受変電設備の実務

CTの飽和・精度階級・負担|過電流定数と保護用CTの選び方

結論:CTは「比」だけでなく、精度・負担・過電流定数・耐電流で選ぶ

CT(Current Transformer、変流器)は一次電流を計器・継電器用の二次電流へ変換します。通常電流を正確に測るには確度階級、接続機器と配線を駆動するには定格負担、短絡電流をOCRへ再現するには過電流定数、事故電流に壊れず耐えるには定格耐電流・過電流強度を確認します。CT飽和は、このうち「大電流を二次へ正しく伝えられるか」を崩す現象です。

CT 100/5Aなら一次100Aで二次5Aになる――これは入口にすぎません。一次が1,000Aなら理想的には二次50Aですが、鉄心が飽和すると二次波形がつぶれ、振幅・位相に誤差が出ます。するとOCRの瞬時要素が想定より遅れる、差動保護に見かけの差電流が出る、事故波形の記録値が実際より小さく見えることがあります。

CT・VT・VCT・ZCTの違いでは各変成器の役割を、CT・VT二次回路の結線図ではAS・電流計・継電器への信号経路を扱いました。この記事ではCT単体と二次回路の仕様を一段深く読み、飽和・精度・負担を計算でつなぎます。

CT二次回路を開放しない

一次通電中にCT二次を開放すると、危険な高電圧、発熱、絶縁損傷、残留磁気が生じるおそれがあります。端子増設、計器交換、試験端子操作、励磁・飽和試験は、電気主任技術者・保守担当者が停電・短絡・接地・復旧の承認手順とメーカー資料に基づいて実施してください。この記事は活線作業や試験結線の手順を示すものではありません。

CTの5つの定格を一表で分ける

銘板・仕様 何を表すか 混同しやすい点
変流比 一次定格電流と二次定格電流の比 短絡時も無限に同じ比ではない
確度階級 指定条件での比誤差・位相誤差の区分 計測用と保護用で目的が違う
定格負担 VA 所定精度を満たす二次側負担の基準 機器だけでなく往復配線も含む
過電流定数 n 大電流域の誤差特性を表す指標 CTが壊れず耐える倍率ではない
定格耐電流 短時間の熱的・機械的耐量 精度維持を保証する値ではない

三菱電機の6.6kV用CT仕様には、同じ製品表の中に「1.0・1PS」「40VA」「n>3」「過電流強度40倍」などが並びます。それぞれ判定対象が違うため、1つの数字で他を代用できません。

CT飽和は鉄心の磁束が限界へ近づく現象

CTの一次電流が作る磁束を、二次電流の磁束が打ち消すことで通常の変流動作が成り立ちます。しかし二次回路に必要な電圧が高くなり鉄心の磁束密度が限界へ近づくと、一次電流を比例した二次電流へ変換できなくなります。

飽和前
一次波形に応じて二次電流が概ね比例
→ 計測・保護が想定どおり働く
飽和後
二次波形の一部が平らになり振幅が不足
→ OCR遅延、差動誤差、記録値低下

飽和は「一次電流が定格の何倍か」だけでは決まりません。二次負担、配線抵抗、事故電流の直流分、一次時定数、残留磁気、CT鉄心と巻線、要求される二次電圧が関係します。同じ対称実効値の短絡電流でも、事故開始位相で大きな直流分を持つ波形は片側へ偏り、早く飽和する場合があります。

比誤差と位相誤差を分ける

比誤差は、実際の二次電流を変流比で一次へ戻した値が真の一次電流からどれだけずれるかを表します。位相誤差は一次電流と換算二次電流の位相差です。

電流計の指示は主に比誤差の影響を受けます。電力・電力量・方向要素は電圧との位相関係も使うため、位相誤差も重要です。差動保護では複数CTの比・位相・飽和の不一致が差電流へ現れます。精度階級は用途、規格、負担範囲、電流範囲とセットで読み、数字が小さいほど全条件で万能とは考えません。

計器用CTと保護用CTは飽和の狙いが違う

比較点 計器用途 保護用途
主な電流域 通常負荷・計量範囲 通常から大きな事故電流まで
重視すること 指示・計量の確度、計器保護 事故電流を継電器へ再現すること
仕様確認 計測用確度、定格負担、計器安全 保護用階級、過電流定数、飽和、負担
注意 保護用へ無条件転用しない 計量確度を自動的に満たすとは限らない

1つのCTに計器と継電器の双方を接続できる製品もありますが、用途表示、巻線、確度、負担を確認します。重要保護では計測巻線と保護巻線を分ける、または別CTを使う構成があります。二次回路を共用すると、片方の工事・故障がもう片方へ影響する点も考慮します。

定格負担は二次回路がCTへ要求するVA

CTの負担は、二次側に接続するOCR、電流計、電力計、変換器などの入力負担と、端子・試験スイッチ・往復配線の負担を合計します。5A回路で配線の往復抵抗をR〔Ω〕とすると、配線負担は概ね次です。

配線負担 VA = Is2 × R

5A二次なら 25R、1A二次なら R

同じ配線抵抗なら、5A回路の配線負担は1A回路の25倍です。このため長い二次配線では1A定格が有利な場合があります。ただし、CT、継電器、計器を同じ二次定格で統一し、開放時電圧、安全、既設互換性を含めて設計します。

二次負担を計算する

計算例:5A回路、往復抵抗0.08Ω

  • OCR入力負担:0.5VA
  • 電流計入力負担:1.0VA
  • 電流変換器入力負担:0.5VA
  • 端子・往復配線抵抗:0.08Ω

配線負担は 5²×0.08=2.0VA、合計使用負担は 0.5+1.0+0.5+2.0=4.0VA です。定格負担15VAのCTなら数値上は15VA以下ですが、それだけで短絡時の保護性能が合格とは言えません。過電流定数、二次漏洩VA、誤差特性、事故時に必要な二次電圧を続けて確認します。

機器カタログの入力負担は、定格電流時か、動作時か、相ごとか、回路全体かを確認します。配線抵抗は片道長ではなく往復経路、導体断面積、温度、端子接触を含めます。ASや試験端子の接触劣化は、図面上の機器数が同じでも使用負担を増やします。

過電流定数nは大電流域の誤差指標

東芝のCTカタログは、定格周波数・定格二次負担で変流比誤差が−10%となる一次電流を定格一次電流で除した値として、過電流定数を説明しています。n>10なら、規定条件で定格一次電流の10倍までの範囲に関する性能を示す表記です。

「−10%になる点」は、二次電流が突然ゼロになる境界ではありません。そこへ近づくにつれて誤差が増え、超えると急激に増える領域を評価する指標です。継電器の瞬時整定がCT一次定格の何倍か、事故電流域でOCRへ必要な電流が届くかを確認します。

OCR整定計算の考え方で扱った瞬時30Aを例にすると、CT二次定格5Aに対して6倍です。CTの使用負担時過電流定数、事故波形、継電器誤差を含めて、6倍入力を十分な精度で再現できるかを見ます。

使用負担が小さいと過電流定数は改善する

三菱電機の技術資料は、使用負担時の過電流定数n′を次の形で示しています。

n′ = n ×(定格負担+二次漏洩VA)÷(使用負担+二次漏洩VA)

n、定格負担、二次漏洩VAは対象CTのメーカー値を使います。使用負担だけを一般値で置き換えません。

計算例:式の働きを確認する

説明用にn=10、定格負担15VA、メーカー資料の二次漏洩VAを2VA、実測・積算した使用負担を5VAと仮定すると、n′=10×(15+2)÷(5+2)=約24.3です。使用負担を10VAとすると約14.2となり、負担が増えるほど大電流域の余裕が減ることが分かります。

この例の2VAは架空条件です。実機へ適用するときは、その形式・変流比に対応する二次漏洩VAと過電流定数の実力値をメーカー資料から取得します。また、n′が大きければあらゆる過渡飽和を防げるわけではありません。直流分、残留磁気、波形、保護方式を別途確認します。

過電流定数と過電流強度を混同しない

過電流定数は、主に大電流域での変流誤差・保護入力の再現性に関する値です。過電流強度・定格耐電流は、短絡電流による熱的・機械的ストレスへCTが耐える能力です。

たとえば過電流定数n>10だから、定格の10倍を何秒でも流せるという意味ではありません。反対に40倍の過電流強度があっても、40倍まで計測精度が維持されるわけではありません。事故電流と継続時間をVCBの遮断容量・短時間耐電流、OCR・後備保護の全遮断時間と合わせます。

二次負担が飽和を早める理由

同じ二次電流を流すために、二次回路のインピーダンスが高いほどCTは高い二次電圧を作る必要があります。必要電圧が上がると鉄心磁束が増え、飽和へ近づきます。

  • 配線が長い・細い
  • 接点、AS、試験端子の抵抗が増えている
  • 計器・継電器・変換器を追加した
  • 旧形の入力負担が大きい
  • 端子の緩み・腐食で接触抵抗が増えた

機器を低負担のデジタル形へ更新すると使用負担が下がる場合がありますが、既設配線や共用回路を無視できません。更新後の実負担を積算し、CT仕様と整定計算書を改訂します。

飽和が保護へ与える4つの影響

  1. OCR瞬時要素の遅延・不動作:二次電流が整定値へ届かず、限時動作へ移る場合がある。
  2. 差動保護の不要動作:外部事故で片側CTだけ強く飽和し、見かけの差電流が出る。
  3. 方向要素の判定誤差:振幅と位相の誤差が方向判定へ影響する場合がある。
  4. 記録値の過小表示:事故波形・最大値が一次実電流より小さく見える。

変圧器の87T比率差動保護では、外部大電流時のCT飽和に対して比率抑制や外部事故判定を使います。CT仕様だけでなく、継電器アルゴリズム、CT位置、二次配線、両側CTの整合を一体で確認します。

CT比を大きくすれば解決するとは限らない

CT一次定格を大きくすると、同じ事故電流に対する定格倍数は下がり、飽和余裕が増える方向に働く場合があります。しかし通常負荷時の二次電流が小さくなり、計器の分解能やOCR限時整定の感度を失うことがあります。

CT比変更は、電流計倍率、電力・電力量演算、OCR整定、差動補正、監視システムのスケーリング、銘板・図面をすべて変えます。飽和だけを見て比を上げず、最大負荷、最小事故電流、負担、過電流定数、計測範囲を同時に評価します。

1A二次と5A二次を比較する

1A二次は同じ配線抵抗でのI²R負担が小さく、長距離配線やデジタル保護で有利です。5A二次は既設設備で広く使われ、既設計器・継電器との互換性があります。どちらが常に優れるという関係ではありません。

1A化するときはCTだけでなく、全接続機器、試験端子、短絡片、変換器、予備回路の定格を確認します。5A機器を1A回路へつなぐ、またはその逆は、指示・整定・負担を成立させません。

CT選定を進める10ステップ

  1. 用途を分ける:計測、計量、OCR、差動、方向要素の必要性能を整理する。
  2. 回路電圧を確認:最高回路電圧、絶縁、設置環境を決める。
  3. 変流比を仮選定:最大負荷、将来負荷、最小事故感度から候補を作る。
  4. 二次定格を決める:1A/5A、配線長、既設機器を照合する。
  5. 使用負担を積算:全機器、往復配線、接点、端子のVAを足す。
  6. 確度階級を選ぶ:計測・保護の用途と適用規格を確認する。
  7. 過電流定数を検算:使用負担時n′と継電器最大整定・事故電流を比べる。
  8. 過渡飽和を確認:直流分、残留磁気、差動・方向保護への影響を評価する。
  9. 耐電流を確認:最大短絡電流と主・後備保護の全遮断時間を比べる。
  10. 図面・試験へ反映:極性、接地、端子、倍率、整定、試験判定値を統一する。

点検・事故解析で確認する順序

事故電流が計算より小さく記録されたとき、直ちに「短絡電流計算が誤り」と決めません。一次系統条件、CT比・タップ、記録装置スケール、二次回路の負担・接触、CT飽和、波形の直流分、サンプリング、時刻同期を順に確認します。

日常・定期点検では、外観、異音・臭い、端子部、二次接地、二次回路の連続性、計器指示の相間比較、変更履歴を確認します。飽和特性や励磁特性の試験は、対象CTと保護方式に応じた専用計画が必要です。通電中の二次開放を伴う切り分けは行いません。

設計・試験記録へ残す18項目

CTタグ、メーカー、形式、製造番号、適用規格、最高回路電圧、一次/二次定格、周波数、巻線数、用途、確度階級、定格負担、過電流定数、二次漏洩VA、定格耐電流、極性、二次接地点、接続機器を残します。

さらに、配線材・断面積・往復長、配線抵抗、機器別VA、合計使用負担、使用負担時n′、最大/最小短絡電流、直流分の検討条件、OCR・差動整定、計器倍率、試験結果、変更前後値、図番、計算者・承認者をひも付けます。

よくある12の誤解

  1. CT比だけ合えばよい:精度、負担、過電流定数、耐電流も必要です。
  2. 一次10倍なら二次も必ず10倍:飽和で波形と振幅が崩れる場合があります。
  3. 定格負担は接続機器だけ:往復配線、接点、端子も含めます。
  4. 15VA以下なら保護性能も合格:過電流定数と過渡飽和を別に確認します。
  5. 過電流定数は耐電流倍率:誤差特性と耐量は別の定格です。
  6. 40倍耐電流なら40倍まで正確:壊れない能力と精度維持は同じではありません。
  7. nを超えると二次電流はゼロ:誤差が急増する領域であり突然ゼロとは限りません。
  8. 負担を増やすと飽和しにくい:必要二次電圧が上がり飽和しやすくなります。
  9. CT比を大きくすれば万能:通常計測と最小事故感度を失う場合があります。
  10. 計器用CTを保護へそのまま使える:用途表示と保護性能を確認します。
  11. 1Aと5Aは機器を混在できる:全二次回路の定格統一が必要です。
  12. CT二次は電流が小さいから安全:開放時に危険な高電圧が生じ得ます。

理解度チェック

問1:配線負担

CT二次5A、端子を含む往復抵抗0.12Ωのとき、配線負担は何VAですか。

ア.0.6VA イ.1.2VA ウ.3.0VA エ.25VA

解答を見る

正解:ウ。5²×0.12=3.0VAです。機器負担と合計し、CTの定格負担・過電流定数を確認します。

問2:過電流定数と耐電流

CTの「過電流定数n」と「定格耐電流」の説明として適切なのはどれですか。

ア.どちらも同じ値 イ.nは誤差特性、耐電流は熱的・機械的耐量 ウ.nは配線長、耐電流は確度階級 エ.どちらも通常負荷の指示精度だけ

解答を見る

正解:イ。過電流定数は大電流域の変流誤差、定格耐電流は事故電流へ壊れず耐える能力を評価します。

問3:外部短絡と差動保護

変圧器外部短絡時に片側CTだけが強く飽和しました。起こり得る影響はどれですか。

ア.両側が必ず完全一致する イ.見かけの差電流が生じる ウ.一次短絡電流がゼロになる エ.CT比が永久に1対1になる

解答を見る

正解:イ。両側CTの再現誤差が不均衡になると、内部事故でなくても見かけの差電流が生じます。比率抑制等とCT性能を一体で確認します。

まとめ|通常精度、大電流精度、耐量を別々に合格させる

CTは、変流比で通常電流を二次へ換算し、確度階級で計測・保護の誤差、定格負担で二次回路のVA、過電流定数で大電流域の再現性、定格耐電流で短絡時の熱的・機械的耐量を確認します。

使用負担は機器VAとI²R配線負担の合計です。負担が増えるほどCTが必要とする二次電圧が上がり、飽和へ近づきます。比・負担・n′・過渡飽和・耐電流を同じ短絡条件と保護時間で検算すれば、OCR整定や差動保護が「計算上だけ動く」状態を避けられます。

CT選定と対になるVT選定を確認する

VTの選び方で、変圧比、確度階級、使用負担・定格負担、制限負荷、一次ヒューズ、二次接地、更新互換性を一続きで確認できます。

公式資料・一次情報

次に読む

OCR整定計算の考え方:CT比と過電流定数を限時・瞬時整定へつなぐ

CT・VT二次回路の結線図:AS、計器、継電器、接地の経路を確認する

保護協調曲線の見方:事故電流とOCR・VCB・PFの動作時間を比較する

変圧器の保護方式:87Tと外部事故時CT飽和の関係を確認する

広告・編集方針

この記事内にCT、保護継電器、計器、試験器、通信講座のアフィリエイトリンクは掲載していません。内容は2026年8月13日に経済産業省、JEMA、変成器・保護継電器メーカーの一次資料へ照合し、負担・n′の例を再計算しました。数値例の二次漏洩VAは式の働きを示す架空条件です。実設備では対象形式の仕様書、承認図、保護計算書、保安規程を優先してください。確認問題は当サイトのオリジナルです。

資格太郎

この記事を書いた人:資格太郎電気工事士の独学合格を目指して学習中。変流比だけで終わらせず、二次負担、大電流域の誤差、保護動作、機器耐量を一次資料と計算で照合しています。運営者情報を詳しく見る



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