結論:警報回路は「検出・記憶・表示・鳴動・通報・保護動作」を分けて読む
キュービクルの警報回路は、異常接点を受けてベルを鳴らすだけではありません。どの異常を検出したかを記憶し、表示灯・故障表示器で場所を示し、ベル/ブザーで人を呼び、代表・個別接点で遠方へ通報します。重大事故では同じ検出元からVCB引外し等も行います。ただし、警報停止・表示復帰・保護継電器復帰・遮断器再投入は別操作です。
ベルを止めたら警報が消えた、復帰ボタンを押したら設備が直った――どちらも危険な誤解です。警報停止は音を止めるだけ、表示復帰は記憶を消せる条件か確認する操作であり、異常原因の除去や保護ロックアウトの復帰とは同じではありません。
保護継電器の種類と役割ではOCR・GR・DGRの検出を、VCBの引外し回路ではトリップ経路を扱いました。この記事では、検出接点から故障表示器30F/30L、警報装置28、外部監視へ至る信号経路と、停止・復帰の意味を整理します。
原因確認前にリセット・短絡・強制入力しない
警報回路の接点短絡、ヒューズ交換、表示器引抜き、PLC強制、保護継電器復帰、86解除、VCB再投入は、感電・誤遮断・警報喪失につながります。電気主任技術者・保守担当者が制御展開図、端子図、警報一覧、保安規程、試験要領に基づいて実施してください。この記事は実設備のバイパス・強制動作手順を示しません。
警報回路の6段階を一続きで読む
継電器・センサ
入力・補助リレー
自己保持・30F
表示・28B/28Z
代表・個別出力
遮断・停止
すべての警報が6段階全部を持つわけではありません。換気扇故障は表示・鳴動・通報だけ、OCR動作は表示・鳴動に加えてVCB引外し、変圧器温度は第一段が警報、第二段が遮断という構成があります。警報一覧表で各入力の「表示、音、遠方、遮断、保持、復帰」を横並びにします。
状態表示・故障表示・警報を分ける
| 表示・機能 | 意味 | 入力例 |
|---|---|---|
| 状態表示 30S | 現在の入/切、運転/停止、電源有無 | 52a/52b、MC補助接点、電圧確立 |
| 故障表示 30F/30L | どの異常が発生したか記憶・表示 | OCR、DGR、温度、換気、直流異常 |
| 警報装置 28 | 人へ異常発生を音・信号で知らせる | 28Bベル、28Zブザー、遠方警報 |
オムロンのJEM器具番号資料では、28を警報装置、28Bをベル継電器、28Zをブザー継電器、30Fを機械式故障表示器、30Lをランプ式故障表示器として区別しています。図面上の番号は部品名だけでなく機能を示します。
代表的な警報入力と保護動作
| 入力例 | 警報で伝えること | 別に確認する動作 |
|---|---|---|
| OCR・DGR・SOG | 過電流・地絡・区分開閉器動作 | VCB/PAS状態、事故電流消滅、波及範囲 |
| 変圧器温度・過負荷 | 温度高・負荷過大・冷却異常 | 負荷、周囲、ファン、警報/遮断段 |
| 換気扇故障 | 運転指令に対して回転・電流がない等 | サーマル、電源、接触器、盤内温度 |
| 漏電・絶縁監視 | Io/Ior/Igrや漏電火災警報 | 回路、継続性、接地方式、遮断有無 |
| 直流制御電源異常 | 充電器・蓄電池・直流地絡・電圧異常 | トリップ可能性、母線電圧、残容量 |
| 遮断器異常・トリップ | 意図しない開放、トリップ回路・蓄勢異常 | 指令と52状態、原因継電器、再投入禁止 |
「主遮断器切」を故障警報にするか状態表示にするかは、操作指令との不一致や保護動作をどう判定するかで変わります。単に52bが閉じたらベルを鳴らすと、計画停止でも警報になるため、運転条件・選択スイッチ・原因接点を組み合わせる設計があります。
a接点・b接点と正常時励磁を確認する
警報入力は、異常時に閉じるa接点だけとは限りません。断線や制御電源喪失も検出したい回路では、正常時にリレーを励磁し、異常・断線・電源喪失で復帰するb接点側の考え方を使います。いわゆるフェイルセーフです。
ただし正常時励磁なら自動的に完全なフェイルセーフになるわけではありません。共通電源喪失でベルも表示も消える、断線位置によって検出できない、接点溶着を検出できない場合があります。接点状態、電源監視、終端監視、通信断警報を回路全体で確認します。
自己保持はどこで行うか
短時間だけ動作する継電器接点でも後から原因を確認できるよう、警報信号を保持します。保持位置は次のいずれか、または組合せです。
- 保護継電器自身の動作表示・ターゲット
- 補助リレーの自己保持回路
- 機械式30Fの表示板
- ランプ式・電子式集合表示器の内部メモリ
- PLC・監視装置のイベントメモリ
どこで保持しているか分からないと、復帰ボタンを押しても消えない、原因接点が戻った瞬間に表示も消えて履歴が残らない、停電で記憶が消えるという問題が起こります。電源断時保持と復電後動作も仕様で確認します。
警報停止・表示復帰・機器復帰は別操作
| 操作 | 変えるもの | 変えないもの |
|---|---|---|
| 警報停止 3-28 | ベル・ブザー等の鳴動 | 故障原因、表示、保護ロック |
| 表示復帰 3-30 | 故障表示器・ランプの保持 | 原因接点、設備故障、遮断器状態 |
| 継電器復帰 | 保護継電器のターゲット・出力保持 | 事故原因と安全確認 |
| 86・設備復帰 | 再始動・再投入のロック | 原因除去の事実そのもの |
よい警報シーケンスでは、警報停止後も故障表示を残し、別の新規故障が入れば再び鳴動します。原因が継続している間は表示復帰できない、または復帰しても直ちに再表示する構成があります。動作方式は表示器の仕様と展開図で確認します。
ランプチェックで分かる範囲
ランプチェックは、表示素子とその点灯回路の一部が点灯できるかを確認します。すべて点灯したからといって、現場センサ、保護継電器接点、端子、長い配線、入力回路、遠方通報まで健全とは限りません。
試験を次の層へ分けます。
- 表示試験:ランプ/LED、文字、ブザー、押しボタンを確認する。
- 表示器入力試験:各チャンネルが表示・鳴動・保持・復帰するか確認する。
- 現場入力試験:センサ・継電器から端子・入力までの経路を確認する。
- 代表/個別出力試験:監視盤・通報装置で正しい名称と時刻を確認する。
- 保護連動試験:必要な入力だけ、承認手順で遮断・停止まで確認する。
保護動作を伴わない警報試験と、VCB・PAS・発電機を動かす連動試験を分離します。営業中設備で現場接点を無断短絡せず、模擬端子・試験機能・停電計画を使います。
警報電源が失われたときも考える
警報回路の電源が交流100V、直流100V/24V、UPSのどれかで、どの母線から供給されるかを確認します。受電停電を知らせたい装置が受電と同時に無電圧になれば、現地ベルも遠方通報も出ないことがあります。
直流制御電源と蓄電池で説明したとおり、整流器・蓄電池・直流母線の監視自体にも独立した通報経路が必要です。警報用MCCB・ヒューズ、電源ランプ、電源喪失接点、監視装置のバックアップ、通信回線電源を確認します。
代表警報と個別警報を分ける
代表警報は、どれか1つでも異常があれば「キュービクル異常」として1接点で外部へ送る方式です。配線・入力点数を減らせますが、遠方では原因を特定できません。個別警報は、OCR、DGR、温度、漏電、直流異常等を別々に送ります。
重要設備では、代表警報で即時通報し、個別情報を通信または複数接点で補う構成があります。代表接点が戻っても故障表示器に履歴が残るか、通信断時に接点通報が残るかを確認します。日立の設備監視ユニットのように無電圧警報出力を持つ装置もあるため、出力点数と用途を仕様で照合します。
無電圧接点・有電圧信号・パルスを識別する
「警報接点」とだけ書かれていても、無電圧a/b接点、DC24V有電圧、AC入力、短時間パルス、継続信号、通信データでは受信方法が違います。
- 接点定格と最小適用負荷
- 正常時開/閉と異常時状態
- 入力共通線と極性
- 継続/瞬時、自己保持の有無
- チャタリング除去・入力遅延
- 絶縁、サージ、接地、シールド
微小電流の監視入力へ大電流用補助接点を使うと接触信頼性に問題が出る場合があります。日東工業の警報盤資料も、入力電圧・電流仕様に合う接触信頼性の高い接点を使うよう案内しています。
複数故障と再鳴動を確認する
1件目の警報でベル停止した後、2件目が発生したときに再び鳴ることが重要です。共通ベル継電器を単純に停止保持すると、新規警報まで聞こえなくなる回路があります。新規入力で停止状態を解除する再鳴動、チャンネル別表示、イベント時刻を確認します。
大規模設備では最初に発生した原因を示すファーストアウトが、連鎖的に出た後続警報との区別に役立ちます。時刻同期がずれていると原因順序を誤るため、保護リレー、PLC、監視装置、通報センターの時刻も管理します。
警報が出ない・消えないときの9段階切り分け
- 安全状態と影響範囲:実異常か、保護動作・停電を伴うかを確認する。
- 現場状態:温度、漏電、遮断器、ファン、制御電源等を安全に確認する。
- 検出器表示:継電器ターゲット、センサ表示、イベントを保存する。
- 入力接点:a/b、継続/瞬時、電源、断線監視の設計を図面で確認する。
- 表示器入力:端子番号、チャンネル、共通線、ヒューズを確認する。
- 保持・復帰:どこで記憶し、原因継続中にどう動くかを確認する。
- 鳴動回路:28B/28Z、停止回路、新規入力再鳴動を確認する。
- 外部出力:代表/個別接点、通報装置、通信、受信名称を確認する。
- 保護動作:遮断・停止・86・52返送を警報とは別に確認する。
ベルが鳴り続けるから電源ヒューズを抜く、入力線を外すという対処は、他の警報まで失わせます。原因を記録し、回路単位で隔離が必要な場合も承認済み代替監視を設けます。
警報展開図を読む12ステップ
- 電源を囲む:AC/DC電圧、供給元、MCCB・ヒューズ、バックアップを確認する。
- 入力一覧を作る:警報名、機器タグ、接点番号、正常/異常状態を整理する。
- 検出元を追う:OCR、温度、LGR、52、充電器等の元接点を確認する。
- 共通線を追う:極性、接地、帰路、チャンネル共通を確認する。
- 入力条件を読む:a/b、継続/パルス、遅延、正常時励磁を確認する。
- 記憶場所を読む:継電器、補助、30F、PLCのどこで保持するか確認する。
- 表示を照合:文字、色、点滅/連続、ランプチェックを確認する。
- 音を追う:28B/28Z、停止接点、新規入力の再鳴動を確認する。
- 復帰を追う:3-30、原因接点、保護ターゲット、86の順序を確認する。
- 外部出力を追う:代表/個別、無電圧/有電圧、端子・通信先を確認する。
- 保護出力を分ける:警報と遮断・停止を別色で追う。
- 試験表へ落とす:入力から現地・遠方・保護まで期待結果を1行にする。
警報記録へ残す20項目
発生日時、設備名、警報名称、表示器チャンネル、検出機器、接点番号、現場状態、継電器ターゲット、電流・電圧・温度等の値、遮断器状態、警報音、表示状態、遠方受信、通報先、警報停止時刻、原因確認者、原因除去時刻、表示復帰時刻、設備復旧時刻、承認者を残します。
設計・試験記録には、電源、入力方式、接点定格、保持方式、停止・復帰シーケンス、再鳴動、代表/個別出力、受信名称、通信断動作、ランプテスト、入力試験、端末間試験、保護連動、試験器、図番、変更履歴を残します。
よくある12の誤解
- ベル停止で故障も解消:音を止めるだけで原因と表示は残ります。
- 表示復帰で設備が直る:表示記憶と設備故障は別です。
- ランプチェック合格で全回路正常:現場入力・通報・保護経路は別試験です。
- 警報とトリップは同じ:知らせる機能と電路を切る機能を分けます。
- 全入力は異常時a接点:断線監視等で正常時励磁・b接点も使います。
- 自己保持は必ず表示器:継電器、補助、PLC等の場合もあります。
- 警報停止中は新規故障も無音でよい:通常は新規入力の再鳴動を確認します。
- 代表警報で原因まで分かる:遠方では個別表示・通信情報が必要です。
- 無電圧接点なら定格不要:接点容量と最小適用負荷を確認します。
- 受電停電時も警報は必ず出る:警報・通信電源のバックアップが必要です。
- 52切はすべて故障:計画操作と保護トリップを論理で分けます。
- 警報線を外せば応急復旧:他警報喪失を招くため代替監視と承認が必要です。
理解度チェック
問1:警報停止
変圧器温度高警報が鳴り、警報停止ボタンを押しました。正しい説明はどれですか。
ア.変圧器温度が正常へ戻った イ.音を止めただけで原因・表示・保護状態は別確認 ウ.温度継電器が校正された エ.VCBが自動投入された
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正解:イ。警報停止は鳴動回路の確認操作です。温度、負荷、冷却、表示保持、遮断段を別に確認します。
問2:ランプチェック
全チャンネルがランプチェックで点灯しました。まだ未確認の範囲はどれですか。
ア.表示素子の点灯 イ.現場センサから入力、遠方通報、保護連動 ウ.盤面文字 エ.押しボタンの位置
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正解:イ。ランプチェックは表示回路の一部です。端末から端末まで層を分けて試験します。
問3:新規警報の再鳴動
1件目の警報を停止した後に別の故障が発生しました。望ましい動作はどれですか。
ア.停止状態なので何も知らせない イ.新規チャンネルを表示し再び鳴動する ウ.全表示を消す エ.主遮断器を無条件に投入する
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正解:イ。1件目を確認中でも、新しい異常を見逃さない再鳴動とチャンネル識別を確認します。
まとめ|停止・復帰・再投入を同じ操作にしない
キュービクルの警報回路は、検出、受信、記憶、表示・鳴動、遠方通報、保護動作の6段階で読みます。状態表示30S、故障表示30F/30L、警報28を分け、警報一覧へ表示・音・通報・遮断・保持・復帰を整理します。
警報停止は音、表示復帰は記憶、継電器・86復帰は保護状態、VCB再投入は設備運転を変える別操作です。新規故障の再鳴動、警報電源喪失、代表/個別出力、端末間試験まで確認すれば、「ランプは点くが通報されない」「ベルを止めたら次の事故も無音」という弱点を防げます。
停電時も監視・通信を残すUPSを選ぶ
UPS容量の選び方で、警報・通信・サーバー負荷のVAとW、停止シーケンス、バックアップ時間、電池交換と監視項目を確認できます。
公式資料・一次情報
- オムロン:保護継電器の器具番号 28・30F・30L
- オムロン:保護継電器テクニカルガイド
- 日東工業:キュービクル・高低圧盤 製品仕様書
- 河村電器産業:キュービクルカタログ・警報回路
- 光洋電機:TFU-302故障表示器 仕様書
- 光洋電機:TFU-301R故障表示器 仕様書
- 日東工業:小型警報盤・ランプチェック・再鳴動
- 日立産機システム:設備監視ユニット・警報出力
- 日本テクノ:高圧受変電設備24時間監視
- 経済産業省:電気設備の技術基準の解釈
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VCBの引外し回路:警報とは別のOCR・52・トリップ経路を読む
高圧受電設備のインターロック:許可条件と誤操作防止を警報から分ける
直流制御電源と蓄電池:停電時も警報・引外しを維持する電源を確認する
キュービクルの点検項目:警報・表示・連動試験を年次点検へ組み込む
広告・編集方針
この記事内に故障表示器、警報盤、監視装置、保護継電器、通信講座のアフィリエイトリンクは掲載していません。内容は2026年8月13日に経済産業省、キュービクル・表示器・保護継電器・監視装置メーカーの一次資料へ照合しました。動作方式は設備ごとに異なるため、制御展開図、警報一覧、製品仕様書、保安規程を優先してください。確認問題は当サイトのオリジナルです。
※当サイトの画像にはAI生成のものが含まれており、実際の機器・器具とは外観が異なる場合があります。問題・解答の内容には細心の注意を払っておりますが、誤りが含まれる可能性があります。学習の参考としてご活用いただき、最終的な確認は公式テキスト・法令等で行ってください。当サイトの情報に基づく判断によって生じた損害について、一切の責任を負いかねます。
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