用電圧は何Vですか。

  1. 6,600V
  2. 6,900V
  3. 7,260V
  4. 7,590V

解答:2(6,900V)
6,600V × 1.15 ÷ 1.1 = 6,900V です。7,590Vは1,000V以下の電路の係数1.15だけを掛けた値、7,260Vは1.1を掛けた値です。

問2:公称電圧3,300Vの高圧の電路を、交流で絶縁耐力試験します。試験電圧は何Vですか。

  1. 4,950V
  2. 約4,312V
  3. 6,900V
  4. 5,175V

解答:4(5,175V)
最大使用電圧 = 3,300V × 1.15 ÷ 1.1 = 3,450V、試験電圧 = 3,450V × 1.5 = 5,175V です。4,950Vは公称電圧にそのまま1.5を掛けた値、約4,312Vは1.25倍、6,900Vは2倍にした値です。

問3:公称電圧6,600Vの交流の電路に使うケーブルを、直流で絶縁耐力試験します。試験電圧は何Vですか。

  1. 13,800V
  2. 19,800V
  3. 20,700V
  4. 27,600V

解答:3(20,700V)
図2の①から④まで順に掛けて、6,600V × 1.15 ÷ 1.1 × 1.5 × 2 = 20,700V です。19,800Vは最大使用電圧に直していない値、13,800Vは1.5を掛け忘れた値、27,600Vは1.5の代わりに2を掛けた値です。

問4:3線を一括した静電容量が0.4μFの電路に、50Hz・10,350Vの試験電圧を加えます。充電電流は何Aですか。

  1. 約1.30A
  2. 約0.83A
  3. 約0.65A
  4. 約1.56A

解答:1(約1.30A)
I = 2 × 3.14 × 50Hz × 0.4 × 10⁻⁶F × 10,350V ≒ 1.30A です。約0.83Aは電圧に公称電圧6,600Vを入れた値、約0.65Aは式の2を掛け忘れた値、約1.56Aは60Hzで計算した値です。

問5:問4の試験に要る試験用変圧器の容量は、およそ何kVAですか。充電電流は1.30Aとします。

  1. 約8.6kVA
  2. 約13.5kVA
  3. 約23.3kVA
  4. 約4.5kVA

解答:2(約13.5kVA)
試験容量 = 10,350V × 1.30A ≒ 13,460VA = 約13.5kVA です。約8.6kVAは電圧に6,600Vを入れた値、約23.3kVAは三相の式のように√3を掛けた値、約4.5kVAは3線ぶんだからと3で割った値です。

問6:交流で絶縁耐力試験をするときに、補償リアクトルを使う目的はどれですか。

  1. ケーブルの静電容量へ流れる進みの電流を打ち消して、試験用の電源の容量を小さくする
  2. 試験の後にケーブルに残った電荷を、大地へ逃がす
  3. 交流を直流に変えて、ケーブルを直流で試験できるようにする
  4. 試験電圧を2倍に高めて、試験の時間を10分間より短くする

解答:1(進みの電流を打ち消して、電源の容量を小さくする)
図5の①と②が打ち消し合い、電源は③だけを受け持ちます。リアクトルを入れても、加える電圧と10分間という時間は変わりません。

問7:同じケーブルに同じ試験電圧を加えます。60Hzの地域での充電電流は、50Hzの地域の何倍ですか。

  1. 約0.83倍
  2. 変わらない
  3. 1.2倍
  4. 1.44倍

解答:3(1.2倍)
I = 2πfCV なので、充電電流は周波数に比例し、60 ÷ 50 = 1.2倍です。約0.83倍は割る向きが逆、1.44倍は1.2を2乗した値です。2乗で効くのは電圧で、試験容量が電圧の2乗に比例します。

試験電圧の倍率と、充電電流の表の出どころ

2026年10月4日に、次の資料の記載内容を確認して、本文の倍率・式・例題の数値と図を照合しました。

更新履歴:2026年10月4日 図1〜図5と、最大使用電圧・試験電圧・充電電流・試験容量・補償リアクトルの例題、自己チェックを加え、公称電圧から順に計算する構成に改めた

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資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。電気設備の技術基準の解釈と試験センターの問題を照合し、絶縁耐力試験の電圧と充電電流の計算を図と例題で整理しています。運営者情報と編集方針

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