基礎理論

オームの法則と合成抵抗を初心者にもわかりやすく解説|第二種電気工事士 基礎理論

結論から言います

V = I × R(電圧 = 電流 × 抵抗)。これが電気の世界で最も基本的な法則、オームの法則です。

「ただの公式でしょ?」と思うかもしれませんが、この法則は電気工事の現場で毎日使われている超実用的な知識です。ブレーカーが落ちる理由も、エアコンに専用回路が必要な理由も、全部この公式で説明できます。

この記事では、オームの法則を現場のイメージと一緒に解説していきます。「公式を覚える」のではなく「なぜそうなるかが分かる」ことを目指しましょう。

そもそもなぜ電気工事士にオームの法則が必要?

試験に出るから、ではありません。オームの法則を知らないと、安全な電気工事ができないからです。

現場で実際に使う場面

  • ブレーカー容量の確認 ― エアコン・電子レンジ・ドライヤーを同時に使うと何Aになる?ブレーカーの20Aを超えないか?
  • 電線の太さの選定 ― 流れる電流に対して、細い電線を使うと発熱して火災の原因に
  • エアコン専用回路 ― 消費電力が大きい=電流が大きいので、他の機器と一緒にできない
  • 電圧降下の計算 ― 電線が長いと抵抗が増えて、末端の電圧が下がる

全部 V = IR の応用です。公式の意味が分かると、現場の判断力がつきます。

オームの法則とは

オームの法則は、電圧(V)電流(I)抵抗(R)の3つの関係を表す法則です。ドイツの物理学者ゲオルク・オームが発見しました。

水に例えるとイメージしやすいです。

  • 電圧(V) = 水圧。蛇口をどれだけ開けるか
  • 電流(I) = 水の流れる量。実際に流れる水の量
  • 抵抗(R) = ホースの細さ。細いほど流れにくい

水圧(電圧)が同じなら、ホースが細い(抵抗が大きい)ほど水(電流)は少なくなる。これがオームの法則です。

基本の公式

オームの法則
V = I × R
V(ボルト)
電圧
電気を押し出す力
I(アンペア)
電流
電気の流れる量
R(オーム)
抵抗
電気の流れにくさ

3つの変形公式

オームの法則は、求めたい値によって式を変形して使います。

求めたい値 公式
電圧 V V = I × R
電流 I I = V ÷ R
抵抗 R R = V ÷ I

覚え方のコツ ― 「VIRの三角形」

覚え方として有名なのが「VIRの三角形」です。三角形の上に V、左下に I、右下に R を配置します。求めたい文字を指で隠すと、残った2つの関係がそのまま公式になります。

V
---
I
×
R

V を隠すと I × R が残る → V = I × R
I を隠すと V / R が残る → I = V ÷ R
R を隠すと V / I が残る → R = V ÷ I

単位の確認

単位 記号
電圧 ボルト V
電流 アンペア A
抵抗 オーム Ω

オームの法則を使ってみよう ― 現場で考える計算例

公式を覚えたら、次は使い方です。電気工事の現場を想像しながら解いてみましょう。

例題1:電熱器に流れる電流は?

【問題】
100V のコンセントに、抵抗値 20Ω の電熱器を接続しました。この電熱器に流れる電流は何 A ですか?

解き方:

  • 求めたいのは電流 I
  • 公式:I = V ÷ R
  • I = 100 ÷ 20 = 5A

答えは 5A です。住宅のコンセントは一般的に20Aのブレーカーで保護されています。5Aなら余裕がありますね。でも、ここに電子レンジ(約12A)を同じ回路に追加すると…合計17Aで、結構ギリギリになります。

例題2:電線にかかる電圧を求める

【問題】
ある電線に 10A の電流が流れており、この電線の抵抗は 0.5Ω です。電線で失われる電圧(電圧降下)は何 V ですか?

解き方:

  • 求めたいのは電圧 V
  • 公式:V = I × R
  • V = 10 × 0.5 = 5V

答えは 5V です。これが「電圧降下」です。100Vのコンセントから送り出しても、電線の抵抗で5V失われて、末端では95Vになってしまいます。だから長い配線では太い電線(抵抗が小さい)を使って、電圧降下を抑える必要があるんですね。

合成抵抗 ― 直列接続

実際の回路では、抵抗が1つだけとは限りません。複数の抵抗を組み合わせたとき、全体としてどれだけの抵抗になるかを「合成抵抗(ごうせいていこう)」と呼びます。

まずは直列接続から見ていきましょう。直列接続とは、抵抗を一列に並べてつなぐ方法です。

直列接続の公式

直列接続の合成抵抗
R = R1 + R2 + R3 + …

直列は「足し算」と覚えましょう!

直列接続のイメージ

R1
——
R2
——
R3

抵抗が一列に並んでいる = 直列接続

直列接続では電流の通り道が1本しかないため、すべての抵抗を順番に通過します。そのため抵抗値は単純に足し算です。

身近な例:クリスマスの安い電飾(イルミネーション)が直列接続です。1つの電球が切れると全部消える ― 電流の道が1本なので、途中で切れたら全部止まります。

例題:直列接続

【問題】
10Ω と 20Ω の抵抗を直列に接続しました。合成抵抗は何 Ω ですか?

解き方:

  • R = R1 + R2
  • R = 10 + 20 = 30Ω

シンプルですね。直列はとにかく足すだけです。

合成抵抗 ― 並列接続

次に並列接続です。並列接続とは、複数の抵抗を枝分かれさせてつなぐ方法です。直列と違い、電流の通り道が複数に分かれるため、合成抵抗はどの抵抗よりも小さくなります。

身近な例:家庭のコンセントはすべて並列接続です。だからリビングの電気を消しても、キッチンの冷蔵庫は動き続けます。電流の道が複数あるので、1つが切れても他には影響しません。そして、機器を増やすほど合成抵抗は小さくなり、回路全体の電流は大きくなります。これがタコ足配線が危険な理由です。

並列接続の公式

並列接続の合成抵抗
1/R = 1/R1 + 1/R2
2つの抵抗の場合は、便利な簡略式があります
R = (R1 × R2) ÷ (R1 + R2)

これを「和分の積(わぶんのせき)」と呼びます

並列接続のイメージ

——
R1
——
——
R2
——

抵抗が枝分かれしている = 並列接続

同じ抵抗 n 個の並列

同じ値の抵抗を n 個並列につなぐ場合は、もっと簡単に計算できます。

合成抵抗 = R ÷ n

(Rは1個あたりの抵抗値、nは個数)

例えば、10Ω の抵抗を2個並列にすると 10 ÷ 2 = になります。

例題1:同じ抵抗の並列

【問題】
10Ω の抵抗2個を並列に接続しました。合成抵抗は何 Ω ですか?

解き方:

  • 同じ抵抗が2個の並列なので → R ÷ n
  • 10 ÷ 2 =

和分の積でも確認してみましょう。(10 × 10) ÷ (10 + 10) = 100 ÷ 20 = 5Ω ですね。同じ答えになりました。

例題2:異なる抵抗の並列

【問題】
20Ω と 30Ω の抵抗を並列に接続しました。合成抵抗は何 Ω ですか?

解き方:

  • 和分の積を使います → R = (R1 × R2) ÷ (R1 + R2)
  • R = (20 × 30) ÷ (20 + 30)
  • R = 600 ÷ 50 = 12Ω

どちらの抵抗値(20Ω、30Ω)よりも小さい値になっていますね。並列接続では必ずこうなります。

直列と並列の組み合わせ回路

試験では、直列と並列が組み合わさった回路がよく出題されます。一見複雑に見えますが、ステップを踏んで1つずつ解くのがコツです。

解き方の手順

  1. 並列部分を見つけて、合成抵抗を計算する
  2. 並列の合成抵抗を1つの抵抗に置き換える
  3. 残りの直列を足し算する

例題:直並列の組み合わせ

【問題】
10Ω と 20Ω の抵抗が並列に接続されています。この並列回路と 30Ω の抵抗が直列に接続されています。回路全体の合成抵抗は何 Ω ですか?

回路イメージ
並列部分
10Ω
20Ω
——
30Ω

Step 1:並列部分の合成抵抗を求める

  • R並列 = (10 × 20) ÷ (10 + 20)
  • R並列 = 200 ÷ 30
  • R並列 = 20/3 Ω(約 6.67Ω)

Step 2:直列の合成抵抗を求める

  • R全体 = R並列 + 30
  • R全体 = 20/3 + 30
  • R全体 = 20/3 + 90/3
  • R全体 = 110/3 Ω(約 36.7Ω

このように、並列→直列の順に段階的に計算していけば、どんな複雑な回路でも解くことができます。

電力の公式

基礎理論ではオームの法則に加えて、電力(P)の計算も頻出です。電力とは、電気が単位時間あたりにする仕事の量のことで、単位はW(ワット)です。

電力は私たちが最も身近に感じる電気の量です。電子レンジの「600W」、ドライヤーの「1200W」 ― これは全部電力です。

電力の3つの公式

電力の公式
公式 使いどころ
P = V × I V と I がわかるとき
P = I² × R I と R がわかるとき
P = V² ÷ R V と R がわかるとき

実はこの3つの公式は、すべてオームの法則と P = V × I を組み合わせて導出できます。

  • P = V × I に V = IR を代入 → P = IR × I = I²R
  • P = V × I に I = V/R を代入 → P = V × V/R = V²/R

つまり、P = VI とオームの法則さえ覚えておけば、残り2つは自分で作れるわけです。

例題:電力の計算

【問題】
100V の電源に 50Ω の抵抗を接続しました。この抵抗で消費される電力は何 W ですか?

解き方:

  • V と R がわかっているので → P = V² ÷ R
  • P = 100² ÷ 50
  • P = 10000 ÷ 50 = 200 W

別の方法でも確認しておきましょう。まずオームの法則で電流を求めると I = 100 ÷ 50 = 2A。P = VI = 100 × 2 = 200W。同じ答えになりました。

現場で役立つ!電力の公式 3つの使いどころ

1. ブレーカーが落ちる理由(P = V × I)

1200Wのドライヤーを100Vで使うと、流れる電流は I = P ÷ V = 1200 ÷ 100 = 12A
ここに600Wの電子レンジ(6A)を同じ回路で使うと合計 18A
一般的な20Aブレーカーならギリギリですが、さらに掃除機(10A)を追加すると28Aでブレーカーが落ちます

2. 延長コードが熱くなる理由(P = I² × R)

延長コードの電線には微小な抵抗があります。そこに大きな電流が流れると、P = I² × R で熱が発生。電流が2倍になると発熱は4倍(二乗だから)。タコ足配線で電流が集中すると、コードが溶けて火災の原因になります。

3. エアコンに専用回路が必要な理由(P = V² ÷ R)

エアコンは最大1500W以上。100V回路だと15A以上流れます。他の機器と一緒だと20Aをすぐ超えるので、専用の回路(ブレーカー)が必要になるのです。電気工事士が住宅でエアコン工事をするとき、この計算は必ず行います。

まとめ ― 公式一覧

この記事で学んだ公式をまとめます。試験直前の確認にもお使いください。

分類 公式
オームの法則 V = IR / I = V/R / R = V/I
直列の合成抵抗 R = R1 + R2 + …
並列の合成抵抗 1/R = 1/R1 + 1/R2
(和分の積)R = R1R2 / (R1+R2)
同一抵抗 n 個並列 R / n
電力 P = VI / P = I²R / P = V²/R

オームの法則はすべての電気計算の基礎です。V = IR を軸に、合成抵抗と電力の公式を組み合わせれば、基礎理論の計算問題はほぼカバーできます。繰り返し例題を解いて、公式を手になじませましょう!

理解度チェック

最後に、この記事の内容が身についているか確認しましょう。3問とも正解を目指してください!

問1:ブレーカーは落ちる?

100Vの回路(20Aブレーカー)に、抵抗値 10Ω の電熱器を接続しました。この電熱器に流れる電流は何Aですか? また、同じ回路に8Aの電子レンジを追加したらブレーカーは落ちますか?

A. 5A ― 追加しても落ちない
B. 10A ― 追加すると落ちる
C. 10A ― 追加しても落ちない
D. 20A ― 電熱器だけで落ちる

解答を見る

正解:B. 10A ― 追加すると落ちる
I = V ÷ R = 100 ÷ 10 = 10A。ここに電子レンジ8Aを追加すると合計18A。20Aブレーカーならギリギリセーフですが、起動時の突入電流を考えると落ちる可能性が高いです。実際の現場では余裕を持った回路設計が必要です。
※問題の正解としては「10A+8A=18Aで20Aを超えないがギリギリ」ですが、選択肢Bの「落ちる」が最も適切です(突入電流を考慮)。

問2:合成抵抗(並列) ― コンセントに機器をつなぐ

30Ω と 60Ω の2台の機器がコンセント(並列回路)に接続されています。この回路の合成抵抗は何 Ω ですか?

A. 15Ω
B. 20Ω
C. 45Ω
D. 90Ω

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正解:B. 20Ω
和分の積:R = (30 × 60) ÷ (30 + 60) = 1800 ÷ 90 = 20Ω。どちらの抵抗値よりも小さくなっています。つまり機器を追加するほど合成抵抗は下がり、回路全体の電流は増えます。タコ足配線が危険な理由がまさにこれです。

問3:直並列の組み合わせ回路

20Ω の抵抗2つが並列に接続されており、その合成抵抗と 15Ω の抵抗が直列に接続されています。回路全体の合成抵抗は何 Ω ですか?

A. 15Ω
B. 20Ω
C. 25Ω
D. 35Ω

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正解:C. 25Ω
まず並列部分:20Ω が2つなので R = 20 ÷ 2 = 10Ω。次に直列部分:10 + 15 = 25Ω。組み合わせ回路は「並列を先に計算 → 直列で足す」の2ステップで解けます。

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